東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅 作:マジカル赤褐色
「なんだその企画は、急すぎないか!?」
「問題、」
「人の話を聞け!」
「ここに書かれている東方キャラを当ててくれ!」
「くっ、シルエットが塗りつぶされているな。これは難しい…………」
「慧音、塗り潰されてないシルエットクイズってなに?」
「背が高いような気がするな。この頭の出っ張り、リボンが付いているのか?髪は短め。脚は…………スカートでも履いているのか?ついでにこの、背中から生えている角張った羽のようなもの…………」
「さぁ、お前たちはわかったかな?」
「なんとなくわかったような気がするな。何度もこの妖精に頭突きをした記憶がある…………」
「正解は本編の後で!」
「いや、焦らしてくるな!!」
「アリス~?」
おかしいな、この辺にいる筈なんだけど。
大声でアリスの名前を呼ぶ。
「アオハさ~ん」
草の向こうからメディスンが戻ってきた。
「どうだった?」
メディスンはふるふると首を横に振る。
水浴びしているなら、そこの川にいる筈なんだけど。
「いないわ。アリス…………どこ行ったんだろう。まさかアオハさん、私を騙し…………」
「それはない!信じてくれよ」
「冗談よ、冗談。けど、困ったね」
「どうしようかな。とりあえず、近くに手がかりがないか探そうか。きっとそう遠くへは行ってないからさ」
「うん」
そうして、俺たちは川の周辺を歩き回る。
アリスの痕跡が何かしら落ちていないかなと近くをうろうろ。
しかし、目立った手がかりは落ちていなかった。
「何でかなぁ……………」
アリスが何も言わずに消えるとは思えない。拐われたのなら話は別だけど。
でも、アリスほどの実力者が拐われるかな?
「なぁ、メディスン、」
「ん?」
「メディスンの毒ってさ、物質の三態も自由自在なのかい?もし固体の毒が使えるのなら嬉しいんだけど」
「ん~?粉とかそういうことかしら?」
「そうそう。植物や人体に害がない、粉状の毒が使えるなら、このへんに撒き散らしてほしいんだ」
「お安いご用よ!」
そう言って、メディスンはそこらじゅうに毒の煙を撒き散らす。煙状だが、砂埃も煙状だから、おそらく小さな粉を撒き散らしたのだろう。
しかし、なんていう親切設計だ。紫色だよ、毒が。こんなに毒っぽい毒珍しいよ。
「でも、こんなことしてどうするの?」
「アリスなら、もし思いがけなく万が一にもこの場を離れざるを得ない状況になったら、何かしらの【見えるけど見えない】痕跡を残しているはずだ」
しばらくして煙が止むと、辺りに毒が残ったような色はない。
紫色の煙がなくなって透明感溢れる景色に戻る。
その景色の中に──────
「あー!!」
メディスンが【それ】を指差す。
「よし、予想通りだ!」
自分の推理力恐るべしと俺は自分でガッツポーズをする。
見てみろ、【紫色の糸】が見えるぞ!
「アリスはこの辺りに人形を繰る際に使う魔法の糸を目印に、自分が何処に行ったのか教えてくれていたんだよ!」
1本の糸が向こうに続いている。
「なるほど、だから私に粉を撒き散らして、アリスの見えない魔法の糸を見えるようにさせたのね。すごいわ!アオハさんって名探偵なのね!」
「ふふっ、ありがとう。さぁ、喜んでいる場合じゃあない。この糸を目印に、アリスに追い付こう!」
俺たちは粉を撒きながら、1本の糸を頼りに、アリスを目指して走っていく。
糸は川の上流の方に向かって延びている。
アリスの自宅とは反対方向、つまり森のさらにさらに奥深くへと続いている。
「しかし、一体何があったんだろうなぁ」
「心配ね……………」
「ちょっ、貴方たち…………いい加減に…………離しなさい…………!!」
両腕を後ろで縛られたまま、綱で繋がれたアリスは、複数名の男たちに無理矢理ついていかされる。
「だーめ。あんなところで無防備に水浴びなんかしている嬢ちゃんが悪いんだよ」
いかにも悪人といった空気の男たちは集団でアリスを連れ去る。
どこへ行くのかは全くもって不明だが。
男たちは何者なのかもわからないが、偶然、水浴びしていたアリスを見かけたので、何を思ったのか強引に捕まえ、縄で縛って連れ去っていった。
そして今に至る。
(我ながらなんてザマ…………運良く青葉が助けに来てくれたらなんて弁明したら良いのよ…………!!)
腕が縛られていれば、人形魔法も使えない。アリスの実力は確かなものだが、腕力はそこらへんの細身の少女。ジャムの蓋を開けれるのかも怪しい。まして男6名相手に抵抗する能力なんてこれっぽっちもない。
だから、大人しくついていくしかないのだった。
「貴方たち、何考えてるの!こんなことして、良いと思っているの!」
それでもアリスは挫けはしない。
引き続き、強気な態度で男たちを睨み付ける。
「さぁ?何が始まるかはお楽しみだ。ここ抜けた先に俺たちの小屋があるからな、とりあえず、そこに行くとしようぜ」
言っている側から、すぐ目の前に小さな襤褸小屋が見えた。
そこには、同じように武器を持った男たちが何人も立ち尽くしている。
「………………っ、絶対に許さないから」
「おー、怖い怖い。助けが欲しかったら大声で呼ぶしかないぜ?まぁ、そうは言ってもここには誰もいないんだろうなぁ」
「いいえ、近くに本当に怒らせたらまずい子がいるわ。そいつに襲われたくなかったら、やめておきなさい。今も、きっと貴方たちの様子をうかがっているわ」
「冗談は止してくれよ。こっちは武装した男が八人もいるんだぜ?小屋に着きゃあ、仲間がもっと沢山いる。誰も助けに来ねぇし、俺たち相手に、誰も敵いはしねぇよ」
「そうだぜ?お
「だいたい、俺らみたいなのが魔法使いを素手で捕まえられるのに、他に何が出て来ようが関係ねぇよなぁ!」
そうだそうだ、と男たちは全員で大笑いしながらゆっくりと先を行く。
アリスはその隙を逃さなかった。
「──────ふっ!」
アリスから伸びている縄をリードのように掴んでいた男が股間にアリスのキックを受けつ倒れる。
「うぐぉぉぉぉぉぉ!!!」
股間を抑えてうずくまる男一人。
幸運にも最後尾だったので、誰も見ていなかった。アリスは一目散に縛られたまま自由な脚で逃走を図る。
「おい、どうしたんだよぉ、急に狂ったみてぇにそんな大声立てて────」
仲間たちが振り返る。
「あっ!!逃げやがった!」
「待ちやがれぇ!!」
男たちが一斉に追いかけてくる。
アリスはそれに気付いて速度を上げる。
足音に気付かれないよう、ゆっくり走っていたが、バレたのなら隠すこともない。
全速力で走る。
「はぁ─────はぁ、はぁ!!」
しかし、魔法使いといえどもさすがに少女。数十メートルのアドバンテージがあっても、足はさほど速くないし、スタミナの持続もない。さらに、腕が縛られているので走りづらい。
130メートルほど走ったところで、石に躓いて転んでしまった。
「くっ………………」
手が使えないから立ち上がりづらい。
地面で必死にゴロゴロと転がっているうちに、男たちが追い付いてきてしまった。
「ふぅ、結構走ったな」
「女のくせに逃げ足だけは速いんだな、」
「やってくれるじゃねぇか、あぁ?」
「覚悟しなよ、嬢ちゃん?」
男たちが動けないアリスに手を伸ばしてくる。
「いやっ、離して…………!!!」
腕を縛るロープではなく、直接腕を強引に掴まれ、乱暴に元の場所へと連れていかれる。
「これは、お仕置きが必要なみてぇだなぁ。どっちが主導権握っているのか、今一度認識し直させてやるよ」
転んだ拍子に脚に怪我をした上に、男たちの警戒が追加され、アリスが逃走するビジョンは完全になくなってしまった。
だが、男たちは気付かなかった。
アリスがここに来るまで、見えない魔法の糸を張っていたことに。
そして、詰めが甘すぎたのか、アリスに必死にだったのか。彼らは気付いていない─────
アリスが地面に落としていった、上海人形の姿に。
「ふぅ、かなり先まで来たな。ホントにこっちなのかな」
糸が切れちゃったから、もうどこに進めばいいのかわからない。
「アリスの魔法の糸は長さの概念がいちおうあって、長さは無限じゃないの」
そうなのか…………なにか、新しい手がかりは…………
「あっ!アオハさ~ん!」
「どうしたの?」
「これ!アリスの人形よ!!」
本当だ!地面に人形が落ちていた。
アリスが梓と戦う時に使っていた、盾を構えていた人形のうちの一体だ!
間違いない、この近くにいる。
「布にまだ温もりがあるから、きっとついさっき落としたみたい」
「そうか、ようやく尻尾を掴んだぞ!」
俺たちは一目散にこの先めがけて走り出す。
いいぞ、これなら見つけられそうだ!
「アリス~!!」
大声でアリスの名前を呼びながら走るメディスン。
「ストップ、メディスン!」
それをすんでの所で止める。
「どうしたのアオハさん?」
「あそこ、男たちがいるよ」
男たちが八人ほど、アリスの周囲を取り囲むように並んで歩いている。
アリスは縄で縛られながら、強引に引っ張られている。
まぁ、アレではほぼ引きずるといった感じだが。
「なんで!?どういうこと!?」
「きっと拐われたんだよ。アリスは美人だからね。変なヤツに襲われるのも納得だ」
「なんで美人だと変な人に襲われるの?」
うーん、純粋な子に教えることじゃあないんだよの。
「まぁ、その…………美人の人は、なんだろう。宝物みたいなものだから、生きたまま特別な土で固めて人形や像にしてしまうんだってさ」
「ひぇぇ……………」
メディスンがブルブル振るえている。
要らん嘘を教えてしまったな……………まぁ、その、大人の話するよりかは良い。
そのまま無垢な子であれ、メディスンよ……………
「じゃあ、男の人たちの人形にされる前に助けないと!」
うーん、教えといてだけど、なんか人形もまずい表現な気がしてきた…………
「だけど、下手に刺激してしまえばアリスが危ない。上手いこと戦いづらい状況を作れれば良いんだけど…………」
「どうしよう……………名探偵アオハさん、なんとかしてよ~」
やめてやめてやめて!!毒怖いからもう抱きついてこないで!!
「そうは言われてもねぇ、良い作戦がないんだよ。メディスンを無事にできて、かつアリスを安全に救出する方法がないんだよ。メディスンの毒にアリスが巻き込まれたら一大事だし、俺が一人ずつ片付けたら、アリスを人質にでもされたらおしまいだし」
困ったなぁ。最低でも、誰かが腹をくくらないとうまく行かない。
「なんでもいいわよ!私は多少危ない目にあってでも、アリスを救うわ!」
そ、そんな決意のある瞳で言われたら…………
「……………そんなに言うなら、1個だけ手があるけど…………でも、運悪いとメディスンが危ないよ」
「でも、アリスは絶対に助けられるんでしょう?」
「まぁ、それは確実」
「さすが、アオハさん!名探偵だけじゃなくて、策士でもあるのね!」
「あぁ…………そうかい…………じゃあ、言うぞ、今回の作戦を」
「は~い!スーさんもちゃんとアオハさんのお話聞きましょうね!」
──────まぁ、なんだ。
始まりはなんか人形のためにしか動かなさそうだったけど、いざ仲間にしてみればこんなに熱心に仲間を守ってくれるんだって。
メディスンって、ホントにいい子なんだな。
まるで……………人間の子供と話しているみたいだった。
「藤原妹紅と上白沢慧音のたのしいたのしいシルエットクイズ、解凍編!」
「妹紅、解答の字が違うぞ」
「正解はチルノー!」
「でしょうねー!!」
「……………を肩車している私(幻想万華鏡より)だ!!」
「いや、分かるわけないだろ────!!」
To Be Continued…………