東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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恋色マスタースパーク~森中の大弾幕勝負

「う……………うん……………?」

 

俺は差し込む朝日で目を覚ました。

 

「なんだ…………ここ」

 

見たことのない場所だ……………俺の家じゃない。

 

えーと、あれ…………?

俺は……………確か……………昨日……………

 

「やぁ、おはよう。まだ6時半なのに。意外と早起きなんだな。早起きは良いことづくしだ、続けると良い」

 

「───────慧音さん?」

 

 

 

あーーーーー!!!!!!!!

やらかしたーーーーー!!!!!!!

 

「やべぇ!!ここ、慧音さん()!?」

 

俺は自分の家にはない質感の、いい匂いのする畳で寝っ転がっていた。

 

「あぁ。昨日夕食を食べた直後、沈むように眠りについたからな」

 

「しまった!店…………店に帰らないと…………おぉぉぉいや、やっぱりいいや、どうせ客なんか来ないよ」

 

自分で結論を下してまた寝っ転がってしまった。

 

「二度寝とは感心しないな……………私の講釈で眠ったばかりではなかったのか…………?そうだ、目覚めがてら、手伝ってもらっていいか?ここで一晩タダ泊まりしたわけだからな」

 

「は、はい。俺が力になれるなら喜んで……………」

 

一見完璧そうに見える慧音さんがいるのに…………俺にできる手伝いなんて、そんなものないような……………

でも、人に頼られるのは嬉しい。俺にも、もしかしたら出来ることがあるのかもしれない、そう、俺は誰かの力になりたい、そんな憧れがあった。

今回は昨晩のタダ泊まりの帳尻合わせということだが、俺はそんな理由がなくとも、慧音さんのために何かしたいと思っていた。

 

「まずだな、そこの酔っぱらいを起こすのと……………」

 

床でぐーぐー寝息を立てて眠っているモンペ。

まぁ、俺が連れてきた生き物だから仕方ない。飼い主がちゃんと責任持って持ち帰るべきだ。

なんだ、そんなこと…………え、「のと」ってなに?

 

「朝食やるから、皿洗いもやってくれ」

 

「え?いや、申し訳ないよ、朝食まで食べてくなんて」

 

「あぁ、もう作ってあるぞ」

 

いや、手際良ッ!?

机の上に朝ごはんがすでに並んでいた。この時点で拒否不可能。クソッ、食べ物を残すのは嫌だし、慧音さんの手料理の味を知ってしまった今、これを回避する術はない。そして、一食ぶんの金が浮いた!

ならば、労働は相応の対価であろう。

 

「あとな、これは単なる普通のお願いなのだが」

 

「はい……………?」

 

「洗濯物干しといてくれ」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

マジで何の理由も存在しないお願いだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさぁ、なんで私がやらないといけないんだよ。お前への依頼だろ?いつもは依頼欲しがっているくせに」

 

妹紅はグチグチ言いながらも洗濯物を外に干している。

 

「あのねぇ、俺にもできることと出来ないことがあるんだよ……………慧音さんが天然なのか、相当何も気にしないのか知らないけど、俺に全部渡してきたんだよ。頼られたとはいえ、男が女の子の洗濯物干すっていうのは、かんっぜんにアウトだから」

 

まさか渡してこないとは思うけど、万万万万が一にも下着とか混じっていた暁には俺は社会的に抹殺されるに違いない。

 

「紳士ぶるなよ~。今なら代われるぞ?」

 

「俺にそんな脅しが通用すると思うの?」

 

ため息混じりに妹紅を睨む。

ごめんって~、と妹紅は笑いながらせっせと小物を干していく。

いちおう、妹紅には仕分けしてもらって、上着とかは俺が干しておいたのでいちおう俺も手伝っていることにはなっているはずだ。

 

「終わったぜ~」

 

妹紅がひょいっと戻ってきた。

 

「お疲れ。悪いね、こっちの都合で手伝わせて」

 

「お安いご用だよ。…………それはそれとして、オオバ。慧音の下着の色、教えてやろうか?」

 

とんでもない事を言いつつ、腹立たしいニヤケ顔で肩に手を置いてきたものだから、俺は反射的に妹紅の頭をひっぱたいてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~、って……………誰もいなかったな」

 

俺は店の裏口から家に帰ってきた。

うちの「いぬゐ舎」は正六角形の変わった構造の建物で、表と裏の入り口が前後対称にある。表が店の入り口、裏がいわば自宅の入り口となっている。

 

「さて、玄関へ……………」

 

玄関に行こうと、家のド真ん中を直線に進む。

そうすると店に出られるのだが、

 

「あ」

 

「──────────」

 

なにしてんだ、この人。

 

 

 

「なにやってんの、ウドンゲさん」

 

「ちょ、ちょっとですね…………薬を売りに来たんですが、いなかったもので…………外出してたんですね、珍しい」

 

「言い訳は要らないよ、ドロボーするなら好きにしてもらって結構。金目の物を見つけられたら、の話だけどね」

 

「いいえ!滅相もない!」

 

バレバレだよ。店を閉めなかったのは俺の責任だが、なんでこうもずかずかと家の領域にまで踏み込んでいるんだ。

 

「やるか?」

 

「今日のオオバさん好戦的すぎませんか!?」

 

ウドンゲさんが涙目で兎耳をしょぼくれさせる。そうはいかんぞ。俺、猫派なんで。兎に癒されたことなんで人生で一回もないから。

 

「侵入者を蹴散らすのは家主の義務だよ。帰ってくれ、せめて話は店の中で頼むよ」

 

「おくすり安く売るから許してー!!」

 

「永琳さんが許すわけないでしょ、そんなこと。それで、どれを安くするんだ」

 

安くなるんなら、是非とも安く買わせてもらおう。

 

「えーと、えーとですね…………たとえばこれとかですね~」

 

「へぇ、強そうな媚薬。要ると思うか?」

 

「ハァイ、オオバさん、普段と違っていい匂いするじゃないですか~」

 

なんだ、その普段から俺が臭いみたいな言い方。

 

「それが………?」

 

「いやいや、どうもこうも、今日こんな時間からご帰宅ということは、ついに昨日女性と初めてお泊まりしたのかと…………」

 

「さすがは炎の不死鳥に怯えながら暮らす竹林の兎、火に油を注ぐのは得意なんだな」

 

床に置いてあった竹刀を振り上げる。

 

「すみません冗談です」

 

土下座したって遅い。謝って済むなら奉行所は要らない。

俺に口喧嘩売ったらどうなるか教えてやる。

 

「その媚薬、70%オフにするなら欲しい。交尾のことしか考えない兎には要らないだろうからね、勿体ないから貰う」

 

「こ、ここここここ交尾ィ!?」

 

「兎は交尾のことしか考えていない、って故郷の有識者から聞いたよ」

 

「うわーんひどい!そんなこと誰が噂したんですかー!」

 

「あぁ、お金がほとんどないから代わりにシリコンでできたコレあげる。香霖堂からパチってきたやつ」

 

「え、それってまさかディルd…………」

 

「早く出ていけ────!!!!」

 

容赦なくスペルカードをぶちかましてウドンゲさんを吹っ飛ばすつもりでいく。

 

「ひえぇぇぇ─────!!!!!」

 

ウドンゲさんは頭を押さえながら全速力で店から逃げ出していった。

 

「ちょ、ちょまて!!!」

 

この薬箱どうする気だ!!

 

 

 

辺りはあっという間に静寂へと戻る。

 

「えぇぇ……………どうする気だ、あの人」

 

薬箱置いていったよ。どんだけ必死なんだ、というか、どんだけ俺が本気だと思ってたんだ。

演技派なところは直すべきなのか、続けていくべきなのかわからん。

 

「とりあえず、この薬箱を返してやらないと」

 

薬箱を持ってウドンゲさんを追いかけるべく、俺は家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!!ウドンゲさーん!?」

 

大声で呼びながら走り回るが、ウドンゲさんの姿は見当たらない。

まったく、そんだけ脚が早いのなら俺にも勝てるだろうに……………

てゆーか、あの人結構強いはずだよね。

そりゃあ、武道百般の俺に近距離では勝てないだろうけど、あの大量の座薬だったら勝てるはずだけど。

まぁ…………本人は気にしているみたいだから座薬とか言っちゃ駄目なんだけどそれはそれとして。

まったく、どんだけ迷惑かけてくれるんだか。

 

とりあえず、ウドンゲさんを探してもっと、もっと奥へ……………まだ里からは出ていないはずだ。

もっと、もっと───────

 

 

 

「うわ、あぁぁぁっ!?」

 

 

草履の紐が切れて転んでしまった。

なんて不吉……………というか、それより、なんだ。この胸の(たけ)りは。

 

「しまった…………笠!!」

 

転んだ拍子に三度笠が脱げてしまった。

というか、転んだせいで薬箱がふっとんでしまった。

笠がクッションになってくれたおかげで奇跡的に薬箱は無事だ。

まずはそれが良かったと思いたい。

 

まずい、こんな道のど真ん中でハクタク化するのはなんとしてでも避けたい。

 

「ぐ、ぐぅぅ……………」

 

しまった、ハクタク化してしまった…………人前で……………

 

 

 

「キャーーーー!!」

 

「なんだ、通行人に角が生えてきたぞ!!」

 

「なんだこれ、悪魔の使いか!?」

 

やっべぇぇぇぇぇ、しくっじった!!

 

 

 

 

 

(───────お前もいつか、石に躓いて転んでしまったとき、町中でその笠がずれたらどうなると思う?)

 

 

 

 

 

親友の言っていた言葉の意味がようやく理解できた。

平和ボケしたこの里において、このような異形が紛れ込むのは良くないとわかっていたから、俺はありのままの姿ではなく、わざわざ笠を被って人里に溶け込んでいた。

それが今……………

 

 

────そこで俺は初めて気付いた。俺を見るや否や、一目散に逃げ出す人々。

逃げなくとも、俺を見つめてくる訝しげな目。

腫れ物を見るように、気持ちの悪いものを見るような目。

 

 

 

 

──────目、目、目、目!!!

 

 

 

 

目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目目!!!!!!

 

 

 

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

俺は、俺という化物から逃げる人々よりも大きな悲鳴を上げて。

 

 

 

薬箱と笠を放置したまま、俺を睨む人々の目の前から逃げ出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のは………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……………はぁ……………はぁ……………」

 

こんなところにまで来てしまった。

ここは…………魔法の森…………か?

 

「あ………………」

 

我に立ち直って思い出した。三度笠と薬箱を置いてきてしまった。

あの時は、自分を腫れ物のように見てくる、里の人々の視線から逃げるのに必死で、なんにも考えてられなかった。

 

「くっ…………………」

 

ここ数分間の記憶がない。

ハクタク化しても、人間の姿の時の記憶がなくなるわけではないのに。山月記じゃああるまいし。

 

「……………これからどうしよう」

 

少なくとも、笠がないと俺は里に戻れない。

でも、こんなところにいつまで居たってなにも起きない。

だが、俺にはこの姿のままで里に戻る勇気が出ない。

 

「───────────」

 

いや、そんなことはどうでもいい。

なんだ、あの目は。俺がそんなに嫌か。

街中に、すこし角が生えただけの人間が、そんなにも鬱陶しいか。

安曇の言っていたことは本当だった。

俺たちの祖先は、あの視線に耐えきれなくなってここまで来たんだ。

いや、視線だけじゃない。もっとわかりやすい弾圧や迫害があったに違いない。

俺は、それをモロに受けたのだ。

ワーハクタクの里はかなり古い時代のもの。だから、あの里に住んでいたワーハクタクを追い出した人間なんて、生きている時代じゃあないのかもしれないが、名残というのか、文化というのか。いや、認識?偏見?

とにかく、俺はあの里にはとても居られない状態だった。

妖怪や妖精、天狗や河童であれば、人間と共存していたが、獣人はそうではない。

このようなケース、初めて見る未知の生命体に里の人々は怯えていたに違いない。

俺もその視線が怖くて、我を(うしな)って逃げてしまった。

 

「くっ…………………」

 

悲しいとか、悔しいとか、怖かったとか、なんかいろいろな感情が複雑にごちゃごちゃしてどうすればいいかわからない。

ただ俺は、この木の下で震えながらうずくまることしかできなかった。

空が曇ってくれればいいのに、と空を見上げるがあいにくの晴天、雲一つ見当たらない。

曇りか雨の日までここで野宿か。

そう思って俺はただそこに座り続ける。

 

 

 

 

 

 

「─────やっぱりな、そこに居たんだろうと思っていたぜ」

 

「────────!?」

 

突然、中性的な声が聞こえてきた。

妹紅か?いや、違う。じゃあ誰だ?

 

 

 

「誰だ…………?」

 

「おう、心配しなくてもいいぜ。なんてったって、私たちはこれで初対面なんだからな」

 

俺は木の下から立ち上がって、その人影を見つめた。

ほんとうに、知らない人だった。

 

金髪に白黒の服装をした、いかにも魔女という見た目の少女。空でも飛ぶ気か、手には箒が握られている。

 

「────へぇ、お前が里で迷惑かけているっていうワーハクタクか。オスのワーハクタクなんて初めて見たが、なに、案外見た目だけでもわかるもんなんだな。昼間からハクタクの姿ってのがちょっと引っ掛かるが、まぁ、いいか。見るからにワーハクタクだし、十中八九アタリだからな」

 

呂律の回る、けっこうベラベラとしゃべる娘だ。

 

「─────何の話だ………?」

 

俺にはわからない。里で迷惑をかけているワーハクタク…………?

 

「空を飛んでいたら偶然、物凄い速さで里から逃げるように走っていくワーハクタクを見たんでな。苦労して追いかけた甲斐があったぜ、霊夢の野郎は慧音以外がハクタク化したらそいつだって聞いていたが、つまりそりゃあお前のことだったんだな」

 

「──────迷惑?例えばどんな」

 

「しらばっくれるのは良くないぜ。お前の胸に手を当てるか、鏡を見るかして、お前の行いを反省することだな!悪いが、ここで大人しく捕まって貰うぜ!」

 

少女はそう言うと、手にした箒に跨がってこちらに突撃してきた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

横に飛び退く。

俺が座っていた大木が音を立てて幹からへし折れる。

同じ木でできていながら、木の幹よりも細いはずの箒の突撃にしてなんて火力だ。

 

「私の名前を覚えておきな────霧雨魔理沙(きりさめまりさ)。お前を取っ捕まえる、どこにでもいる普通の魔法使いだ!」

 

魔理沙は大声で名乗りを上げた瞬間、ガラクタをばらまいてビームを放ってきた。

 

「弾幕勝負か─────!!」

 

「話してもわからないなら、強引にパワーで納得してもらうぜ!」

 

魔理沙は箒に乗りながら、凄まじい速度で空中を飛び回って、大木を砕いたあの猛烈な突進攻撃を仕掛けてくる。

それを躱せば今度は弾幕が飛んでくる。

 

「つ、強い!!」

 

速すぎて魔理沙本体が見えない。

だが、レーザーの振りが妙に大雑把だ。

速い動きに翻弄されるが、弾幕自体は決して凶悪ではない。

身体を縮めて避ければ、意外と躱せる。

 

「ぐっ……………」

 

─────しかし、これだけの実力があって、弾幕を当てるセンスがないのはどういうことだ。

こちらは常に走り回って魔理沙の突進に合わせて転がっているだけですべてを避けている。

体力を削りきる魂胆か?いや、それにしてもやり方が効率的に良くない。

こんなことしても、自分の体力が減るだけだ。

 

ならば……………この先に、【何か】を用意しているに違いない。

 

 

「─────どうする、」

 

スペルカードの書き換えは極力使いたくない。俺の唯一の武器。それを知られてしまえば、一気に不利になってしまう。

初見殺しの範疇で使わなければ、俺に通常弾幕が使えないということを逆手に取られて、永遠に通常弾幕で畳み掛けられる。

 

所持しているスペルカードを使えるのは多くても10回まで。それ以上は体力が持たない。

俺に可能な攻撃は10回まで。それをすべて防がれたり避けられたりしたら終わりだ。

なら、可能な限り必殺技(ボム)は使わないほうがいい。

 

 

 

「─────そろそろ幕引きと行こうか」

 

一際速い突進が正面からやってくる。

わかったぞ、さっきまでのはすべて牽制。

 

本命は───────

 

 

 

「ふッ──────!!!」

 

身体を後ろに倒して、仰向けに倒れる。

 

「避けた!?」

 

まさかこんな大きな後隙を晒す勇気があるとは思っていなかったのか、魔理沙の驚愕が響く。

そうだ、間違いない、本命は─────

 

 

 

「──────────」

 

魔理沙が空高く舞い上がる。

箒の耐える限界の高度まで上昇。

そこから一気に急降下してきた。

 

 

 

(ここだ──────!!)

 

本命はここだ。この突進に、全部を掛けていたんだ。先程の猛攻はこのレシピに至るまでの過程に過ぎない。

気合いで避けれる程度の弾幕なら、あの勇猛さは顔に現れない。

そして、こういう人物は、可能な限り初見殺しに収めようとしてくる。

弾幕慣れしている彼女は、間違いなく、決まった戦法を蓄えている。

そのコースが、切り札として発動されるだろう。

 

 

 

恋符(こいふ)────────」

 

あぁ、そうだろうと思っていた。

ここでスペルカードを使うと思っていた。

なら、こちらが使うタイミングも定まった。

 

「マスタースパーク────!!!」

 

いや、これ正面から撃たれても無理だぞ!?

それをさらに死角から放ってくるとは。

なるほど、これは確かに回避不能に近い。

 

藤原(ふじわら)──────」

 

だが、俺に弾幕のルールとやらは通用しない。

 

「裏切り者への天罰─────!!!」

 

俺は、そういう初見殺しの弾幕にこそ強い────!!!

 

 

 

「スペルカード!?」

 

弾幕も撃てない獣人が当然のようにスペルカードを使用したことへの驚愕。

その隙をついた大技。

このスペルカード、元ネタはあの妹紅の必殺級のスペルカード。

目の前にやってきた猛攻を、その場に留まることなく動いて躱そうとした者に、純粋に難易度の高い猛攻を浴びせるというもの。回避方法はその場に留まることだけ。動かないだけで躱せる弾幕を礼儀正しく避けようとした正直者が馬鹿を見る。

これはその逆。厄介な小細工を仕掛ける裏切り者に馬鹿を見せる、言わばカウンター技。

策士を策に溺れさせる、絶対必中の弾幕。

 

 

 

「なっ……………!?」

 

気付いたところまでは賞賛に値する、だが既に時は遅し。

こっちの背後から極太ビームを浴びせようとしたのと同じように、相手の背後に鏡のような扉が出現する。

そこから出てきた幻像の手に、光のようなエネルギーが充填される。

 

「まさか、私の戦法を─────!!」

 

放たれたレーザーは使用者の焦りによって方向を反らしてしまい、俺の真横の木々の群れを焼き尽くした。

辺り一面が無となる。なんて強力なスペルカードだ。食らってたら死んでた。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

一方で、相手はこちらのカウンターをモロに受けて吹き飛ばされた。

まぁ、火力は少々落ちているが、森を焼き払う超火力のレーザーならば、多少なりとも威力が落ちようが、人の子一人を撃ち落とすには事足りる破壊力だ。

 

箒が燃えて制御を失い、空飛ぶ魔法使いは地面に墜落していく。

 

 

 

「くっ、そぉぉぉぉぉ!!!!」

 

往生際悪く、敵は墜落しながらも弾幕をばらまいていく。

 

「まだやる気か、この…………!!」

 

俺が迎撃体勢を構えた次の瞬間、

 

 

 

 

 

「─────はい、そこまでよ」

 

空飛ぶ弾幕がすべて弾けて消滅してしまった。

 

「ぼぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

霧雨魔理沙はそのまま地面にどてーんと落下する。

 

「──────なんだ、誰だ?」

 

「誰だとは失敬ね、昨日会ったばかりじゃない」

 

 

 

 

 

「君は──────」

 

 

 

そこに現れたのは、昨日見た……………

 

 

 

 

 

 

あの赤い巫女だった。

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