東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

53 / 161
紫の華・鎖鎌刀の庭石菖

 

「ぐっ、どらぁぁ!!」

 

妹紅が腕を押さえつけてくる山賊を殴り付けて弾き飛ばす。

 

「いって……………」

 

「妹紅、大丈夫?回復を…………」

 

メディスンが妹紅の傷口に毒を塗る。

 

「おぉ、痛みが和らいだな!凄いな、毒を塗るだけじゃないんだな」

 

「毒はなにも、生き物にとって危ないものばかりではないわ。生き物が生きていられるのも、「毒」による恩恵なのよ」

 

メディスンが操るのは毒だけであり、治療薬を使う力はない。

しかし、古来より毒とは転じて薬とされた歴史があり、それに由来して、メディスンは善玉の毒を使うこともできるのだ。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!もうやめてぇぇぇぇ!!!」

 

妹紅とメディスンの目の前から雛が走ってくる。

その後ろに200人ほどの敵を連れていたのだ。

 

「だ、大丈夫か!?」

 

「も、もう限界ー!!!!」

 

雛が力尽きて地面に転がる。

 

「ひ、雛!!今すぐ助けに…………」

 

「やめて!来ないで!ほんとに!もう限界!」

 

雛は手を出して近付かないように必死に懇願する。

 

「限界って、なに─────え?」

 

妹紅は急に辺りが暗くなったことに気付いて空を見上げる。

雲が出たのかと思ったが、ずっと雲は出ている。

急に暗くなったのが不思議だから上を見上げる。

メディスンもそれにならって上を見る。

山賊たちも、上を見る。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ……………なに………………?」

 

 

 

 

 

 

空に5個、岩が浮かんでいた。

 

 

 

 

浮いている岩は、空高くに位置しており、だんだんと燃えながらこちらへと落下してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隕石────────!!!???」

 

 

 

 

 

 

雛の溜め込んでいた厄が限界を迎え、ついに厄が見える形となって周囲に影響を及ぼし始めた。

簡単なことだ、500人を越える兵が一斉に集まっており、彼らの持つ厄のエネルギーは全て雛のほうへ集まる。

500人ぶんの厄を引き付けたこともあり、500人ぶんの厄災がひとつの災害になって、まさに普段の500倍の厄災が起きた。

雛は敵対人数が多いほど、その能力の効力は強まる。

まぁ、彼女自身、狙ってやっているわけじゃないが。

 

 

 

 

 

「ちょ、まずいまずい!!!」

「私たちもふきとんじゃうー!!!」

「もうダメー!!!激突するぅぅ!!!」

 

逃げる暇もないのでできるだけ身を縮めて頭を守るようにうずくまる。

 

落下してきた五つの隕石のうち、四つが全く関係のない方向へ落下する。

─────無論、その4ヵ所は悲惨なことになっているのだろうが。

 

 

 

「ふぅ、危なかった」

「まだわからないわ、あと1個あるもん!」

「あ、駄目よこれ、あと1個超大きいんだけど」

 

 

 

 

五個目はこの場へと垂直に落ちてきている。

なぜかわからないが、他の4個の倍以上大きい。

青葉たちが入ってきた門のところに落下してくる隕石から逃げる術はない。

誰もが死を確信した。

誰もが破滅を受け入れた。

 

 

 

 

 

─────成すすべなく、何もかもが吹き飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………………」

 

「生きてる?」

 

「隕石は……………」

 

妹紅、雛、メディスンは目をゆっくり開けて、この世があの世でないことを確認した。

 

「隕石は落ちたわ。けど、間に合ったのよ」

 

「なっ、お前は…………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

妹紅たちは草木の蔓で編まれたドームの中にいたのだ。

植物が隕石からみんなを守ったのだ。

 

 

 

「人の身で自然に抗う道理はない。代わりに、自然ならその摂理において耐えることができる」

 

格子模様の洋服に身を包んだ草色の髪の女が、日傘片手にそこに立つ。

優美なる花の令嬢が、繚乱の花たちを咲かせながらそこに居るのだ。

なにもなかった地面は無限に広がる花園へと変わる。

そこに居るだけで、花畑ができたのだ。

 

 

 

「幽香!どうしてここにいるのよ?」

 

アリスがなぜか頬を腫らしている青葉と共にここへやってきた。

彼女らも植物のお陰で隕石から身を守れた。

 

「訳あって、解放してもらったのよ」

 

「君は…………確か…………」

 

青葉は警戒心半ばで声をかける。

 

「お久しぶりね、三度笠のアナタ」

 

「笠なくしてるのにわかるんだね」

 

「えぇ、その美貌でだいたいわかるわ」

 

青葉はわかりやすく照れる。

 

「─────ここから先は、私の仕事よ。貴方はアリスを連れて本丸へ向かいなさい」

 

「手を貸してくれるのか?」

 

「えぇ。【貴方たちを無事に本丸へ向かわせる】、私が解放してもらうために彼と約束した条件よ」

 

(ん?この人、敵に捕まっていたんだよな…………?)

 

「助かるわ、幽香」

 

そう言っている間に、隕石に巻き込まれて倒れた山賊の中から、根性強く立ち上がる者が数人。

そして、隕石から逃れた獣人たちも合流してきた。

 

「どんだけ居るんだよ…………」

 

「アオハさん、先に行っていいわ!ここは任せて!」

 

「メディスン…………」

 

「私がやっちゃったんだから………始末はつけるわ…………」

 

「雛…………」

 

「……………行くわよ、青葉」

 

アリスは先に走り出していった。

青葉は戸惑う。ここで仲間たちを置いていってもいいのかと。

 

「ほら、早くしなさい」

 

幽香の催促。

 

「────────アリス!!」

 

唐突に、青葉が叫ぶ。

 

「え?」

 

アリスが振り向く。その瞬間、

アリスの進む向こうから、高速で何かがやってきた。

隕石ではない。鎌を構えた一人の女が、アリスめがけて急降下してきたのだ。

 

「あぶ、ねぇぇ!!」

 

寸前でアリスの前に妹紅が立ちふさがり、鎌を受けた。

肩口に深々と突き刺さる鎌に、妹紅が苦しげな表情をする。

 

「くそっ…………こんな時に…………!!!」

 

その正体言うまでもなく庭石菖。

妹紅の前に降り立つと、鎖鎌刀の先端についていた小刀を妹紅の腹に突き刺す。

 

「妹紅!!!!」

 

「へへへ、邪魔してやったぜ…………オオバも言ってたけどさ、いつも奇襲がヘタクソなんだ…………お前はよぉ!!」

 

妹紅が根性で耐え抜き、菖を投げ飛ばす。

 

「ぐっぅっ!!!」

 

距離を離された菖は、空中で体勢を立て直し、地面に着地して後退する。

距離が遠いほど菖は有利。冷静な対応だった。

 

「オオバ、アリス。さっさと行ってくれ」

 

「でも、こいつは…………」

 

「もともとこいつは私の獲物だったんだ。前に慧音を連れて逃げられたんだから、一発はぶん殴ってやんないと私の気が済まない」

 

「やめるんだ、君一人じゃ…………」

 

「無理なことないね!私は藤原妹紅だ!死ぬことだけは絶対にないからな!そんなことより、お前は早く慧音を助けに本丸へ行ってくれ!」

 

「──────本当にいいんだな?」

 

「あったりまえだ、女に二言はないよ」

 

「死ねぇぇぇぇぇ!!!」

 

菖は会話の隙を見逃さない。

妹紅の腕を切り落とすために、小刀を握り、鎌を投げつける。

 

「一殺・長足の死霊鎌!!!」

 

大木をも引き裂く必殺の一撃、

しかし、それは妹紅の腕で弾かれる。

 

「なにっ!?」

 

「ははは、前は本気出せなかったんだよなぁ…………なんせ、親友の寺子屋の中でこの力を使うようもんなら、バラッバラになっちゃうからな」

 

振り向きざまに、妹紅は発火妖術を解放する。

炎の床が菖に向けられる。

 

「くっ…………!!!」

 

咄嗟に張った鎖の壁が炎の侵食を塞き止めた。

 

「生意気な女…………!!!私も、殺すなら貴女を殺したかったところよ!」

 

「上等、行くぜぇぇぇ!!!」

 

妹紅は両腕を豪炎で発火させると、そのまま菖に向かって突進していった。

 

「ぐぉぉぉ!!」

 

短刀で再び腹を貫かれても、まだ妹紅は引かない。

 

「行けぇぇぇ!!!オオバぁぁぁ!!!」

 

 

 

「──────────!!!」

 

妹紅の声援を受けて、青葉もアリスを追って走り出す。

 

 

「みんな、青葉さんに応援の演奏を届けるわよ!」

「フレー!!フレー!!」

「がんばれー!!がんばれー!!」

「青葉!!青葉!!アリス!!アリス!!」

 

 

 

雛がまた逃げ回る横、メディスンが毒を撒き散らしている横、プリズムリバーウィズHの演奏の中、青葉は駆け抜けていく。

 

行く手を遮る敵の波を掻き分けながら、青葉はアリスを追う。

 

「お前らにかまっている暇はない、悪いがここで昼寝してもらう!!」

 

前にあらわれる敵を次から次へと模造刀で殴り倒し、青葉は一直線に本丸を目指す。

道中で三の丸、二の丸を攻略していくことになるが、それも最短で突破しなければならない。

 

とにかく、急いで慧音を助けるために走り出す。

 

「待っててくれ、慧音さん、すぐに助けに行くから!!」

 

青葉はそのまま、その場を離脱し、アリスと共に目前の三の丸を目指して走り出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「おりゃぁぁぁ!!」

 

妹紅と菖は燃える両手と鎖鎌をぶつけ合って戦う。

パキン、ガキン、と剣戟独特の金属音が幾度となく響き渡る。

彼女らは、他の獣人たちやメディスンたちとは離れた場所で戦闘を繰り広げていた。

妹紅が炎の弾幕をけしかけるが、それらは全て鎌の回転で無効化される。

 

(ちぇっ、弾幕は意味がないな)

 

妹紅は近接戦闘主体に切り替える。

 

「この期に及んでやっとお出ましとはな、男のほうはどうした?」

 

鎖鎌の猛攻を素手で次々と弾き返しながら妹紅は菖を挑発する。

 

「あの方の居所は、もうわからない!」

 

「つまり逃げたってことだな!大したことないなぁ、あんたらは!!」

 

鎖鎌の一閃を素手で掴んで防ぐ。

刃を握って妹紅の手が血を流すが、構わずに妹紅は拳を振りかぶる。

 

「黙れ!!お前だけは、この私が殺してやる!!」

 

妹紅の顎を、下から短刀で貫く。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

妹紅が苦悶をあげながら燃える拳を菖の腹部に叩きつける。

 

「ぐッ!!!」

 

菖は妹紅に刺した短刀から伸びた鎖のおかげであまり距離を離されずに済んだ。

 

「ぐぁ…………づっ…………」

 

口から血反吐を吐きながら、折れた腹を押さえて呻く菖。

 

「馬鹿め…………自分の命と引き換えにこれしかできないなんて…………」

 

だが、菖の勝ちだ。

腹を二回貫かれ、顎を刺された妹紅はその場に倒れる。なんの変哲もない、普通の死だ。

 

 

 

「バカはお前だよ……………!!!ウゥォォォォォォ!!!!」

 

妹紅が火柱をあげながら立ち上がる。

 

「嘘っそ!?」

 

火柱の中から、肉体が完全再生した妹紅が出てきた。

 

「一回殺したことは褒めてやるが、私を何回殺したって無駄なことだ!」

 

妹紅は不死身の蓬莱人。何回殺されようが痛いものは痛いが死ぬことは絶対にない。

 

「まさか本当に死の淵から蘇るなんて…………」

 

「まいったか?これが、私の本来の力だよ」

 

「なに、何度も何度も殺していれば、そのうちその痛みに耐えられなくなるはず…………やることは変わらない!」

 

「死ねど死ねど…………何度も蘇りゃあ…………この永遠をやめることはできない。何度もこの身を滅ぼす方法を考えては実行した。絞首、斬死、落下死、焼却、溺死、爆死、酸溶死…………ぜんぶ試して全く意味などない。この身体は、死ぬことぐらい日常茶飯事だよ」

 

「ほざけ…………あの方の為なら、不死鳥すら墜としてみせる。たかだか火の鳥なんて、うちの自家製干し肉の一部にすぎない。鶏肉にしてくれるわ…………!!」

 

菖が勢いよく弾ける。

爆ぜるように背後へと飛び立った菖は鎖の長さの限界まで後退すると、手にした鎌を一気に引く。

 

「ぐ、うおぉぉぉぉわぁぁぁぁぁ!?」

 

すると、顎に短刀が刺さりっぱの妹紅は急に向こうへと進んでいく短刀に連れていかれる。

妹紅が地面の上を強引に引きずられて、地面に巨大な溝ができる。

 

「───────ふっ!!」

 

鎌が横なぎに振るわれる。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

妹紅は鎖とともに城壁に叩きつけられる。

衝撃で城壁が粉砕され、巨大な孔ができる。

 

「うらぁぁぁ!!」

 

今度は背負い投げするように鎖鎌が引っ張られる。

 

「ごぁぁぁぁっ!!!」

 

今度は岩盤を破壊しながら地面に打ち付けられる。

近くに立っていた獣人の兵士たちが地面への衝撃で空高く打ち上げられる。

 

「はぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

「う、ぐわぁぁぁぁぁ!!!」

 

菖は鎖鎌を自在に振り回し、妹紅をあちこちに打ち付けていく。

城壁は粉々になり、岩盤も崩壊しまくる。

 

「一殺・懐崩(かいほう)の死霊鎌!!!」

 

妹紅を繋いだ鎖鎌がひときわ強く、振るわれる。

妹紅が今度は飛ばされたのは、三の丸の土台となっている石垣。

 

「ぐ、ウァァァァァァ!!!」

 

妹紅の悲鳴と共に大音響を立てて鎖が石垣に叩きつけられた。

舞い上がる土埃。一撃で石垣が崩壊し、それに伴って城の形状も崩れていく。

石垣に大穴が開き、そこから城が崩落していく。

一階が傾き、二階が崩れ、三階と天守閣が倒れる。

バラバラに崩れた三の丸は、耳が割れるほどの大きな音と共に、地面の上に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

「───────はぁ、はぁ、はぁ」

 

なんという力だ。石垣を破壊するほどの筋力とは。

 

 

 

 

「いってぇなぁぁぁぁ!!!」

 

瓦礫が大爆発を起こし、中から無傷の妹紅が飛び出てくる。

おそらく壁や地面に連続で叩きつけられたことで死亡し、復活したその矢先に城の崩落の下敷きになってまた死んだのだろう。

しかし、妹紅は何度殺されようと何度でもリザレクションする。

 

「まだ死なないの…………!!」

 

菖の鎌が再び振るわれる。

短刀がまた妹紅の身体を引き裂くが、今回は妹紅のほうが早かった。

 

「うぅっ…………!!」

 

菖の攻撃。

鎌の刃が妹紅の胸を抉るが、

 

「おっらぁぁぁぁ!!!」

 

それより先に妹紅が動いた。

菖の頭にアイアンクローをお見舞いし、そのまま菖の頭を鷲掴みにする腕を発火させた。

 

「ぐっ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

顔面を爆破され、頭部から大量に出血しながら菖が後退する。

 

「くそっ!!!」

 

すぐに鎌を振るい、飛来する短刀は妹紅の胸を貫通した。

 

「ごはっ……………!!」

 

妹紅が血を吐くが、

 

「へへっ…………まだまだぁ…………!!!」

 

苦しそうにしながらも彼女は笑っている。

鎖を握りしめ、そのまま自分の身体を妖術の炎で燃やし尽くす。

 

「ぐっ…………!?」

 

急いで鎌を引き戻したがもう遅い。

鎌から延びている鎖が割れて、鎌と短刀で二分割になった。

 

「………………ふん」

 

構わずに鎌だけになった鎖鎌を逆手に持ち、鎖刀だけになった部分は鎖の部分を持って別の武器として持ち変える。

 

「馬鹿め、それで武器を破損させたつもりか。むしろこっちにとっては強化も良いところよ」

 

「お前も懲りないなぁ、何度殺そうが無駄だって言うのに」

 

妹紅が四回目の再生をする。

両者とも、まだまだ体力的にも精神的にも余裕のようだ。

 

 

 

「一殺・鷲翼(しゅうよく)の死霊鎌!!」

「焔符・自滅火炎大旋風!!!」

 

 

 

妹紅が身体を燃やしながら炎の渦となって回転しながら菖に襲いかかる。

対する菖は鎌と短刀を両手で持ち、回転しながら切りつける。

 

 

 

「う…………うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ぐっ………おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

凄まじい剣戟の嵐。聞き取れないほどの速度で金属音が鳴り響く。

数えきれないほどの音が響いた後、妹紅と菖の両方が吹き飛ばされる。

 

菖は灼熱で顔の左半分が焼け落ち、左目が開けれなくなっている。

一方の妹紅は菖の攻撃で右腕を切断され、加えて自分の攻撃による反動でまた命を落とす。

 

「ちっ、しぶといな…………」

 

五度目の蘇生を終えた妹紅にも、だんだんと焦りの色が見え始めてきた。

妹紅の命は無限だが、体力は無限ではない。

かつて妹紅は「肝試し」という催し物に参加した際、13回も殺されたのだが、その時は度重なる蘇生で体力を消耗し、動けなくなってしまった。

つまり、妹紅は死にはしないが、再起不能に追い込まれることは起こりうる。

こんな短時間で自分を5回も殺してくる相手は彼女にとって初めてだった。

もしかしたら、このまま限界の所まで殺し続けてくるかもしれないと思うと、だんだん油断している場合ではないなと妹紅が焦り出す。

だが、菖も少しずつだが消耗している。

だんだんとダメージも与えれている。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ………………」

「はぁ、はぁ、はぁ………………」

 

 

 

実力伯仲、ほぼ互角の戦い。

だが、不利なのは菖のほうだった。妹紅と違って傷は絶対に再生しない。手足を失えば、もとに戻ることはない。もちろん、死んでも生き返れない。

それでも……………彼女は……………

 

「筆竜さまの為に戦う…………!!!」

 

短刀を勢いよく振るう。

短刀から伸びた鎖が、妹紅の周囲を取り囲む。

 

「一殺・牢檻(ろうかん)の死霊鎌!!!」

 

鎖の上を自由自在に飛び回りながら、素早い動きで妹紅を翻弄してくる。

 

「速い、まったく見えない…………!!!」

 

妹紅はあっという間に菖を見失った。

鎖のせいで逃げれる範囲も限られており、どこから迎撃したらいいのかわからない。

 

 

 

「時効・月のいはかさの呪い!!」

 

妹紅は炎で編まれた剣を撒き散らし、鎖を断ち切る手段を選んだ。

読み通りに、鎖は次々と弾かれ、妹紅の周囲のバリケードが崩壊していく。

 

(しめた……………!!!)

 

ツギハギの折れた孔から脱出しようとした次の瞬間、

 

「ぜぇぇぇぇぇいやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「ぐぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

背後から飛来してきた高速の菖が妹紅の背中を捉え、妹紅の頭にまたがり、その頸を鎌で切り裂いた。

極度の痛みで苦悶を上げる妹紅の首が切断されて地面に転がる。

 

 

 

「はぁ、はぁ…………流石に首を落とせば……………」

 

踏み込みにどれだけ脚を酷使したのか、菖の左脚が血を垂らしている。

おそらく酷使によって折れ、骨が身体の外に出たのだろう。

痛いはずだがその激痛を歯を食い縛って耐える。

これもすべて、あの人の為なのだと。

必要な献身であれば逃げることはできない。

 

 

 

「ちっくしょう…………今のは…………かなり痛かったぞ…………」

 

それでも、妹紅は灰になり、焼け跡から生まれ変わる。これで6回目。

 

「そんな……………」

 

「お返しだ……………蓬莱・凱風快晴飛翔蹴!!」

 

妹紅は高く飛び上がり、その長い脚に炎を灯しながら一気に菖めがけて急降下する。

 

「くっ………………」

 

脚がやられていては逃げられない。

鎌と短刀を交差するように構えて防ぐしかなかった。

高速で落下してくる妹紅の一撃は、鎌と短刀のブロックを完全に突き破り、菖の胴体を一閃した。

着地と共に地面で大きな噴火が起こり、辺り一面が焼け野原に変えられる。

 

「どはぁっ!!!」

 

命を削った攻防。

今の一撃で脚と内臓が吹き飛び、また妹紅は落命。

その度に炎で身を包んで7回目の再生をする。

 

「はぁ、はぁ、これはキツいな…………!!」

 

全力を出しながら動き回り、スペルカードを連発しながら連続で復活を繰り返していては、妹紅の体力も持たない。

 

「ぐっ…………うぅぅぅぅ!!!」

 

「なっ…………!?」

 

一撃で内臓に大ダメージを受けたはずなのに、菖はまだ動く。

鎖刀を自らの鎌で切断し、鎖と短刀に分ける。

そのまま鎖のほうを握り、妹紅の右腕を遠くから縛り付ける。

 

「くそがぁぁぁ…………!!!」

 

動けない短刀を投げつける。

他のどんな攻撃よりも素早い投擲は、妹紅には一切目視できなかった。

 

「どはっぁ………!!!」

 

神速の短刀は性格に妹紅の額を穿った。

脳を串刺しにされて再び妹紅は仰向けに倒れて死ぬ。

 

「野郎……………!!!」

 

妹紅は8回目の蘇生で起き上がり、反撃しようと試みるが、

 

「一殺・真隣(まどなり)の死霊鎌!!!」

 

「うおわぁぁぁぁぁ!?」

 

腕は鎖で縛られたままだったため、鎖ごと引き寄せられる。

そして再び頭部に鎌を振り下ろされて脳を裂かれる。

 

「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」

 

密着状態のまま離れられない妹紅は復活したら顔面に鎌を叩きつけられて死に、復活したら頸動脈を断たれ、また蘇っては心臓を鎌で貫かれてまた死ぬ。

 

 

 

「ふっざ…………けんな…………よ!!!」

 

これで11回目の蘇生。

いい加減に慣れた妹紅は、今度はやられるより先に、復活したらすぐに菖の右腕を掴み、自分の左腕ごと爆破する。

爆発によって鎌が地面に転がり、菖の右腕は二度と動かなさそうな形に変形する。

 

「ぐぅぅぅふっ…………!!!まだまだ!!」

 

菖の渾身の頭突きで妹紅の意識がぐらつく。

菖の頭も出血したが関係ない。

 

「オオオォォォォォォォォォォォォォォァ!!!!!」

 

雄叫びと共に、菖の一撃が振るわれる。

左腕から突き出された、今で行ける全力の打ち込みが妹紅の胸骨を砕き、心臓を貫通した。

 

「ぐぅぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

バッキッ、と大きな音と共に菖の腕から鈍い音が響いた。

さすがに人間の胸骨を破壊する勢いでは、細腕が耐えられるわけがない。

 

「この野郎!!!」

 

怒り任せの一撃が菖との距離をまた引き離す。

腹へ放たれたキックが、菖の口から胃液を逆流させる。

 

「もうここしかない…………あの方の為なら…………私は、私の命だって顧みない!!!絶対に、貴様みたいな化物をあの人の所へは行かせはしない!!!」

 

折れた左腕でもう動かない右腕を掴み、自分で引きちぎる。

 

「ちょ、お前、何をする気だ───!!!」

 

「ウウウウウアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

狂乱しきった化物のような表情で、菖は血を撒き散らす。

その血が、なんとどういう原理か、巨大な、真っ赤な禍々しい鎌へと形状を変える。

それをまだかろうじて形を保っている左手に鎖と一緒に握りしめ、菖は妹紅を睨み付ける。

妹紅も鎖に繋がれたまま、菖を睨む。

 

決着をつけるには、もうここしかない。

 

 

 

 

「ウォォォォォォォォォォ!!!!」

「ウォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

鎖に繋がれたまま、菖に全速力で突進する妹紅とそれに合わせて大鎌を振り上げる菖。

二人の目が合う。

 

 

 

「蓬莱・凱風快晴火炎掌!!!」

「超一殺・死神の死霊鎌!!!」

 

 

 

 

─────神速の突撃と光速の迎撃。

どちらの速度もほぼ互角だったが、わずかに速かったのは菖の鎌だった。

 

「ふんッッッ!!!」

 

妹紅の胴体は上下で真っ二つに切断され、それを見た菖はまた距離を取り、二度目の一撃に備える。

妹紅が12回目の蘇生をする。これまでの経験上、どんなに頑張っても次がラストチャンス。敵は大技を打った直後だ。

この絶好の機会を、妹紅は逃さなかった。

 

 

 

「おりやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

地面を脚が壊れると思うくらいに力強く踏みしめ、自分の腕に絡み付く鎖を勢いよく引っ張る。

 

「ぐわぁっ!?」

 

その勢いに持っていかれる菖の身体。

さっきの妹紅の突進よりさらに速い。反応できるはずがない。

菖があわてて大鎌を振り上げるが、

 

 

 

「これで終わりだ─────!!!!」

 

目に見えぬ速度で妹紅に引き寄せられる菖に合わせて、妹紅が全身全霊の蹴りを叩きつける。

重たい金属が落下したときのような大きな音が響き、菖は遠く遠くへ吹き飛ばされ、三の丸の崩落跡でかろうじて残っていたわずかな石垣の一部に激突した。

三の丸のわずかな面影は跡形もなく霧散し、城跡にも思えぬただの瓦礫の山と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────はぁ、はぁ、強かった…………」

 

妹紅は息を喘がせながら、瓦礫の山に歩みよる。

そこに、武器を失い、片腕も失った、瀕死の状態の菖を発見した。

 

「……………………これで、私の勝ちだ」

 

「──────────あ………あ………」

 

菖の意識は朦朧としており、口も僅かしか動いていない。

 

「認めるよ、お前は強い。私よりもずっと」

 

「ふ…………で…………り…………さま……………」

 

「もう諦めろ。どんなに頑張ったって、不死身の私を止めることは無理だ。むしろ私相手にこれだけ長く耐久したこと、そして私をここまで消耗させたってだけでも、お前はお手柄だ」

 

「ごめんなさい…………ごめんなさい…………」

 

「時間、食っちまったよ。お前は間違いなく五輪華の中でも最強だ」

 

「もっと…………愛されたかった…………もっと…………傍にいて欲しかった…………」

 

菖の眼から涙がこぼれてくる。

彼女はもう、妹紅の話など聞いてもいない。

妹紅も、彼女と話すつもりはない。

 

「じゃあな、庭石菖。悔しいけれど、輝夜と殺し合うのと同じくらい、楽しかった」

 

「──────────梓」

 

「────────ん?」

 

ふだん筆竜ばっかりの菖とは異なる発言を聞いて、妹紅は脚を止める。

ぶつぶつ言う菖が気になって興味が沸いていた妹紅は、菖のそばに屈む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────梓…………ありがとう。そして最期に、こんな情けない姉を許して……………」

 

 

 

 

 

 

ひとこと。

 

 

 

 

 

 

そう言い残して───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛しているわ、筆竜………………」

 

 

 

 

左手を腰の帯に回し、何かの引き金をピンッ、と引いた。

 

 

 

 

 

 

「まさか、爆弾─────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間──────椰子飼城三の丸跡のすぐ横で、巨大な爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫の華・鎖鎌刀の庭石菖 藤原妹紅に敗北

 

 

 

残る剣客、2人。

なんか………どうしようかなぁって()

  • 知るかボケ
  • とりあえず………早く文編書きません?
  • 東方の18禁作品の執筆とかしないの?
  • サボってないで執筆しろ
  • アボカド食べる?
  • その他(その他ってなんだよ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。