東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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捜索依頼

 

「俺に捜索願いだって?」

 

青葉が一通り飲み終わったら屋根裏に戻り、また寝っ転がったので、眠られる前にこの話を持ち出すことにした。

 

「あぁ。実は以前、寺子屋の子供が一人行方不明になった事があったんだ」

 

「──────それ、もっと先に言いなよ…………」

 

「仕方ないんだ、二月も前の話なんだからな」

 

「え?二ヶ月前?」

 

青葉は目を丸くする。

 

「ど、どうした?」

 

「……………いや、なんでもない。勘違いだと思う」

 

青葉は何か言いたそうにしていたが諦めてしまった。向こうが下がってしまえばこっちも掘り下げられない。

気になるが忘れるとしよう。

 

「うちは道具屋だからなぁ。人捜しは受け付けてないよ」

 

「そこを何とか…………!」

 

「人捜しなら他をあたってくれ。うちには子供捜しなんて無理だよ」

 

 

 

 

青葉はきっぱりと言い捨ててしまった。

 

 

 

 

 

「──────でもその捜索が【客としての依頼】じゃなくて、【友達としてのお願い】なんだったら引き受けるよ。子供の行方不明事件なんだ、俺だって心配だし、一刻も早く解決しないと」

 

そこをとんち利かせて別の言い回しで承諾してくれるのがこの男であった。

仕事や責務、規律にはめっぽう厳しいが、根っこはこの通り、ただのお人好しなのだ。

 

「すまないな、また貸しができてしまった」

 

「大丈夫、報酬はゴハンで先払いして貰ってある。あー、でもそうだな、明日の朝ごはんもつけてくれるなら、やる気出しちゃうぞ。今日の夕食だけでお帰りになられたらイヤイヤ捜索のお手伝いをするかも」

 

訂正、貸しができたら本当に交換条件を平気で突きつけてくる。これでも商人、縁起と等価交換の法則は絶対のようだ。

しかも特別、交換対象が難しいお願いじゃないのが余計にタチ悪い。断りづらいようなお願いが多いんだよな彼。断るにも理由が不十分すぎる。

とにかく彼は口が上手すぎる、いっそ道具屋辞めてセールスマンにでもなったらどうだ。

 

「はぁ…………そうやって人の弱っている状態につけこんでくるのはやめたほうがいいぞ…………そういう所が狡猾だと言っているんだ」

 

狡賢(ずるがしこ)いなんて、言われたことないや」

 

青葉は苦笑する。

 

 

 

 

 

「おーい、何の話しているんだー?」

 

襖をずらして、風呂から上がってきた妹紅が入ってきた。

 

「え!?誰ッ!?」

 

その姿、青葉が驚くのも無理はない。

 

「あ?私だよ、私」

 

「嘘だぁ、そんな系統じゃないでしょ妹紅って」

 

風呂上がりだからまだ髪が乾かない。そういうことで妹紅は普段多数のリボンで結っている長い髪を降ろしていた。床スレスレまで伸びた長い、そして多い銀髪が揺れている。

 

「てか、めちゃくちゃお湯垂れてるじゃん!?畳が駄目になるからちゃんと水分取ってから来てよ!」

 

「こんな長い髪がすぐに乾くと思うか?お前も長いけどここまででは無いから、分からないだろ」

 

「炎とかで乾くでしょ!?」

 

「それはいいけど、燃えるぞここ」

 

「使い勝手悪ッ!!!もうこれやるから畳濡らすのだけはやめて!────それで?慧音さん、捜索対象の子供は?なんの情報もないなら、人捜し屋さんでもお手上げだからね」

 

青葉は大量のタオルを妹紅に手渡して半ば強引に妹紅を屋根裏部屋から追い出した。

 

「あ、あぁ。捜索して欲しい子は、「椰子飼梓」という女の子でな、」

 

「ふむふむ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「捜索して欲しい子は「椰子飼梓」という女の子でな、」

 

慧音さんはターゲットの子供の名前を教えてくれた。

椰子飼梓……………?え?椰子飼梓って…………椰子飼梓のこと?

俺、捜すもなにも、会って話したぞ。戦いにもなったぞ。え?あの娘、行方不明扱いだったの?

 

「ふむふむ…………」

 

口を挟みたくなったが、人の話に不用意に口出しするのはよくない。反応したいのをなんとか抑えて、俺は知らないふりをすることにした。

 

「その娘が行方不明になったことについて、心当たりはある?」

 

だがこれはチャンスだ。梓に関する情報をたくさん手に入れることができる。慧音さんの教え子だったのか、梓は。

 

「それがよく分からなくてな…………彼女は確かに他の子供たちとは異なる雰囲気を感じてはいたが…………」

 

まぁ、確かにアレが慧音さんの教え子くらいの歳の子供とは思えない。

態度のでかさとあの威圧感は全然大人と認識されても違和感はない。

 

「放浪癖があったりした?」

 

「いや、そんなことはない。行方不明になったのは授業が終わった放課後、夕方の話だった」

 

うーん、誘拐…………ではないな。

誘拐されているのなら、あんな風に人を攻撃したりしないはずだ。

 

「他になんかある?なんでもいい、印象とか感想とかでもいい」

 

「──────言われても…………私だって流石に生徒一人一人の細かい個人情報まではなんとも…………」

 

慧音さんはしばらく考えた後、一つ言い始めた。

 

「そうだ。これは単なる「そう思える」ということなんだが、」

 

「なになに?」

 

「なんだか、常に落ち着かない子だった。いつも何かを気にしているようだった。いや、恐れているのか?授業中も、なんにもない場所をずっと見つめていたりな。元々感情が薄い、暗い子だったから、どういう気持ちだったのかはわからないが」

 

「───────わかったよ。その条件ならなんとかなりそうだ」

 

常に何かを恐れている。これは大きな手がかりだ。梓の正体に迫るために、必要な要素かもしれない。

 

「ちなみに父親は龍臣さんという少し肥った人なんだが、ちょっと困った人でな。さっきも絡まれてひどい目に遭った」

 

「たつおみ…………?」

 

───────え?

梓の父親って…………雲月じゃないのか?

雲月は決して肥満体ではない。むしろ細身の紳士だ。

どうやら、慧音さんの知る梓の家庭と俺が知る梓の家庭は食い違いがあるみたいだ。

 

「龍臣って人はどこにいるの?」

 

「いや、わからない。さっき寺子屋の門前で会ったのだが、それっきり」

 

「寺子屋に親御さんか。授業参観?」

 

「あぁ、そうだ」

 

雲月は授業参観があるって知っていたのかな。

授業参観よりも俺への報復を優先したのか、それとも授業参観があることを知らなかったのか。

だが、少なくともその龍臣という人は授業参観の存在を知っているようだ。

せめて、どっちが本物の父親なのかが分かれば良いんだけど…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、とりあえず頑張って探してみるよ」

 

青葉はうんと頷いてくれた。

 

「ありがとう、本当に助かる」

 

「何でお礼言うの?友達の手伝いはやって当然のものだよ」

 

どこまでお人好しなんだこの男は…………

 

「だが、無茶はするんじゃないぞ。その身体が戻るまで、下手されるとこっちが困るからな」

 

「大丈夫。動けるなら怪我じゃないよ」

 

お前の認識だと指が飛ぶまでは怪我じゃなさそうだな。

 

「そういえば、お前と顔見知りの商人からの伝言もあったぞ。無理するなよ、って。お前、痩せ我慢がひどいから意外と周りを困らせているだろう。私も正直お前の無茶っぷりは手におえない」

 

「俺と知り合いの商人?人間の里にそういうのいたかな。こーりんぐらい?」

 

「上半身半裸で羽織だけ羽織った野武士みたいな男でな。作品を私の寺子屋に置いたとかなんとか」

 

「あぁ~、アレか。そうそう、この前授業代わってあげたときに子供たちと壺の話になってね。そういえば寺子屋には壺がないなって思って「鳥部の屋」っていう陶工に頼んだんだ」

 

やっぱりあれは青葉からの注文だったのか。

というか、あの男もいきなり青葉の名前を挙げるあたり、見当はついていたのだろう。

 

「あのだな、そこまで来ると余計なお世話になるぞ」

 

「まぁまぁ。大きいもんじゃなし、あっても困らないでしょう。子供たちが喜ぶんなら寺子屋としては注文通りってわけだし」

 

「いつの間にかお前も寺子屋に力を貸すようになってくれたな…………」

 

「そりゃあね。俺も子供は好きだから」

 

そう言うと、青葉は脳天を弓で撃ち抜かれたかのようにばたりと仰向けに倒れてしまった。

 

「ちょ、青葉!?大丈夫か!?」

 

「うん、眠いから寝る。慧音さんも早く寝たほうが良いよ~。この辺、虫がうるさいから。慈しむぶんには最高だけど、静かに寝たい夜には最悪だからね。二人の布団なら二階の部屋に敷いてあるから」

 

そう言うと、青葉は口を開かなくなってしまった。

掛布団が決まったペースで上下しているのを見るに、熟睡してしまったようだ。

眠りへの入りが早いんだな。

仕事してたりしたら寝落ちして朝とかになってそうだ。

 

「慧音~!!なんか厨房の瓶が割れてるんだけど、これ何!?」

 

下の方から妹紅の声が聞こえてきた。

 

「───────え?」

 

「───────これこれ、この瓶」

 

妹紅がバラバラになった青ガラスの瓶を持ってきた。

 

「妹紅……………」

 

「ちがうちがう!私じゃない!厨房に入って色々探していたら見つけたんだよ」

 

「───────────」

 

そういえば着替える時、お尻で何か倒してしまったような……………

青葉はまだくぅくぅと眠っている。

どうしよう、今すぐ謝るべきか。

いや、起こしてしまうのは申し訳ないか。

 

 

 

 

 

 

 

「─────明日、朝早く起きて謝ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、いつも通りに早起きした私が、ぐーぐー寝息を立てている妹紅を見ながら部屋を出たとき。

目の前に現れたのは、私よりも早く起きた青葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両手に、瓶の破片を持ちながら、「昨日の話なんだけど、どういうことか説明してくれる?」と言って、なんとも言えない笑顔の圧で私を見てきていた。

 

 

 

 

 

起きるのが面倒だっただけで、話は聞いていたのかこの男……………





神門 青葉(みかど あおは)―ハクタク


月光や日光を浴びてハクタクの姿に変身した青葉。
普段は藍色の着物に三度笠。碧髪で紅瞳の長髪男子。
伸びた髪は首元で纏められ、纏められたテールが腰まで伸びているという特徴的なシルエット。
変身時、頭からは太い角が生え、碧色の髪は若干翠を帯びる。なので変身における色合いの変化の仕方は慧音に酷似している。どちらかというと、薄い色の慧音というか。
真っ青と空色、深緑と翡翠色、若干の対比色を持つ関係性である。
ただ結局、瞳は両者とも真っ赤に染まるという。
性格にも若干の変化が見られ、穏やかそうな口調から一転、少しだけ勢いのある声に変わる。
顔立ち的にはこっちのほうがしっくりくるようで、それによって美男子レベルがさらに上がるとか慧音が言ってた。
見た目と性格だけでなく、純粋な戦闘能力も倍化し、主に筋力や耐久力が大幅に増強される。
その角で頭突きされようものなら並の相手はイチコロといえるだろう。
獣は獣でも、青葉は青葉のままなので、慧音のことはやはり気に入っている。
普段から「慧音さん」と呼ぶの彼女のことを慧音と呼び捨てにし、逆に普段呼び捨てにしている妹紅を「妹紅さん」と呼んでいる。
可愛い顔してとんでもなくズルい甘え方をしてくる後輩属性の人間青葉に対してこちらは支配的な魅力を持つ黒貴公子系キャラ。人によって好みが別れるが、作者的には戦闘シーンを書く時に優しさによる戸惑いのシーンとか考える必要がないハクタク青葉のほうがやりやすくて好き。
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