東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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第六幕 死に損ないの矜持〜残党の朽墓標
光と影の歴史編纂


 

──────お館様は仰った。

 

結局のところ、幻想郷ではいつか我々が報われる日は来るのだと。

この戦いは、我々が自由を手に入れる為のものであったはずだ。

だが、ソレは放置していても叶うのだと。

 

お館様は自らの言い始めた事を自ら否定された。

 

 

 

──────しかし、お館様は続けた。

 

その先が最も大事な一言であった。

 

そう、我々が幸せになろうとも………かつての我々の祖先が、それで報われるのかと。

それが、お館様の考えだった。

 

そう、放置しても我々が報われる日は来るのだそう。だが、報われずに死んでいったかつての祖先たちは、それで良いのか。せめて成仏してあの世に逝けるように、我々が幸せにしてやらねばならないのではないのか。

そうおっしゃったのだ。そのとおりだ。

ならば何をすればよいのか?

死人に差し入れか?供物で成仏か?

いや、そうではない。成仏とはやり残したことが無い者に許された来世でも幸せになるための切符。この世でまだ未練を残してしまえば成仏もできず亡霊となってこの幻想郷を彷徨うだろう。

その魂を解放してやるには、その無念を私たちの手で晴らしてやらねばならないのだ。

 

──────だから、私は戦う。

 

 

これは、貴様ら人間へ向けた【真実の歴史】だ。

貴様らが忘れた本物の─────

 

 

 

 

 

我が名はモーガン・アリアドネ………貴様らに忘却した歴史を教える、歴史の講師だ。

歴史の編纂だと…………?愚かな、それは単なる改竄に過ぎない。

記録を後世にわたって遺す、それを目的としたものが歴史書であるのならば、そこに書かれた歴史は正史でなければならない。

ならば、私は正しい歴史を残さなければならない。

 

 

 

─────私は………都合の良い記録ばっかり遺すような女とは違うのだ………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆーちゃんは魔界ができた経緯は知っている?

 

それはもちろん、白紙だったこの世界に神綺様が世界を創られたからよ。

 

うん、そうだね。

魔界は母さんが創ったものだ。魔界の歴史はそこがスタートかな。しかし歴史、というのは単なる記録の連鎖じゃないんだよ。

俺たちが認識している「歴史」というのは「見える記録」に過ぎない。古い時代から現在に渡る時間の流れの纏まりの事を俺たちは歴史と呼んでいる。

だが、俺たちが認知している歴史は表面だけだ、ほんとうは………見えない歴史というものがあるんだ。

消えてしまった歴史………というのがな。 

 

消えてしまった歴史………歴史編纂で消失した歴史の事かしら?

歴史が食べられて、そのまま復帰しなかったまま消えていったもの………

 

一部それも含める。だが………ハクタクが歴史を食べて消失した歴史以外にも見えない歴史はある。

単純なもんだよ、単に「記録されてない」歴史だ。

記録されてから消えたという食べられた歴史とは異なり、そもそも記録すらされなかった歴史。

忘れ去られた記憶ではなく、知られなかった歴史。暗闇の中で起きた出来事。

見ることのできない不可視の時間、ソレは記録に留めることもできない。

記録に残せるのは………見た、聞いた、嗅いだ、味わった、触った事のみ。

五感のいずれでも感じたことのない事をなにかに遺すことは不可能だ。

 

その歴史は、溢れているのかしら。

 

山のように。見える歴史は見えない歴史に比べたら数は半分にも満たないだろう。

それぐらい、不可視の時間は多いんだ。

 

あのモーガンという女は、それを見えるようにしようと………それって、良い事なのではないかしら。

 

その心は?

 

なぜって、真実を明らかにして、正しい歴史を遺そうとしているのでしょう?それは、正義なのではないかしら。

 

何が正義かなんて、そんなものは誰にもわからない。

正義の反対は、もう一つの正義だ。

逆に言えば、何もかもが内の何処かに悪の因子を抱えている。

暴走した正義の行き着く先は、悪。

────俺が思うに、本物の正義とは、

 

─────────。

 

──────「秩序」の事じゃないかな?

 

秩序…………

 

さて、お喋りはここまでだ。

より良い未来を創るために未来のためになる歴史を遺す上白沢慧音………真実を遺すために嘘偽りない歴史を残そうとするモーガン・アリアドネ。

ふふふ…………!!!まさに光と影だ………見るのが楽しみだよ………

 

さしずめ、慧音先生が人間の光、モーガンが影なる獣人………といった所かしら。

─────答えよ、神羅。

その心の内に持つ何にも基づかない単なる汝の「直感」において………その秩序の光はどちらの方か。

 

 

 

─────言うまでもない、答えは「紙一重」だ。

ゆーちゃんにも解るようにこう言ったら良いかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────光のないところに影はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

東方編史帖〜残党の朽墓標

 

死に損ないの矜持

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

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