東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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人形解放戦線・破

 

─────一方、その頃。

 

 

 

「はぁ、はぁ、これでぜんぶかな…………」

 

「今見返せば途方もない数だったわね」

 

「ぜぇ、はぁ、もう…………限界…………」

 

メディスン・メランコリーと風見幽香、そして鍵山雛はプリズムリバーウィズHの演奏によるフォローの力を借り、三人で協力しながら総勢1300もの獣人兵を撃破した。

気がつけば、争乱の嵐が止み、静かな空間に戻ったこの広場には、破損、落下した武器の山と失神した兵士の山、そして血と瓦礫の山とで三つの連峰が連なっていた。

 

「あとの敵はアオハさんとアリスがやってくれそうね」

 

「残るは城に余った強敵のみよ」

 

「これで、私たちの役目はおわり………?」

 

疲れて気が抜けたのか、三人はその場に座り込む。もう、体力の限界だった。

最低でも10分は平気で戦っていた。こんなの、命がいくつあっても足りやしない。

 

「お見事だ、お嬢さん達よ」

 

「───────?」

 

メディスンが声のした方向を見る。

そこにいたのは、黒白の洋服を来た紳士。

いままで存在を忘れ去られていたであろう、あの椰子飼雲月だ。

 

「だれ?にんげんじゃないみたいだけど…………」

 

「まさかこれほどの少数でこれだけの相手をするとはな…………」

 

「あぁ…………貴方が御衣黄の言っていた雲月ね。なるほど、胡散臭いという点では彼に評価されるだけのことはある」

 

(─────御衣黄?)

 

雛が幽香の発言に反応するが、雛がそれを訊くより前に雲月が口を開いてしまった。

 

「私はな、確実に勝てる状況しか狙わない。これだけの数を相手に、消耗しきったお前たち相手にこそ、この相手が通用すると踏んだんだ」

 

「知っているわよ。斬馬刀の吾亦紅…………御衣黄から聞かされたわ」

 

「─────ほう、よく知っているな」

 

「貴方の唯一の切り札にして最後の1枚鎧。それが無くなっては丸裸の貴方にとって、最大の強みであって最大の弱点だから。それぐらいは把握しているわよ」

 

 

 

 

 

 

「そうか…………なら、残念だったな」

 

雲月はその場で気の毒そうにうつむく。

 

「なに…………?」

 

幽香が険しい顔をする。

 

「まぁ、見て貰ったほうが早いだろう。おい、出番だ、さっさと出てくるが良い─────【聖剣の山吹】」

 

雲月の一言と共に、背後からザッ、ザッ、ザッ、と歩を進める男がいた。

 

 

 

 

 

 

「───────誰…………?」

 

「御衣黄からも聞いていないわ、あんなの」

 

「ひぃぃぃ!私のせいだ、私が厄を呼んだのかしら」

 

「ふははは、心配することはないぞ小娘。貴様らへ厄災が降りかかる運命(さだめ)は、ここに踏み込んだ時点で決定していたのだからな」

 

 

 

「──────拙者、吹田 山草(すいた せんさ)という者でござる。今から主殿の命により、お主らのお命、頂戴する」

 

金髪、金の和服、金の羽織のまぶしい出で立ちは、一面に咲き乱れるヤマブキソウに酷似している。

 

「聖剣……………?」

 

「山吹……………?」

 

「何人同時でも掛かってくるが良い、いざ尋常に勝負!!」

 

山草はそう言うと腰から吊るした鞘より刀を抜刀する。

鉄で作られた、両方に刃のついた刀。

それは空気に触れた瞬間に、真っ赤な焔で燃え上がる。

 

「あれが、聖剣……………!?」

 

「油で刀を燃やしている…………?」

 

「彼に合った刀を造らせるのは実に費用がかかったが、まぁ、そのぶんの働きぶりは見せてくれるだろうさ」

 

「───────────」

 

山草が黙って燃える刀身を構える。

 

「────────」

「────────」

「────────」

 

この瞬間に、消耗しきった彼女らは、一気にピンチへと追い込まれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…………あぁ……………ぐっ……………」

 

………………あの後。

藤原妹紅はボロボロになった身体を抱えながら、ゆっくりと歩いていた。

 

「がはっ…………うっ、づ…………菖のやつ…………最後の最後で自爆しやがった…………お陰で、もう、再生が…………」

 

妹紅の身体は勝手に再生するが、妹紅自身の体力が回復するわけではない。

リザレクションに体力を大幅に消費することもあり、連続再生で妹紅の体力はゼロになっていた。

さらに菖が自爆するに用いた手榴弾の爆発に巻き込まれ、また死んでしまったのだ。

13回目の蘇生を待っているのだが、もう体力がなさすぎて、再生が間に合わない。

死ぬことはないが、復活にはしばらく時間を必要とする。

 

「──────駄目…………だ…………」

 

歩けなくなってその場に倒れこむ。

こんなど真ん中で寝てて狙われないか心配だが…………まぁ、妹紅なら大丈夫だろう。

 

「悪い…………オオバ…………私では、ここまでが限界だ…………」

 

13回も殺されたことで妹紅の身体は満足に動ける状態ではなかった。

再生を高速で行っていたことで蘇生といっても不十分で大雑把な再生だった。

肉体の再構築に使うべき時間を短縮してしまっただけあって、その反動がすべてここに来ている。

元の状態に戻るには、かなりの時間を必要とする。

 

「ごめんな…………慧音…………」

 

藤原妹紅は、最後に一番伝えたい事を口にした後、静かに眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

──────彼女のその謝罪は、誰にも聞こえないというのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤原妹紅 再起不能

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが…………二の丸ね」

 

「あぁ。亦紅がいるという二の丸だ」

 

 

 

 

 

俺とアリスは全速力で走り回って、ようやくこの巨大な二の丸にたどり着いた。

三の丸はすでに通ったのだが、伏黒の言った通り、本当に陥落していた。

中で多くの兵が血を流して倒れていた。

俺はとりあえず一人で入り、アリスには城の外から敵が来ないか見張り役、ということにしてとにかくこの惨状を見せないようにして、俺は一人一人の熱を触れて確かめていたのだが、

その全員がもう手遅れだった。

冷えきった身体にもう命は宿ってなどいない。

全員の傷口が、俺が筆竜につけられた傷によく似ていた。

それから、鎌で斬られたような傷がある兵も。

 

─────彼らは獣人の山賊どうしの仲間ではないのか。

なのに、こんな不毛な殺し合いをして、何が楽しいのだろう。

こんなにも生産性のない命のやり取りはほかにあるのだろうか。

そもそも、命というのはここまで儚いものなのだろうか。

俺は小さい頃から「歴史から消える」という事実と隣り合わせで生きてきた。だから、ワーハクタクの里では命のたいせつさと人生の無情さを嫌というほど叩き込まれた。

でもこれは……………あんまりだ。

 

(あいつだけは……………絶対に許せない)

 

俺はそう決意して、そのまま三の丸を後にした。

 

(どうしたの?何かあった?)

 

(いいや、慧音さんも五輪華もいなかった。二の丸へ急ごう)

 

そう……………誰一人として、三の丸に生き物はいなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「───────────」

 

「青葉………?暗い顔をしているけど………」

 

「あ…………いや、何でもない。行こう」

 

「笠がないから、具合が悪いの?」

 

まぁ、確かにいつも被っているから違和感はするけど、それは問題ない。

 

「お願いだから、無理はしないで」

 

「それは…………約束できない。少なくとも、慧音さんを助け出すまでは」

 

アリスはあまり反発せず、素直に受け入れてくれた。

 

 

 

「この扉を開けたら、二の丸だよ。準備はいい?」

 

この先は間違いなく敵がちゃんと居る。

俺はとにかく、できるだけアリスを守れるように戦う。

考えることはそれだけだ。

 

 

 

「────────!?」

 

背後から凄まじい轟音がしたので振り向く。

すると、さっきまで俺たちがいた三の丸が大きな音と共に、跡形もなく崩落していく姿が見えた。

 

「───────なっ、」

 

「─────────あれはもう駄目ね」

 

そうか、中に居た連中は……………

彼らの冥福を心から祈る。

すまないが、俺たちには、もっとやるべきことがある。

一人一人埋葬している場合ではなかった。

 

 

 

 

 

「いいわよ。ここからが本番ね」

 

アリスは切り替えて覚悟を示してくれた。

 

「よし……………じゃあ行こう」

 

俺もそれのお陰で決心がついた。

刀を勢いよく引く。

 

「さて………………行くぞ」

 

……………八霖儚月流奥義、壁破り。

強烈な突きによって壁や扉を突き破ることに特化した奥義。

これでこの扉を突き破って奇襲を仕掛ける。アリスと俺しかいないからまだ敵には感知されていないはずだ。

 

「ぜぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「ギヤァァァァァァァァァ!!!」

「なんだなんだ!?」

「敵襲!敵襲だぁぁぁ!!!」

 

 

扉を破壊したことで舞い上がった埃煙で前が見えない。

無理やり城の外から俺とアリスで中へ侵入する。

 

「さぁ─────────」

 

中へ入ってきた敵に対して槍、剣、弓を向ける獣人たち。

大きな正念場といえばここぐらいだろう。

なら、一気に駆け抜けて、亦紅の元へたどり着き、亦紅を退け、そのまま本丸へ直行する…………!!!

 

「講義の時間だ──────!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあぁぁぁぁァァァァ!!!」

 

山草の一撃が空を斬る。

たとえ攻撃を外したとしても、波打つ焔の刃がフォローに走るので、総合的な攻撃範囲はかなり広い。

 

「くッ……………伏せなさい!!」

 

メディスンたちの前に滑り込むように出てきた幽香が焔の波を植物と日傘の二枚盾で防ぐ。

 

「───────っ、」

 

しかし、草木の壁が焔の手を止めるには至らず、幽香の日傘の真横を焼き尽くす。

 

「避けて─────!!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

「危ないっ!?」

 

間一髪、幽香の真後ろへ退避したメディスンと雛は炎の床から逃れることができた。

幽香の冷静な指示がなかったら黒焦げになっていたに違いない。

 

 

「これは……………最悪の相性ね」

 

有機物主体で戦う幽香と、あらゆる存在を焼き尽くす炎の剣とでは流石に相性が悪すぎた。

どんなに強固な植物の壁も、火が来ては根こそぎ焼き尽くされてしまう。

 

「──────ははは!どうだ、彼の剣は焔の聖剣、たとえ強力な妖怪であろうと、花を扱うのならまるで意味はない!」

 

雲月はここに来て最強の助っ人を用意してきた。

亦紅のことなどもうどうでもいい。だって青葉に負けるのだから。

負けてはないがそれでも互角。負ける確率がある。

ならば、絶対に負けない者を護衛にするに決まっている。

 

「聞いていた話と違うわね。斬馬刀の吾亦紅が椰子飼雲月の護衛と…………」

 

「あんなもの、もうただの時間稼ぎにしかならん。勝てないような護衛など傀儡にするに値しない。とりあえずテキトーに二の丸の防衛にでも置いておけば、勝手に死んで時間稼ぎになってくれる。時とはすなわち金だ、金稼ぎに扱えるだけまだ使い道はある」

 

最低ね、と幽香は内心で舌を打つ。

その横から、一歩、幽香の前に何かが踏み込む。

 

「自分が戦えないから人に助けられているのに、自分は助けてくれている人に感謝の気持ちもないの?」

 

「当たり前だ、護衛とは主を確実に守るのが役目だ」

 

「一人ではなにもできないから仲間を頼るんじゃないの?」

 

雲月に対して必死に訴えかけるのは、メディスン・メランコリーだった。

この中でもっとも背丈が低い、小さな小さな、子供のようなか弱い妖怪が。

強敵を前に一歩も引かないどころか、喧嘩を売り始めたのだ。

 

「なんだと…………?」

 

「いいの、一人で何できないのは私だっておんなじよ。それは決して悪いことじゃない」

 

「メディスン……………」

 

「だって──────弱いから。人間も、妖怪も、神様も、獣人も。一人ではなにもできないから、怖いから、弱いから、ちっぽけだから。私たちは互いに手を取り合って、集落を構成して、文明を形成して、歴史を創造するの。仲間を信じれないようなおバカさんなんて、私たちの敵じゃないわ!」

 

メディスンは嘲笑うように、いつも通りのでかい態度と、満面の笑顔で言い放った。

 

「貴様……………」

 

雲月が自分よりも圧倒的に小さいメディスンを睨み付けるように見下ろす。

 

「そうよ!私たちは、こんなピンチになっても、青葉やアリスや妹紅、プリズムリバーウィズHはもちろん、メディスンと幽香のことを信用しているわ!」

 

雛もそれに同調する。

 

「えぇ、貴方だったらこの時点で仲間を入れ変えるでしょうね。ちょっと不利になっただけで「勝てない」って決めつけてしまうから」

 

幽香も頷く。

 

「私は雲月…………この椰子飼を継ぐ者。椰子飼の後継者であるこの私の侮辱をするなど…………」

 

「いや、それは違うでござるよ、主殿」

 

山草が黙って聞いていた中、口を開く。

 

「山草…………?」

 

「拙者も主なくして生きれぬ身。お主の言う護衛とは主という仲間を持ってはじめて、そこに存在することを許される者。他人を斬るろくでなしに、本来生きる資格など存在しない。他人を斬ることに正義(りゆう)を与える、それが主の命に在る役割でござる」

 

「もういい、私の命令に逆らう気ならば、お前もクビだ!」

 

「正体現したわね、この人でなし!」

 

「黙れ!山草、お前はもう三の丸に向かえ、あそこに居るだろうあの三度笠を真っ二つに斬り殺してこ────」

 

「そうはさせないわ────!!!」

 

メディスンが細い針を投げつける。

それは正確にちくり、と雲月の腕に刺さる。

 

「な、なんだ!?」

 

「ふふっ。内緒~」

 

満面の笑顔が逆に恐ろしくなって、雲月は一歩後ずさる。

 

「ひひっ…………ぃぃ…………!!」

 

「アオハさんは、今の私の持ち主よ。絶対に、手出しさせやしないんだから」

 

「メディスン…………」

 

 

 

「─────私ね、嬉しかったの。私は初めて、にんげんに頼られた。「君の力が必要だから手を貸してくれ」って言われたの。にんげんは…………今も大嫌い。すぐにいらなくなったものは捨てるし、物を大切に扱わないし、子供の時しか私たちと遊んでくれない。意味を持って生まれた、同じこの土壌に在る同じ創造物を、ないがしろにして生きる人間が、私は大嫌いだったの」

 

メディスンは空を見上げる。

あの曇った雲の向こうに、かつての持ち主の姿が見えるのだろうか。

 

「でもね…………昔は大好きだった。本物の家族のように。生き物のように、大切に扱ってくれた。髪を鋤いてくれたり、抱いて寝てくれたり、汚れてきたらたまに洗ってくれたり。物を大切にしてくれる子供は、本当に私にとって家族のようにかげかえのない存在だった。アオハさんは、あの一瞬の夢を、私に思い出させてくれた。メディスンという名前を呼んでくれて、メディスンという女の子といっぱいお話をしてくれた」

 

彼女は感動した、大人になっても、人間は人形を家族の一員と思ってくれる彼に。大人になっても、物を大切にしてくれる人も居ると教えてくれた。

彼女にとって、初めて自分を頼ってくれた、必要としてくれた青葉は、自分にとって、第二の持ち主だったのだ。

メディスン・メランコリーという妖怪が生まれて初めての、家族。

 

 

 

「折角拾ってくれたのに、大切にしてくれたのに。お人形さんが持ち主を守ってあげられないなんて、そんなことはできないわよ。ぬいぐるみとお人形さんは、子供が良い夢を見れるように添い寝してあげる、守ってあげるのが役目なんだから…………!!」

 

メディスンの真後ろから涼しい風が強く吹く。

草木が大きく揺れ、土埃が舞い上がる。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

「これは………………」

 

「な、何が始まる気だ!?山草!!」

「承知したでござる」

 

山草が刀身を灼熱に包み、メディスンに向かって振り下ろす。

 

「あら、もう簡単には行かないわよ」

 

幽香が再び山草の前に出てきて、焔の聖剣からメディスンを守ろうと立ち塞がる。

 

「無駄な事を、山草の聖剣の前では、どんな植物だろうと灰となるのだ!」

 

幽香の植物に再び焔のカバーが覆い被さるり、草木が炎の波に飲まれる。

 

「ははははは!!!無駄だ無駄だ!仲間の信用など無用!必要なのは実績と実力だけ!それができない者はただ人形として使い潰されるのみだ!」

 

 

 

 

 

 

「─────人形は使い潰される物、ですって?」

 

 

 

暗い、重い声が響き渡る。

炎の中から、巨大な弾丸が飛び出てくる。

 

「……………っ!?」

 

山草が反射的にそれを弾き返す。

 

「思い出したわ。そういえば火にめっぽう強い植物もあったわね」

 

炎の嵐が止んだ後、その中から無傷の幽香と、その周囲を覆う、花のカーテンが現れる。

その花は燃えることなくむしろ元気になり、撒き散らした種子が成長し、周囲への影響力を強めていく。

 

「これは………………植物の種子!?」

 

雲月がまさかの現象に驚愕する。

 

「こんなのも知らないの?プロテアよ」

 

 

 

プロテアとは風の強くよく乾燥する地域に生息する花であり、その子孫の残し方はあまりにも特殊なため実に有名だろう。

それは【山火事】。

山火事が起こりやすい地域で生きるために、山火事に対して力強く生きるように進化していくその過程、子孫を残すために種子を飛ばすその作業を独特な形に変えた。

花が咲き、受粉が終わると、種子をつくり、それを閉じ込めるのだ。そして、山火事を待ち、その焔の熱に反応して種子を散布させる。

 

「花は蜜以外を舐めないことね」

 

 

 

 

 

「──────あなたにはお人形さんのことをイチから学び直してもらわないといけないようね。お人形さんは使い棄ての道具なんかじゃない。にんげんの家族(ともだち)なのよ。名前を与えられ、居場所を与えられた、立派な「活き物」なの。あなたみたいな人がいるから、お人形さんたちは幸せになれない…………私はアオハさんと一緒に、人形解放を必ず実現させるわ。彼こそが、その最後のチャンス。道端に捨ててあったただの人形を拾ってくれた、私の二人目の持ち主、そしてメディスン・メランコリーの初めての持ち主」

 

メディスンの背後から1体の人形が現れる。

そう、いつもメディスンと一緒に居る、あの小さな人形が。

─────それは、姿を変えて一気に人間の等身大へと膨張していく。

 

「──────今の私は、神門青葉の家族(ともだち)よ!」

 

 

「な、な、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

雲月が腰を抜かして地面に倒れる。

 

「──────なんと、これは」

 

山草も感心したようにその様子を見つめる。

人形は、なんと三度笠を被り、和服を着て、刀を握った一人の青年の姿へと変わったのだ。

その正体は言うまでもない。

メディスンの持つ、唯一にして最後の主。

自分を守ってくれる、そして自分が守るべき大切な家族。

持ち主のために、人形(とも)は今、全力で戦うべく立ち上がる。

その小さな身体から解き放たれる大きな力は、自分よりずっと大きい雲月に恐怖を植え付けた。

尻餅ついて後退する雲月を、メディスンは睨むように見下ろす。

メディスンの背丈より低い位置にある今の雲月の顔は恐怖で真っ青になっている。

 

 

 

 

 

主従(ともだち)回想と鬱憶と(メモワール・メランコリース)

 

 

メディスンは、笑顔で右手に持った刀を振り上げる青年の肩にまたがる。

それに気づいた青年は、メディスンの顔を見つめる。

 

「これからもよろしくね、アオハさん」

 

青年は黙って笑顔のまま頷く。

そして、メディスンはしっかりと彼の空いた左手を掴む。

青葉とメディスンが最初に交わした言葉に曰く、鈴蘭の花言葉は「幸せの再来」。

あの時の夢は、いまここで蘇る。

たとえ元の持ち主には見る影なくても、今は彼の暖かな手はそれによく似ている。

二人は互いの手を強く強く、握りしめる。

 

 

 

 

───────もう二度と、離さないように。

 

 

 

「や、やめ……………」

 

『もう遅いよ。お前は、俺の宝物を壊そうとしたんだから』

 

最後に、青年は機械のような音声を出すと、容赦なく模造刀を振り上げる。

 

 

 

「ひ、ひぃ………!!誰か、たす、け…………!!」

 

 

雲月は命乞いをするように手を伸ばす。

しかし、その手を握る手が、人形には残っていなかった。

片手に刀を取り、もう片方の手はメディスンの手をしっかりと握っていた。

 

 

 

 

 

 

「ぎやゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

妖怪をよく知らぬ雲月は、よくわからない種族が起こした意味不明の現象を目の当たりにして半狂乱になり、その悲鳴は途中で斬られるようにして中断された。

 

 

 

広場に響いたのは、飛び立った烏の羽音と。ゴン、という一発の撃鉄音だけだった。




遅くなりましたが、メリークリスマスです~V V
本編書いていていろいろ思ったんでしょうか、押入れから昔一緒に寝ていたキリンのぬいぐるみを出して、久しぶりに一緒にベッドに向かいました。
今から彼と一緒に、数年ぶりに添い寝したいと思います。



──────お願いだからみんな。

どうか、人形やぬいぐるみとは、いくつになっても遊んであげてください。


彼らもかつては私たちが愛した、一人の家族なのだから。
その「家族」という使命を与えられた人形たちには、必ず魂が宿り、その時の夢を楽しんでくれています。
一度一緒に幸せを分かち合ったのなら、最後まで………どうか面倒を見てあげて。

─────彼らを、捨ててしまわないで。

─────彼らを、忘れないであげて。




ここで、画面の前のあなたに、この花を一輪。

─────第一章のタイトルにもなった花、「マーガレット」です。





花言葉は、
















────────「私を忘れないで」。

なんか………どうしようかなぁって()

  • 知るかボケ
  • とりあえず………早く文編書きません?
  • 東方の18禁作品の執筆とかしないの?
  • サボってないで執筆しろ
  • アボカド食べる?
  • その他(その他ってなんだよ)
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