東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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赤の華・斬馬刀の吾亦紅

 

「どいてくれ─────!!!」

 

神門青葉とアリスの二人は、全速力で走り回りながら、椰子飼城二の丸の中で待機していた兵士たちを次から次へとなぎ倒していく。

青葉は模造刀を自在に振り回して獣人兵たちをどんどんと気絶させていき、余った敵の処理や青葉のフォローは後ろからついてくるアリスが行っていた。

 

 

 

「はぁっ、ぜやぁぁっ!!」

 

正面からやってきた二体の敵を縦斬りと突きで吹き飛ばす。

 

「くっ、」

 

横から一気に迫ってくる10人もの兵士たち。

 

「八厘霖儚月流奥義、壁破り~獣!!」

 

真ん中の一人に強烈な突きを見舞い、その衝撃で後ろの9人をまとめて撃破する。

 

「よし、一階攻略だ!二階へ急ぐよ!」

 

休んでいる暇などない。一刻も早く着かなくては。

奇襲戦法を取ったのなら、作業の素早さが命。青葉は複数の相手に対して不利を取ることが多いため、迎撃に走る手が少ないうちに片付けてしまわなくてはならない。

 

「青葉!上から来てるわ!」

 

「なっ…………!?」

 

青葉たちが駆け上がる階段の上から、兵士が一気に駆け降りてきた。

 

「青葉、一旦引きましょう、一階に降りて一人一人丁寧に…………」

 

「いや、やる!!」

 

青葉は自ら兵士たちに走りよる。

 

「嘘っそ!?」

 

アリスはもう耐えられなくなって階段を降りて一階に逃げる。

 

「邪魔しないでくれ、こっちは急いでいるんだ…………よ!!」

 

一番目の前の敵に体当たりを食らわせ、着物の内側に剣を差し込み、無理やり持ち上げる。

 

「うぉぉぉりやゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

細身の身体とは思えない馬鹿力で密着した敵を背負うように投げ飛ばし、天井に大穴を空けた。

 

 

「背中を見せたぞ、いまだかかれー!!」

 

背負い投げした青葉の隙を狙って一気に兵士たちがかかる。

 

「させるか…………よッ!!」

 

まず一人、階段を一気に飛び降りてくる。

青葉は横を向いて階段の上で寝転がり、飛び降りてくる敵の攻撃を躱す。

 

「うぉぉぉぉぉとととと!?」

 

飛び降りてきてからまっすぐに落下してくる敵に対して、

 

「はぁぁぁ!!」

 

寝転がったまま身体を横に倒し、ひねった時に生まれた力を利用して、寝たままの状態で空中から飛び降りてくる敵を蹴り飛ばす。

蹴っ飛ばされた兵士はさっき投げられた兵士の真上にある天井に激突してから落下。

 

「にぃぐっ…………!!」

 

寝転がった体勢の青葉を狙ってやってくる敵に対処するため、一番前に居た者の足首を掴む。

 

「なっ!?」

 

「転んで!!」

 

また身体を独楽のように横へ転がし、足元を払って転ばせる。

青葉の上に覆い被さったように倒れていた兵士が青葉の首を掴む。

 

「ぐっ……………離せ、この!!」

 

階段に対して背骨が平行になるように身体を反らし、前のめりになった兵士の腹を両足で押し出すようにしてひっぺがす。

また一人階段の下へと落下する。

 

「ふっ、はっ、せいっ!」

 

階段の下へ後転し、刀を広い直し、上からやってくる兵士の顎を叩き、横から着た二人の相手のうち右側の兵の側頭部を殴り付けて壁にぶつける。

左にいるもう一人を蹴り飛ばし、階段から落とす。

 

「八霖儚月流奥義、縁側抜き!!」

 

そして、青葉は階段そのものを横に斬る。

模造刀で斬れるのかは怪しいところだったが、階段は破壊され、上に乗っていた兵士は全員落下する。

 

「屋根穿ち!!」

 

天井を勢いよく斬りつけると、砕けた一階の天井から箪笥が落ちてきた。

おそらく二階の床に置いてあったものだろう。一階の天井が破壊されたことで降ってきたのだ。

 

「よっ、」

 

青葉は壊した階段の代わりに箪笥の上に乗り、さっきの背負い投げで破壊した孔から三回へと登る。

 

「アリス、」

 

アリスも登ってこれるように手を差し出す。

 

「えぇ、わかっ─────」

 

アリスが手をだそうとした瞬間、

 

「青葉!!!」

 

「──────え?」

 

青葉は横を見る。

すると、正面から凄まじい速度でやってきたなにかと激突し、青葉はアリスの視界から横向きに消滅していった。

 

 

 

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

石壁が砕けて、青葉は外に投げ出される。

白壁に黒い瓦のシンプルな城壁に囲まれただだっ広い曲輪の中へと転がっていく。

 

「───────いってぇ…………」

 

脇腹を抑えながら青葉は立ち上がる。

緑生い茂り、砂利道の整理された綺麗な区画だが、そこに兵士は誰もいなかった。

と、そこへ─────

 

 

 

 

 

「待ちかねたぜェ……………神門青葉ァ!!!」

 

ドスン、と巨人が着地した時かと思うように地面が揺れる。

 

「お前は─────!!!」

 

青葉は目の前に現れた敵を睨み付ける。

血のように赤い髪と着物に身を包み、はだけたその赤着物から露出した、鍛え上げられた筋骨隆々とした逞しい肉体。

そしてその豪腕に握られたのは自分の身長をも上回る、黒塗りの巨大な両刃の大剣。

 

 

 

「吾妻亦紅………………」

 

赤の華・斬馬刀の吾亦紅が現れた。

 

「相変わらずやるなァ、お前さんはよォ。こんだけの数を一人で…………」

 

「一人じゃない、仲間たちの力だ」

 

「そうかい。そう謙遜すんなって、お前さんは俺と互角にやり合える猛者なんだからなァ」

 

「なんで今ここに来たのか、今さら訊いたりしたら怒るか?」

 

青葉にも、彼と和解する余地はないようだ。この組み合わせでの遭遇が起きたら、やることはひとつに決まっている。

 

「…………ッたりめェだ。忘れて貰っちゃあ困るぜ。あんときの決着、まだついてなかったよなァ」

 

「…………だな。こっちとしても、そのあたりが有耶無耶になって終わるのは腑に落ちない」

 

「クハッ、いいねェ。お前さんと仲間どうしになれたら良かったんだがなァ。どうも、そうはいかねぇみてぇだな」

 

亦紅も言葉を尽かして、その力強い体躯に相応しい、彼の象徴とも言える巨大な斬馬刀を持ち上げ担ぐ。

 

「こっちはかなり急いでいるんだ。悪いけど、お前をじっくり楽しませるほどの余裕はないよ」

 

「いいぜ、構わねェよ。決着付きゃあァ、それでいい。お楽しみ回は前の時に精算しきってんだよ」

 

亦紅が一歩一歩、間合いを詰めていく。

呼吸の回復が終わった青葉も、自ら亦紅の間合いへと一歩ずつ近付いていく。

互いの間合いに入ったタイミングで、二人は脚を止める。

 

「その代わり────俺ァ本気で行かせて貰うぜ。前みてェに、手加減なんざもうしてやんねぇからなァ」

 

「あぁ、こっちもそのつもりだよ。前みたいに、ノリよく対等に拳でやりあったりする気はないからな」

 

青葉はもう臨戦態勢に突入した。

ここからは、もうどんな攻撃が入っても防ぎに入り、攻撃を返してくる。

 

「てらんでィ、やってやろうじゃねェか」

 

 

 

亦紅も大剣を構える。こっちも青葉の攻撃に対処する術は用意しきった。

後から遅れてこの場にやってきたアリスがその様子を遠目に見つめる。

 

「アリス、君は手を出さないでくれ。これは、」

 

青葉はアリスに気付いているが見向きもしない。その目はもう亦紅以外のなにも見えていない。

 

「漢と漢の……………」

 

亦紅も190センチ越えの上背から青葉を見下ろしにやけ面を見せる。

彼らが待ち望んでいた瞬間が、今始まる。

 

 

 

「真剣勝負なんだからな!」

「真剣勝負なんだからな!」

 

 

 

「行くぞォォ、亦紅ォォォォォォ!!!」

 

「喧嘩上等ォ!!かかって来やがれ青葉ァァァ!!」

 

亦紅の懐に入り込む青葉の神速の居合い斬りと立ち止まったままの亦紅の激烈の一閃が激突する。

衝撃で巻き起こった暴風が草木を揺らし、アリスの洋服をたなびかせる。

 

 

 

(な、なんて力なの…………!?こんなのが里で戦っていたわけ?)

 

無論、この二人は近接戦闘においては災害クラスの強さを誇るが、二人は前よりもさらに強くなっていた。

里に迷惑をかけるかもしれない、つまり堅気(カタギ)が横に居る状態では本気を出したくても出せなかった。

しかし、この城には戦士しかいない。

加えてこの空間には自分たち二人しかいない。

周りにかける迷惑の心配が要らないのなら、必然的に二人のデフォルトの戦闘力は前回に比べて倍増するのは道理だ。

 

 

 

「はぁぁぁぁっ!!!」

 

まず、大剣を弾いた青葉の三連撃。

速度においては青葉は圧倒的に亦紅よりも速い。

あの永琳の弟子とはいえ、なぜそれほどまで速く動けるのかは不明として、とにかく青葉は生まれつき動きがとにかく兎のようにすばしっこい。

圧倒的な速度と手数で敵を支配し、反撃を取る隙間すら与えないのが青葉の戦法だ。

一方で亦紅の方は堅く強い。巨大な剣は自分より大きな刀身を携えている。

ならば構えているだけで勝手に攻撃を防御するのだ。

青葉よりも何倍も力が強い亦紅は我慢強く青葉の攻撃をすべて凌ぎ……………

 

「くっ、」

 

「オオォォォォォアアァァァァァ!!!」

 

ここぞと言うときに必殺の一撃を叩き込む。

真逆の戦法を取る二人の相性は互いに最高にして最悪。完全に在り方は、光属性と闇属性の関係性そのものだ。

両方が互いに対して圧倒的有利を取りつつ圧倒的に不利を被る。

 

「本気出す、つったな。俺の本気がどんなもんか、見せてやろうじゃねェか!!」

 

「──────なんだ?」

 

亦紅が両手で握っていた大剣を右手で持ち、左手は刀身の平らな横面の部分を抑える。

そして腰を落とし、力を溜める。

あまりのパワーで地面に亀裂が生じる。

 

「食らいやがれ、俺流(おれりゅう)砕陸割海裂空斬(さいりくかつかいれっくうざん)!!!」

 

力を溜め高く飛び上がり、その大剣を凄まじい力と速度で振り下ろした。

 

「ぐっ……………!?」

 

空から振り下ろされたことで風が斬られ、吹き荒れる暴風で、青葉の抵抗が無効化される。

地面に大剣が激突したことで生じる振動で青葉の動きが封じられる。

 

「どぉぉぉぉっ、ルラァァァァァァァァ!!!」

 

そして、地面を斬ったことによる衝撃波が地盤をちゃぶ台返しするように砕きながら、縦横無尽に駆け抜け、動けない青葉に正面から激突する。

 

 

ちゅどーん、と地面からとてつもない高さの爆雲を上げて辺り一面が粉砕される。

岩盤、瓦礫、地盤の破片、砂埃、土埃。すべてが舞い散る。

比較対象が岩盤ということもあり、おおよそ人間では絶対に形を保てないようだろうことが予想される一撃。

 

「なんだそれ。あんまりすごくないな!!」

 

煙の中から青葉が剣を振り上げた状態で現れた。

 

「──────ぬっぅぅぅ!?」

 

亦紅もまさか無傷で帰ってくるとは思ってなかったようで、早速額に冷や汗を流しながら驚愕する。

 

「依ねぇなんて、岩のひとつやふたつ、当たり前のように真っ二つにしていたよ!物差しで鉄の剣折り曲げたときはさすがにドン引いたね!」

 

「ハッ、俺なんて素手で岩持ち上げられるかんな!!」

 

大剣を地面に差し込み、両手で瓦礫の一部を持ち上げ、青葉に投げつける。

 

「はぁぁぁぁぁぁ、っっっうぉおぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

「──────はぁぁぁぁぁ!?」

 

さすがにそこまでとは思ってなかったようで、青葉は口を開きながら驚く。

瓦礫の塊は青葉に直撃する。

 

「どうだ!!こんぐらいは朝飯前だぜ!」

 

亦紅はガッツポーズをしてみせる。

 

 

 

「───────くっ…………」

 

「───────は?」

 

だが、今度は亦紅が逆に驚かされる。

どういうわけか、青葉に直撃した瓦礫が青葉に張り付いているのか、地面に落ちない。

 

「ふぅぅぅぅぅぅ………………」

 

青葉はなんと、投げつけられた瓦礫をその細腕でキャッチしたばかりか……………

 

 

 

「お返しだ……………アァァァァ!!!」

 

亦紅に投げ返した。

しかも、亦紅が投げたときよりもさらに速いスピードで。

 

「ぐぉぉぉぉわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

究極の一発をさすがに防ぐビジョンがなかったのか、亦紅は身体を転がして避けた。

地面に激突した瓦礫は粉々に砕けて無数の小石へと姿を変えてしまった。

 

「チッ、メチャクチャな野郎だなァ」

 

「八霖儚月流・稲妻落とし~遠雷!!」

 

立て直し中の亦紅への奇襲ともいえる高速の攻撃。

 

「きかねぇぇぇよ!!!」

 

それを斬馬刀を盾のように構えて防ぐ。

やはり亦紅の防御力は非常に高いようだ。

 

「十文字払い!!!壁破り!!!」

 

構わずガードを崩すために放たれる奥義の三連撃。

八霖儚月流は真っ直ぐの縦斬りと切り上げるような袈裟斬り、そして突きを重視した流派。

今のコンボにはそのすべてが入っていた。

十文字払いの袈裟斬り上げからの縦斬りの二連撃、そして派生の壁破りによる突き。

それらすべてを重ねても亦紅のガードを崩すに至らなかった。

 

「俺流・穿地滅水堕雲斬(せんちめっすいだうんざん)!!!」

 

その硬直に対して、亦紅は自身の持つ攻撃のなかで、可能な限り最速の技を出して反撃をする。

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」

 

青葉はなんとか防いだが、勢いまでは殺しきれず、城壁のほうまで吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「が…………あぁっ…………!!!」

 

つい昨日竜胆筆竜にやられたところが打ち付けられ、青葉はまたダウンする。

 

「カウントを一二三(ひふみ)と数えてぇところだが、待ってる暇はねェつったよな!!」

 

亦紅は構わずに青葉へ駆け寄る。

亦紅の巨体を支える脚はもちろん腕に負けぬほど屈強なものだ。

そこからの踏み込みは普通の人間よりはずっと速い。

この程度の距離はあっという間に詰めて、青葉に強烈なストレートを浴びせた。

 

「ぐぅぅぅ…………ッ!!!」

 

一撃を受けて青葉の意識が揺れる。

その隙に青葉の頭を掴み、持ち上げる。

そして、その豪腕で抵抗できない青葉の腹に何度もパンチを浴びせる。

 

「オラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

 

岩をも砕くパンチの連続攻撃。

常人ならとても耐えられたものじゃない。

青葉の悲鳴や苦悶などは聞こえない。頭を鷲掴みにされているからだ。声がくぐもって聞こえない。

 

「いっくぜぇぇぇぇ、こいつでトドメだ」

 

弓のように亦紅が腕を引く。

 

 

 

「やめて、青葉!!!」

 

アリスが助けに向かおうとするが、

 

「─────────」

 

亦紅の手で表情のわからない青葉が黙ってアリスに手の平出して静止の合図を出す。

それでアリスはまた止まる。

そうだ、ここに来たってアリスにはなにもできない。

 

「俺流・破土潰波抉風掌(はどかいはけっぷうしょう)!!!」

 

亦紅は壁に背を向け、そのままその方向に青葉を持っていく。

その刹那に、亦紅の強烈な渾身の右ストレートが青葉の身体を間違いなく直撃した。

青葉はまた遠くへ吹き飛ばされ、さっきの壁と反対方向の壁に叩きつけられた。

へにゃり、と身体を倒して、地面にドサリと倒れる青葉。車に連続で40回跳ねられて最後に電車に突撃されたようなものだ。

生きているはずがない。

 

「青葉──────!!!!!!!」

 

至近距離で見ていたこともあり、青葉が絶対に躱せてなどいない事実は、アリスは十分周知していた。

 

「べらぼうめェ、せめて真剣握っていりゃあ、勝ち目はあったのによォ。ま、楽しかったから俺ァ幸せだぜ、ありがとな。青葉」

 

亦紅は大剣を拾い、その場を立ち去る。

 

「青葉……………」

 

アリスが膝から崩れる。

そして、亦紅を見つめる。

 

亦紅もアリスの視線に気付き、目を見る。

 

「心配すんな。俺ァ、あいつとケリ着ける為に来たんだ。お前さんに興味ァねぇよ」

 

でも、アリスの絶望しきった顔は亦紅の顔など見ていない。

自分が狙われないとかじゃない。目の前で友人が死んだ、ないしは二度と満足に動けない身体にされた事実が受け入れられないのだ。

これは夢かと頭を振っている。

 

「あ、そうそう。お嬢を助けたいってんだろ?アイツの顔に書いてあったぜ。なら、俺がお前さんと敵対する要素ぁねェ。俺ァ、お嬢の護衛が役目だったからな」

 

「────────青葉…………?」

 

「おいおい…………頼むから美人さんだけは怖さないでくれよな嬢ちゃん────その梓なんだがな、本丸の地下に地底都市があるから、お嬢を助けてぇならそこに行ってこい。俺ぁもうお嬢との契約は終わったからな。俺ぁ行くつもりぁねェが…………お前さんらは気を付けろよ。街があるうちは心配ないが…………奥にあるピッカピカの城にゃあ手ェ出すんじゃねぇ。普通に人死ぬからな、あそこ」

 

吾亦紅は最後に意味深な情報だけを言い残して、アリスの前から立ち去った。

 

 

 

「まぁでもどうせ、あのバカは死に損なうんだろうなァ。生まれついて神様ついてやがるかんな。まぁでも、俺の勝ちってことだけはわかったんだし、俺はそれで結構…………」

 

 

 

 

 

 

「すみません、亦紅さん」

 

「んぁ?」

 

「吹っ飛びやがれぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「ぐぅぉぉぉぉぉわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

亦紅が顔面に強烈な一撃を受けて空を飛ぶ。

地面に転がってようやく亦紅は気づいた。

ざっ、と自分の前にもう復活してしまった青葉が現れてしまったことに。

 

「ま、マジかよ…………不吉なこと言わなきゃよかったぜ」

 

「いやいや、起きたもなにも…………効いてないから、さっきのラッシュ全部」

 

青葉は当然のように亦紅を嗜める。

 

「──────は?」

 

「俺ね。修業時代はさ、依ねぇっていうお箸で大木を真っ二つにするような姉貴分に毎日木刀で殴られる生活送ってたんだよ。お箸で大木斬るやつに、木刀で殴られるんだよ?そりゃあさ、嫌でも打撃をいなすのは得意になるでしょ」

 

「───────────」

 

亦紅は何一つわかっていなかった。

確かに、青葉の見た目自体はそこら辺の優男。有り体も、肩書きも、すべてが平凡。戦闘力も亦紅と大差はない。

しかし、生い立ちがあまりにも特殊すぎて、亦紅の常識では予想できなかったのだ。

さすがの亦紅も、割り箸で大木を破壊することはできない。

だから、要はスケールが違いすぎたのだ。

亦紅にとって青葉はかつてない強敵である。

もちろん青葉にとっても亦紅はボスキャラだ。

 

 

ただし、これまでに青葉の見てきた強敵、すなわち青葉にとっての「ヤバイやつ」の定義、その水準から考えてみると、亦紅ぐらいの相手は「わりと普通に見かける」程度の相手なのだ。

だから、「勝てない」が、「強い」とはまったく思っていないのだ。

なぜなら、他と比べるとあまりにも弱すぎるから。

 

「俺に打撃を浴びせたかったら、割り箸大木破壊(依ねぇ)ぐらいの力か、筆竜みたいな反応できないくらいの速い攻撃じゃないと通用しないぞ。俺、見える打撃は効かないからね」

 

青葉は見ての通り、苦しそうな様子は見られず、きょとんとしていた。

 

 

 

「ははは…………このバケモノが…………!!!」

 

苦笑いしながら、亦紅は立ち上がる。

さっきの連撃で勝つ予定だったので、すでに亦紅は自身の全力を使ってしまっていた。

 

「その言葉そのまま返すよ」

 

対して青葉は序盤戦のような様子で剣を取る。

 

 

 

 

「───────八霖儚月流!!!」

 

 

絶好のチャンス。

青葉にとってはこれこそが確実に仕留められるチャンス。

一気に飛び上がって、必殺の一撃を亦紅に浴びせようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし────────青葉は決定的な過ちを犯した。

 

 

 

 

 

(馬ッ鹿野郎ォォ!!その攻撃は、既に見てんだよ、俺ァァァァ!!!)

 

対する亦紅は冷静に青葉の動作を見ていたので、この一撃に対する攻略を知っている。

 

 

 

 

 

 

「稲妻───────」

 

「俺流───────」

 

 

青葉が止めの一撃に選んだのは稲妻落とし。

火力を優先した結果だろう。

間違いなく、当てれば仕留められる。

だが、その稲妻落としは、さっき亦紅に使ったばかりなのだ。

しかも、この稲妻落とし、青葉と亦紅が初めて対峙したときにも使っている。

亦紅にとって、「これが青葉の十八番」という認識。

対策なんてとっくに練られている。

 

 

 

 

 

(この一撃は、躱した後の隙があまりにも大きい。そこを確実について、ぶった斬る!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落とし──────!!!」

 

青葉の強烈な一閃。

本当に剣ごと砕きかねない強烈な一発は必殺の威力を伴って、亦紅の頭を通りすぎた。

亦紅は当たる寸前で身体を反らし、この一撃を躱したのだ。

 

「躱した、俺の勝ちだァァァァ!!!」

 

躱したこと、反撃が確定した、確実な勝利が目の前にやってきたことの歓喜に酔う亦紅。

 

「こいつで終いだ、砕陸割海裂空斬!!!!」

 

 

 

 

 

亦紅の反撃。

剣を振り下ろした後の青葉には、剣をもう一度振るう余裕はない。

時間がなさすぎる、間に合うはずがない。

横から助けでもこない限り、青葉がこの状況を打破する方法は無─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────次の瞬間、

 

 

 

 

ふわり、と青葉の身体が浮いた。

全体重を前にかけながら振り下ろす奥義、稲妻落としを空振った青葉は、そのまま全体重を滑らせて、前に回る。

剣を振った時の勢いで空中で前に一回転し、亦紅の反撃を回避した。

 

 

 

 

 

「なんだ……………これは……………!?」

 

達観した表情で、青葉は回転する。

目を閉じた状態で、眠るように。身体を180度前に回転させた時に目を開き、亦紅を睨み付ける。

その時、亦紅は悟った。そうか、浅はかだったのは自分のほうだったのだと。

自分は、踊らされたのだ。

むしろ相手は、自分より考えも作戦も、術中も術も、あらゆる点において一枚上手だった。

完全に、裏をかかれたのだ。

 

そう、青葉はわざと攻撃を外すようにした。

青葉も亦紅が強敵であることを知っていたから、三度も同じ技を出せば対策してくることぐらい予想はつく。

だから、それを逆利用した。

二度見た稲妻落としを再度使用し、それに対して対抗策を練ってきた相手に対して、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────蹴り!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稲妻落としの勢いのまま前に回転し、そのまま踵落としを浴びせる…………

青葉が修業の末にふと思い付いた奥義「蹴り」。

つまるところは仕込み技。

奥義の最後に仕込み、奥義の後の力を利用して身体を使い、余った力で蹴りに派生するというもの。

隙を消すことができ、しかも、対策を練って回避して最速の反撃を試みた相手に一撃を与える、まさに初見殺し。

八霖儚月流の三要素…………前に力を入れる縦斬りには前回りからの踵落とし、回り込む動きを放つ袈裟斬り上げには、回し蹴り、そして前進力を作る突き技には突進後ろ蹴り。

それらを仕込むことで攻撃の最後に派生して、まだ見ぬ新たな奥義を産み出すのだ。

 

 

 

「───────ぶわぁぁぁぁぁ!!!」

 

青葉の踵落としは亦紅の頭を直撃し、亦紅も壁際まで弾き飛ばされる。

 

「─────ぐっ…………ッ!!!」

 

亦紅がそうであったように、青葉も容赦はしない。確実に仕留めるために止まった亦紅に走りよる。

 

「亦紅────!!!!」

 

「ぬっ……………!?」

 

「俺の…………勝ちだぁぁぁぁぁ!!!」

 

青葉の神速の斬り上げが亦紅の顎を直撃した。

 

「八霖儚月流奥義・顎割り~龍頸(りゅうけい)!!!」

 

青葉の得意技、顎割りの強化版。

 

「楽しかったぜェェェェェェ!!!!!」

 

亦紅は壁を突き破って外へ投げ出される。

壁が崩壊したときの土埃が止んだ後、亦紅の姿は消えていた。

おそらく、堀の下へと落下したのだろう。

 

 

 

「─────ふぅ、」

 

戦いは青葉の逆転勝利で終わった。

 

「青葉────!!!」

 

アリスが青葉に駆け寄ってきた。

 

「あぁ、アリス。ちゃんと勝てたよ…………もごぉぉっ!?」

 

アリスが青葉の頭を腕の中に抱き込んで離さない。

 

「良かった………本当に死んだと思ったわよ…………」

 

「もごごごごごごごごご(訳:離して、息が苦しい)!!!」

 

必死に抵抗する青葉だが、アリスには何言っているかわからない上、それどころでもないので何も聞こえない。

だから抱き締める力も一層強くなる。

 

「ごごごももぉぉぉ(痛い痛い痛い)!!!」

 

「もう、二度とこんな無茶はしないで。これからはちゃんと私たち二人で戦いましょう」

 

「ぶもぉぉぉ、おおんおおん(わかったから離して)!!」

 

 

 

慧音を一刻も早く助けるために、ものすごく急いでいるはずなのだが、結局このやり取りで2分ぐらい無駄にしてしまう青葉とアリスであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤の華・斬馬刀の吾亦紅 神門青葉に敗北

 

 

残る剣客、1人。

 

なんか………どうしようかなぁって()

  • 知るかボケ
  • とりあえず………早く文編書きません?
  • 東方の18禁作品の執筆とかしないの?
  • サボってないで執筆しろ
  • アボカド食べる?
  • その他(その他ってなんだよ)
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