東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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緑の華・長ドスの御衣黄

 

 

 

 

 

「ふ─────はぁ!!」

 

瞬く間、戦う意志が微塵も見られなかったあの男が、神速の縦斬りを繰り出してきた。

 

「うっ!!」

 

潜り込むようにそれを躱した俺だったが、最大の驚愕は今の速度でもなく、信じられないほどの切り替えを見せた彼のほうだった。

 

─────緑の華、長ドスの御衣黄…………!!

 

 

 

「でえぇぇぇい!!!」

 

横に回り込んだ俺に繰り出される大振りの横薙ぎ。

大振りの一撃なので、冷静に後退するだけで容易く避けられる。

しかし、その速度が尋常じゃない。

確かに、彼は剣術の達人と言えるような身のこなしではない。これまでの相手と比較してみれば、御衣黄は決して強くはない。

だがしかし、この相手の強さはまた別にある。

 

「──────ぜっ!!」

 

「ぐっぅ!!」

 

避けた先を肩で体当たりされて俺は2、3歩後ろへ飛ばされる。

 

「くっ……………」

 

この男……………………

 

「─────へへっ」

 

──────喧嘩馴れしている!!!

 

「こっちは一撃でお前を殺せるが…………そっちは一発では無理だなぁ」

 

「───────────」

 

「ま、いっか。それぐらい強いってことだ、がっかりさせんじゃねぇぞ~?」

 

御衣黄はドスを真上に投げる。

3メートルの高さを飛び、回転しながら落下してくるドス。

 

「出鱈目な…………!!」

 

それを弾こうと意識を固めていたところ、真下から御衣黄が走ってくるのを俺は見た。

 

「あっ…………!!」

 

「ぜいゃゃっ!!」

 

投げたドスをキャッチし、そのまま正面に目にも留まらぬ速度で突き出してきた。

 

「うおっ!?」

 

神速の一撃。

目視する間もなく俺は勘で受け止めるしかなかった。

今のはなんだ、まるで見えなかった。

器用というか、自在というか。

まるで動きが読めない。

 

「クッ、フフ……………フうッ!!」

 

だん、と俺の脚を踏みつけてきた。

 

「ぐっ…!」

 

「ハァ!!」

 

脚を抑えられて後退の余地がない俺に向けて無慈悲に振るわれる逆袈裟斬り。

さっきまでの二枚目者な性格からは想像も付かないほど冷静で合理的な立ち回りをしてくる。

相手の動きを抑え、そこに大降りの一撃を叩き込む。

一発一発は決して躱せなくはないが、威力と速度だけは間違いない。なにか当たったら即死の覚悟だ。

 

「えぇぇぇやぁぁぁ!!!」

 

身体を反らしてギリギリの回避をしたあと、俺は残った左脚で御衣黄を蹴りとばす。

またまた距離が離れるが、御衣黄はその圧倒的な攻め力をもって、再度近付いてくる。

 

「そぉぉれっ!!」

 

階段で数えて3段ぶんのやや低い跳躍からの、楕円のように曲線を描く突き。

なんとか避けて、俺の左側頭部をわずかに掠めた剣を見てから俺は着地した御衣黄の頭を模造刀で殴る。

しかし、その攻撃はまるで当たらない。

御衣黄はなんと早歩きで近付いていたのだ。

微妙な速度のせいでこちらの距離感が狂い、慌てて出した一撃はいとも簡単に潜られて躱される。

 

 

 

「ぜぃぃ!!」

「はぁぁッ!!」

 

 

 

御衣黄の下段回し蹴りと、それを避けた俺の胴払い蹴り。

御衣黄の体勢が低すぎてこちらの攻撃も避けられた。

 

「くっ!!」

 

着地と同時に下にいる御衣黄狙って剣を払うが御衣黄は再び両足で腿を上げながら飛び上がると、反時計回りに回転しながら俺にドスを横薙ぎに叩きつけてきた。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

左手が振るわれた御衣黄の腕を寸前で受け止めたので、ドスの刃は俺の身体に届かなかった。

 

 

「せぇぇぇい!!」

「おらぁぁぁ!!」

 

また跳躍から床に降りた御衣黄に袈裟斬りを浴びせようとしたが、御衣黄がドスを出しながら突撃したのと重なって、お互いの位置関係が逆になるだけで終わった。

 

「このっ………!!」

 

背後に行った御衣黄の腕を掴んで蹴りで脚を払い、転ばせる。

 

「うおっと!」

 

しかし御衣黄は凄まじい力で俺の腕を捻ると、その流れに乗りながら俺の腕の回りを回転し、あっという間に反対側へと戻ってくる。

 

「よっと!」

 

仕舞いに膝で俺の脚を蹴ってきたことによる衝撃でせっかくの拘束が解けてしまい、また距離を離されそうになる。

 

「らぁぁぁぁ!!」

 

逃がすまいと中腰になっている御衣黄に刃を振るうが、

 

「ふん、」

 

軽く避けられる。

御衣黄の眼球の寸前を通る刃に御衣黄はまばたきもしない。

冷静にバク転で距離を取られ、誰も一撃も食らうことなく振り出しに戻された。

 

「くっ…………………!!!」

 

こんな相手は今までで初めてだ。

剣術は決して優れてはいないのに、喧嘩馴れしすぎていて、その肩に腕がくっついている限りは素手で対処される。

あんな合気道みたいな動き、どこで覚えてきた………?

そもそも、動きが冷静すぎる。

 

「────────ハハッ」

 

嬉しそうな顔で御衣黄は笑う。

……………マジか。

こいつ、本当に楽しんでいる。

 

「───────────」

 

中腰からまた立ち上がり、ドスを構え直す。

 

「は───っハッハハハハ!!!」

 

そして急に踏みこむと同時にまた見えない程速いあの突きをくり出してきた。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

しかし、俺に一回使った攻撃は二度と通用しない。

 

「ぐっ……………!!!」

 

俺の一閃は御衣黄の突きよりも早く、彼の二の腕を殴った。

彼といえど激痛には耐え難い。腕を抑えて攻撃をやめる。

 

「この野郎────!!!」

 

背中を反らして力を溜める。

 

「八霖儚月流奥義、虎牙(こが)折り!」

 

「ぐおわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

身体を捻りながら振り下ろす強烈な袈裟斬りが御衣黄を直撃する。

一撃を受けた御衣黄は部屋の隅まで吹っ飛ばされる。

襖を破りながら部屋の外に投げ出され、灰色の煙が立ち上る。

 

「───────やったか!?」

 

「へへっ、そうこなくっちゃなぁ!!!」

 

御衣黄の歓喜に満ちた叫び声。

 

「なにぃぃぃっ!?」

 

なんと、御衣黄は俺の真正面の彼方にある襖から廊下に投げ出されたら、俺の斜め後ろの襖を蹴破って現れた。

 

「我流衣沙門剣・曼珠沙華(マンジュシャゲ)!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!!」

 

見えないほどの速い攻撃が五連続で同時に叩き込まれ、五回ぶんの威力が俺を襲う。

なんとか剣で防いだがまるごと押し出され、俺も襖を破って廊下に投げ出される。

 

「ぐぅぅぅっ!!!」

 

今ので脇腹と右腕がやられた。

奇跡的に貫通には至っていないが、神速の五連突きを一度に防ぐ術はなく、横を掠めたドスで皮膚がまるごと切り裂かれた。

腕を滴る血を床に垂らしながら俺は剣を落としてしまう。

利き腕がやられては剣が握れない。

 

 

「そぉぉぉぉれっ!!!」

 

しかし、休む暇など一切ない。

跪く俺に向かって投げつけられる襖一枚。

 

「クソッ!!!」

 

痛い身体に鞭打って握った模造刀で投げつけられた襖を真っ二つに切る。

 

「ぐっ……………屋根穿ち!!」

 

「あはははははははは!!!!」

 

切り裂かれて切断された襖の間から御衣黄がドス片手に突撃してきた。

 

「うぐわぁぁぁぁぁ!?」

 

神速の突きが右の頬に傷をつける。

頭ごと串刺しにされるよりかはずっといい。

 

「やるな。じゃあこれならどうだ!?」

 

やるな、つまり競り合えているわけだ。

だが、まだ向こうは全力を出していないはずだ。

油断はするな、次に何をしてくるのか、それがわかるまで─────

 

「うおぉぉっ!?」

 

俺の目の前が突然真っ暗になった。

上から彼が羽織っている上着を被せられたのか。

 

「ぐっ…………!!!」

 

姑息な手を使ってくるヤツだ…………!!!

布を剥ぎ取って前に見直るが、誰もいないし光景も変わっている。

いまの一瞬で身体の向きを変えられたのか!?

てことは、俺はすでにヤツに触れられている…………!?

 

「いたっ!!」

 

肩口にざっくりと切り傷がついていた。

いまの一瞬で!?

 

「どこ見てるの~?」

 

背後、その真下から突き上げが飛んできた。

 

「ぬぅぅぅ!?」

 

顔を反らすと共に下からの突き上げが俺の顎の下を通っていく。

 

「くっ……………!!!」

 

一歩二歩、後退して距離をとる。

 

「そぉらっ!!」

 

瞬間、御衣黄が左手を引っ張る。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!」

 

そして俺は床に転げる。

床に羽織が敷いてあったらしく、それを引っ張られて転倒したのか。

 

「せいや!!」

 

倒れる俺に向けられる追い討ちの突き下ろし。

 

「うぁっ!!」

 

倒れたまま転がって致命の一撃を回避する。

ドスはガコン、と床を貫いた。

 

「よっ!!」

 

床にドスを刺したまま、御衣黄は抜刀するようにそれを振るう。

俺は当たる寸前で転がって避けた。

床を抉り抜き、壁に熊が引っ掻いたかのような深い切り傷をつけていく。

 

「ぐ………………」

 

なんとか立ち上がって立て直そうとする。

刀を構え直し、再度御衣黄に迫る。

 

「─────なっ!?」

 

右腕に布が絡み付く。

 

「えぇぇぇい!!!」

 

攻撃を防ぐ手段を失った俺に振り下ろされる縦斬り。

 

「このっ………!!」

 

脛を蹴りつけてバランスを崩させ、右手を掴んで攻撃を防ぐ。

 

「──────へへっ、滾ってくるねぇ」

 

「───────っ」

 

御衣黄は右手にドス、左手に羽織で両手が塞がっている状態で、両足で跳び、俺の胴体を両足で蹴り飛ばしてきた。

 

「ぐぁっ!!!」

 

廊下の隅の壁に激突する。

この隙を奴が逃すわけがない。

 

「我流衣沙門剣・遊蝶華(ウチョウゲ)!!!」

 

抜刀術の構えのようにドスを腰に携え、あの突きを繰り出す神速の踏み込みから音速の逆袈裟斬りが炸裂した。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

刀の峰で受けた俺は壁を突き破って外に投げ出された。

壁を破壊し、そのまま城の屋根瓦に側頭部を強打。

頭から出血しながら俺は瓦の上を転がる。

屋根瓦は内側から外側へ向けて傾斜になっている。

転がっていく俺は屋根から落ちる寸前まで飛ばされた。

 

「ぐっ………ううぅぅぅっ!!」

 

屋根から落ちた瞬間、ギリギリで端を掴んで耐えきる。

 

「お…………うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

真下がとんでもないことになっている。

急いでここを出ないと……………!!

 

「我流衣沙門剣・岩蓮華!!」

 

「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

突然の一撃で屋根が破壊され、俺はまた真下に落下する。

そして二段目から一段目の屋根に直下に落ちて叩きつけられた。

地面に落下しなかっただけまだいいが、衝撃で手から刀がすっぽ抜け、腰帯に差した鞘が外れた。

がん、かんかん、と屋根瓦の縁から落下していく刀と鞘を取りに行く暇はもうない。

 

「ぐっ…………………!!」

 

背中と頭に受けた衝撃で脳が軋む。

痛みのサイレンが鳴り響いて眩暈がする。

 

「くそっ…………!!」

 

「そぉぉぉれ!!!」

 

上から御衣黄が飛び降りながらドスを振り下ろしてくる。

 

「ちっくしょう…………!!!」

 

なんとか間一髪で転がれた。

横で瓦がドスに貫通される。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……………!!」

 

「───────追い込まれたねぇ?」

 

「はぁ、はぁ─────はぁ、ッ」

 

「我流衣沙門剣・優曇華」

 

御衣黄がまたあの意味不明なステップを繰り出してきた。

早歩きとも疾走とも読めない奇妙な速度の歩法が距離感を狂わせる。

 

「──────────」

 

武器が、ない。

防ぐ手段が…………ない。

 

「─────────もう、駄目か………!」

 

「それっ!!」

 

「うッ…………!!!」

 

また羽織をかけられる。

羽織を剥ぎ取って正面に向き直るがそこに御衣黄の姿はもうない。

また奇襲か、いったいどこから出てくるんだ…………!!

 

わからない、勝てない、見切れない、読めない…………!

死ぬ、死ぬ、死ぬ…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふっ、はっ!!)

 

(てぇぇぇあ!!!)

 

(顎割り──────)

 

(浅い!!)

 

(──────蹴り!!!)

 

(──────っ!?)

 

(今だぁぁぁぁぁ!!!)

 

(ハァァァァァァァ!!!)

 

(あげぇぇぇぇぇっ!?)

 

 

 

 

 

 

(……………いったいなんなのですか、今のは)

 

(はぁ、はぁ、奥義蹴り…………だよ…………)

 

(奥義蹴り?)

 

(はぁ…………ッ、俺が依ねぇに、隠れて…………修行してる最中に、はぁ、思い付いた…………)

 

(なるほど、良い一手でしたよ。初見だったこともあり、いままで一番追い込まれました)

 

(でも…………結局俺の負けか…………)

 

(私は師範ですよ。勝てるわけがありません。ただ……………勝ち筋はありましたね、蹴りを見せられた以上は二度と通用しませんが)

 

(そうなの…………?)

 

(皆、隙を見つけた時は動きが大降りで単純なものになりがちです。貴方はいま、その現象に陥った)

 

(つまり…………追い詰めても油断するなってことか、勉強になるよ)

 

(それもありますが、何より…………)

 

(何より…………?)

 

(追い詰められたその先に、起死回生の好機がある事を覚えてください)

 

(追い詰められたその先が…………起死回生のチャンス…………?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────────あぁ、」

 

そうだよな、こんな所で死ねるもんか。

まだ俺は生きている。確かに次の一撃は必殺のものだが…………追い込まれたその先が起死回生のチャンス…………千載一遇の好機だというのなら────!!

 

「ふぅぅぅぅぅ………………!!!」

 

最後まで諦めずに、そこに賭けてみなくちゃわからないじゃないか!!!

俺がいまここで死んだら、誰がアリスを、慧音さんを、妹紅を守れるんだ!

俺以外にだれが、トヨさんを幸せにできるんだ!!

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

そもそも───────

 

 

 

「いっちょあがりぃぃぃぃ!!」

 

「うぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

俺は────────!!!!!

 

 

 

 

 

「負けたくねぇんだよォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

背後からトドメの縦斬りを振り下ろしてきた御衣黄を睨み付ける。

そうだよ、こんな二枚目半のやつに殺されてたまるか!!!

 

 

 

 

「づぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

御衣黄の縦斬りを手で受ける。

屋根瓦を真っ二つにする天から地へと振り下ろされる雷鳴の如し一撃を、俺は自分の手で受け止めた。

 

「うぉぉぉぉぉっ!?」

 

まさかの現象に、御衣黄は驚愕の表情を見せる。

これこそが……………依ねぇに何千回とやらされた、

 

 

 

──────【真剣白刃取り】だ!!!

 

 

 

 

 

「ゼェぇぇい!!!!」

 

受け止めた刃を右手で直に握り締める。

当然ながら右手からは大量に出血する。

だが構わない。もっと強く、手が真っ二つになるぐらいに握り締める。

 

「ううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

痛いが、我慢しろ、これしきのことでくたばっている場合じゃない!!!

死が確定した攻撃を一回生き延びれたんだから、このチャンスを逃してたまるかよ!

 

「げぇぇっ!?」

 

「ウ…………オアァァァァァァァァ!!!」

 

刃を握り締め、柄を握って離さない御衣黄から無理やりドスを奪い取る。

そして、そのまま柄の部分で御衣黄の頭をぶん殴った。

 

 

「ぎえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

バコォォォォォン、という壮快な音を立てて口から血を吐いて今度は御衣黄が武器を失ってよろよろと後退する。

 

 

 

「いってぇぇぇ…………っ!!」

 

ムッとした表情で御衣黄が睨み付けてくる。

 

「はぁ、はぁ……………」

 

御衣黄から奪った長ドスの柄を握る。

 

「くぅぅ……………」

「ふぅ………………」

 

 

 

御衣黄が今ではお馴染み、あの神速の踏み込みから屋根瓦が剥がれる程の勢いでこちらに走ってくる。

 

「俺のだぞぉぉぉぉぉ!!!」

 

「今だぁぁぁぁぁ!!!」

 

俺の横斬りが炸裂する。

向こうが殴り蹴りしてくるよりもこちらのほうがずっと早かった。

こんなものが、当たらないわけがない。

間合いを考慮しても、絶対に命中する。

追い込まれて焦った結果だ、そうやって単純になるから俺みたいなスパルタ教育で育ったやつに負けるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるか─────ッ!!」

 

 

しかし、御衣黄は俺の神速の斬撃を防いでしまった。

左から右へと振るわれた刃は、御衣黄の左肘と左膝に挟まれ、御衣黄の胴を一閃することもできずに停止してしまう。

 

 

 

「─────────ッ!!!!」

 

「へへん!!」

 

これは俺も想定外だった。

やはり、こんな簡単な攻撃は彼には絶対に通用しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────だが、彼は【こっち】に対応する術をまだ持っていない!!

 

 

 

 

 

俺が本気で、真剣持って人を斬るわけがないだろう。

永琳さんの教えをなんだと思っているんだ。

 

本命はこっちだよ……………!!!

 

 

 

 

 

「気符──────」

 

美鈴さんに教わったように気を練れるかはわからないが、とりあえずはダメ元でやってみるしかない!

今の横斬りで生まれた力を利用してその勢いのまま身体を時計回りに回転させる。

挟まれたドスは諦めてすぐに手離し、その代わり全力でドスを握っていた力を左脚に全部捧げる。

全力の踏み込みで瓦がひび割れて沈む。

そのまま俺は右足を浮かせて、渾身の押し出しと共に、ここ一撃に全てを賭けた全霊の一撃を御衣黄の胴体に刺し込んだ。

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「──────臥竜脚(がりゅうきゃく)!!!」

 

真剣勝負のところ申し訳ないが、

 

俺にとっての真剣勝負は、剣だけじゃなくて…………スペルカードの書き換えを使うもアリなんだよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御衣黄は青葉の蹴りを真っ向から受けて吹き飛ばされ、瓦の上をごろごろと転がる。

そのまま瓦の縁まで転がされて、頭から落下していく。

 

「ちょ────う、おぉっ!?」

 

「危ない!!!」

 

「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

御衣黄は瓦を滑り落ち、頭から転落した。

突然の事であり、なおかつ頭からの落下のため、縁に掴まって復帰することもできなかった。

 

「う…………っ!!!」

 

「ぎぇぇぇぇぇっ!?」

 

そんな御衣黄の身体は、途中で落下を止める。

 

「うわ、わぁぁぁ、あぁぁぁぁぁ!!!」

 

「やめろ、暴れないでくれ!!じっとしてて……………ぐぅぅぅぅぅ!!!」

 

青葉が迷うことなく屋根を飛び降りて御衣黄の脚を掴んだのだ。

距離を稼ぐために青葉も飛び込んだのだ、青葉自身も片手で瓦に掴まっている。

もう片方の手で御衣黄の脚を掴んでおり、普通なら絶対に復帰できないような状態になる。

 

「はぁ、はぁ……………うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!!!お、おぉぉぉちぃぃぃるぅぅぅぅ!」

 

「づ、ぁぁぁぁぁ、あァァァァ!!!」

 

肩甲骨を巧みに力強く動かし、御衣黄を持ち上げると共に青葉は右腕の肘も瓦に乗せることができた。

そのまま左手で瓦を押して自分の身体を精一杯持ち上げると、ようやく瓦に脚をつけれた。

そのまま御衣黄の脚を両手で掴んで屋根に引きずり込んだ。

 

 

「ぐ、はぁぁぁ!!!はぁ、はぁ、はぁ、」

 

青葉は限界を迎え、屋根に仰向けに倒れて力尽きた。

 

「は、は、ひぃぃ、ひぃ、こりゃあ、やべぇぜ」

 

御衣黄も地面に手をついて精神状態を整えるので精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────ふぅ…………」

 

なんとか、なったか。

助けれてよかったなぁ……………あぁ、疲れた。

 

 

「おい、あんた…………なんで俺を助けたんだ」

 

御衣黄はもう元気になったのか…………早いなぁ。

俺はもう、無理。

 

 

「当た…………り前じゃないか……………」

 

「──────────」

 

「だって君…………人間だもん、」

 

「─────────ッ…………!」

 

「それに、慧音さんを…………助けてく、れたのも、君じゃな…………いか……………」

 

だめだ、これ以上は話せない。

 

「──────フフフフ…………」

 

御衣黄は長ドスを拾い上げると、小さく笑い出す。

 

 

 

「あはははははは、あははははははぁぁっ!!!!」

 

とたん、御衣黄はお腹を抑えて爆笑し始めた。

 

「なんだよ…………」

 

「はははははは!!ははぁっ…………ごめんごめん、本当に慧音さんの言った通り、末期レベルのお人よしだなぁって!」

 

末期レベルのお人好し………!?

なにそれ、俺そんなひどい評価受けてたの!?

慧音さんに後で詳しく話させようっと!!

 

 

 

「やぁ~やっぱすげぇわ、あんた。何もかも俺の負けだよ~」

 

御衣黄もドスを投げ捨て、俺の隣で仰向けに寝っ転がる。

もう、俺たちには戦う意思も、体力もなかった。

 

「─────いや、君もすごい強かった。次やったら俺が負けるかもな」

 

「とんでもない捨て身の猛攻だったな最後のは。思わずびっくりしちゃった」

 

「君だって、羽織をあんなに器用に使いながら素早い踏み込みと力強い一撃を振るって、オールラウンダーで強かったよ」

 

確かに…………伏黒は速くて弱い、亦紅は遅くて強い。

菖は色々と意味わからない。

筆竜は正統派な強さのみを持ち合わせており曲者感はない。

 

その中で、御衣黄は見たことのないトリッキーな動きと、目に見えぬほどの素早さと、壁や瓦を割る力強さ、加えて火事場における冷静な判断力まで持ち合わせていた。

人格は確かに五輪華の中でも一番の変人だが、実力でいえば最も範囲に優れた武芸者だったであろう。

突出した部分を持ち合わせていないが、全てが均等に恵まれており、足りないものといえば経験ぐらいだ。

 

「半年…………もうちょい場数踏んでいれば、勝てたのかもなぁ、悔しいな」

 

「一発目がこれだよ、もう十分だって」

 

半年がこれってマジかよ。

俺の半年の成果はまだ正しい構えだけだったような気がする。

 

 

 

「──────疲れたの治った?」

 

「無理。あと、すごい痛い」

 

「あぁぁぁぁ、ごめんごめん!ちょっとやりすぎたかもな」

 

「いや、いい…………てか触るな痛い!!」

 

なんかこいつ…………俺にちょっと似てるな。

 

 

 

 

 

「───────で?この後どうするよ、えーと…………あんた…………」

 

「青葉」

 

「青葉ね、おけ。…………青葉はこれから花の都ってのに行くのか?」

 

「あぁ、そのつもりだよ…………仲間たちが待っているんだ。どうだい御衣黄、もう十分だろう。俺のことも逃がしてくれないかな」

 

向こうのお遊びには散々付き合ってやれた。

これで見逃してもらえないはずもなく、

 

 

 

「──────あぁ、それは俺が決めることじゃない」

 

「えっ…………………?」

 

「俺は負けたやつだ、本来はあの蹴りで死んでいるし、そうでなくともあのまま転落死していた。敗者は勝者の言うことを聞くのが当然、俺は自分の意見とかないから、お前は勝手にやってくれていいよ」

 

御衣黄はきっぱりと言い捨てた。

やっぱり…………これでも武人なんだなぁ…………

正々堂々としていて、負けも素直に認めるし、どんな時も正直で清々しい。

ある意味武芸者としては、彼の器は出来上がっているのかもしれない。

その楽天ぶりは昔の俺に酷似していた。

 

 

 

「そうだ、余計なお世話だけど花の都とやら、俺もついて行こうか?」

 

御衣黄はふいに、自然な顔してそんなことを言ってきた。

 

「なっ、協力してくれるのか!?」

 

「俺は獣人たちと仲良くつるむつもりはないからね。あいつらが居るとお前たちが困るってんなら、手を貸すぐらいはしてあげるよ?お前ほど強くはないから、戦力としてはまずまずってとこだがな」

 

「───────本当か!?」

 

「男に二言はない、そういうもんでしょ」

 

「ありがとう…………御衣黄!!!」

 

俺は御衣黄の手を取って喜んだ。

こんなに強いやつが仲間になってくれるなんてありがたい。

 

「ま、俺も命救われている身だしね。ここからはサービス残業って形で全部タダ働きの時間外労働ってことにしといてあげるよ。好きなだけ、社畜にしてくれよ」

 

「あぁ、よろしく、御衣黄」

 

「いいねぇ、行こっかお師様」

 

「っ……………おう、」

 

なんか、師匠って呼ばれるの照れるな。

色んな所に弟子入りしていたから…………師匠っていう言葉とは結構身近だったというか。

だからなんとなく憧れと言うか、そう呼ばれたいなというのはあったんだが…………

 

「さて、花の都に行こうか、道案内頼むぜ?」

 

「君は知らないのか……………」

 

「その前に、最初に投げ捨てた鞘を拾いに行かせて」

 

「うん。俺もさっき落とした模造刀と鞘を取りに行かないと」

 

「あとお菓子持っていきたい」

 

「遠足じゃないんだよ!?」

 

 

 

こうして、俺ら一行には、またまた新たなる賑やかな仲間が増えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑の華・長ドスの御衣黄 神門青葉に敗北

 

 

これを以て五輪華、全滅。




作者です、なんで一番ないと思っていた「十八禁作品の執筆しないの?」に二票もあるんですか()
全部がそれなのも不思議だし()
まぁ………作品の展開落ち着いてキャラ増えてきたら考えときます。
書くならやっぱり外見が【薄い本の目隠れ系イケメン主人公】を長髪にした姿ってだけあって竿役は(結構ガチの話)、青葉くんを使うことになるのかな()

てなわけでアンケート用意したんで、ご協力お願いいたします。
作者の推しはもちろん御衣黄ですよ?
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