東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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人形裁判~心の奥眠りし呪い

 

──────一方その頃、

 

人間の里から遠く離れた場所では。

 

 

「そうか、梓はもう駄目か」

 

「どうやらそのようで。元来、あの娘は常に不安定でした。歴史編纂者の捜索に向いた性質ではありませんでした」

 

「まぁ、覗き魔の始末に使っただけだ。ハナから期待はしてなねぇよ」

 

広い屋敷の一角にある広大な和室で、複数の少女と一人の大男が座って食事をしながら何やら会議のつもりか話をしていた。

メンバーの紹介をしよう。

まず、真ん中の壇上にふんぞり返っている大男こそが例の「お館様」だ。

そして今、「お館様」と話をしていたのが長い黒髪の背の高い乙女。

 

「故に!陽動はかえってこちら側に不利益をもたらした、なんたる失態!これは過去に類をみない、幻想郷に起きたあらゆる異変における最初にして最大の計画頓挫の引き金と言えるのではないか!支配とは計画そのもの、完璧なる流れと予定がなければなにも得られない!ひとつ転ぶだけで全てが泡沫と消えて無くなる!如何なる強固な要塞でも、一階が消えてしまえば司令室もろとも崩壊である!」

 

この顔はどこかで見たものだ。

ミニスカートに軍服を着たあの口うるさい少女。

 

「灼彗袁、口を慎みなさい。御前よ」

 

その発言を嗜める紫色の髪の女がいる。

 

「否!我は単なる事実とそれに対する今後の影響を独自の視点で分析したまで!この助言も無視するようでは、我らの全滅は避けられまい!」

 

「良いんだよ、モーガン。コイツは【生まれつき】言葉のキャッチボールができねぇ、ほっといてやれ。それに、灼の言ってることは間違いじゃあねぇ」

 

「で、ですがお館様………!!」

 

「梓は俺の想定では陥落するのは必定だつた。だが、あまりにも「早すぎる」。梓には付き人として歴戦の天才剣士たちが数人いるって聞いていたが、それすらもポーンと消えちまった」

 

「五輪華ですか。あの程度の、地元でちょっと幅を利かせた程度の【未熟者】が天才剣士の称号を騙るとはなんたる奢り………」

 

床に刀を置いた小柄な少女が膝の上に置いた拳を握りしめる。

 

「まぁ、落ち着けって。本物の天才剣士のお前が言うってことは、【本当に地元じゃ最強】なんだろ?幻想郷はなんだかんだって武芸者が多い。そのなかである程度の地域内で最強を言えるのなら、そいつらはそれなりな手練れの集まりだ」

 

「それを、たった数日で全滅させる………」

 

モーガンと呼ばれた女が息を飲んだ。

 

「連中がなにモンなのかはさておき、さすがに一人でそんな真似できっこねぇだろう。もしかしたら、一人一人の個体戦闘力が高ぇというよりか、数がそれなりに居るのかもな」

 

「梓をけしかけてこれほど早いタイミングで仲間をつくって対抗………?【反獣賊同盟】のせいか………いや、でもまさかここまででは…………」

 

「コミュ力がカンストしてやがるんだろうな。連中は現地でちょっとの馴れ合いで仲間つくっちまうらしい。ってことは、今度は魔法の森からまた遠く離れた地にけしかければ良いってこった」

 

見かけからして力だけかと思う「お館様」はどうやら地理や計略とは多少なりと縁があるらしい。

見かけによらず冷静だ。

 

「そうだなぁ、妖怪の山あたりか?あそこには精鋭を二部置いている。それがそこの繰烏(くろう)だよ。もう一人は用事があって不在だ。あっちには余計すぎる勢力が居座ってるからな」

 

「神の領域を侵すなどバチが当たるというものではないか?私は神を信じぬが」

 

人の話を聞かない灼にしては冴えた言い草だ。

 

「バッカヤロウ。神の領域だから神をわざわざ置いたんだろうが」

 

「いやはやこれは失礼、お館殿を見くびっていたようで」

 

「どうも。ほいで?あの双子はどこやった」

 

「おそらく、自分の世界にいるのかと」

 

「おいおい………誰かなんとかしてくれぃ」

 

「無理ですよ………お館様の部下でしょう」

 

「ちげぇよ………あいつら勝手に俺にちょっかいかけに来たやつらだよ」

 

「え、そうなのですか?」

 

「詳しくお聞かせ願います」

 

「我、それは初耳である!」

 

「あいつらは気分で動くし、そもそも獣人じゃねぇ。俺らの計画になんてなんの興味も示してねぇ。ただ……「悪いことをするってことはアイツが来るってことよね?」って理由でやってきた。正直、味方かもわっかんねぇ」

 

「なっ…………そんな危険分子をほったらしで………」

 

「しかもなぜ私たちに教えてくださらなさったのですか!」

 

「敵を探すならまず味方の内から!いつの時代もこれ鉄則なり!」

 

「仕方ねぇだろ…………断ったらたぶん殺されてた。あいつら、あぁ見えても俺の仲間なかでは古参でな、当時の戦力総数じゃ、あぁいう相手は命いくつあっても足りねぇ。信じるか、あるいはやつらに気に入られるようにするしかねんだ」

 

「──────お館様も、苦労されてるのですね」

 

「うるせぇ。そんなことは俺が一番わかってるんだよ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「錦─────!!!」

 

「ほーらったった!!!」

 

錦が傘を地面に突きつけた時に吹き上がった魔法の炎が赤芽を襲う。

しかし、炎はまったく通用しなかった。

 

「上海、蓬莱、仏蘭西、和蘭!!!」

 

アリスの人形たちによる猛攻も通じない。

 

「姉さん!」

「女苑、せーの!」

 

依神姉妹の渾身のパンチで地面が砕けて瓦礫と化して舞う。

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

 

その瓦礫を妹紅が吹き飛ばす。

岩盤は飛び道具となって襲いかかるがそれでもやはり通用しなかった。

半透明な身体をすり抜け、そのまま洞窟の壁にぶつかって爆発しただけだった。

 

 

「くっ、本当になにもかも通用しないな」

 

慧音さんは頭を悩ませる。

 

「ハハハハ、無様ニ死ヌガ良イ!!!」

 

幽霊は巨大な腕を振るい、その指と爪で地面を抉った。

激しい土埃が舞い、さっきのよりもさらに大ぶりの瓦礫が舞い散る。

 

「アリス、危ない!!」

 

「あ─────っ!!」

 

「────御衣黄!」

 

「よしきた!!」

 

 

 

「せぇぇぇぇあ!!!」

「とぉりゃあっ!!!」

 

二人の力をあわせて瓦礫を砕く。

 

「くっ…………」

「ひぃ~…………」

 

くっ、強い…………!

 

「オオオオオオ……………!!!」

 

やば…………前から腕が一振…………!

 

 

「────っと!!!」

「─────ふうっ!!」

 

 

 

「確認がてらって感じだけど、本当に何もかも通用しないわね」

 

全員で後退して、改めてこいつには何もかもが通用しないことを確認できた。

 

「万策尽きたといった所か…………」

 

慧音さんが額に汗を浮かべる。

 

「おっと、これはまずい」

 

錦が呟く。

 

「え?」

 

「アレを覆う炎は全部呪いだな。触れたらたぶん、死の呪いやらと同じことになるんだろうな」

 

「────ま、まさか………!」

 

アリスはその呪いをもちろん知っている。

あの炎………なんならその炎が覆う身体に触れた瞬間に、俺たちは死の呪いに侵されるわけだ。

しかも、たぶん今度は五寸釘なしで。

即死はしないとは思うが、緩やかに不可避の死へと向かっていくことになるだろう。

 

「や、やだぁぁぁ!死にたくないよ女苑!」

 

「皆そうに決まってるでしょ!!」

 

「おっと、ホントにそうみたいだ」

 

御衣黄が鞘で差した方向には赤芽の振るった腕によって飛ばされた炎に包まれた瓦礫。

その瓦礫は溶けるように融解し、やがて消えてしまった。

 

「あ、あわわ……………」

 

ドロシーが顔を青くする。

 

「どうしたの?腰が抜けた?」

 

「な、そんなわけないじゃない!」

 

「ともかく、こうなりたくなければ、瓦礫はともかく炎にだけは絶対に触れないようにしないとね」

 

「ちょ、正気かお前!?当たったら即死だというのに、奴を止める手段すらないのだぞ………!」

 

「そういうこと…………!────危ない!」

 

 

「壁破り!!」

「曼珠沙華!!」

 

崩落していく地下、堂々と押し寄せる即死の炎、触れれば即死の巨体、あらゆる攻撃を無効化する身体。

─────文句無しで俺たちに勝ち目はない。

 

「終わりだ、このままでは…………」

 

「そうやってすぐやめるのは慧音さんの良くないところだよ、ダメ元で可能性に賭けることも時には必要なんだ」

 

しかし…………今回ばかりは本当にヤバいかもな。

 

「無駄ダ…………死ネ!!」

 

赤芽の腕が振るわれ、呪いの蒼炎が海のように地を這う。

 

「ぐうぅぅおぉぉぉぉあぁぁぁぁ!!!」

 

鏡符(かがみふ)『百枚銅鏡』!!!」

 

慧音さんがあわてて前に現れてスペルカードで防ぐが、

 

「くっ、ダメだ、これでは壊される!」

 

盾は呪いによって【殺され】跡形もなく砕けていく。

 

「神宝『サラマンダーガーディアン』!!」

 

もはやスペルカードの出し惜しみなどない。

俺も防御に徹する。

 

「人形『蒙古(モンゴル)人形防衛隊』!!」

 

その後ろからさらにアリスのフォローが入る。

 

天紙(てんがみ)『U=V=ガーディアン』」

 

錦の番傘が光の盾を開く。

 

「だ、駄目だこれ!!!離れろ!!!」

 

 

「ちょ─────うあぁぁぁぁぁ!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

三人の渾身の防御はまったくあの炎を止めることができなかった。

爆発に飲まれて俺たちは一斉に吹き飛ばされる。

 

 

 

「──────いっ…………てぇ…………」

 

「大丈夫か、青葉………!」

 

「あ………ありがとう………慧音さん………」

 

くそっ、ヤバい。

なんだこの相手は…………どうやって倒すんだ!?

 

「────ぶ、無事かい………皆…………」

 

 

「─────錦!!!」

 

錦はぐったりとした様子で倒れていた。

 

「大丈夫か、どこをやられた!」

 

あわてて駆け寄って状態を診る。

 

「大丈夫だ、炎には触れてない………ただ、爆発で瓦礫の破片が直撃して、脚が吹っ飛んだ…………」

 

錦は左脚を失っていた。

人形だから血は流れていない。これで死ぬことはおそらくないだろう。

 

「まぁ、ぶっちゃけ言うと俺は取り憑いてる身なんで、炎に当たっても俺自身は無事なんだけどね」

 

「バカ、何言ってるのよ!私が作った人形よ!勝手に取り憑いてこんなところで破壊するなんて、それではいすみませんでは済まさないからね!」

 

ドロシーの言うとおりだ。たとえ淫魔としては無事でも、俺たちは今、目の前にある錦という人形の友達を守らなくちゃならない。

そのためには、ここで脚の1本や2本なくした程度で見捨てている場合ではない!

 

 

 

「おい、俺に構ってると死ぬぞ!俺はともかく、君らは即死だ!早く離れて!」

 

「んなこと、できるわけがないだろ………ッ!」

 

錦を引きずって俺たちは敵から離れる。

 

「潰レロ…………愚カ者メガ!!!」

 

赤芽の腕が一振。

 

「まずっ…………!!」

 

転ぶように飛び退く。

腕は俺たちのすぐ横を殴り付け、俺たちはまた吹き飛ばされる。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「だからあれほどやめとけって…………」

 

「無事なら文句ないだろ!」

 

────とはいえ、この状況は考えられる限り最悪と言える。

 

「駄目だ、勝てるビジョンが見えない………」

 

「慧音、珍しく頭がかたいんだな」

 

────だが、妹紅はこの状況をまったく気にしていない。

 

「妹紅…………?」

 

「相手が怨霊だってことはもうわかりきってた話だ。アリスと私とで魔法使いが二人いて、梓の能力を知っているやつもたくさんいた」

 

ドロシーも妹紅と同意見。

 

「えぇ、私と姉さんもそう思ってた」

 

「うん、きっとそうだと思ってたよ」

 

「あぁ。俺から言わせても、オリジナルの青葉が、この状況に対する打開策を用意していないはずがない。そうだろ?」

 

錦も信じきった顔で俺を見てくる。

 

 

「─────いや、ない」

 

「え?」

 

「だからない。打開策なんてあるわけないでしょ?」

 

「───────は?」

 

妹紅が止まる。

 

「え?え?え?」

「そ、そんな!?」

 

依神姉妹も顔を真っ青にする。

 

「嘘でしょ?」

「マジで?」

 

ドロシーと錦も顎を外す。

 

 

 

「─────おーい青葉、俺は人の嘘を見抜けるぞ~」

 

ただ、御衣黄だけは気づいていた。

 

 

「あー、そう?」

 

「てめ、こんな状況で心臓止まる嘘なんてついてんじゃねぇ!?」

 

「君心臓止まっても死なんでしょ」

 

「だからほっとけ!」

 

「そりゃあもちろん、あるに決まってるでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズトォォォォォォォォォォン!!!!!!

 

 

 

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

「なんだぁぁぁぁぁ!?」

「うおおぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「どゆことぉぉぉぉ!!!」

「どぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「アァァァァァァ…………?ナンダ、コレハ…………!」

 

 

 

 

 

「──────アオハさーん!!!」

 

 

 

 

 

「メディスーン!!上手く行ったみたいだね!」

 

「うん!上手く行ったよー!」

 

 

 

 

 

 

 

「う、嘘でしょぉぉぉ!?」

 

アリスが大発狂する。

なんと、大音響を立てて、この空間よりはるか上が爆破され、地上の光が差し込んできたのだ。

そして、このエリアとほぼ同じ広さの大穴からメディスンたちが顔を出してきた。

 

 

「バ、馬鹿ナ真似ヲ……………!!!」

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、どんな奇策もまずはやってみるものね」

 

そして続いて上からやってきたのは幽香さん。

 

「みんな、大丈夫!?」

 

「まだまだショーはここからよー!」

 

「最高の音楽を届けるよー!!」

 

「さぁ、とびっきりに熱っついビートを奏でるよ!!」

 

プリズムリバーウィズHまで。

 

「な、なんとかなって良かったー!!」

 

さらに雛もやってきた。

 

 

 

「女苑、今のは雷だよ!天人様の雷だー!!」

 

紫苑がこの絶対的ピンチの中に舞い降りた救世主に歓喜する。

 

「はぁ!?天人様の雷って…………まさか………!!」

 

 

 

 

 

 

 

「─────ほうほう、暇潰しに来てやってきたが、確かにこれは面白い見せ物ではないか」

 

 

 

 

 

 

 

─────背高き幽霊のはるか上から見下ろす姿。

 

巨大な空飛ぶ岩に仁王立ちし、橙の焔が漏れる刃を手に立つ蒼き少女が一人。

小さい身体と守りたい美貌を持ちつつ、そこからは消せないオーラが放たれており、これだけ離れていても威圧感を感じる。

いやまさか…………俺の作戦もここまで完璧とは思っていなかった。

 

まさか、本物の天変地異が起きるなんて…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大きくなーれ、大きくなーれ!!」

 

青葉に指示を受けた後、メディスン・メランコリーは風見幽香と協力して植物を一気に成長させていた。

幽香が咲かせた花に善玉の毒を与えて強く大きな個体に成長させる。

 

「ねぇ、本当に音楽で植物って成長するのかしら」

 

「もちろん!ハッピーな音を聞かせたらお花もきっと喜ぶわ!」

 

「ルナサ姉さんとメルラン姉さんの音は魂に響くからね!植物だって元気になれるよ!」

 

「これこそが、幻想郷イチの音楽育成ってね!」

 

プリズムリバーウィズHも音楽の力で花をより高く成長させていく。

花はやがて木々の高さを越え、まだまだ延びていく。

 

「がんばれー!もっと高く!あの雲より高く!」

 

 

「~♪なんだか、楽しくなってきたわね」

 

「うん!みんながハッピーね!!」

 

「やっぱり音楽はやめられない!」

 

「ほら、花もあんなに大きく…………」

 

 

 

「まったく、青葉も大概な作戦を考えるものね」

 

幽香もほかの花を咲かせて、育てている大きな花に栄養分を供給していく。

 

「この辺りかしら……………雛、貴女に全て懸かっているのよ」

 

 

 

「わ、わかってる……あんまりプレッシャーかけないで……」

 

「いい気付け薬になったでしょう?」

 

 

 

 

雛はこれまでに戦ってきた山賊、そしてワンダーランドに所せましと集まった賭場の人々、格闘大会の観戦にきた人々、そして裏椰子飼城にいた敵たち。

そのすべての厄を溜め込んだ。

そして、青葉はそれに目をつけた。

 

 

 

 

 

 

(幽香さん。まず、君の能力で咲かせた花を、メディスンやプリズムリバーウィズHたちと協力して雲と同じぐらいの高さに育ててほしい)

 

そして、それが終わってからの雛だ。

青葉の作戦は本当に完璧だったのだ。

しかし、それは同時に賭けもあった。

 

青葉が雛の溜め込む厄の可能性を、プリズムリバーウィズHの音楽のバラエティ性を、メディスンの毒の汎用性を、そして風見幽香の操る花の多様性を信じた結果だ。

 

「世界一巨大な花はラフレシア。けれどそれは横の面積であって高さの事ではない…………背の高さで言うもっとも巨大な花は、このアモルフォファルスギガス。コンニャクの仲間ね」

 

天に届くほどの背の高い花の真下で雛は覚悟を決める。

 

 

 

 

(お願い………理想に近い現象が起きて!)

 

 

 

そう言って、雛は自分の溜めた厄を放つ。

 

 

 

「みんな、離れるわよー!」

 

 

 

 

 

 

 

難符(なんふ)『ランダムフォーチュン』!」

 

 

 

 

 

────────瞬間、空に黒い雲が流れ始めた。

 

さっきまで快晴で綺麗な夕焼けが見えたのに、猛スピードで流れてきた積乱雲が辺りを暗く染め上げる。

 

 

 

「─────どうした、雷でも降らしてほしいのか?」

 

 

 

空から声が聞こえる。

 

 

「え?」

 

雛は予想外の状況にびっくりした。

 

 

「雷は背の高く細いものに降る…………なるほど、ここまでやるってことは相当降らしてほしいようだな。なに、この下を雷の破壊力で掘りたいのか?このショッボーイ地上……ましてそのさらに下なんぞになんか面白いものでもあったり?なら、良い。天人の特権というやつだ。見るが良い下界の民よ、これが天から降り注ぐ罰の槍、比那名居(ひなない)(いかづち)である!!」

 

 

瞬間、空から轟音を立てて太い太い雷が降り注いだ。

ズドォォォォォォォン、と一条の蒼き光がせっかく育てた花を焼き払い、そのまま地面を貫く。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

当然、花の真下にいた雛は真横に落下してきたゼウスの怒りに驚くしかない。

幸運にも、その雷霆は雛には直撃しなかった。

 

 

「みんな!!」

 

ルナサの指示と同時に一斉にプリズムリバーウィズHが楽器を構える。

 

「オッケー!行くよ!雷霆(らいてい)『シンセサイザーケラウノス』!!」

 

騒符(そうふ)『心からのエール』!」

 

雷鼓が雷の電気エネルギーを強化し、プリズムリバー姉妹の演奏が雷を落とす積乱雲の勢力を強めた。

結果、その雷電はミサイルとなって地面に大孔を開けてようやく鳴り止んだ。

 

 

 

 

 

 

「は、ひひ、ひぃ…………!!!こわかったぁぁ!!」

 

 

「なんか色々気になる事があったけど、作戦成功と言えそうね」

 

 

「こ、こ、腰が抜けちゃった~!助けて誰かー!!」

 

 

 

「アオハさんはこれを狙ってたのかな?」

 

「さぁ…………孔を開けなくたっていいのに、どうしてわざわざここまでしたのかは不明ね」

 

「みんな、見て。あの鬱の渦を」

 

「あそこに居るよ、さっきあのお城を覆っていた厄のエネルギー………その中枢が!」

 

「ようやくフィナーレね、」

 

 

「ど、どうするの幽香?」

 

「お馬鹿。人にこき使われておいて、美味しいところで活躍できないなんて許せないわよ。飛び込むに決まってるじゃない、ようやく強いやつが現れたわね!!」

 

風見幽香はいち早くそこへ飛び込んでいった。

 

「ま、まってよー!!」

 

一緒に孔の中へ飛び込んだメディスンに続いてほかの皆も中へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんつー作戦だ…………」

 

妹紅が顎を全開にして固まる。

 

「ここまでしなくても……………」

 

慧音さんも処理が追い付いていない。

 

「ど、ドロシー…………」

「あ、アリス……………」

 

「青葉ってバカなのね!!!」

「青葉ってバカなのね!!!」

 

 

「─────え!?」

 

酷くない!?ちょ、酷くない!?

 

「ま、結果的には上手くいったなら言うことないでしょう!」

 

「そーだそーだ、終わりよければすべて良しさ」

 

錦、御衣黄…………やっぱり男は最後が肝心、ってやつだよね!!!

 

 

 

「わーい!!天人さまー!!」

 

紫苑が岩の上に立つ少女に向かって飛び跳ねながら両手を振る。

 

「紫苑じゃないか。よく頑張ってるな?」

 

「やれやれ…………腐れ縁も捨てたもんじゃないわね…………」

 

女苑は呆れたような口調をしながら笑う。

 

「天人様ー、こいつやっつけれないよー!どうにかしてー!」

 

 

「え?そう言われても…………何したら良いの?」

 

「弱点付与!!!」

 

「この緋想の剣はそんなに安いものじゃないんだが…………まぁ、可愛い(しもべ)のためなら必要経費というやつか」

 

 

「弱点付与?」

 

「そんな都合の良いアイテムあるんですか?」

 

ドロシーとアリスは顔を見合わせる。

 

 

 

「うむ…………この剣が見定める所、こいつに該当する気質はないらしい」

 

「え?」

 

「この相手は概念の類い。如何なる魔法も、物理攻撃も………まして私にすら殴れる代物じゃないわ」

 

「やっぱりそうなんだ……………」

 

女苑は肩を落とす。

 

「だが、その手段さえ見つければ話は早い!相手はたかが亡霊、この生命の生きる世界においては最弱も最弱!!冥界でなら多少は意気がれたかもしれないが、今回ばかりは場所を間違えたな!こんなショボくさい相手が私の足元をカサカサうろついていると思うと気持ち悪くて吐き気がしてくる!紫苑、これは命令だ。このスカポンタンを消し炭にしてやれ!」

 

「そ、そんなこと言われたって無茶だよ~!」

 

 

 

 

 

「アズサ…………アズサ…………モウスグ時ハ近イ…………オ前ヲ取リ込ミ、私ハスベテノ呪イノ長トナル………!!ソシテ、ワタシヲ殺シタオマエヘノ復讐ヲ果タシ、地獄ノ業火デ貴様ヲ燃ヤシ尽クスノダ……………全ては、オ前ノ苦シム顔ヲ見ルタメニ…………ア──ハハ、アハハハ────アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

 

 

 

「くっ……………この……………」

「なんて外道…………!!」

 

 

アリスとドロシーは歯を食い縛る。

 

 

「慧音、今一度言うぞ。こいつは本当に無理だ」

「あぁ、そのようだな…………妹紅」

 

 

 

 

 

「デハマズ手始ニ…………虫ケラデアルオ前タチを滅ボシテクレヨウ……………!!」

 

「──────やっべぇかな?」

 

「御衣黄、離れた方がいい………いつまでも俺に構ってないで…………」

 

「いや、なんとかなるって!大丈夫!」

 

 

 

 

 

「梓…………見テオキナサイ…………コレガ、私ニ逆ラッタ者ヘノ罰デアル!!!」

 

 

骸骨の姿をした幽霊の口が開かれる。

 

 

「─────くる、とんでもない一撃が!」

 

「どうやって防ぐ!?」

 

「無理だ、だから当たらないように祈るしかない!!」

 

「全体への攻撃に対する魂のグレイズってやつだな!!いや、無理じゃない!?」

 

 

 

 

 

「死ネ────念呪(ねんじゅ)魑魅魍魎(ちみもうりょう)()き祓う(ほむら)』!!!」

 

 

 

「ぐおっおぉぉぉ!?青い炎が流れてきて……………!!!」

 

 

「無理だこれ、避けられない!!!」

 

 

 

「嘘、全員ここで死ぬ────!?」

 

「きゃぁぁあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

『やめて─────お母様!!!!!』

 

 

 

この瞬間に、誰かの声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

『お願い、もう誰も殺さないで!!!お願いだから!!!もうやめて!!!!これ以上殺すくらいなら、私を殺して────!!!!』

 

 

 

 

 

『駄目ダ、「私ノ罪ヲ実ノ犯人デアルオ前ガ背負ウ事」ソレガ、オ前ヘノ罰デアル』

 

 

 

『嫌ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────ほんとはこういうの…………いかにもご都合主義っぽくて嫌いなんだが、」

 

 

 

 

 

『え───────?』

 

 

 

 

 

「あんたはまだ、死んじゃ駄目だ、梓ちゃん」

 

 

「嫌…………駄目。私は、死んで償わなくてはならない…………そうじゃないと、また誰か一人と死んでいく。私は、殺さないとなにもできない…………なら、私が死ねば、全て終わる……………」

 

 

「違う、そんなことをしたって償う事はできない」

 

「やめてよ………じゃあ、私はどうしたら良いの!」

 

「一度犯した罪はどう足掻いても償えない。過去を変えることはできないし、過去に戻る事はできない。あんたがこの先何をしようと、それを償うことができなければ、またそれが報われることもない。あんたは一生、そして死んだ後でもその重荷を背負うことになる。それが、罪を犯すってことだ」

 

「そんな…………なら、私は…………何をしたらいいの…………?取り返しのつかないことをしてしまったって、自分ではわかってる。なのに……………どうしても、私はやめられない…………なにかを殺さないといけない。人でもいいしほかの動物でもいい…………花でもいい、なんなら生きていなくたっていい。私は毎日のように、自分の部屋にあるものを(ころ)しているの…………怖くて、辛くて…………抑えられなくて……………だから、なにかを破壊したい。破壊する瞬間に、わずかにこの苦しみが和らいで、楽になれるから…………でも、生き物の命を奪うときに比べるとこの感覚は短いし弱い…………だから、だから、私は…………!!」

 

 

 

「そのままでは、あんたは変われない。同じことを繰り返すだろう」

 

 

 

 

「──────さっきからなんなの!!私の気持ちなんてわかるわけないでしょ、あんたなんかに!!あんたはなんだって持ってる!!愛する友だちがいて、幸せな日々があって、味方もたくさんいて、こんな穢れた能力だって持ってない!!あんたはただの普通!!私みたいな異常者ごときとは違うの!!それなのに、何をさっきから偉そうにあたかも私の気持ちをわかってるかのように文句ばかり言うの!もうほっといてよ!これが、私なりの贖罪なんだから!!」

 

 

 

「──────わかるよ、」

 

「え………………?」

 

「【君】だって、俺になかったものばかり持っている。君には慧音さんという最大の相談相手がいて、亦紅という守ってくれる人がいた。俺は、もう大人だから自分で考えてやらなくちゃいけない。自分の事は自分で考えて、自分の身は自分で守る、それが俺の当たり前だ」

 

「それが…………私のこの苦しみとなんの関係があるって…………!!!」

 

 

「何より、君には親がいるんだ」

 

「───────えっ…………?」

 

「君は、親を殺してしまったことを悔やんで、今もこうして苦しんでいる。でも俺は、その過去すらも失った。悲しい記憶も、楽しい記憶も、母親もろとも失った。記憶ごときえて…………面影もない」

 

「………………………」

 

「羨ましいよ……………君のことが。母親の顔を思い出して、好きだった料理を作ってくれたことや、歌ってくれた子守唄。抱き締めてくれた時の感覚………たまに失敗して怒られたときの悲しさ………そして、それに対してごめんなさいと謝った時の仲直りのハグ………俺には、それがない」

 

「あ…………あ……………」

 

「だから、罪が怖くて辛くて辛くてしょうがない君のように、俺も…………なにも無いことが怖くて辛いんだ。君が【殺して後悔しているように】、俺は【生きてるか死んでるかもわからない】から辛いんだ」

 

「───────────」

 

「君には俺の気持ちなんてわからない、俺だって君のことを100%理解はできない。でも、俺たちは…………互いに辛いんだよ、」

 

「─────────ごめんなさい、」

 

「辛いから、生きているんだ。生きていたいから、辛いんだ。辛いから痛むんだ。生きていたいから痛むんだ。死にたくないから…………痛いんだ。死にたくないから…………怖いんだよ」

 

 

「ごめんなさ、い…………ごめ、んなさい…………!貴方のこと、なにも知らずに…………」

 

 

「そう、それだよ!!!」

 

「え………………?」

 

「いま、自分で言えたじゃないか、ごめんなさいって。ごめんなさいときちんと謝ったら、お母さんは許してくれるから!」

 

「でも…………さっき…………」

 

「うん、やってしまったことは消えないよ。たとえ許してもらったとしても、なかったことにはできない。でも、償えなくても、俺たちは何度だってやり直せる!それは全員に等しく与えられたチャンスなんだ、それは君だって例外じゃないよ梓ちゃん!」

 

「ほんと…………?」

 

「あぁ!」

 

「また、失敗してもいいの?」

 

「もちろんだ、だから、何度でもやり直そう!失敗をすることでしか人は成長できない。成功するためには、失敗を繰り返さないといけない。でも、失敗だらけでも良いじゃないか」

 

「─────────」

 

「だって…………失敗したからこそ得られた結果だってきっとあるんだ。「過去の自分があったから今の自分がある」、そう思えるようになれたら誰だって変わることができる。その考え方ができるなら、誰だって何度だってやり直せるし…………生まれ変われる!!」

 

 

「…………………………あ、あ…………あぁ…………」

 

「ほら、だからもう泣かないでいい。伏黒くんも、慧音さんも、亦紅も、俺も…………そして赤芽さんも、君を待っているから!おいで、梓ちゃん…………君は一人じゃない。さぁ、俺たちと一緒に、やり直そうよ!」

 

 

 

「うん……………うん……………!!!!」

 

 

「ほら、手を……………!!」

 

「青葉さん…………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナラヌ……………ナラヌ…………アズサ!!!』

 

 

 

 

「キャァァァァァァァァァ!!!」

 

 

「梓ちゃん!!!!!」

 

 

 

『ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!コレデ、終ワリダ…………オ前ハハコノ救済ノ光ヲ失ッタ絶望ニ囚ワレ、永久ニ後悔ノ連鎖ヘ墜チ続ケルノダ!!!』

 

 

「………………………………………」

 

『ドウシタ?梓ノ声ハ消エタゾ!オ前モ何カ言ッタラドウダ?』

 

 

 

 

 

 

 

「……………お前だけは、絶対に許さない!!!」

 

 

『──────────!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────あれ、私たち…………」

 

アリスが眩しい光に目を覆っていた腕をどかす。

 

「な、呪いの炎は……………」

 

ドロシーも疑問する。

 

「慧音、いまのは……………」

 

妹紅が慧音に尋ねる。

 

「──────────どうして、」

 

「姉さん、なにかした?」

 

「天人様のおかげ…………なのかな?」

 

「いや、私の力ではない…………」

 

「御衣黄、あれ」

 

「───────お?」

 

 

「あ、アリス…………!あれ…………!!」

 

「ドロシー…………いったい…………あっ!」

 

アリスが一気に顔を明るくする。

 

 

 

 

 

『オ前ハ……………誰ダ!!!』

 

憎しみの声を挙げる亡霊。

 

 

 

 

 

 

 

「──────俺か?俺はな……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上に開いた大孔から月明かりが差し込む。

さっきまでは洞窟だったために地上の光が入ってこなかったがさっきの雷のおかげで洞窟の天井は崩落。地上の夜空が広々と見える。

その月光の照らすところに、人影があった。

 

 

 

 

「──────そこらへんの獣人だ」

 

 

青い着物に紫色の袴。赤の瞳と薄緑の髪。

 

そして──────短くも細長い角。

 

 

 

 

 

「何故……………私ノ呪イガ……………!!」

 

 

「それはお前の呪い(もの)じゃあないだろう。それに…………概念相手じゃ、魔法も物理も通じないとはいえ、こうすればお前の実力なんて、たかが知れている…………」

 

 

「青葉…………本来はこんなにイケメンだったのね…………キャー!もう駄目!!頼もしさと二面性と王子様属性で失神しそう!!

 

「アリス、そこじゃないわよ今。でも、厳しめな口調の青葉もしつこくて素敵………!!もっと声聞かせてー!!!」

 

 

 

「おい。ちょっとうるさいぞ、お嬢さん方」

 

「キャァァァァァァァァァ!!!」

「キャァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

「あー……………慧音?」

 

「言ってやるな妹紅、せめて夢見る少女でいさせてやれ……………」

 

「とはいえだ………なんで大穴開けたかと思えば、これが狙いだったのか~」

 

「手段は酷いが、目的となる作戦は最高だな」

 

 

 

 

 

 

「文字ってのは魔法でも物理でもない…………俺たちの文明を形成するれっきとした「概念」だ。これが何を意味するかわかるかい、オバケさん?」

 

 

「────────キサマ……………」

 

 

「つまり、もうお前に攻撃できるようになっちゃったんだよ…………こっちは」

 

 

 

「慧音、やったな!青葉の文字ならあの幽霊を殴れるぜ!」

 

「しかもそれだけじゃない、錦の分析が正しかったら……………」

 

「あの呪いの炎すらも相殺できる、ってことさ」

 

「あっ、良いところで……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで本当に終わりだ、椰子飼赤芽。お前がもうちょっと頑張ってこの作戦が上手く行く前に俺を仕留めれたら、お前の勝ちだったのにな」

 

 

「うわー、あの挑発凄くない!?」

「皮肉屋な一面もカッコいい…………!!」

 

 

 

 

「戯言ヲ……………結局オ前サエ仕留メレバ、」

 

 

 

「餅の絵描きが。まさかこの俺を倒せるとでも思ってるのか?」

 

 

ハクタク化した青葉は余裕たっぷりの表情で嘲笑う。

 

「この人数に、どうやって………?教えてくれよ」

 

 

「きゃっ!もう!ダークヒーロー感強すぎ!」

「こんなの惚れない方がおかしいわよ!」

 

 

 

 

 

「さて…………美女の応援なら、ちょっとだけ多めにやる気出てくるかな。そら、ゴング鳴らしなお二方?」

 

 

「頑張って青葉ー!!!」

「頑張って青葉ー!!!」

 

 

「おう!……………って、みんなでやるんだよ!!」

 

「きゃー!!!」

「きゃー!!!)

 

 

 

「ごめん慧音、オオバの態度が普段の100倍鼻につくんだけどもしかして私だけ?」

 

「心配ない、私もだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、待ちに待った強者との戦い、やらせてもらうわよ。さもないと、ストレスでこの中の誰かを消してしまうかも」

 

歩く姿は薔薇の花、風見幽香が傘を構える。

 

「梓は私がこらしめるんだから、さっさと渡しなさい!できないのなら、亡霊だろうと毒々の刑よ!」

 

人形解放戦線リーダー、メディスン・メランコリーとスーさんが決めポーズ。

 

「どんな不幸だろうと音楽の力で救うわ」

 

プリズムリバーリーダーのルナサが相棒のヴァイオリンを構える。

 

「さて、こんな悪い夢なんて吹き飛ばしてハッピーエンドにしましょう!」

 

プリズムリバーアイドルのメルランが自分の半身であるトランペットを構える。

 

「音楽は世界を救う!さぁ、プリズムリバーウィズH、いつも通りに…………いや、いつもよりさらに気合い入れて演奏開始!」

 

プリズムリバーサポーターのリリカが命よりも大事なキーボードを構える。

 

「さっきの雷のさらに倍で熱い音楽を届けるよ!さ、始めましょ!」

 

サンダービートマスター、堀川雷鼓が愛用の太鼓と共に亡霊へ向き合う。

 

「じ、自信ないけど………私だけだもんね、

不可能を可能にできるのは!」

 

ある意味今回のMVP、鍵山雛がやる気MAXの状態で位置につく。

 

「私より不幸なやつなんて、絶対に作らせやしない、まぁ…………私は女苑がいたらそれで幸せだけど?」

 

最凶最悪の貧乏神、依神紫苑がまたスーパー貧乏神モードになる。

 

「私も姉さんがいたらそれで良いわ!さて、美味しいところだけ持っていくのが疫病神ってもんよ。さ、久しぶりの大暴れと行こうじゃない!」

 

黄金の女王、依神女苑も両拳を打ち鳴らす。

 

「やれやれ…………バケモンばっかりで劣等感すごいねぇ、まるで高級ようかんに囲まれた五十円ゼリーだ」

 

人を生かす剣士、衣黄御がドスの鞘を亡霊に向ける。

 

「俺は歩けないけど…………生憎とこの傘射撃ができるんでね、俺をどうしようが止まんないぜ?」

 

世界一イケメンな人形、錦が番傘片手に寝た状態から座った状態に起き上がる。

 

「やるっきゃないか!これでラストだ、燃え尽きそうなぐらい血が滾ってくるぞ!」

 

不撓不屈の蓬莱人、藤原妹紅が炎を溢れかえらせる。

 

「青葉を守るのが仕事ね、了解。アリス、ついてきなさいよ?」

 

「なに言ってるの、貴方のほうこそついてきなさい?」

 

時に犬猿の仲、時に阿吽の呼吸、アリス・マーガトロイドとドロシー・アンドロメダが二人ならんで構える。

 

「さて、一気に終わらせようか。大切な教え子を返してもらおうか!!」

 

梓の最大の味方、上白沢慧音も絶望の状況から立ち直り、むしろ勝ちを確信している。

 

「此度の人形劇も大詰めだな、閉幕と行こうじゃないか」

 

そして、最後の希望は神門青葉に託された。

 

 

 

 

「さて、私にできることは特にないな。だが、最後に爪痕だけ遺して、あとはお前たちの戦いぶりを上から見ておくとしよう」

 

少女が剣を振るう。

橙色の光を纏う刃は亡霊の身体を切り裂く。

 

 

「ギャァァァァァァァァァァ!!!!」

 

もちろん、概念攻撃ではないのでダメージはない。

しかし、亡霊に異変が起きた。

 

「これで、お前に奴らに対して不利を取る気質を纏って貰った。ダメージこそゼロだが、多少は弾幕でも怯むようにはなっただろう。やれやれ、亡霊のままならばこう上手くはいかなかったろうに。わざわざ実体を持つ者を取り込むなんて、そんな愚かな真似をするからこうなるんだ」

 

 

 

「ありがとーう!天人様!!」

 

「紫苑、あとは頑張れよ?…………ついでにお前も、やれるな?」

 

「当然、俺が【最後の一歩手前】の希望だ、やってやるとも」

 

天人は頷くと、岩と共に空高く昇って消えた。

 

 

 

「さぁ、リセットだ」

 

 

「許サヌ…………貴様ラガドレダケ足掻コウト…………私ニハ勝テヌ…………!!」

 

「やれやれ、いったいどんな計算をしたらそんな答えにありつけるのか不思議でしょうがないな」

 

慧音が呆れる。

 

「行くわよ人形たち、最後のひと踏ん張りだから!」

 

七色の人形使いアリスがまさに七人七色といった個性的で多様な人形たちを取り出す。

 

「錦、そろそろ本気の時間と行きましょう」

 

「そうだな…………よし、マスター。やってくれ」

 

「えぇ。人形は、これが強いのよ!!」

 

ドロシーが魔法の糸を引っ張ると、脚を失って立てなかった錦が動き出す。

そう、錦が動けない代わりに今度はドロシーが操作しているのだ。

これこそが、一色の人型使いの通り名の所以だ。

 

「─────無駄ナ事ヲ…………脆弱ナ能力ヲ幾ツ束ネテモ、勝テヌ物ニハ勝テヌ、絶対ハ揺ラギナドシナイ!!」

 

 

 

「お前の中じゃどういうシナリオなのかは知らんが、第一節で打ちきりにしてやる。なんせ、文字を書き換えるってのは、物語を破壊するってことだからな」

 

皮肉にも、この男に約束された結末は通用しない。それを書き換えてしまうのがこの男なのだ。

 

 

 

「盛者必衰…………いや、油断大敵っていうぴったりな言葉を教えてやるよ。自分の状況もわからずにまだ自分の中の絵に囚われている…………」

 

青葉が抜いた刀が閃く。

誰も斬れぬ、誰も傷つけぬ………そして、誰も傷つけさせぬと誓った刃。

彼はそう、梓を救うためにこの一振を。

 

 

 

 

「こんなつまらない劇作家は………オペラ座のシャンデリアに潰されるのがお似合いだ」

 

 

 

 

「キサマ………………!!!!」

 

 

 

「梓ちゃんを帰してもらおうか。お前だけは許さない……………行くぜ!!!歴史の満漢全席だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

その男は、ただ一人の子供を救うためだけに、多くの仲間たちと共にいま走り出した。

 

戦うために、そして、助けるために───

 

 

 

 

もう、彼女を一人にさせないために!!!

 

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