東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅 作:マジカル赤褐色
──────此ノ事ハ、幻想郷、今依リ約二十年程前ナリ。
■■月■■日。月日ノ詳細ハ不明ナリ。
幻想郷ノ山奥ニ■■ガ出没。
其ニ襲ワレ死シタ者一名。
其ノ名ハ、「
同時刻、行方不明者一名。
其ノ名ハ──────────不明。
《現在》
「さて、一介の妖怪ごときが派手にやってくれたじゃないか」
城の客室を思わせる広い和室に、一人の若い男が座っていた。彼は、鎖で縛られて空中に吊るされている女を見つめている。
「────────くっ、女を縛って吊るす貴方たちも、なかなかな度胸よ」
吊るされていた草色の髪の女、風見幽香は焦りも怒りも見せず、あくまで冷静に対応する。
「いやいや、俺はヤクザものというよりかは半グレもの寄りだから、女を縛る趣味はない。俺は欲望のまま生きているケダモノとは違う、この団体の中じゃあ、一番の理性家だと自負しているよ。だから、本来真っ向から切り殺してしまいそうだったところをわざわざ縛ったんだろう」
「しかし、私も鈍った物ね。まさか弾幕勝負の中で初見殺しに逃げられるわ、疲れていた所を突かれたとはいえただの獣人相手に不覚を取るなんて」
「弾幕か。そういえばお嬢も似たような事言ってたな。あいにく、俺ら男組は剣を振ることしか教わってないんだがな。女は子守り以外にも性別専門があったりするのか?」
「子守りは男でも出来るわよ」
「いや、それは野良の庭師が言うセリフじゃあないだろう。まぁ、妖怪ってのはそういうものか。妖怪と一部の能力者が弾幕を使うわけか。飛び道具主体の戦いっていうのはどうも、いけ好かないな」
幽香と同じ草色の髪の、飄々とした美声の男はわっかんないなぁ、と首を振る。
その手には、刀身が三尺ほどある長ドスが握られていた。
「その長ドスで私を相手にしたのは褒めてあげる。だけど、この状況に追い込んだら、後々大変なことになるのはわからないかしら。理性家さんにしては、どうにも抜けが多い」
嘲るように睨みながら、幽香は男を挑発してみせる。
「あんたのいう、後々の事態ってやつにならないように、この【家】の周囲に戦力の7割を置いているんだろう」
「それだけじゃ足りない。あれだけで7割なら全部割いても足りない。貴方ぐらいの大物が全員アレだったら十分だけど」
「あいにくだな。そういう絶対的な戦力はお嬢を除いて五人もいれば十分だ。多すぎるっていうのは考え物でね」
「くっ、」
「─────さて、あとはアリス・マーガトロイドを捕らえるだけ。お前はその交渉材料に使わせてもらう。それさえ終われば用済みだからな、その鎖も少しの辛抱だ。お前が暴れたりしない限り、俺が身の安全を保証してやろう」
「……………その人を捕らえて何がしたいの、貴方は」
幽香はアリスとは旧知の仲。
だが、今回ばかりはそれを黙っておくことにした。
「奴は殺すようにって上から命令されているんだ。どうも、偵察してきたみたいだからね。覗き見とはなかなか悪趣味だな、魔法使いって」
「でも、それだけじゃないでしょう」
「あぁ、そうだ。旦那から聞いたんだが、なんでも笠の男が居るんだとか」
「笠の男…………」
「そいつがどうもうちの邪魔を頻繁にしてくる所を見るに、梓の敵からの差し金にしか思えないんだってさ。何がしたいんだか。まさか慧音先生の夫かとも俺は踏んでいるけどな」
(あの人既婚者ではなかったと思うんだけど)
「良いよなぁ、慧音先生。ちらっと見たことがあるけどなかなかな別嬪さんだよ。ま、残念ながら俺の好みではないけどね」
絶対お前みたいな男は相手にされないだろう、と幽香は内心で舌を出しながら小馬鹿にする。
「もし笠の邪魔者が本当に慧音先生の夫だったなら、慧音先生まで手に入ってしまう。あの人には梓を行方不明にさせたという黒歴史がある。駒にするのはいとも簡単だ。里で一番信頼がある慧音先生なら、きっと幻想郷の歴史編纂者を特定できる、というか知っているだろう。必ずその編纂者の居所を暴いて、俺たちは手にする」
「編纂者?」
「何に使うのかは俺も知らない。ずっと上の連中がする話だ。なので、当面の目的は梓を餌に慧音先生をおびき寄せるぐら」
「失礼します、
男の名前は黄御という名前らしい。
「なんだ歓談中に、無粋だな」
「すみません、緊急の用事で…………」
「なるほどね、じゃあ一人で来なさい」
「いえ、そういうわけには……………」
「そういうわけには行かないのはこっちの方だ、ほら」
「──────────」
部屋に入ろうとした男は少し引いてしばらくすると、
一気にドカァン、と襖を蹴破って入ってきた。
「なれば情け無用、
「まったく、最悪のタイミングだな」
中に入ってきた複数名の男たちは全員が手に波打った刀を持っていた。
「大陸の
「─────黙れ!梓嬢のお抱えになるのは、我らの主だ!」
「まったく…………仲間うちの潰しあいは本当につまらないんだよな」
落ち着いた動作で黄御は手にした長ドスを鞘から引き抜くと、鞘を後ろに放り投げる。
三尺のよく研がれた長ドスがその刃を剥き出しにする時、彼の実力が解き放たれる。
「長ドスの
黄御は真っ向から走ってくる相手に対して迎撃体勢も取らずに自らゆっくり歩み寄っていく。
多人数相手に後退も恐れも知らない。余裕の表情で手先で長ドスを遊ばせながら近付いていく。
「せっかくの上着が汚れるのは、嫌なんだけどな」
そう言うと、肩から提げた羽織を剥いで、ブンッ、と勢いよく振り回した。
そして、羽織が真っ向からやってくる八卦刀たちの視界を邪魔する。
「うわ……………うぅ!?」
「なんだ、これはぁ!?」
「
被せた上着を剥ぎ取って自分に羽織直すと同時に、ドスを一振。
瞬間、
「ごゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぎ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「うぐぁぁぁぁぁぁぁッッッ」
飛びかかってきた三人が全員とも出血しながら倒れてしまった。
「────羽織をも剣術の一要素にするなんて離れ業をよく自分で発案したと思うだろう?自分でも褒めているんだ、これ」
「う、嘘だ……………」
「俺の衣沙門剣は羽織を自在に振り回して相手を翻弄しながら長ドスで斬る、刺すといった剣術だよ。初見じゃほぼ見破れないさ」
自分の剣を見せれたことに満足した黄御は長ドスの鞘を拾って納刀すると、自分で斬った刺客の後片付けもせずにまた座り込んでしまった。
美味しそうにちゃぶ台に置いた八ツ橋を美味しそうに食べている。
「血の臭いに吐き気がしそう。その状況で貴方はよくお菓子なんて食べれるのね」
「血の臭いなんて、俺にとっては自分の布団の匂いみたいなものだよ…………う~ん、美味しい♡」
八ツ橋狂はもはや食べるときのコンディションとかどうでもよかったらしい。
幽香はあきれて物も言わず、やれやれと呟きながらその光景をじっと眺めていた。
なにしろ、彼は幽香が吊るされている間ずっとこうしてお菓子ばっかり食べているからだった。
「ふぅ────────」
口から白い冷気を吐きながら、刀を携えた青年は歩を進める。
翠色の長い髪、頭から生えた長い角、そして尻尾が彼の種族を誇るように語っている。
その名もワーハクタク。瑞兆の聖獣ハクタクと人間の混血。
生まれついて「人間としての」神門青葉の中に眠る「ワーハクタクとしての」神門青葉。
この瞬間、能力は「文字を書き換える程度の能力」から「文字を書き遺す程度の能力」に変化する。
人間時に書き換えた文字を、ハクタク時に保存する。
自分以外の何者にも再度書き換えられるよう、恒久的に保持させる。
それを人は「残す」ではなく「遺す」と言う。
ワーハクタクの二面性は時に能力に顕れる例がある。
それはごく一部の才能と言われているが、「ワーハクタクである意味」を持つ血族は1つの器に2つの能力を宿す。
その2つは相反する能力を持ち、そのどちらもが両方に依存する。
真逆でありながら、なくてはならない性質。その矛盾が、如何にして顕れるかはその肉体によって異なる。
青葉の場合、それは「書き換えた文字を遺す」という行為に由来していた。
「──────
刀が白い光に包まれる。
刀の先が触れた瞬間に、魔法の森の地面が凍りつく。
秋時とはいえまだ晴天の真昼。その中で路面が一瞬に凍結するというこの超常現象に、我々は目を疑う事しかできない。
だが、その事実は存在している。
なぜなら、この我々の見ている「物語」という「文字の羅列」自体が彼の思うがまま。
この物語という歴史資料をまだ認知していない彼にはここに記されている事実を書き換えることはできない。
だが、それは紛れもない事実が今起きた事の証明に他ならない。
ほんとうに、この大地は彼の一閃の元に凍結したのだ。
いや、刀を振るってもいない。剣先が触れただけで辺り一帯の地面は銀の凍土へと変貌した。
砂色と草色の混じった自然の恵みを感じさせるこの母なる大地は今、ここへの如何なる生命の存在を否定する絶海の氷陸へと切り替わった。
だが、青葉の攻撃はまだ始まってもいない。
ワーハクタクとなった青葉が、自身の持つスペルカードを解放するまで、その攻撃は始まらない。
知っての通り、スペルカードルールにおいては必ず「宣言」が必要になる。
要は、技名を叫ぶまで技は発動しない。
青葉の八霖儚月流も、妹紅やアリス、その他少女のスペルカードもぜんぶ。
「──────
袈裟に振るわれた氷の刃が物凄い冷気を放ちながら、目の前にある全てを凍結させる。
火事があった?ならば逃げればいい。人の脚よりも火災のほうがゆったりとした災害である。だが、冷気は違う。一度この極寒が爆発したのならば周りにある全てが極点へと切り替わる。
そして、この現象もその常識の例外ではない。
当然ながら、実に解りやすい結末だが。
「うわっと!?」
青葉の振るった刀、その行く先とその奥に広がる空間は、緑の森からあっという間に一面の銀世界へと塗り変わった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
生まれて初めてみる現象にアリスが目を覆う。
冷気を纏った暴風が止んで視界が戻った時、戦いはもうとっくに終結していたのだった。
「──────────うそ」
アリスが驚くのも無茶はない。
なぜならば、青葉を取り囲んでいた獣人の山賊たちは、全員が氷の中に閉じ込められた状態で停止してしまっていたのだから。
「これが、オオバの本来の実力だよ。私はあいつと勝負した時、こういうのを何度も連続でやられたから紙一重で敵わなかった。そりゃあ、竹林を全部焼き払う覚悟なら勝てたかもしれないが、さすがにそれはまずいしな」
「あの能力、どれほど底がないの…………?」
「愚問だな。あいつの能力の及ぶ範囲は文字という文明の及ぶ範囲までだ。つまり─────」
妹紅は一息ついてから、改めて確信したように、こう言った。
「────────無限大、だな」
「これは…………驚きましたね」
「……………そんな驚いてないがな、お前」
「いいや。一瞬ほんとうに動きが止まっちゃいましたよ、パニックで。あと少し僕の焦りがなかったら、今頃僕も氷菓子でした」
「とはいえ────相手も手練れ、だな」
「そのようね…………」
伏黒少年の脚は確かにスペルカードの攻撃に巻き込まれて氷漬けになっていたが、腰から上は雪と氷の欠片をかぶっただけだった。
つまり、まだ彼だけは動けるのだ。
「まさかこの一瞬にしてこれほどの命を絶やすなんて。わざわざ模造刀で手加減して戦う人にしては凄惨すぎませんか?」
「いや、凍結保存しているだけだ。ちゃんと全員中で生きている。意識はあるし、目と呼吸器官だけは最低限動かせる。誰がこの期に及んで殺生なんてするか」
「いやぁ、助かりました。おかげさまで怒られずに済むそうです。でも、これはこれでピンチですね僕も」
「そりゃあ脚を取られたら神速のお前でも対処できないだろうな。本来はお前も全身凍結させる狙いだったが、まさか避けるとは思わなかったよ。さぁ、観念しろ」
「一方的すぎませんか?悪い人がここまでやっちゃうのはさすがに酷だなぁ」
こんな状況でも伏黒少年は笑顔を絶やさない。
「でもですね……………五輪華の一人であるこの僕が、そう簡単にやられると思いますか?」
そう言った直後、伏黒少年の脚が爆発した。
「なんだと!?」
伏黒の跳躍で脚を固めていた氷が砕けてしまったのだ。
氷の地面に着地する五体満足の伏黒。
これで振り出しに逆戻り。
「ふふふ。どうです?」
「───────五輪華。つまり、お前たち五人が梓の側近ってことだな」
青葉は三度笠を拾い直す。
被ることで再び人間の姿に戻る。
「はい────斬馬刀の
「───────出来るよ。俺にだって頼れる仲間が居るんだから」
青葉はいとも簡単に即答した。
「そうだそうだ!その男には私たちが付いているんだぞ、そう簡単に負けたりしないさ、むしろあんたの方こそ、もっと戦力を溜めとかないで良いのか?」
妹紅がはやしたてる。
「なるほどなるほど」
伏黒少年はうんうんと頷く。
「なら……………全員倒してみてくださいよ。まずは、僕が相手です!!!」
そうすると、二本の小太刀を青葉に向かって投げつけた。
「─────言われなくても、こっちは最初からそのつもりだ!!!」
青葉は当然ながら、刀で二本の投擲を正確に弾き返す。
1つ、2つ。二本の刀を全く別の方角へと弾き返されては、伏黒の攻撃手段はなくなったも同然。
彼は初手から早くも攻撃手段を2つも失ったのだ。
「さぁ、ついて来れますか?この動きに!」
伏黒が丸腰で青葉の前に踊り出る。
「ふっ!!!」
当然ながら、目の前に出てきた敵を青葉はノータイムで模造刀を振るって殴り付ける。
しかし、当たる瞬間、すでに伏黒の姿は消えていた。
「消えた!?」
「消えた!?」
アリスと妹紅が口を揃えて驚きの声を上げる。
青葉もかなり速いが、見えない速度で動く相手は初めてだ。
瞬間に、青葉が弾き返した小太刀がまた青葉の方向へと独りでに飛んでいく。
「───────戻ってきた!?」
それの繰り返し。
青葉が剣を弾く度に、もう1本がすぐにやってくる。
それを弾けば先ほど弾いたもう1本が戻ってくる。
いったいこれは如何なる投法なのだ。
(いや、違う。弾かれた刀を、逆に弾き返しているのか?俺には見えない速度で)
気がつけば、青葉は常に刀を振り回していた。
止まっている暇などない。振った後の硬直を狙って剣が飛んでくるならば、青葉は八霖儚月流奥義である隼返しを連発しなければならない。
八霖儚月流は硬直が長い。その弱点を狙った化のように正確に、かつ高速で放たれる二本の小太刀の連続投擲。
伏黒は幼くとも大人である亦紅と並ぶほどの天才剣士。先ほどまでの戦いで、初めて見る月人の剣術の性質とその弱点を見破ってしまったのだ。
これを才能と言わずになんと言うか。
「──────ご覧に入れましょう、これが、僕の修行の果てに生まれた新たなる最強の二刀流剣術!!」
剣の投擲がストップする。
二本の小太刀は再び伏黒の手に戻ってくるが状況は引き続き青葉の不利のまま。
高速で青葉の周りをぐるぐると回る伏黒の速すぎる動きに、いよいよ青葉の思考と集中力が限界を迎えてきた。
「そこだ──────!!!」
青葉が背後からの突進を弾き返した。
見えない攻撃を直感だけで弾き返したのだ。
必殺級の攻撃を凌いだ今、青葉の番の始まりだ。
──────────しかし。
「二天伏黒剣舞─────神楽!!!」
「分身───────!?」
残像を伴って、伏黒が青葉の周りを不規則な速度で周り始めた。
────剣舞。流派別の独特な動きで相手を翻弄し、死角から必殺の連続攻撃を食らわせるというもの。
不規則な動きと遅い動きと速い動きを重ねた残像が相手の集中力を削ぎ、視界を奪う。
攻撃が放たれた時には既に遅く、反撃を取ることも出来ずに、その剣舞の動きによって生まれた遠心力を伴った強烈な一撃が相手を即死させる。
伏黒の素早い動き、小太刀の機動力。全ての条件が重なった今、この複雑な舞踊が完成したのだ。
伏黒の産み出した我流、伏黒剣舞の唯一の技にして、最後に完成された技。
その名も──────
神楽とは神に奉納する舞踊。神々を降ろし、穢れを祓うために行われる由緒正しき儀式である。
その無駄のない、速く、美しい動きはそれを体現させたような見事な剣舞であった。
(速い…………そして、すべての動作が全く異なる動きだから、どこにいるのかまったくわからない…………不規則に速度を変えられたら先読みなんてできないな…………こうなったら、出てきた所を叩くしか…………)
「もう遅いですよ、」
背後から剣を構えた状態で現れた伏黒の声に反応した青葉は、
「──────うっ!!!」
すんでのところで反応が間に合い、振り向いて剣を抜く。
青葉の速さなら、それを止めることは容易い。
だが───────
「だから、もう遅いですよって。だっえそれ残像ですから」
「────────は?」
────────瞬間。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
胸を✕状に斬りつけられた青葉は、血を出しながら真後ろに倒れた。
「───葉────丈夫!?────葉!!!」
「しっか─────────葉!!!」
「あ──────あ………………?」
もう、二人の女の声も、彼には中身まで聞こえなかった。
吾妻 亦紅(あづま もこう)
梓の護衛役として設置された五人の剣士、「五輪華」の一人。
赤の華・斬馬刀の吾亦紅を通り名とする。
そしてその名は夏から秋にかけて咲く華奢で綺麗な赤い花、「吾亦紅」をこそ指し示す。
花言葉は「移りゆく日々」。五輪華随一の怪力屋、即ち全盛を象徴する彼らしさを描いた哀愁籠る花である。
青葉が真っ先に対峙することになった五輪華であり、青葉のことは特別視している。
五輪華は独自の剣術を編み出している場合が多いが、彼の斬馬刀には流派すら存在しない。ただ赴くままに溢れる暴力と怪力を振り回していたら勝手に敵が倒れる、ある意味無敵の戦士である。
斬馬刀とはとてつもないサイズを誇る大剣。重いぶん硬く、強く、長い。盾の代わりにもなる優れものであり、どんな武器であれ軽々と振り回す筋肉ゴリラである彼にはぴったりな武装だ。
妹紅と名前の読みが同じという気紛れで青葉にも良く認識されている。剣客の集まりである五輪華の一人ではあるが、本人は素手で戦うことの方が好みらしい。
本編では語られていないが、肉より魚派らしい。いやいやそんな、嘘だぁ。
伏黒 仙翁(ふしぐろ せんのう)
五輪華の一人。
二つ名は、橙の華・小太刀の伏黒仙翁。
仙翁は橙色の花であり、撫子の仲間。花の節が橙(紫黒)色であることから「伏黒」という名前がつけられたのがこの伏黒仙翁である。花言葉は「機転」。冷静さと穏やかさを兼ね備えた柔軟、かつ幼いながらも達観した彼の人生観を表した花言葉である。
小太刀は脇差と太刀の中間の長さをしたやや短いが短すぎない刀であり、軽量でありながらリーチにも長けているという、太刀と脇差の良いとこ取りをした中量級の剣といえる。彼はこの小太刀を2本使って戦う。
まだまだ10歳前後という幼すぎる年齢の彼に刀を振り回すのは決して楽ではないため、軽さとそれが織り成す速さに長けた小太刀は彼にとって相性の良い武器。
まだ幼いからか、梓とは主従というより友達に近い。
使う剣術は自分が修行の末に編み出した「二天伏黒剣舞」。
伏黒剣舞は型がひとつしか存在しておらず、それは「神楽」という技。神楽は素早いステップと緩やかな闊歩を不規則に繰り返す事で残像を発生させて相手の視界と思考を撹乱させる。その状態の相手に四方八方から好きなタイミングと角度、そして速度で攻撃していくという非常に厄介な攻撃。特に上下の打ち分けを重視される流派であり、小柄な身体でそれを得意とする彼が使えばまさに上下の二択の繰り返し。これを凌ぐのはまさに至難。動体視力とか反射神経とか以前に、普通に運ゲー。
梓だけでなく、どうも、慧音についても何か知っているらしい。
衣 黄御(いはづ かつみ)
めちゃくちゃ読みにくいと思うが、名前の読み方は「いわず かつみ」である。苗字の衣は、衣鉢(いはつ)が化けた読み方をしている。
五輪華の一人であり、緑の華・長ドスの御衣黄、の異名を持つ。
御衣黄は萌黄色の花をした桜の仲間であり、八重咲きをする種類。淡い色の花が実に美しく、作者が一番好きな樹状植物。
花言葉は「優美」。冷静沈着で、どことなくあざとい男前さを持つ自由気儘な彼を体現した文句である。
長ドスとはその名の通り、長いドス。刀身は三尺ほどの長さであり、ギリギリ首から下の長さに達しないくらい。
衣沙門剣という我流の剣術を編み出している。肩にかけた羽織で相手の視界を遮ったり、腕や胴体を瞬く間に縛って動きを封じたりして妨害しながらドスによる正確かつ絶対的な一撃を与える、というもの。
どことなくサイコな狂気を醸し出す、実に彼らしい動きだ。
甘い和菓子が大好物で、特に八ツ橋に目がない。なんかかわいいところもあるあたり、属性と性根は青葉に近いのかもしれない。