東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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軍人突入(笑)

 

「うわっ、マジか。我ながらやってみると案外上手く行くもんなんだな」

 

俺は机の上に置いた刀を見てついつい呟いてしまった。

家の裏に捨ててあった鉄屑を溶かしてイチから何か作ってみようと思ったので、それで刃物が欲しいなと思って造ってみたら、なんと完成してしまった。

これを家の壁に飾っておこう。刀というのは呪いを吸収する触媒だからね。飾っておいたら家に住み着く悪霊が勝手に吸収されるってわけ。

これもこれで縁起物だ。

 

「あ、刃がないじゃんこれ」

 

模造刀というヤツか?鉄を溶かすのに夢中で刃を研ぐの完全に忘れてた。

これじゃあ、ただの鉄の棒じゃないか。

鞘や石突きをあてがうのも結構苦労したし、鍔を造るのも大変だったから、刃を研ぐ作業を完全に放棄してしまった。

あー、やっちゃった。まぁ、いいか。俺は武人ではないから本物の刀なんて使うことないし。

 

 

 

「────オオバの兄ちゃん!!」

 

すると、大急ぎで寺子屋の子供が駆け込んできた。

一名様ご来店~。

 

「やぁ、何か物要りかな」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、そうじゃないんだ…………!」

 

「ま、まぁ、まずは落ち着きなさい。どうしたんだい、急にそんなに走ってきて。店は昼ならいつでも開いてるよ」

 

「そうじゃないんだ、慧音先生が…………!」

 

そう言うと、子供は必要な事だけを息絶え絶えに、大急ぎで語った。

 

「何だって…………?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、オオバの兄ちゃん、どうしたらいいんだよ?」

 

「ちょ、先生どこに居るの?」

 

「今は病院のほうで休んでいるけど…………」

 

「わ、わかった!君は休んでから他の皆と一緒に居なさい、病院へは俺が行くから!」

 

俺は大声で言いながら、身支度もせずに一直線に病院を目指して大急ぎで家を出た。

くそ、通信方法が何かしらあれば妹紅にも連絡出来るんだけど……………

まぁ、風来坊の妹紅なら、愛人の事なんてあっという間に嗅ぎ付けてるか。

 

「くそっ、何があったんだ…………!!」

 

俺は店の戸締まりのことすらド忘れして、里にある病院へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うはぁ、はぁ、疲れた…………」

 

「よう、遅い到着だったな」

 

病室に着いたらやっぱり妹紅が冷めた顔で俺を出迎えてきた。落ち着いている様子を見るに、かなり前からここに居るんだろう。

 

「ちょっと妹紅、竹林は里から遠い筈だろ、なんで俺より先に着いているんだ、何分前から居る?」

 

「当たり前だよ、お前なんかよりも、私のほうが慧音のことをなんでも知っているからな。いつどこに居ようと、慧音の身に起きたことは自分に起きたことのように分かってしまうんだ」

 

「はいはい。てぇてぇなぁ、てぇてぇなぁ。百合アピールはそこまでにして、何があったのか教えてくれよ」

 

「てぇてぇ?百合アピール?なんだ、何かの呪文か?いや、方言?」

 

「質問を質問で返さないでくれ、てゆーかそんなの関係ないでしょうが」

 

あんたらの恋愛事情なんかどうでもいいからさっさと結婚しろ、って言おうとしたけどそういえばこの国じゃ同性婚は難しいんだったな。閻魔様に乞い願えばもしかしたら許してくれるかもだけど。

 

「そうだ、本題に戻ろうか。どうやら、授業中に倒れたそうなんだ。命に別状はないし、医師の診断でも大したことはないらしいけど。過労かストレスのどちらかだってさ」

 

「そっか」

 

命に別状がなかったというだけでとりあえずはよかった。

 

「けれど、慧音が急に意識を失うなんて、そんなことは今までなかったんだけど」

 

「そうなんだ?」

 

「あぁ、こんなこと初めてだ。いよいよ今まで無理したぶんのツケが回ってきたのかな」

 

「─────寺子屋を開いたことで、負担が増えたのかな」

 

これまでにない、慧音さんに起きた大きな変化は寺子屋を開いたことと、俺に会ったこと。

負担としては前者のほうが大きいに決まっている。きっと、教師として生きるにあたって、新しい環境に耐えられなくなったのかもしれない。

そうだ、誰だって、初めてのことはすごく怖い。まだよくわからない、知らないことを、未知へと脚を踏み込むことは、物凄く勇気の要ることだ。

できるかわからないから。失敗したらどうなるのかわからないから。失敗したら、周りが許してくれるのかわからないから。そして、それを相談する相手がまだいないから。

分からないことを分かち合う相手が居ないのなら、それを抱え込むのは本人一人だけの責任。一人でずっと抱え込んで、とにかく 考えてみるしかない。そうしていたら、余計に苦しくなってくる。自分の無力さが、なんとなく解ってしまうから。それが怖いから、もう考えることもしない。

俺も似たようなものだ。物事を考えてしまうと、知りたくないようなこと、知らないほうがよかったことを知ってしまうのが嫌だから。知ってしまった知識は身体に刻まれて、すんなり忘れることもできれば、忘れられない(きず)になることもある。

俺は、忘れるより前に、知りたくない。

だから俺は、何も考えない。気になることがあっても、深く考えたくない。

そうして、思ってやることを放棄してしまうから、俺はこうやって危なっかしい目にばかり遭う。

妹紅、あるいは俺なら、慧音さんの悩みは聞いてやれたのかもしれない。

友達にだから話せることもあれば、友達だから話せないこともある。

もしかしたら、妹紅には話せなくて、俺には話せたような悩みがあったかもしれない。

それに寄り添ってやれなかった後に俺はこうやっていつも後悔するんだ。「あの時もっとこうしてやれれば」って。

慧音さんの事はよく解らないけど。俺には、解るところもある。同じワーハクタクとして、理解できる部分も多かった。なら、少しでも悩みを聞いてやれる時間でもあればよかった。

でも、彼女は楽しそうにしていたから、気付けなかったんだ。

どんなに辛くても、彼女は嘘をついて笑うんだ。どんなに泣いていても、仮面を被って笑ったフリをして場を和ませているんだ。自分だけは、ずっと一人で辛かったのに。

 

「──────いや、それは違う」

 

「──────え?」

 

「──────私は、寺子屋を開いたことに、後悔なんてしていないよ」

 

ムクリ、と眠っていた慧音さんが布団から起き上がる。

 

「──────慧音ぇ!」

 

真っ先に妹紅が抱きつく。

あー、写真か絵に収めたいなぁ。てぇてぇなぁ、てぇてぇなぁ。

 

「いでででで……………痛い痛い、強すぎだ妹紅」

 

「だって私、すっごく心配したんだからな!」

 

妹紅の顔は慧音さんのほうを向いているからわからないが、声には涙のような掠れが混じっている。

 

「─────おはよう。慧音さん、目覚めは大丈夫?」

 

「問題ない。たぶん、少しばかり…………疲れていたんだろうな。自分でも反省すべきだ。無理をした後はロクな目に遭わない」

 

「そうだぞ、慧音は無理しすぎなんだよ、きっちり定期的に休んでくれ」

 

「ふふっ、そうだな。あぁ、授業に復帰しなければ。子供たちが待っているだろう」

 

「馬鹿じゃないのか。今日は休めよ。倒れた直後に労働なんて、どんな環境で育ってきたんだ」

 

「妹紅の言う通りだ、無理は良くないよ。別に、数字を教えるだけなら俺でもできるし」

 

「いや、それは…………」

 

ふむ、なるほど。寺子屋教師のアシスタントか。これは盲点だった、これなら俺でもできそうだ。

 

「そうだ、妹紅も一緒に来てよ。二人で子供たちに色々教えよう。俺、武道と算学なら教えられるよ」

 

「うん、慧音のためならやってあげてもいいよ。私が教えてやれることなんて、少ないけどね」

 

俺と妹紅が盛り上がっていくものだから、慧音さんも口を挟んできた。

 

「妹紅は詩を詠んだりできないか?」

 

「え?」

 

「いやほら、そういう時代に産まれているんだから、俳句や川柳のひとつやふたつ、詠んだりできるだろう」

 

「はぁっ!?」

 

「おー、古典の先生か。いいね、妹紅がモンペ姿で詩を雰囲気出しながら詠む…………待って!滅茶苦茶面白そうじゃん!!」

 

その時の姿を想像すると笑いが止まらない。

 

「あー!馬鹿にしやがって!お前表出ろ!コテンパンにしてやるから!!」

 

「おいおい、お前らが弾幕勝負するなら里から出たところでやってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────お楽しみの所、失礼致す!」

 

「わわっ!?」

 

甲高い声と共に、背後から誰かがやってきた。

 

「問おう!真なる統率者とは何か!」

 

「なんだお前は!」

 

「問おう!(なんじ)らに正義は有るか!背負う物があるか!」

 

それは、ベージュの軍服に身を包んだ、軍人のような見た目をした少女。

腰から吊るしたサーベル、銃刀法違反じゃないのか。

なんで上着そんなに分厚いのに(スカート)はそんなに短いの。

なんでスカートそんなに短いのにブーツはカッコいい編み上げなの。あと、君は誰。

質問が多すぎて何から訊けばいいかわからない。

 

 

「此処に名乗ろう、私は灼彗袁(チョウスイイェン)!お館様の命により、汝ら3名を直ちに拘束する!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「その身に問おう!守るべき者のために、命を賭ける覚悟が、汝らにはあるか!」

 

何言ってるんだこの人は。

 

「ない!!」

 

「ならば──────死ねぇい!!」

 

「イミわかんねぇぇぇ!!」

 

「よくわかんねぇこと言ってんじゃねぇ!」

 

妹紅が呆れてモンペの中から取り出した竹筒を勢いよく投げつけた。

 

「グホォォォォォォォォォ!!!!!」

 

頬に直撃すると同時に、灼と名乗った女は窓の外へとふっとばされた。

 

「───────────」

 

なに……………今の………………

 

「道化の戯れ言に付き合ってる場合じゃないからな、手っ取り早くぶっとばしてやった」

 

「う、うん」

 

「そう、だな」





お館様

和服を着た、大柄にして筋肉質な謎の男。
里から離れた山奥にある武家屋敷のような館で仲間たちと暮らしている。
里で泥棒を働いた連中を従えていたことから、里の平和を脅かす獣人の山賊、その主犯格、あるいは総裁にあたる人物と思われる。
ふんぞり返って仲間に命令するだけの小者に見えて、実際は本人自身も弓の名手であり腕っぷしだけは確かで、山賊を率いるだけの実力があることがわかる。
ぶっきらぼうな物言いと、暴力的な思想を持つ、絵に描いたような危険人物であることだけはわかっているがその正体はわかっていない。種族も、能力も、何もかもが不明。
酒、女、金、暴力、権力。それらが全てと言わんばかりの在り方は誰もが思い描く、「ワル」という存在の権化とも言えるだろう。
多くの罪人や悪人だけでなく、どこから招いたのか一部の能力者も従えており、ここから頻繁に、間接的に慧音や青葉や妹紅の邪魔をすることになる。
一体、彼らの目的は何なのだろうか。





椰子飼 梓(やしがい あずさ)

お館様に従う能力者の一人。
現時点での種族は不明だが、魔法使いであることがわかっている。とりわけ「人形」を駆使した術に長けており、いわゆる人形師の一人である。
─■─■─能■は「■■を■い■す程■■能力」。
■の名■通り、対象を■■殺■ことがで■■だけの単純■解な■力。
能力■使用■■際は、手に■■た金槌と藁人形を利■する。
短い茶髪に赤い振り袖が特徴の、日本人形を思わせるようなありふれた少女。

これは開発秘話的な余談だが、「人形師」という事で、どこかの魔法使いとの対比が成されている気がする……………が、元ネタは不明。

─────わらにんぎょうに、わらにんぎょうに。わらにんぎょうに~ごっすんごっすんごすんくぎ~♪

えーと……………これは、何かの呪文だろうか?
まぁ、とにかく危険人物として登場する。
お館様の命令により、偵察用の人形をけしかけた魔法使いを排除するために動く。





灼彗袁(チョウ・スイイェン)

いかにも軍人といった風体の少女。
お館様が率いる能力者のうちの一人と推測される。種族不明。
腰から銃やらサーベルやらを吊るしている、物騒すぎる見た目である。
能力は「他■の■を■■■る程■■■力」。
名■だけ聞■■■、イミがま■で■らない能■■■だが、とにかく、その性質■性格にも顕著に現れ■■る。具体的■、■■たいぜん■■何が出来■能■■のかはまっ■■もって不■。

文字通りの狂人であり、基本的に意志疎通は不可能。なんか空気的にそれらしいことを声高らかに言うが、結局大したことは言っていない。こちらが向こうの意思を解するにはかなりの時間を要するが、ある程度の信念というか、正義というか。それらしいものを感じないこともない。
ネタ枠に感じれなくもないが、れっきとしたマトモキャラです────いや、ホントですよ?
本作は二次創作ではあるからキャラの性格とか人物像定めるのは作者自由なんだけど、本作含めて東方って名前が中華風のキャラ、ロクなヤツいないよね。
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