東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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ここで重大発表。


予想以上の長編化が予想されるので、本作のタイトルが「青い白沢の歴史編纂~忘却されし幻想記憶」から「東方編史帖(へんしじょう)~青い白沢の歴史編纂」に変わります。
そもそもの話すると、ずっと良いタイトルなかったから困ってたんです()
てか、東方の二次創作ならもっとわかりやすいタイトルにしろって話でしたしね。
仮で決めてたタイトルは解体しますが引き続き「青い白沢の歴史編纂」というフレーズは残っているのでまぁ問題はないかと思います()


オズの人型使い

 

「せぇぇぇや!!!」

 

おぉぉぉっとー!!!

青葉選手、猛烈な投げ!

あれはまさか、幻の柔道技と言われた「山嵐」か!

サンダーバード選手、勢い良く脛椎を痛めてノックアウトー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「どらぁぁぁぁぁっ!!!」

 

青葉選手のクロスカウンター!!

狂犬と呼ばれたキングクニジマをリングの外へと吹き飛ばしたぁぁ!!!

なんという怪力!あの男、いったいぜんたい何者なんだー!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青葉!青葉はどこ!?」

 

アリス・マーガトロイドが選手の待機部屋の扉を開けて中へと入っていく。

その後ろから上白沢慧音、プリズムリバーウィズH、メディスン・メランコリー、鍵山雛と続いていた。

なお、御衣黄と風見幽香に関しては用事があるようなのでこの場にはいなかった。

まぁ、用事があると言っても、後の話によればただただ二人でご飯を食べに言っただけのようなのだが。

 

 

 

「あっ、アリスだ?」

 

神門青葉が豪勢な椅子に座った状態で、多くの女性に囲まれながらアリスを出迎えた。

なんでも、今の青葉は今回の大会におけるスーパースター。注目度が上がりすぎて、選手のケアをする人たちもみんな青葉につきっきりらしい。

肩や脚を揉んでくれてたり、青葉の好物である鯛の刺身を食べさせてくれたりと。

なんならなにもせずに立っている女性も数人ほどいる。

 

 

 

「────────」

 

アリスがなにやらショックそうな顔で言葉を失ったまま青葉を見ている。

慧音も額を抑えてうつむいている。

メディスンと雛とプリズムリバーウィズHは無の表情で突っ立っている。

 

「いやー、ここだと俺かなりのお偉いさんだよ。生まれてはじめてだよ、こんなに良くしてもらったの。なんでもしてくれるって言うけどさ、なにをさせたらいいかまーるでわっかんないからこうして立たせているけどさ」

 

無垢、無欲。それらの権化といえる彼には、お世話係の使い方などわかるはずがない。

頑張って絞り出したのは料理とマッサージだけだった。

彼が自力で思い付く渾身のワガママはここが限界だった。

 

「なんでそんなに……………女の人は貴方に惹かれるのかしら…………」

 

「さぁ?何でだろうね。………なんでなの?」

 

「顔ですかね」

「優しいところ!」

「声が好きです!」

「着物がおしゃれです!」

「髪が綺麗!」

「匂いがいい!」

「スタイルいい!」

「話が面白い!」

 

「──────なんだってさ」

 

アリスは無言でその様子を呆れたように見つめる。

しかし、その表情はどちらかというと、羨ましそうな顔をしていた。

無論、鈍感きわまりない青葉にそんな様子に気付けるはずがなかったのだが。

 

「青葉、改めて言いたいことが色々あるがこの怒涛の展開で全部忘れてしまったぞ」

 

慧音も目頭を抑えてうなだれる。

 

「まぁ、俺も大したことしてないし、むしろこっちも予想外の連続で頭がねじれてるからいいよ。それよりも、今は梓ちゃんを助けに行くのが先決だ。助けてあげたお礼は、帰ってきてからで十分だ」

 

「やはりお前は恩を着せると必ずお返しをねだるのだな…………」

 

「当たり前でしょう、恩があるなら何かしらの形で返さないと。間違ったことは言ってないよ」

 

「いや、そうなのだが……………」

 

別にお返しを渡したくないのではなく、お返しを堂々とねだるのがおかしいのだと慧音は言っている。

 

「てか、よくここが分かったね。格闘大会にこっそり出ているの気付いてくれた?」

 

「えぇ。ちゃんとモニターで見ていたから気付けたわ。でも、まさか激戦の直後に格闘大会に出て目立つことで私たちの注目を引くなんて、青葉は本当に面白いわね!」

 

雛が楽しそうな表情で言った。

 

「それに、戦っている時も見ててすごかったよ。一悶着あったけれど、最終的には勝ち進んだわけだし」

 

雷鼓がうんうんと頷きながら言う。

一悶着というのはまぁ、例の件なんだが。

 

「もうその件は忘れてくれよ…………てか、その時からもう気付いていたのか…………」

 

青葉は唸りながらうつむく。

 

 

 

(青葉…………前々からいい身体つきしているなとは思っていたけども…………)

(いや、まさかあれほどとは…………)

 

慧音とアリスが部屋の隅でごちゃごちゃ話している。

 

「なんか言ってる?」

 

「あぁいや、なんでもない!」

「話を戻しましょう!」

 

そうか、と青葉は納得したようにアシスタントの女性たちを部屋から出るように言うと、ソファに寝っ転がって話をし始めた。

 

「幽香さんが言うには、アリスたちは移動していたらしいよね?どうして俺たち抜きで勝手に行動しちゃうのさ」

 

「あぁ、その事なんだが─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……………!!」

 

「まさか、こんなところで…………!!」

 

慧音とアリスが花の都について、街の見やすいところで待機して20分ほど、そこにやはりあの男が襲い掛かってきたのだ。

 

「お主らとは約束していたはずでござるよ、拙者とは、また花の都で会うことになるだろうと」

 

黄の華・聖剣の山吹草、吹田山草が。

 

「だめ…………炎のせいでまったく近寄れない!」

 

「幽香や青葉や妹紅がいないだけでこんなにも追い詰められると言うのか…………!」

 

「先ほどの拙者はまだまだ様子見の一手に過ぎない。拙者の本気は、まだまだこれからでござる。かくいう今も、まだ全体の三割も出していない」

 

アリスが膝をついて地面に跪く。

慧音も地面に手をつく。

メディスンと雛はとっくにぶっ飛ばされて倒れており、プリズムリバーたちも炎の壁に囲まれて逃げれなくなっていた。演奏などとてもしていられない。

 

「地上に位置する椰子飼城を攻略したこと、見事でござった。しかし、お主らはここまで。拙者の紅き刀身によって、この場にて炭となれ!!」

 

山草の剣が炎を纏う。火柱の刀身は6メートルの長さにも及び、一振で辺りすべての命を焼き払うだろうことが予想される。

 

「くっ─────────」

 

山草の剣が、振り上げられる。

 

 

 

 

 

 

「──────おおっと、そいつは困ったもんだ!」

 

山草の剣が振り下ろされると同時に、横から割り込んできた黒い影がアリスと慧音を抱えてその場を離脱し、一撃を避けたのだ。

 

何奴(なにやつ)!?」

 

突如現れた新手に山草は警戒を固める。

 

「──────誰かって?誰かといったら………」

 

その飄々とした愉快な青年は、石榴色の着物に赤の番傘を担いでいた。

見た目も顔つきも声も、青葉によく似た印象を抱かせるその男はアリスと慧音を下ろすとその傘を構える。三度笠は被っていないが、変わりに番傘を手にしたところが唯一青葉との大きな違いだ

なんの変哲もない番傘。果たしてそれで灼熱纏う山草の剣と渡り合えるのか。

 

「青葉!?…………じゃない!」

 

「俺は青葉!!ただし、青葉と言っても、正式名称は青葉・弍式(あおは・にしき)、人呼んで…………(にしき)だ!」

 

 

謎の少年、錦は青葉の名前をさらっと上げて、慧音とアリスを庇うように立つ。

 

「錦!!間に合った!?」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

山草と錦を除いて、場にいた八名が一斉に驚愕の声を上げる。

その声の向けられる先からは、建物や街灯に糸を絡ませながらゆっくりとジップラインのように降下してきた一人の少女。

 

「あ、アリスに瓜二つ!?」

 

メディスンは大声で驚いた。

少女は黒いケープと橙のドレススカートに身を包んでいる白髪の少女。

色味を反転させたらアリス本人と紹介されてもまったく疑われないだろう。

ただ…………違うとすれば表情?

メルヘンチックな魔法少女要素をはらんだアリスに対して、こちらは黒魔女感の漂ういかにもダークですといった雰囲気の表情を携えていた。

 

「な、なん…………誰よ!なんのつもり!?私のマネなんかして!」

 

双子の姉妹かと思うアリスが山草のことそっちのけで指差して猛抗議。

 

「あら。自意識過剰ね、誰があんたのモノマネなんかするかっての。かわいい魔法使いさん?」

 

「何を…………………っ」

 

アリスが拳を握りしめ、人形をけしかけようとする。

 

「お、おい…………?」

 

慧音が厭な予感を察知した。

 

「おやおやマスター?こんな時に大乱闘だけは勘弁なんだけど?」

 

「ごめんなさい、せっかく【宿命のライバル】を見つけたんなら、ここで粉々に叩き潰してやらないと」

 

「マスター………まさか、同じ人形師でも貴女は…………」

 

「貴女が無数の人形を圧倒的な思考判断力で同時に操作するハチの大群なら…………私は一体の強力な人形を絶対的な人形操作技術で操るモズってところかしら?」

 

どうやら、この少女の背後に立つ番傘の少年、錦は彼女に使えるたった一人の人形らしい。

 

「──────青葉と私の二人を真似ているあたり、ただ者じゃないようね。獣人の山賊は擬態とかもするものなの?」

 

アリスも怒りに邪悪な笑みを浮かべ、人形を一気に取り出す。

 

 

 

「あ……………慧音先生?」

 

メルランが明朗快活な彼女のものとは思えない冷めた目で慧音さんを見る。

 

「これ、もうどうしようもないな」

 

慧音もこの件に対して対応を放棄した。

 

 

 

「やれやれ。んじゃまっ、こっちはこっちでやろうかなと思います」

 

錦は少女のもとを離れ、山草に歩み寄る。

 

「大混戦で悪いねぇ。でも安心して、あの二人、お互いのことで頭いっぱいだから」

 

「どうやらそのようでござる。お主と一騎討ちできるのであれば、拙者も後ろ二名には手出しはしないと約束しよう」

 

「へへっ、やべぇなこれ。このメンツに囲まれながら、強そうな相手と喧嘩できるってことでしょう?」

 

番傘を掴むと、そのまま錦はそれを引き抜いた。

番傘の竹でできた柄は三尺ほどあるが、そのうちの一尺ぶんが引き抜けた。

その先から現れたのは、筒状になっていた番傘の柄から出てきた細い金属の棒。

なんとそこには刃がついていた。

なんと、これはただの傘ではなく、仕込み箒を番傘に応用した武装だったのだ。

仕込み箒は庭掃除をするあの竹箒の中に刀を入れた武器だ。

 

 

 

「人形ながら、腹が減ってくるぜぇ!!」

 

人形は大笑いした。

 

 

 

 

 

「さて、こっちも始めましょうか」

 

「えぇ、やっつけてあげる。なんで私の真似をしているか問いただしてやるから」

 

「ふふっ、良いわね。楽しい試合になりそうじゃないの」

 

銀製のアリスとは真逆、彼は金の指輪をはめて構える。

 

「私はドロシー。「ドロシー・アンドロメダ」。別名を名乗るなら「一色の人型使い」よ!」

 

ドロシーが腕を振るう。

 

「残念、貴女の手持ちの人形は別行動中よ!」

 

「残念なのはそっちのほう……………!!」

 

ドロシーが脚を開いてたったまま、ピアノを引くように前傾姿勢に構えた途端、アリスが攻撃を命令した人形たちの前に、彼女が現れた。

 

「ちょちょちょちょちょちょ!?なんで私ぃぃぃ!?」

 

なんと鍵山雛!!

 

「え!?どういうこと!?」

 

アリスの人形たちは雛に突撃していく。

アリスが急いで切り返すがもう間に合わない。雛に一撃が命中してしまう。

そう思った次の瞬間。

 

「ひ、ひゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

雛は丸腰のまま、手足を振り回してすべての人形を返り討ちにしてしまった。

素手で戦う能力が一切ない雛が、なぜ。

 

「わ、私…………生きてる…………」

 

「あら、使いやすいボディ。気に入ったわ」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

糸が振るわれて投げられた雛が地面に転がる。

 

「雛!!!くっ…………なんて卑怯な…………」

 

「あっ、もう遅いわね」

 

ドロシーが腕を引っ張る。

 

「私も……………!?」

 

アリスの腕にはすでにドロシーの糸が巻き付けられていたのだ。

ミクロ単位のフィラメントということもあり、軽すぎて重みがなくまったく気が付かなかった。

 

「しまっ…………!!」

 

アリスはドロシーの振るった腕に連れられてまっすぐ引き寄せられる。

アリスは身体にかかる運動エネルギーの圧のせいで、この速度も相まってドロシーに対してなにもすることができない。

 

 

 

 

 

 

「どぁぁぁぁぁっ!!!」

 

────────と思ったら。

 

 

「ちょっ…………え!?」

 

なんと、アリスはドロシーの真横を素通りして山草のほうへと飛んでいき、山草に激突した。

 

「ぐ、なんと……………ウワァァァァ!!!」

 

山草は衝撃で弾き飛ばされて、この空間の縁まで転がり、その下へとあっさり落下していった。

 

 

 

「わ、わわわわわわ私までぇぇぇ!!!」

 

アリスも一緒に落ちそうになる。

アリスもこの空間から転落し、町の道路へと真っ逆さまになる。

 

「いよっ、おっと!!」

 

すんでのところで錦が手を出してアリスの腕を掴み、引き戻してくれた。

 

「あ、ありがとう…………」

 

「どういたしまして。報酬に今度どう?」

 

ナンパしてきたのをアリスはガン無視したかったのだが、ドロシーほどの人形使いが模倣しただけあって顔がほんとうに青葉に似ているので顔をつい見つめてしまった。

 

「お?そいつはオッケーって感じの答え?」

 

 

 

「やめなさい錦。…………悪いわねぇ、そいつは私が作ったその人形に勝手に取り憑いた淫魔なのよ。人に淫らな事をするような意志は持っていないらしいけど、人を口説いたりするのは日常茶飯事」

 

「淫魔……………彼が……………?」

 

 

 

──────淫魔。

 

夢魔とも呼ばれており、夢魔のたぐいは女性の夢に出てきて性行をし、悪魔の子供を身籠らせるというそうだ。

一般的に呼ばれる淫魔は夢など関係なく、日中にも平気で女性を襲ったりする性質を持つ。

女性を襲って妊娠させる男性の淫魔はインキュバスと呼ばれ、逆に男性を襲って子種を奪う女性の淫魔はサキュバスと呼ばれるそうだ。

だがこのところ……………錦の性格はありふれた愉快な青年であり、とてもじゃないが人を襲うようなイメージは湧かない。

 

「淫魔がターゲットの前に現れるときは、その人の意中の人物や、理想に合った異性像の姿で現れる。行為を受け入れて貰いやすくするためだからだ」

 

慧音の説明に錦はそうそう、と微笑む。

 

「俺も自然発生することはできるんだけど、今回の場合はもとから器があったからね。身体を作る手間を省けたって訳サ。この身体、ドロシーのタイプの男をモチーフにしてるそうだから」

 

「ハァ!?なに勝手にそんな言いがかり言えって、」

 

ドロシーが錦に拳骨を食らわせる。

 

「わ、私の知人に瓜二つね……………」

 

アリスの声が震えている。

 

「そりゃそうさ、なんせ彼女は────」

 

錦は溜める。

 

 

 

 

「───────なんだっけ?」

 

 

 

「ズコォォォォォッ!!!!!」

 

慧音、雛、メディスン、プリズムリバーウィズH、アリス、ドロシーはまとめて地面に転げた。

思い出したように「あ、そうそう!」と叫ぶと、錦は1からやり直す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんせ彼女は──────君より先に神門青葉に会っているからね」

 

 

 

アリスはあまりのショックですごい顔になりながら頭を抑えて俯いた。

それを慰めるために雛たちがアリスをなんとか立ち直らせようとする。

 

 

 

 

 

「───────まさか彼女…………青葉に…………」

 

 

 

ちなみにこの中で一番それに気づくのが遅かったのが、遠目にそれを見ていた慧音だった。

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