東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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青の華・長倭刀の筆竜胆

 

ホールに響く、鳴り止まぬ剣戟。

倭刀を振り回す竜胆筆竜と日本刀を振りかざす神門青葉の二人。

両者の刃は共に激突しては弾かれる。

プリズムリバーウィズHの渾身の演奏の中で繰り広げられる撃鉄音が周囲に鳴り響く。

 

「──────セェッ!!!」

 

「──────オラァ!!!」

 

実力は筆竜のほうが圧倒的に有利。以前の戦いがそれを証明している。

にも関わらず、状況は青葉の方が優勢だった。

素早い動きで筆竜の横や背後に回り込みながら流れるような一撃を連続で繰り出す。

 

「馬鹿な…………なんでお前が…………」

 

「前まで色んな相手と戦ってきたから俺の腕は上がっているんだ。この前みたいに軽くあしらえると思うなよ?」

 

「くっ………小癪な………!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

走り寄る青葉の斬り上げによって、防いだ筆竜の体勢が大きく崩される。

 

「ぐうっ…………!!!」

 

もともと消耗していたが、疲弊しきった身体に剣の衝撃はあまりにも重い。

 

「くっ………クソォォォ!!!」

 

筆竜の怒り任せの大振りの一撃が振るわれる。

地面を滑りながら体勢を低くした青葉はそれを見事に躱したら身体のバネだけで寝た状態から飛び上がり、まとわりつくように筆竜の真上から攻撃していく。

 

「ぬぅん!!!」

 

(なんだ、こいつは………!前とはまるで………)

 

「ぬぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

(いや、これで終わりだ………!!)

 

上から降ってきた青葉の一撃を弾き返すと筆竜は脚を振り上げて空中から蹴り落とす。

 

「ウウウァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

脚ごと地面に叩きつけてズドォン、と一つの爆発音とともに巨大な土埃が舞う。

 

「ぐっ…………!!!」

 

青葉はふっとばされてまた距離を離される。

 

「はぁ………はぁ………」

 

「はぁ………はぁ………」

 

両者共にかなりの疲労が蓄積している。

 

「何が─────」

 

「はぁ………はぁ………」

 

「何が違うんだ!俺は何故お前に押されているんだ!実力も、武にかけた年月も、何もかもがお前より上だというのに、俺は何が足りていないんだ!」

 

筆竜はいきなり青葉に飛びかかると倭刀を振り下ろす。

あまりの衝撃で風が撒き起こる。

 

「俺なんかの力じゃここまで来れなかった!仲間が居たからだ………」

 

それを避けた青葉が逆に一撃を振るう。

それを防いでも勢いを押さえきれなかった筆竜はまた弾かれる。

 

「くッ───────」

 

筆竜は歯を食いしばって怒りを漏らす。

 

「何が「絆の力だ」!!いらないんだよそういうの!!全員が全員、内に闇を抱えている、それが人間っていう生き物だろう!!互いの醜い部分が怖いからそれを見て見ぬふりしたまま信じたいだけ都合の良い時だけ絆だの友情だのを嘯いて用が済んだら使い捨て、見ていて気持ちが悪いんだよ………!!」

 

「一人ではなにもできない、それが分かっているから人は力を合わせるんだ!」

 

「また世迷言を…………幸せな人間ほどそうやって耳障りの良い綺麗事ばかり語る………!!絆なんて要らねぇ、ただ強くて美しいやつが一人いればそれで良いんだよ!!」

 

「そんなことはない!小さくて弱い蟻だって、数集まって力を合わせたら、自分より何十倍も図体の大きい百足を倒すことができるんだ!それが今の状況だ!!」

 

青葉の剣が筆竜を捉えた。

お互いの刃がぶつかったまま鎬の削り合いが始まる。

 

「絵空事ばかり…………そもそもお前たちの言う絆ってのはなんなんだ!」

 

筆竜が青葉の刀を押し出す。

 

「自分のことより仲間のことを想うこと、そして…………信じる事だ!友を!仲間を!」

 

青葉が筆竜の刀を押し返す。

 

「そんな実体のない理想にばかりすがろうとする、これだからロマンチストは嫌いなんだよ!」

 

「お前が求めるのは現実ばかり…………現実はいつだって上手く行きやしない、だから仲間を信じて共に辛いことに立ち向かうんだよ!」

 

「そういうのを現実逃避っていうんだよ!」

 

「あぁ、逃げることの何が悪い!やめたっていいんだ、諦めたっていいんだ!やり直したって構わない!ただその代わり、次やる時は絶対に成功させればいいんだよ!」

 

押しては押し返される、押し返されては押し返す。

二人の力は拮抗したまま剥がれない。

 

「そうやっていつも最後は神頼みがお前らの得意技か!俺は神を信じない。なぜなら、神は救いも天罰も与えないからだ!俺たちの苦労は何も報われやしないばかりか大切なものをいつも俺から奪っていく。そして散々俺から搾取してきた奴らには何の罰もないばかりか、のうのうと俺よりも幸せな暮らしを送っている。何が神だ、何が信じろだ………俺はとっくに、その行為にはなんの意味もないということを誰よりも早く深く知っていたんだよ!!!」

 

先に動いたのは筆竜だった。

剣を擦り合わせた状態から脚で青葉を蹴り飛ばしたのだ。

 

「ぐっ……………!!!!」

 

脇腹を蹴られて後退した青葉に追撃の一撃。

 

「ハァッ、せぇやっ!!!」

 

筆竜の二連撃がかぶせられる。

青葉も必死にそれに食らいつく。

 

「はぁぁぁ………………ハァァァアッ!!!!」

 

力を溜めてからの渾身の斬り上げ。

 

「ぐぁっ……!!!」

 

ズガァァァァァン、と地盤が粉砕され、あまりの衝撃で青葉の刀が折れてしまった。

 

「ぐっ…………ううぅぅぅっ!!!!!」

 

しかし、青葉はこの程度では止まらない。

筆竜を睨むように決意を固めると全力の踏み込みで後ろによろめいた身体を無理やり地面に叩きつける。

渾身の踏み込みで立ち直った青葉も全力を込めて折れた刀で同じように斬り上げて筆竜の刀を弾き飛ばした。

 

「ぐぅぁぁぁぁ!!!!!」

 

先ほどとほぼ同じ威力の爆発。

筆竜も体勢を崩した状態で吹き飛ばされる。

 

ザクッ、と地面に突き刺さる筆竜の倭刀。

 

 

「うぅ………っ!!」

 

折れた剣を投げ捨て、青葉は地面に刺さった倭刀に向かって走る。

 

「くっ………ああっ………!!」

 

レバーを引くように刀を無理やり傾け、

 

「うぉぉぉッ!!!」

 

上から勢いよく踏みつけて刃を真っ二つに粉砕する。地面に固定した状態で刃を横から踏みつけながら手で握った柄を蹴りと逆の方向に倒せばいとも容易く刃は折れる。

これで両者ともに武器は無し。ここからは肉弾戦による決着になる。

 

 

「はぁ、はぁ…………」

 

「くっ…………うぉぉぉぉ!!!」

 

真っ先に火蓋を切ったのは青葉の方だった。

真正面から何の工夫も施さない一直線の走りから力任せの拳を浴びせる。

 

「グッ…………!!この野郎!!!」

 

殴られた筆竜が同じように青葉に拳を振るう。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

両者は狂ったように拳を振り回し、我を忘れてお互いの顔面を殴りまくる。

殴られるたびに血と汗が飛び散り、お互いの顔に傷が増えていく。

以前の青葉ではまるで敵わなかった相手であった筆竜だが、今となっては筆竜は瀕死。青葉の成長と重なってだいたい互角ほどの戦闘能力となっている。

 

「ウォぉぉぉぉァァァァァァァァ!!!」

 

「ぐぁっ!!!」

 

突如青葉の一撃を躱した筆竜の放った蹴りが青葉を地面に倒す。

 

「ウォオッ!!!」

 

そのまま青葉の上に乗り、真下にある顔面を連続で殴りつける。

 

「づっ………ぐっ、ぬぐっ………!!」

 

「はぁっ、せぇっ、だぁぁぁぁ!!」

 

「ぐっ………はぁっ…………!!ぐっぁあ!!」

 

「ウォォォォォォォォォ!!!!」

 

弱ってきた青葉に放たれる渾身の一撃。

 

それを─────

 

「ヌゥァァァァァァァァ!!!!」

 

「ぐぉぉぉぉ!?」

 

真下からの強烈なストレートが筆竜の顔面の最中を貫いた。

拘束が緩んだその一瞬の隙を青葉は逃さない。

 

「気符『恒星弾』!!!」

 

青葉は自分の持つ1日5回までのスペルカード最後の一枚をここで使った。

筆竜との距離を一気に離し、その隙に素早く起き上がる。

 

「ぐっ……………この…………………なっ…………!?」

 

体勢を立て直そうとしていた筆竜の真上から───

 

 

 

 

「ふぅぅぅ……………!!!!」

 

最大限力を溜めた青葉の追撃が迫る。

激しい気の流れで辺りに気流が走り、稲妻のようなエネルギーがその長い脚に充填される。

力を溜めきったその脚は禍々しい紅の光を帯びてやがて燃え上がる。

 

 

 

兎脚(ときゃく)──────」

 

青葉のスペルカードは1日5回まで。

御衣黄との戦闘の最中で一回。

依神女苑との戦闘で一回。

赤芽との戦いで二回。

そしてつい先程の一回。

 

計5回使い切った上でその上限を超えた一撃を放つ。ただでさえリスクの大きすぎる行動を行うばかりか………彼は自身の知る上で最も危険なスペルカードを書き換えた。

炎のような爆発的なエネルギーと、波長を自在に操る狂気の波動、両方とも人体の内と外それぞれに作用する大きな反動を持つ。その2枚を統合させた上で人間の身で放つ。使い終われば彼の脚がどうなるかは解らないが────

 

それでも青葉は、この戦いに勝つために使う。

大切な仲間を守るために、これ以上、この男が過ちを犯さないよう、彼を止めるために。

多くの人を、救うために─────

 

 

「───『狂兎焔鳳赤紅蹴(ルナバルカンスパイク)』!!!!」

 

逆袈裟に振り上げられた焔の一蹴が筆竜を切り裂く。

 

「が────────」

 

(止めるな、いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!)

 

炎上する脚がその爆発と共に赤黒い焔の渦をつくって日輪の如く軌跡を描き、辺りの一切を蹴り焦がした。

 

 

 

「ぐぅ………ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

筆竜は吹き飛ばされた後、舞台の塀を突き破って外に投げ出される。

二階の高さから地上に落ち、うつ伏せになった状態で倒れた。

 

 

 

「──────────」

 

青葉は自身の脚を見ること無く、そのまま壁に開けた大孔から外に飛び降りて、倒れる筆竜に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 

青の華・長倭刀の筆竜胆 神門青葉に敗北

 

 

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