東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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人の剣客

 

「ぐっ…………!!」

 

「はっ……………!!」

 

あの後、メディスンの攻撃で雲月が失神し、1人残された山草が1人でメディスンたちと対峙していた。

メディスンは今の一撃で力を使い果たし、地面に座り込んでしまっていた。

それを支える雛を背中に、風見幽香は1人で吹田山草と戦っていた。

 

「くっ、これは強いわねっ」

 

だん、と幽香日傘が振るわれる。

しかし、その一撃は手で防がれる。

 

「しまっ、」

 

「燃えろ!!!」

 

「がぁぁぁぁぁっ!!」

 

炎の一閃が幽香を直撃する。

刃は届かなかったが、その刀身から伸びる炎は確実に幽香の頬を焼き払った。

 

「くっ…………女の顔を焼くなんて…………」

 

「主殿はこの通りだが、雇われた限り、主が倒れようと拙者は指名を全うする」

 

「そんなもの、出来たらの話でしょう」

 

「やってみせるでござるよ。そのために、拙者は人を斬るのだから。人を1人斬り捨てたその先に、2人の命が救われるのならば、拙者はこちらの道を取る。この戦いを邪魔するのであれば、容赦はしない!」

 

山草が振り上げた刃から、螺旋状に焔が渦巻く。

 

「…………ヒノカグツチの神よ。この剣、焔の刃を更に燃え盛らせたまへ。この剣の指す道しるべ、行く手を遮るものには日輪を浴びせる!」

 

「幻想・花鳥風月嘯風弄月!!」

 

幽香の足元から花畑が満開に広がる。

花の波が地面を侵食していく。

 

「聖剣・炎者の黄昏待刀(レーヴァテイン)!」

 

それに対して山草は燃える剣を打ちおろす。

焔の渦は花畑を焼き尽くし、花の向こうに立つ幽香へと迫る。

 

「そ、その火力は予想外…………ッ!!」

 

幽香が身を翻して避けようとするがもう遅い。

 

「炎術『ファイアボルトウィッチドール』!!」

 

横から、山草の炎よりも更に紅い焔が割り込んで、山草の煉獄を防ぎきった。

 

 

 

「─────────?」

 

「幽香─────!!」

 

「大丈夫か!今助けに来たぞ!」

 

アリスと傷だらけになった青葉が飛び込んできた。

 

「この人数差ではさすがに不利か、撤退するとしよう」

 

気絶している雲月を担いで、山草は撤退を試みる。

 

「待て、逃げるつもりか!」

 

「傭兵は主を守るのが(まこと)の命。主の為であれば敵に背中を見せることも厭わない、それが拙者でござるよ」

 

「椰子飼雲月…………亦紅はもう倒したぞ、って言いたかったが…………どうやら新しいのを雇っているみたいだな」

 

「そうか、彼はもう敗れたのか。童子(わらし)、お主ならばあの御衣黄ですら退けるだろう。そのときは…………待っているぞ、花の都でな」

 

「花の都………………?」

 

「達者でな、梓殿とお待ちしているでござる」

 

 

 

山草が背中を向けると、焔の壁が立ち上り、青葉たちの行く手と視線を阻む。

壁が消えたとき、そこにはもう山草と雲月の姿はなかった。

 

 

 

「───────メディスン、雛、幽香さん」

 

「アオハさん…………大丈夫だった?」

 

「私は大丈夫よ、青葉とアリスは?」

 

「見ての通り、大丈夫じゃないわよ顔が」

 

よしつまり元気ってことだな、と青葉は頷く。

 

「おわったー?」

「怪我人はもう助けたわ」

「ひぃー、こっちの骨がおれるところだったよ」

「でも、楽しかったわね!」

 

プリズムリバーウィズHも合流してきた。

彼女らは怪我人たちに音楽を聴かせて眠らせ、後始末役を担当していたのだった。

彼女らは戦っているつもりはない。なんか自分達が野外コンサートをしている時に勝手に目の前で戦いが起きていただけだ。

 

 

 

「よし、人数もまぁだいたいは揃っているし、本丸へ向かおう」

 

「妹紅はどこ行ったのかしら………?」

 

「あぁ、妹紅なら大丈夫だ。きっと無茶して休んでいるんだろう。彼女に無理をさせるくらいなら、こっちは先に行く」

 

青葉は妹紅に何が起きたのかは知らない。

だが、とりあえずは大丈夫だろうと言い聞かせて、気になる所を書き消した。

 

「幽香、どうして解放されたの?」

 

そういえば、雛は幽香を探している時に青葉たちと出会ったのがはじまりだった。

 

「…………ついてきて、本丸へ向かえばわかるわよ」

 

幽香は1人で青葉たちの前を歩きだし、先を急ぐ。

 

「ちょ、おい…………?」

 

「大丈夫よ、本丸に雑魚敵はいないから」

 

「強敵はいるってこと?」

 

「えぇ、それこそが私を捕らえていた長ドスの御衣黄ってこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────椰子飼城本丸。

 

ここまで来るのに結構苦労したなぁ。

正面扉をくぐり、今は三階。天守閣まではもうすぐだ。

お城は基本的に上六階と地下一階の七回構造。つまり今一番上の半分まで来ているわけだけど…………

ここまで本当に敵が1人も出てこず、荒れた跡もなくひっそりとしている。

なんだか、これはこれで不気味だ。

 

 

 

「───────花の都って、なんだ?」

 

幽香さんに訊いてみる。

あの金髪の男の言っていた不思議な場所の名前。

 

「花の都?」

 

どうやら、幽香さんも知らないようだ。

 

「あの大男がさっき言っていたわ。この地下に都市があるって…………」

 

アリスがぽつりと口を開く。

 

「マジで…………?」

 

それって…………ここって本丸とは言われているけど、ここそんなに重要じゃないんじゃないの?

絶対に梓ちゃんここにいないじゃん!!!

 

「まさか…………こんなに広いとは思わなかった」

 

 

 

 

 

(はい、めちゃくちゃ大きいですよ。

たぶん、全部歩いて回りきるのに二、三時間は平気でかかると思います)

 

 

 

 

 

そうか、アレはそういうコトだったのか。

この城じゃなくて、地下にあるという地底都市のほうの話をしていたのか伏黒は。

 

「まぁでも、どのみち御衣黄とは対決することになる。近い相手から片付けていかないと」

 

「それもそうね」

 

さて階段を登ってきて、もうすぐ着くか。

 

 

 

 

「──────そういえば、幽香」

 

雛が呟く。

 

「どうしたの?」

 

「無事に本丸へ送り届けるって、どういうこと?」

 

……………はい?なにそれ、

 

「?」

 

「ほら、青葉を本丸へ安全に送り届ける事と引き換えに解放されたって、」

 

───────待ってくれ。

俺は、今、何をされているんだ?

そして、その指示にはどんな意味が含まれているんだ?

ていうか、いま幽香さんは何をしているんだ?

 

「それって…………」

 

「さて、着いたわよ」

 

幽香さんはそう言って目の前に広がる、ひときわ大きな襖を両手で開くと、俺の腕を掴み、その中へと引きずり込んだ。

 

「うわっ…………!?」

 

前のめりになってバランスを崩しながら俺はその広間の中へと入る。

畳敷きとはまるで思えない、ありえないくらい広い部屋だ。

広さだけで言うなら、外の世界の資料で読んだ「体育館」というものに近い。

三階にはこの部屋以外無かった。

三階の広い空間はここで埋められているわけか。

 

「──────連れてきたわよ」

 

「おぉ、ゆうかり~ん!おつかれ~、客引きご苦労だったなぁ!」

 

そのだだっ広い部屋の奥に、小さなちゃぶ台が一つ。

そして、その横に、座布団も敷かず代わりに畳んだ羽織を敷いてその上に座ってくつろいでいる1人の人影がいた。

 

 

 

「──────────なっ、」

 

初めて見る顔に俺は驚いた。

萌黄色の髪に、前髪に細い黒のメッシュが刻まれている。

山吹色の瞳は輝きに満ちており、姿勢が悪いものの座高の高さと脚の長さから、慎重は六尺は確実にある事がわかる。

白粉を塗っているかのように白い肌をした若い美青年。

植物に例えるなら…………まるで満開の桜のように美しい。

 

 

 

「お前が…………………」

 

 

 

「───────ふ」

 

青年は横にあるちゃぶ台に置いた皿の上に乗せた大福を手に取り、口に運んで美味しそうに咀嚼する。

 

「はむっ、mgmg…………う~ん、美味しい」

 

「──────長ドスの御衣黄…………」

 

 

 

────────なのか?

こんなのが…………五輪華最後の1人?

 

「ご馳走さま~」

 

丁寧に手を合わせると、青年はちゃぶ台と皿を押入に片付ける。

終わると、こちらにゆっくり歩み寄り、部屋の真ん中で立ち止まった。

ここからだったら彼の表情もよく見える。

 

 

 

「俺は衣黄御、御衣黄って呼んでくれ。それでお前が…………慧音先生の受渡し役の剣客だな?」

 

「……………!?慧音さんを知っているのか?」

 

「─────お~い、来たぞ~」

 

御衣黄が奥の襖の向こうへ呼び掛ける。

すると、襖を開けて、慧音さんが出てきたのだ。

 

 

「─────慧音さん!!!」

 

「あ、青葉…………すまない、こんな所まで来させてしまって…………無事だったか?」

 

まったく、彼女もなんだかんだって他人が第一じゃないか。

 

「──────や~、友達愛っていうのは美しいねぇ。ねぇ、慧音先生?」

 

「慧音さんから離れろ…………!!」

 

「ま、待ってくれ青葉。彼は私を助けに来てくれたんだ。何も危害は加えられていない」

 

「え…………?」

 

「そ。俺、こう見えて良いやつだからさ、困っている人見ると助けたくなっちゃうんだよ~」

 

え………………?だったら、

 

 

 

 

 

 

「待て、じゃあなんで─────」

 

 

もう一つ、【大きな問題】が残らないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして人間が、獣人の山賊に居るんだ!」

 

 

「え!?」

「え!?」

「え!?」

 

アリス、メディスン、雛、そして向こうにいる慧音さんはは声を揃えて驚きの声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────────はぁ」

 

再起不能のまま、藤原妹紅は瓦礫の山の真横で座り続ける。

いつまでたっても回復しないのが不思議だ。

 

「───────この傷…………」

 

妹紅はあまりの再生の遅さが気になり、モンペのサスペンダー部分をずらし、白いシャツの前を開けて脱ぐ。

中から出てきた白い肌。

そこに見える、最後に鎌でばっさりと斬られた腹部。

そこにまだ深々とした傷が残っていた。

 

「他の部分は再生している…………なのに、ここだけ…………」

 

妹紅は13回殺された。そのうちで、その部分を斬られた時の決定的に他と違った点と言えば、

 

「あいつが腕をもぎ取って作った鎌か…………」

 

自分の右腕を引きちぎり、そのときに吹き出た鮮血で作った大鎌…………

あれで斬られた時の傷だけは異常なまでに治りが遅い。

というか、治っているのかもわからない。

 

「──────蘇生することはできたのに、回復だけ遅い…………もしかしたら、あの鎌にはなにか不思議な力があったのかな」

 

 

 

「あぁ、とびっきりのな」

 

「──────ッ!!」

 

妹紅が前を向いた時、そこに青毛の男が立っていた。

 

 

 

「菖の血で作られる赫鎌(かくれん)には即死級の毒がある。触れれば最期、人間といえど妖怪といえど死は避けられない」

 

「…………………そんなに簡単に死ねるんなら、私はこんなに苦労なんてしてないよ…………竜胆筆竜」

 

なんと、御衣黄に敗れたはずの竜胆筆竜がそこにいたのだ。

 

「まぁな、アンタは並みの毒では死なんだろう。蓬莱の薬の力による不老不死の肉体…………肉体が滅びようと、魂が残る限り、髪の一本、皮膚の破片の一粒から再度生まれ蘇る…………あらゆる意味で人の領域を逸した能力だ」

 

「──────待て、なんで知っている」

 

「それはそれとして…………やってくれたな、藤原妹紅」

 

筆竜は手のひらで包んでしまえそうなくらいに短くなった鎖の破片を握り締め、妹紅を睨み付ける。

 

「私の名前まで…………お前、どこまで知ってい…………ぐはぅ!!」

 

妹紅は筆竜に側頭部を蹴りとばされる。

 

「俺が不在だから菖を殺しても気付かれないとでも思ったか…………!」

 

筆竜の顔は真っ暗な黒に染まっており、これ以上ない怒りの眼のせいか瞳が火に燃えている。

血管が切れて血の涙が溢れてきており、あの妹紅すら脅えのような感情を抱いた。

 

「ぐっ……………」

 

筆竜は地面に仰向けに倒れる妹紅の首を掴む。

 

「冥土の土産に覚えておけ…………俺と菖は文字通り「心身一体」。月の技術で命を繋いだ、家族のようなものだ」

 

「なん…………!?」

 

「あいつを救うために俺は、自分の寿命の半分を前払いした。死ぬ直前だったあいつと、俺の寿命を半分にして分け合う形でな。あの時に、俺と菖の血統と生命力を繋ぐ媒介の役割を担った薬が…………竹林の八意氏の薬だ」

 

「────────お前が…………」

 

「その時に蓬莱の薬の話を聞いたことがあったんだ。人間と獣人の血と精神、そして寿命を繋ぐなど禁忌どころの騒ぎじゃない。その、「禁忌の薬を作る」ことをあの人はひどく嫌っていた。なんとか説得して、なにを思ったのか俺に向けて念入りにあの薬の効能とデメリットを伝えきった。その上で、俺は頷いた。菖を救うためなら、俺の命の半分ぐらいどうでもいいと」

 

「──────人間…………?」

 

「その時にあの建物に案内したのがお前だ、藤原妹紅。あの時とは竜藤(たつふじ)巴照(ふでり)と言って、名前も姿も全く異なるから、お前には気付かなかったのだろうがな」

 

「お前は……………なんで人間に敵対するんだ…………お前もその禁忌の薬とやらで菖と寿命を共有するまでは、人間だったんじゃないのか!!」

 

「うるさい!!!」

 

筆竜が大声で叫ぶ。

 

「人間は……………この世で最も醜い生き物だ…………この世で最も美に欠けた生き物…………」

 

「なんだって……………」

 

「俺は自分と菖が一番美しいと思っている。だが、俺は美しい物が好きなんじゃない。本当は────醜い物が嫌いなだけなんだ」

 

「────────何があったのかは知らないが、お前は全人類を敵に回してでも、人間は不要だと言うのか?」

 

「あぁ、そうだ!あんな塵芥を後世に残すくらいなら、俺は地獄に落ちてでも人間をこの手で滅ぼす。神門青葉を殺し、上白沢慧音を殺し、人間の里を滅ぼし…………俺は人間をこの幻想郷から一匹残さず消し去る」

 

「できると思っているのか…………そんなこと…………」

 

「あぁ、できるとも!安心しろ…………獣人は人間と比べればもっともっと美しい。人間と同じぐらいの知性も文明もある。幻想郷から人間が絶滅した後の空席は、俺たちが座ってやる…………後からやってきた人間共に(けだもの)(あやかし)と蔑まれ、もともと暮らしていた地上山に追いやられ、田舎の辺境ででひっそりと暮らしてきた俺たちが、再び地上に世界を築く…………」

 

「なっ、ま、まさかお前ら……………」

 

「それが俺たち獣人の山賊、【幻想郷獣国同盟】の夢だ!…………邪魔する奴は、神だろうが賢者だろうが、なんだろうが皆殺しにしてやる…………大切だった人は、もう居ない…………だが、」

 

竜胆筆竜は自分の後頭部に手を回す。

髪を結っていた紐をほどき、投げ捨てる。

下ろされた髪には、もう前までの高潔さの面影も見られない。

ただ乱雑に伸ばし、乱雑に切っただけのみすぼらしい風体に変わる。

だが、そこには狂気と決意がある。

獣のような汚ならしさがあるが、決して不潔ではない。

 

「なっ……………」

 

綺麗な青毛の髪が揺れてわずかに紫色を帯び、藍色へと変わる。

あの美しい青毛が、さらに鮮やかな発色へと切り替わる。

そして瞳が綺麗な碧色から、鋭さと力強さを兼ねた琥珀色に染まる。

 

「───────【オレ】が残っている」

 

「ぐぁっ!?」

 

妹紅は襟を捕まれ、そのまま筆竜に連れられる。

抵抗する余力はなかった。いまだに妹紅は動ける状態ではない。

 

「─────まず手始めに、オレの本拠地に帰ったら不死のお前を真っ先に殺してやるよ」

 

「─────────」

 

「不死を1000年、正気が保てるはすがない。お前だって死にたくて死にたくてウズウズしているんだろう?」

 

「…………………………………」

 

「ならば、その夢はオレが叶えてやる。万が一にも、また蘇っちまったらその時は……………慧音の仏壇でも拝んでやれよ!!」

 

竜胆筆竜…………いや、竜藤巴照は動けなくなった藤原妹紅を強引に連れながら、どこかへと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御衣黄の種族は…………人間……………?」

 

アリスが信じられないような表情で絶句する。

 

「──────俺な、人間の剣士とやりあうのが夢だったんだ。そんなわけで、俺は、一番強そうな人間の剣士が来てくれるように、ここに居るんだ。そう睨むなって、別に悪いことをしようとはしてない。現に、人間が困らないように慧音先生を助けたじゃないか」

 

「……………何がしたいんだ」

 

「喧嘩だよ、喧嘩。お前も武人ならわかるだろう?刃を交えているときの楽しさってヤツ。それが俺の憧れなんだ。人間、必死に命削ってるときが一番輝くんだ………………だよな?」

 

爽やかそうな表情で問いを投げてくる御衣黄。

 

「人間に恨みとか、そういうのはないのか?」

 

「なんでさ、人間に恨みなんてあるわけないじゃんか!むしろ人間は大好きさ、俺の狙っている人間は出てきてくれないけどな。そうそう!この笠、さっき落ちてるのを拾ったんだけど、ちょっと被ってくれる?」

 

御衣黄はいつ拾ったのか、俺がさっき失った三度笠を投げ渡してきた。

 

「………………………」

 

拾ってそれを被る。

 

「やっぱりだ…………!!三度笠の剣士!!久しぶりに会えて嬉しいぜ~!!」

 

御衣黄は立ち上がり、俺を指差して飛び上がって喜ぶ。

 

「やっぱり、どこかで見たことがあるかと思えば」

 

「知ってるの!?」

 

アリスが言う。

 

「もう半年も前かな、あんな感じのやつを引ったくりから助けたことがあったんだ」

 

「そうそう!それそれ!記憶力いいねあんた!やったぜ…………まさか俺が待ちに待った初めての対人戦が、剣を握るきっかけになった英雄との一戦だなんてな!」

 

御衣黄は肩からマントのように提げていた羽織の影から、1本の細長い木の棒を出す。

調理用の麺棒のような見た目をしたその道具は二尺半ほどの長さをしている。

 

「疼いて疼いてしょうがねぇぜ…………!」

 

相変わらず楽しそうな御衣黄。

 

「青葉…………こんなやつほっといたほうがいいわよ」

 

「そうよ!山賊でもないのにアオハさんをおちょくって楽しんでいるんだから!」

 

アリスとメディスンが俺の着物の裾をひっぱって後退しようと提案してくる。

まぁ、こんなやつは無視するに限る、

だが──────

 

 

 

「わかった。その喧嘩、買ってやる」

 

「えっ……………!?」

 

アリスの驚愕。

 

「ちょっ、青葉!?」

 

黙ってみていた慧音さんも驚いている。

 

 

 

「その代わり!条件がある」

 

こういうやつは、要求を受け入れる代わりに条件を突きつけたら乗ってくれるタイプだ。

 

「ほうほう」

 

「慧音さんをこっちに渡せ。そして、俺の後ろにいる女の子たちのことを見逃がしてくれ。そうしたら、お前の要求を受け入れる。好きなだけ相手してやる。俺はさ、詐欺に強いから正々堂々とした人の言うことしか信じないんだよ」

 

「………………………………」

 

御衣黄はムッとした表情をする。

しかし、

 

「いいねぇ!その条件乗った乗った!別に慧音先生を持ってたってなんの意味もないし、後ろの連中がどうなろうがなにをしようが俺には関係ないもん、お安いご用だね。なんだよ、もっとキツい条件かと思ったや」

 

御衣黄は、いとも簡単に受け入れてくれた。

助かる。これで慧音さんを完全に救出できた。

 

「アリス、慧音さんを連れて先に行っててくれ。花の都ってやつに」

 

「青葉………………」

 

「俺は大丈夫。死ぬかもしれないけど、死ななかったら良い」

 

「───────そこまでしてでも慧音先生を守りたいのね」

 

「あぁ、」

 

ひとまず、それができただけでも今は進展かな。

思っていたより御衣黄がいいやつで助かった。

 

「じゃ、行って行って!ここに居る女は全員決闘の邪魔だ!」

 

しっしっ、と手を払う御衣黄。

それにつられて慧音さんも戸惑いながら俺の方へ走ってくる。

 

「青葉、」

 

「いいよ、話は後だ」

 

「すまない、こんなこと言うのは無粋だが頑張ってくれ」

 

「うん!」

 

慧音さんの応援は本当に力になる。

 

 

 

 

 

「─────────」

「─────────」

 

アリスたちが部屋を出る中、御衣黄と二人きりになった俺たちは互いに一歩一歩近寄る。

 

「あの…………すごく楽しそうだけど、俺たちは今から斬り合うんだよな?」

 

「─────はッ、当たり前だろ。でも、」

 

御衣黄が麺棒を引き抜く。

ここまで近づいてやっとわかった。

中から出てきたのは銀色に輝く鉄の刃。

これが、御衣黄の長ドスか。

鍔のないヒノキの木でつくられた柄が地味にいいデザインだ。

御衣黄は鞘部分を真後ろに投げ捨てる。

そして、満面の笑顔で片手にてその刃を構え、俺と向かい合う。

 

 

 

 

 

「どっちかが死ぬまで終わんねぇぞ────?」

 

「上等だ、かかってこい!!」

 

 

 

こっちの条件も飲んでくれたことだし、これで心置きなく戦える…………!!

 

なんか………どうしようかなぁって()

  • 知るかボケ
  • とりあえず………早く文編書きません?
  • 東方の18禁作品の執筆とかしないの?
  • サボってないで執筆しろ
  • アボカド食べる?
  • その他(その他ってなんだよ)
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