東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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威信志士

 

 

 

 

「くっ…………!!」

 

なんてことだ。戦いを好まないとはいえ、多少万が一のための戦闘は可能だと言うのに。

 

「もう逃がさないわ!」

「貴女はこれで終わりです」

 

先ほど戦闘が始まって私は敵を一掃するために単独で行動していたのだが、剣や薙刀で武装した乙女たちが私の前に現れたと思えば一斉攻撃してきた。

おかげで、このザマだ。周囲一体を囲まれ、身動き取れなくなった。

 

「お前たちは……………一体……………」

 

「私たちは筆竜さまにお仕えする者どもです」

「あの人が屋敷から消えたのは、貴女のせいでしょう!」

「菖を失神させたのも、筆竜さまをここへ突き落としたのも!」

 

まさか、筆竜の多くの妻たちは、武術にまで長けていると言うのか………!?

いや、筆竜が施したようには思えないし、彼が女性に戦えと命令するような印象はない。

 

「私たちは自分の意志で戦うと決めたの。筆竜さまを守るために。そして、貴女を消し去るために」

「この裏切り者、絶対に八つ裂きにしてやるわ!」

「えぇ、えぇ!そうよ、その通りよ!!」

 

 

 

───────裏切り者。

その言葉が、私の心をひどく締め付けた。

裏切り者…………嘘つき…………全部、私の事だ。

 

「貴女を捕まえて散々にしてやった後は…………」

 

「筆竜さまが大好きだった、あの簑踊りで灰も残さずに消してやるわ」

「えぇ!絶対に…………許さない!」

 

女たちは私をにらんでくる。

 

「貴女は自分に迷惑をかけた男をやっつけてせいせいしたのかもしれない。けれど、私たちは、愛する人を失ったの!その悲しみがわかる?恨みが理解できるかしら!」

 

「───────────」

 

そうか…………彼女らにとって、彼は…………

 

 

「えやぁぁぁぁぁ!!!」

 

一人が背後からのし掛かってきたから、私は為すすべなく地面に倒れる。

その上から折り重なるようにまた一人、また一人と乗っかってくる。

潰れそうな重圧の中で私は「裏切り者」という言葉を自分の中で何度も反復した。

 

 

 

 

 

(お前は───────■■■■よ)

 

 

 

 

 

(────────上白沢…………)

 

 

 

 

 

息ができなくなって───────

 

 

 

 

 

(慧音と申します───────)

 

 

 

 

 

─────────お前は、誰だ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────二天伏黒剣舞・神楽神速!!」

 

 

 

 

 

 

 

───────────急に。

 

 

 

 

「う…………………………………」

 

 

 

私の身体にのしかかる心と物理の重圧が吹き飛ぶようにほどけていった。

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?けーね先生」

 

「君は────────」

 

薄れた景色が回復していくうちに、私は橙色の着物の少年の姿を見た。

 

「なっ、伏黒君─────!?」

 

 

 

 

 

これは…………幻なのか。

 

 

 

 

 

「あとは任せてください、僕が何とかしますから」

 

伏黒君の両手には、あの鋭い鋼の小太刀ではなく、古臭い短めの木刀が握られていた。

 

「───────な、なぜ…………」

 

なぜ、彼がここに。そして、私を守ろうとしてくれたのだ…………?

 

「え?教え子が先生を守ろうとするのは、当然じゃないですか。それに─────」

 

伏黒君はとても小さい身体をしているが、女たちは彼が現れた瞬間に一歩一歩と後退していく。

 

梓ちゃん(ともだち)を守るのもまた、僕の役目ですからね!」

 

伏黒君は信じられないほどの速度で走り出すと、踏み込みと同時に目の前の女戦士を木刀で殴り倒した。

 

 

「なっ、生意気な子供…………!!」

「この剣気、間違いない!」

「筆竜さまと菖が大嫌いだったあの、」

「橙の花・小太刀の伏黒仙翁!」

「たかが子供相手、構わずにやっちゃいなさい!」

 

えへへ、と伏黒君は笑う。

 

「子供相手だからって手加減は要らないですよ。確かに、今の僕の脚はドロシーさんが用意してくれたやつですし、きっとこの速度で動けるのも数分間程度ですけど…………たぶんあなたたちよりかは強いですよ」

 

「なっ、」

 

伏黒君の挑発は弱りきっている身体とは思えないものだった。

自分よりもずっと背の高い相手に恐れもしない。

この子供はやはり……………戦士なのだ。

 

 

 

「この程度の素人の集まりなんて…………この伏黒仙翁の敵じゃないからね…………」

 

無邪気な子供が、少しだけ本気の鋭い顔と声を見せた。

─────猛獣の片鱗が、彼の姿に現れる。

 

 

 

「な、こんなの…………!!許さない!!」

「先に子供のほうをやるわよ!」

 

何を、何をやっているんだ私は!!!!

自分の教え子が身体を張って戦っているのに、私は見ているだけか?

嫌な言葉に俯いて、地面に手をついているだけか?

許される筈がない。

 

 

 

 

 

(もう慧音さんが思っている以上に、あの子供たちは一人でできるようになっているんだから、そんなに落ち込まなくてもいいさ。あ、ほら、そんな俯いているとまた誰か流されるかもだよ?)

 

 

……………前にも、こんなことがあったような気がする。

そのときに、彼はそんな優しい言葉をかけてくれた。

私の不注意に失望することもなく、むしろ「自分もそうだ」と言ってくれた。

あの一言が、私をどれだけ救ってくれたのか。

 

─────応えなくちゃ。

 

 

一人の教師として、一人の………上白沢慧音という、一人の人間として………!!

 

 

 

 

 

 

「────────ッ!?」

 

「けーね先生!!後ろに隠れてていいのに!」

 

 

 

 

「悪いが…………彼は私の教え子だ。大の大人が、子供に真剣を向けるなど、恥を知れ!」

 

「な、何を…………!今になってようやくノコノコと出てきたと思えば!」

 

あぁ、そうだ。

今になってようやくやる気になったんだ。

だから、つまり─────

 

「彼だけじゃない、梓ちゃんもそうだ。二人に危害を加えるというのなら、私にだって考えがある…………!!」

 

───────これからだ、ってことだ!

 

「なに、この剣で貫かれたいわけ?いいわよ、先に弱い方から片付けてあげる!」

 

「けーね先生!!!」

 

 

 

 

 

「───────この、大馬鹿者が!!!」

 

 

 

私は勢いよく頭蓋を振り上げた。

そして、相手が剣を振るよりもずっと速く、その登頂を叩きつけた。

 

「ぐ、あぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 

「いいか、争いは結構。だがな、覚えておけ。喧嘩とは、こうやってやるものなのだぞ!!!」

 

そのまま二人目に向かって突撃し、頭のてっぺんで顔面に体当たりを食らわせた。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

二人目も倒れる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……………」

 

「けーね先生…………」

 

「伏黒君、私が教師として、君の挑戦を全力でサポートする。だから、力を貸して欲しい!」

 

私は伏黒君の目を見て頼んだ。

伏黒君は一切の迷いもなく、

 

「もちろん!けーね先生のためなら!」

 

私の背中に回って、背中合わせになりながら武器を構えた。

 

 

 

 

 

「───────慧音さん!!!!」

 

 

 

この場所よりさらに下の方から慣れた声の男の叫び声が聞こえてきた。

そして、そちらを見ても建物の角が邪魔して見えない。その地平線のような場隅の下から1本の鞘が飛んできた。

私は迷わずそれを掴む。剣道の心得はないが、威嚇するには不足ない武装だ。

 

「─────あくまで教師としてだが、」

 

「おっ、まさかけーね先生…………!!」

 

 

 

 

 

 

 

「─────体罰も教育の一環だ!!!」

 

 

 

 

「い、いっけぇぇぇぇぇ!!!!」

「うおぉぉぉぉ────!!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

「伏黒君!!」

「はいっ!!」

 

一斉にかかって来るなら結構。だが、そうなるとこちらも全力を出すしかなくなる!

 

「お前たちには、幻想郷(ここ)での争いのしきたりが何たるかを教えてやる。さぁ、全員そこに直れ!文化教育の時間だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、慧音さん上手くやっているみたいだ!」

 

「そう、それは良かったわね。じゃあ、ここは錦に任せて私たちは城の中へ─────」

 

「そうだな──────っ、危ない!!」

 

え?と呟いたドロシーの背後から神速で降り注ぐ一条の鉄の流星が見えた。

 

 

「──────えぁぁぁぁ!!!」

「くっ!!」

 

 

寸前で俺が間に入ってやったことで、なんとかドロシーを守れた。

 

「ぐほっ!!」

 

しかし俺は咄嗟すぎる動きが祟り、それで吹っ飛ばされて地面に転がる。

肩に少し刃が食い込んだのか、肩に出来た切り傷から出血している。

 

「もう追い付いてきたのか…………!!!」

 

「逃がさぬ、一歩たりともお主らを城へは踏み入れさせはせん!!」

 

吹田山草……………どこまでも執念深い!!

 

「ドロシー、下がってて。こいつは俺が!」

 

「いえ、そんな悠長に言ってる場合じゃないわよ…………!」

 

「彼女の言う通り。ここに逃げ場などない」

 

なんだって…………?

俺は山草に意識を向けたまま、目だけ泳がせて辺りを見渡す。

 

─────1、10………20………80…………

 

実に100を越えるさっきの兵士たちが俺たち二人を取り囲んでいた。

駄目だ、これじゃあさっきと同じじゃないか。

 

 

 

「諦めろ…………!!!」

 

「そっちがな…………!!!」

 

今さらここまで来て、引けるワケがないだろう。

 

「そうか…………なら、その首、頂戴致す!!」

 

一斉に兵士と山草が走り出してきた。

 

 

 

「─────ここで簡単に止まれるか………!!」

 

横からやってくる兵士を蹴り飛ばし、前からくる攻撃を受け止める。

 

「ぐっ…………!!!」

 

肩の傷が痛む。

ここに来るまででもかなりのダメージを負っているだけあって、こんな雑魚にも苦戦してしまう。

 

「そこだ…………聖剣・碧の御子の刃(クルージーン)!!」

 

山草が地面に刃を擦り付け、引き摺るように走り出す。

地面に擦れた摩擦で刃が燃え上がり、長い焔の大剣へと変貌した。

 

「な、なんじゃそりゃぁぁぁ!!??」

 

「はぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「けっ、この…………出鱈目野郎!!!」

 

攻撃を受け流し、振り下ろされる焔の刃を受ける。

瞬間に、表面の皮膚に伝わる灼熱の温度。

 

「づ…………ウァァァァァァァァァ!!!」

 

(いろり)の中に手を入れているようだ。手先の感覚を狂わせるほどの熱さが肌を駆け巡る。

肉が焼ける音とともに俺の手先も火傷で赤く爛れていく。

 

「終わりだ!!聖剣・螺旋を描く剣(カラドボルグ)!!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

炎の刀身は容赦なく俺の身体を袈裟に斬ってきた。

刃そのものはただかすっただけだったが、炎の柱は俺に直撃した。

 

「が……………かぁっ………………」

 

剣を握ることも出来なくなって俺は刀を手放して地面に膝を付く。

手には見るだけで痛ましい水ぶくれが出来ていて、皮膚のめくれと腫れで両手とも真っ白になっていた。

 

「青葉!!!」

 

「うっ…………駄目か…………!!」

 

山草が一歩一歩と歩んでくる。

 

「拙者は所詮、命令しなければ動けぬだけの絡繰(からくり)人形…………ただし、ひとたび命令されれば如何なる指示も、この命に変えてでも果たす。それが、最強の傭い剣客と言われた所以でござる」

 

勢い良く振り下ろされる凶刃。

 

「───────うぅッ!!!」

 

間一髪で剣を広い直し、それを防ぐ。

 

「お主には、拙者は倒せぬ!!!」

 

「ぐぅあっ!!!!」

 

腹を蹴り付けられて俺は地面を転がる。

 

「ごほっ、ごほっ……………うぅ、おぉぇっ…………!!」

 

口から血の混じった胃液が吐き出される。

吐瀉物のせいで喉が焼けるように痛い。

 

「今だ、一気にかかるぞぉぉ!!!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

倒れた俺に向かって一斉に敵がやってきた。

 

「青葉!!ちょ、離れなさい!!」

 

「邪魔だ、どけ!!!」

 

「うぁぁっ!!!」

 

慌てて敵を押さえにいったドロシーも突き飛ばされる。

錦が居ないときのドロシーはかなり戦うのが難しい。錦は今、上で奮戦中だ。ここへ駆けつけてくる余裕はないし、これても俺の助けに入るには間に合わない。

 

「うぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うぁぁぁっ!?」

 

顔面に向かって振り下ろされた斧を転がって躱す。

その先を狙った槍を脚で弾く。

その隙間から打たれた剣を踏みつけて防ぐ。

 

「くっ……………!!!」

 

「まだ動くのかこいつ…………!お、おい!だれか押さえつけろって!」

「お、おう!!」

 

「うがぁぁぁっ、っう!!!!」

 

頭を捕まれ、地面に押さえ付けられる。

くそっ、駄目だ。体力的に限界。

どうすればいい…………?いや、ここで助かる方法なんてない。

そんなこと許されるものか。ここで俺が死んだら、誰が梓ちゃんを…………!!

ここでやられたら全てが台無しだ。ここまでの苦労がすべて水の泡になる。俺ら全員そろって全滅だ。

ここで…………そんな結末には…………!!

 

 

「うあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

駄目だ、暴れても全然効果がない。

今の俺が弱すぎる。誰でもいい、助けに来てくれ!

このままじゃ…………!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────青葉、そのまま!!!」

 

ドロシーの叫び。それで俺は反射体に抵抗をやめた。

 

「うぇ………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

「ギアァァァァァァァァァァ!!!」

 

横から響く激鉄音と共に、俺を押さえ付けていた敵が勢い良くかっ飛んでいった。

同時に俺の拘束は解かれる。

だが、まったく立てない。視界もなんかぼやけてるし。

 

 

「おらぁぁぁ!!!覚悟しやがれェェェ!!!」

 

 

「うおぉぉあぁ!!!」

「がへぇぇぇっ!!!」

「うぁぁぁあああああっ!!!」

 

 

──────響く破壊音。

空を舞う兵士。

そして、床を駆ける地鳴り。

 

 

「青葉、大丈夫?」

 

ドロシーが手を掴んでたたせてくれた。

 

「あ、あぁ……………なんだ、今のは」

 

誰かはわからないが、助けに来てくれたみたいだ。

ありがたい、これで──────

 

 

 

「───────え?」

 

 

 

 

 

 

「どぉぉぉらぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ヅァァァァァァッ!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

「吹っ飛びやがれぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「ぬぉぉぉぉわぁぁぁぁぁ!!!」

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

「ぐぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

だが、駆けつけたのは予想外の人物だった。

 

赤い髪と着物の大柄な男。

自分より背の高い両刃の大剣を軽々と持ち上げて振り回し、一撃にして三人の兵士を撃沈させていく。

まさにドレッドノート級の破壊力を持つこの魔戦士は、間違いない。

 

 

 

「───────亦紅!?」

 

 

 

なんと、あの吾妻亦紅だったのだ!!!

 

 

 

「いよォ!!元気にしてっかァ?めちゃくちゃ忙しそうじゃねェかよ!」

 

「な、なんで君がここに…………!!」

 

こいつと俺は、つい数時間前に戦ったばかりの敵どうしだ。

なのに、俺の命の危機に駆けつけたのはその亦紅だったのだ。

これにはさすがに俺も感謝を忘れてまず首を傾げるしかなかった。

 

「聞いたぜ、お嬢を守るってンだろう?なら、俺も手伝ってやらァ。俺ァ五輪華で唯一、真ッ当にお嬢の護衛やってた身なんだよ」

 

「──────君が、梓ちゃんを………?」

 

「チビっ子のお守りも、悪かねェ仕事だったぜ。お前さんとの決闘をするために一時的に護衛をやめてやったが、それでも俺のお嬢を守りてェって気持ちは変わりァしねェ!!」

 

バカな。この男に、あの小さな子供を守ろうという意志があったのか!?

そんな、別に漢の中の漢とも思っていないし、そして外道とも思っていなかったが、そんな漢らしい一面がこいつにはあったのか!?

 

「それに─────俺はこうしてまた剣を振ってるッてこたァ、俺とお前の決着はまだついてねェってことだ!!それまで絶対に、誰にもお前さんを殺させやしねェ!!こいつァ、俺の獲物だからな!!」

 

………………………はぁ。

 

「────男ってよくわかんない生き物ね」

 

まったく、ドロシーの言う通りだ。

 

「男はだいたいバカなんだ。でも、それぐらいが丁度いい。なんでも器用にこなすより、こうやって気まぐれに…………訳のわからない意地を張るために頑固貫くのが一番それっぽいんだよ」

 

「あぁ、その掟ン前では、敵も味方も関係ねェってこった!」

 

俺も剣を握り直す。

まだ痛いが、仲間がいるならへっちゃらだ。こんなにも頼もしい仲間が加わってくれた。これほどの無敵の戦士はほかにいない。

 

「それが、君の言うところの武士道だろう、山草」

 

「───────あぁ、面白い。その想いには全力で応えよう」

 

 

 

「そうだ、山草サンよォ。俺はお前さんにはもうひとつ別の用があったんだ」

 

「……………ほう?」

 

吾亦紅は大剣を振るって地面に叩きつけて威嚇する。

 

 

「──────誰の許しで俺の雲月(ダンナ)に仕えてやがるんだァ?」

 

「──────亦紅、」

 

「テメェがもし本当に一人の主に仕える武士なら、君主を横取るのは一番の無作法だと思わねぇのかァ!!!」

 

 

それは……………雲月にぶつけるべきじゃないかなと俺は思ったが、矛先は山草に向けてもらったほうが都合がいいので俺は黙っていた。

 

「くっ……………お主は生かしておこうとは思っていたが改めた。両方ともこのワンダーランド地下に広がる溶岩の海に沈めてしまえ」

 

 

 

 

「そんな事情は関係ないよ。さっさと終わらせて梓ちゃん助けにいくぞ」

 

「おうよ。背中は任せなよ、」

 

 

 

細身の太刀と巨大な大剣。

 

 

 

「─────────今よ!!!」

 

 

ドロシーが両手を振るう。

 

 

「おぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

すると、戦士の一人が勝手に動きだし、剣で山草に切りかかった。

 

「ぐぬぅぅぁぁぁぁぁぁ!?」

 

頬を切り裂かれた山草は顔を苦痛に歪ませる。

 

 

「バーカ。そんな大勢で囲っても、むしろ私からしたら操り対象(ぶき)の宝庫みたいなものよ」

 

「くっ…………三人まとめて…………御免!!」

 

 

 

 

 

 

「やるぞ亦紅、ドロシー!!」

 

「おうよォ!!」

 

「やってやるわ!!」

 

 

 

 

 

お返しさせて貰うぜ、吹田山草!!

 

討ち取られるのは…………お前のほうだ!!

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