東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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花の都の底の下へ

 

「妹紅!心配したんだぞ!どこへ行っていたんだ!」

 

慧音さんが妹紅に駆け寄る。

 

「妹紅…………その傷…………」

 

俺は再開の歓喜よりも妹紅のお腹に目をやった。

そこから血が流れていて傷口は塞がらないばかりか毒に侵されたように腐敗している。

 

「大丈夫だ、ちょっと苦しいだけさ」

 

額に汗を浮かべている妹紅は明らかに痩せ我慢している。

辛そうな顔をして床に座り込む。

 

「妹紅、大丈夫?」

 

「くっ…………20回以上死んだら、さすがに動くのも一苦労だ」

 

妹紅は苦笑する。

 

「ぐ…………こんな時に限って邪魔が…………」

 

吹田山草はゆっくりと立ち上がる。

 

「終わりだ山草。もう諦めてここをどいてくれ」

 

「まだだ…………そう易々と諦めるなど、拙者には出来ぬ!」

 

「オオバ、もういいよ。こいつには話が通じねぇ、さっさと殴って黙らせよう」

 

「あぁ。無理やりにでも諦めて貰うしかないようだ」

 

長居は無用、さっさと終わらせよう。

向こうも同じことを思っているようで。

 

「これが拙者の本気でござる…………!!」

 

抜刀した刀が炎のヴェールで包まれる。

 

 

「────これこそ、今の拙者にできる渾身の一撃。一振のうちに映した世界、その万象一切を焼却す、我が最大の焔…………万象を灰塵へと還す拙者の誇る聖剣術が極意、受けていくでござる!!」

 

 

 

「来るか────!!!」

 

決着(ケリ)つけるなら、ここしかない!!!

 

「青葉、気を付けろ!」

「青葉、頑張って!」

「青葉ー!がんばれよー!」

「青葉、しっかり!」

「やっちまえ、オオバ!」

 

 

 

 

 

───────来るぞ、決死の一撃が。

 

俺にできることは、近距離で模造刀をブン回して殴ることだけ。

スペルカードは5回まで。

しかし、そのうちの2回を使ってしまった。

残り3回はこの後の戦いのために取っておきたい。

となると、ここで使うのは勿体ない。

今さら手を抜いている相手ではないのはわかっているが、やはりスペルカードは惜しい。

山草の聖剣術は技であってスペルではない。なのでスペルカウンターは使用不可。

 

「───────────」

 

……………いや、違う。

考え方を変えるんだ、俺にできることの解釈を広げてみろ。

これは単にスペルカードを書き換えるだけの力ではない。

そんなもの、この能力の持つ無限の可能性のごく一部にすぎない。

俺の能力は確かにショボい。魔法を使うアリスや死なない妹紅や毒を自在に操るメディスン、現実の因果律に干渉して不運を呼ぶ雛や紫苑には遠く及ばない。

だが……………この能力は古今東西のありとあらゆる文字、この世界に残るありとあらゆる記録の単位を存在レベルで作り替える能力。

文字という名の個、意味、印象、そして在り方。

それらを書き換えれるこの力なら…………

 

 

 

「──────聖剣・」

 

「やるぞ……………!!!」

 

 

 

 

「────騎士王裁断(エクスカリバー)!!!!!」

 

紅の刃が降ってくる。

 

 

 

「──────頼む!耐えてくれ!」

 

 

俺は着物の内から煙草を取り出して右手に持つと、そのまま山草の剣から溢れた炎の波を切り裂いた。

煙草の先が瞬く間に点火され、副流煙が立ち上ぼり始めた。

 

 

「これが────自在に文字を書き換えるってことだ!!」

 

俺は煙草を横に震う。

空中に煙で横の一本線が引かれる。

 

 

「────この「記録」を代償に、火を塞き止める!!」

 

途端、俺の描いた煙が炎の波を一瞬だけ防いだ。

 

「ぐおっ!?」

 

あまりの重さに俺たちは一歩二歩弾かれる。

 

「だが……………!!!」

 

防げる!!!

 

「ば、馬鹿な…………拙者の聖剣が…………!」

 

「神話や伝説の剣が、本物の記録に勝てるわけがないさ!」

 

「な……………!?」

 

お前の聖剣がすべて歴史の流れに遅れて消えた神話の刃ならまだしも、外の世界で忘れることなく語り継がれ、伝説として信仰されている英雄の剣を担いだって、幻想郷相手には効かない!

 

「…………そして、炎とは一重に記録を、記憶を焼き払うもの。炎に焼かれれば歴史的建造物は焼け落ち、書物は燃え尽きる。そこに住んだ人々の記憶も灰になって散る。けれど、それを防ぐ方法を知っているか?」

 

 

 

「貴様……………!!!!」

 

 

「それが、マニュスクリプトって概念だよ。ほら、教科書があるだろ?ああやって同じ記録を止めることなく複製し続ければ、ひとつの記録が燃え尽きても同じコピー品が残る。これが記録を恒久的に保護する方法だ!」

 

「青葉……………」

 

 

 

 

(そして、その教科書は複製される。マニュスクリプトと呼ばれる概念がある。和訳すると手記、原稿といった意味があるのだが、それとは別で、「写本」及び、原本となる(のり)に記された記憶を別の書に投影、複製することも言う。

これは書物の焼失を恒久的に守る方法であり、歴史を紡ぐために求められる最大の要素ともいわれている)

 

(くかー)

 

(ぐーぐー)

 

(─────────ふッ!!)

 

(どはぁぁぁっ!?)

 

 

 

 

 

「────って慧音さんが言ってた!!!」

 

あのクソ長話が、俺の能力の可能性を広げてくれた。

文字を記録としてぶつける。

普通はなんの意味もないが「書災」である火の前では例外。

俺が煙草で書いた一本線、つまり漢数字の「一」。

その「記録」が焼け消えると引き換えに俺たちの盾になる。

無限に増える文字は無尽の堤防となり、炎の氾濫を一つ一つと塞き止めていく。

 

「う────おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ぐっ…………文字などに…………拙者の決意が…………!」

 

そりゃそうだ、文字がないとコミュニティは形成できない。獣人という種族、そういう社会で生きてきたとて、言語という人間が作り出した恩恵に生きているお前たちが文字に抗う術など1ミリもない。

─────俺らが文字なくして生きれないように。

 

俺たちの祖先が集団社会で生きるために、生き残るために作り出した世界で最古の共通語文明。

先達たちの生きる知恵…………

 

生きる意志は、何よりも強い───!!!

 

 

 

「このような事が……………!!!」

 

聖剣の炎がついに尽きてしまった。

俺の勝ちだ、ヤツにはもう攻撃手段がない。

 

「八霖儚月流──────!!!」

 

俺は刀を抜いて勢いよく振りかぶる。

この遠距離からでは俺の刃は届かないが、遠距離からの攻撃は可能だ!

 

「─────雨降(あめふ)らし~霧雨(きりさめ)!!!」

 

 

 

「愚か─────!!!」

 

そんな分かりきった強引な食らいつきなどなんの意味もなく、ただ弾かれた。

しかし、これで終わりじゃない。

 

「────雨降らし~五月雨(さみだれ)!!!」

 

今度は鞘の方を投擲した。

二段の連続投擲を弾く方法はない。

高速で飛来してくる鉄塊を一回弾けばその反動でしばらく動けない。この鞘を弾くことはできない。

 

「くっ……………小癪なッ……………!!」

 

しかし─────敵は決死の一撃も横への回避で外してしまった。

二投目を見切ったどころか、弾けないことが分かって回避行動まで取ったのか。なんて冷静なやつだ。

これにより、今度は俺が武器を失う。

 

「─────見損なったぞ、神門青葉!!」

 

「どうかな………!!」

 

「なんだと?」

 

「犬のくせに視野が狭いな。君は怒りで目の前のことばかり気にしてて、他のことの警戒がなってないんだ」

 

「─────まさか………!!!」

 

山草は上を見たがもう遅い。

俺の投げた鞘で壁が割れて、天井が落ちてきた。

 

「ドッ………!!!」

 

上から落下してきた天井板が命中して、山草は倒れてしまった。

強者にしては呆気ない最期だった。

 

 

「よし、なんとかなったな」

 

「─────青葉!!」

 

アリスの叫び。

 

「え?」

 

 

 

 

「──────貴様!!!」

 

「どぅあぁっ!!!」

 

俺は脚を払われ、床に転げて首を掴まれる。

 

「ぐっ…………ううぅっ…………!!!」

 

「青葉!!!」

 

「よもや許さん…………そろそろ死ねぃ!」

 

 

「ぐっ………………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばいばーい!!!」

 

「ぐぅぁぁぁぁぁ!!!」

 

横から邪魔が入ってきた。

山草は吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

 

 

 

「……………貴様─────どアッ!?」

 

今度は額に木の棒を投げつけられ、真後ろに転倒して失神してしまった。

その上から崩れてきた天井の一部が降ってきて山草はその下敷きにされてしまった。

 

 

ドガァァァァン、と大きな音と煙の後、完全に山草は動きを止めた。

 

 

 

「あぶねぇ、なんとかなったね」

 

そういって、緑色の羽織の男は投げた木の棒を拾い上げる。

 

「御衣黄!!よかった!!」

 

「あの程度で死にはしないさ。脚が瓦礫に潰されて痛んでるけど、ロリ版バニーガールみたいな子たちが助けに来てくれたから大丈夫!」

 

御衣黄の脚には包帯が巻かれていた。

ずぼらな御衣黄がこんな上手な応急手当などできるわけない。

ロリ版バニーガール…………まったく、ほんとに彼女らには感謝以外の言葉が思い付かないな。

いつか、お礼を言えるタイミングがあればな。

もう、あそこには戻れないけど…………ね。

 

「さぁ、最後の門番は消し飛んだ?」

 

「ふぅ~、疲れた~」

 

その後ろから女苑と紫苑もやってきた。

なんか…………紫苑がスーパービンボ人………いや、神?みたいな見た目になっている。

 

「二人とも無事だったかい?」

 

「えぇ、こっちは散々だったわよ。姉さんの呼ぶ不幸がまさかこんなにもこちらへの影響も大きかったなんて」

 

「紫苑、その姿…………」

 

「なんか、御衣黄から貰った八橋を食べたらこうなっちゃった」

 

「姉さんったらすぐ余計なもの食べるから………」

 

やっぱり怪しいとは思っていたが。案の定、御衣黄の八橋はただの八橋じゃなかった。

仕入先が特定の場所とは聞いたけど、表椰子飼城で対峙した時からずっと思っていたよ。

どうりで、あのちゃぶ台に乗っていたお菓子の箱には銘柄が書いてなかったわけだ。

そもそも正当なブランド品ではなければ、普通にお菓子を売っているところのものでもないんだ。

 

「あのお菓子たちには気を解放する成分が入っていてね。アレを食べると一時的に強くなれるんだよ」

 

「姉さんがスーパー貧乏神モードになったのはやっぱりあのお菓子が原因だったのね………!」

 

────とはいえだ、御衣黄の強さとお菓子はあまり関係ないと思う。

なんも食べなくても彼はあれぐらい強かったはずだ。

なんか、食べれば強くなるって………外の世界から流れてきた映画のブルーレイディスクであったな。

お酒飲むほど強くなるアクション映画とかさ。

 

「────おや?そこの別嬪さんは………」

 

「ドロシーよ、そっちは錦。青葉にそっくりでしょ?」

 

「あぁ、ごめん。そっちのお友達に言った」

 

御衣黄は妹紅を指差す。

…………ドロシーも初対面の筈だけど。

見れば、凄い顔でドロシーが舌打ちしてた。

錦は退屈なのか壁を触って遊んでいる。

 

「藤原妹紅。なんで私はお前みたいな系統に絡まれがちなんだろうな」

 

妹紅が俺を見ながら言ってくる。

 

「酷くない!?」

 

「冗談だよ冗談。でもさ、お前らキャラが被りすぎなんだよ。御衣黄(こいつ)はともかく、お前ら二人は区別がまったくつかない」

 

この中で一番俺と長い付き合いの妹紅からしても俺と錦はそっくりらしい。

 

「さて、談笑の時間は終わりよ」

 

アリスがぼちぼちといったところで切り上げた。

 

「私たちはこれから梓ちゃんを助けに行く。それでいいか?」

 

慧音さんの今更すぎる確認に俺たちは有無を言わず首を縦に振った。

 

「─────皆、ありがとう」

 

「慧音さんらしくないね。こんなところで素直にありがとうとか言う系統じゃないでしょう?」

 

「うるさい、頭突きするぞ」

 

おー、こわ。

 

「しかし困ったわね、この先は何もないわよ。ルートが違うんじゃないかしら」

 

アリスが腕組みして考える。

 

「いやいや、上に居るんだったらもっとゴールは明確だったわよ」

 

「いやいや、おい、そしたら山草と戦ったのが無駄足だっていうのか?」

 

「うん、妹紅の言う通りだ。彼は青葉たちがここに来ると見越した上でここで待ち伏せしてたってことは、少なくとも俺らはここを通らないとお嬢の元へは行けないってことだ」

 

御衣黄にしては冴えた推理だ。

 

「じゃあ…………やっぱりこの近くに?」

 

「─────のようだな、ほら見ろこれ」

 

全員が錦の方向を見る。

錦が触っていた壁が突如として忍者屋敷の仕掛けのように回転し、金箔で塗られた模様付きの壁になった。

 

 

 

「─────これは………?」

 

「おっと!?」

 

な、なんだ!?

──────あっ!

 

「どうやら、当たりのようね」

 

すると、ほかの壁もくるくると入れ替わっていく。

仕掛けが動いて十秒、廊下の壁がすべて金色になった。

 

「隠し扉でも出てくるんじゃないかな?」

 

紫苑のいう通り、これは明らかに隠し扉が出てくるやつだ。

 

────しかし、その名推理は大きく外れることになる。

 

 

「─────なんの音だ?」

 

慧音さんがいち早く気付いた。

床が………というか、城全体が大きく揺れている。

 

「うわぁぁっ!?」

「なんだぁ!?」

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

全員で床に転んでしまった。

 

「ててて…………大丈夫、みん────」

 

「おいおいちょっと待ってくれ、なんか…………廊下が縦に傾いていってないか────!?」

 

は!?

廊下が縦にって…………それ……………

 

床に寝転んでいる俺たちの身体が徐々に進み始める。

 

「全員進め────!!!」

 

このまま垂直になってしまったら、高いところから落下しているのと同じだ。

このまま一番したまで行ってしまうと大変なことになる。

 

「そんな悠長なこと言ってる暇ないよ!」

 

傾きと共に機械が停止したガコン、という音と衝撃で押し出された俺たちは一斉に落下した。

 

「ちょっとちょっと!!!」

 

「こんな情けない死に方するのやだなぁ!」

 

 

一番したに襖が広がっていた。

よし、そこに着地すれば…………

 

 

あ、自動で開いた。

 

あ、その下のやつも。

 

その次も開いてしまった。

 

なんか、どんどん下へ行ってるんですけど………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「やっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい」

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────────いってぇ…………」

 

「オオバ、危なかったな…………」

 

「いや、ほんと。ありがとう、妹紅」

 

飛べる妹紅が抱えてくれなかったら今頃地面に落ちて挽き肉でした。

 

「大丈夫ー?」

 

錦、お前飛べるのかよ。

その傘で滑空してきたのか。

 

「よし、全員いるね?」

 

 

「ここは……………」

 

どうやら、とんでもないところに来てしまったみたいだ。

暗くてじめじめしていて…………怪しげで。

 

「不幸の気配が過去いちばんに濃い。きっとこの近くに…………」

 

紫苑はあたりをきょろきょろと見回す。

 

「これ、どうやって戻ろう?」

 

御衣黄はこんな状況でもお菓子を食べている。

 

「その時はまた飛んで戻ろう。今はそれよりラスボスの撃破が優先でしょう」

 

「錦のいう通りよ。早くしないと、取り返しのつかないことに─────」

 

 

 

「──────なんか暑くない?」

 

アリスが普通の違和感に口出しする。

 

「おいおい、今更そんなこと気にしてる余裕ないぞ」

 

「いや、違うよ妹紅!確かに、ここ異常に暑 いぞ!?」

 

「この都市の下ある溶岩池に高さの座標が近いからじゃないのか?」

 

「悪寒がするのに熱い…………これは…………」

 

間違いない、すぐ近くにいる!

 

 

 

 

 

「青葉!!後ろ!!」

 

「───────っ!!!」

 

 

慧音さんの言葉に反射的に後ろを見て俺は言葉を失った。

 

 

 

「な──────なによこれ…………」

 

アリスが真上を見ながら絶句する。

 

「うーん、これウェディングケーキに匹敵する格だね」

 

御衣黄も危機感を抱く。

 

「不幸が信じられないくらいに満ちている。間違いない、こいつが…………」

 

「あんたたちの言ってた敵…………」

 

不幸の依神姉妹といえどこの相手を前には屈せざるを得ない。

 

「こんなにも濃厚な死の気配なんて初めてだ」

 

妹紅も千年生きてこんなものは一度も見たことがないだろう。

 

「淫魔の俺が言うのもだけど、こいつはかなりの上位怨霊だ」

 

「そのようね…………正直これは予想外」

 

 

──────それは一言で表すならば悪夢だった。

 

透明な雪の結晶のように揺らぐ、青い炎で作られた陽炎のような姿。

目と表情を失った骸のような恐ろしい顔。

脚のない霊体、骨のような胴体と骨の腕。

そして髑髏のような顔からはなぜか白く艶やかな髪がカーテンのようにかかっている。

 

──────これが、梓ちゃんの溜め込んでいた呪い…………

 

 

 

 

 

「そこの怨霊…………梓ちゃんはどこだ!」

 

慧音さんは目の前の怨霊に問う。

──────呪いの塊は黙って慧音さんを見つめる。

 

 

 

「──────今ヤ…………既ニ、我ガ身ノ中…………」

 

「な、なんだと!?」

 

「食われたのか!?」

 

慧音さんと妹紅がくちぐちに叫ぶ。

 

「怨霊は言わば自然発生の幽霊。ここまで他人と意志疎通ができるとは思えない。なかなか口が回るということは、確かに持ち主は取り込まれているのだろうね」

 

「───────なっ………」

 

「でも大丈夫、こいつがもし本当にその子の中に眠っていたのなら、子供が死ねばこいつも死んでいるはずだ。つまり、まだ頑張れば助けることは可能だ。まだ希望を捨てるには早い」

 

錦のおかげで少し希望がわいてきた。

 

「我ガ娘ニ指一本ト触レレバ、汝ラノ命保障セズ」

 

「知るか、梓ちゃんを返して貰うぞ!」

 

慧音さんからはもう言うことがないらしい。

 

「あぁ、さっさとぶっ飛ばしてやろうぜ」

 

妹紅もやる気しかない。

 

「さて、ようやく俺たちの勝ちかー。長かったねー」

 

御衣黄はまた八橋一つ頬張って鞘を構える。

剣はなくしたのだろうか。

 

「長かったわね。今度は私が活躍するから、貴女は指咥えてうずくまってなさい」

 

「そうは行かないわよ、また私が青葉に良いところ見せるんだから。貴女は自分のことだけ気にしてなさい、ドロシー」

 

「あら、その名前を挙げるということはこの私に喧嘩を売る気ね。受けて立つわ、アリス」

 

あれっ、なんかこの二人意気投合してない?

お互い嫌いすぎて謎に波長が合っちゃった?

 

「さて、早くやるわよ姉さん!」

「帰って寝たい!あと生きて帰ってあの美味しいお菓子のお店を教えて貰うんだ!」

 

紫苑だけはほんとうになんのために戦っているのか理解してないらしい。

 

 

 

 

 

「──────君、名前はなに!!!」

 

俺にはまだ、訊かなくてはならないことがある。

 

 

 

「──────────────」

 

「君は…………きっと…………」

 

この見た目でも、おそらくコイツは………!

 

 

 

「─────────椰子飼………赤芽(あかめ)

 

 

──────やっぱりコイツは、梓ちゃんの…………

 

 

「赤芽!!娘…………梓ちゃんは渡さない!」

 

「────────ナラバ、死ヌガ良イ」

 

 

 

「やってみろ…………やれるもんならな…………」

 

ようやく終わりか。

もうひと踏ん張り、やってやる!

 

「行くよみんな!!!」

 

 

 

「あぁ!」

「えぇ!」

「おう!」

「うい!」

「あい!」

「よし!」

「うん!」

「おー!」

 

 

 

 

椰子飼赤芽…………俺たちはお前を絶対に止めてみせる!!

 

 

 

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