東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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和解~巫女と魔女と商人と

 

「き、君は………………」

 

「まったく、こんな真っ昼間から元気なもんよ。突然発狂してそそくさと逃げ出したワーハクタクを追っていたら、派手な爆発がしたもんだから来てみたけど、こんなめちゃくちゃやっているとは思わなかったわ」

 

やれやれ、とあの巫女は俺に近付いてくる。

 

「れ、霊夢…………どういうつもりだ、なんでそいつの肩を持つんだよ!」

 

「そりゃあこっちの台詞よ。あんたこそなんでこんなところで遊んでいるのよ」

 

「遊んでなんかない、私は昨日も話していた、この悪党を捕まえて…………」

 

「あぁ、そういうこと」

 

巫女は納得したようにうなずく。

霊夢、と呼ばれたな、この娘。いい名前だ。

 

「昨日の今日で悪かったわね。2日連続で同じ相手に詫びるなんて不覚を取るとは思わなかったわ。せめてものお詫びにはい、これ」

 

霊夢さんは俺に物を渡してくれた。

それは、俺がさっき置いてきた三度笠と薬箱だった。

 

「あ、俺の笠!ありがとう!」

 

受け取ってすぐに被る。

やっぱこれがあるとないとでは安心感が桁違いだ。

 

「しかし、なんであんたが鈴仙の薬箱を持っているのよ?」

 

「ウドンゲさんが俺の店に置いていったんだ。ついさっき、それを届けに行こうとしていたんだ」

 

 

 

 

 

俺は続けてここまでのことのあらましを説明した。

 

 

 

 

 

「なるほどね。それでこんなところで弾幕勝負をしていたと」

 

「なんだ霊夢、そいつは例の野郎じゃ…………」

 

「えぇ、違うわ。そういえば昨日いい忘れていたわね。まさか、鈴仙の知り合いだったなんて。だから鈴仙は昨日の会議であんなに焦っていたのね」

 

「なんだよぉ、違うのかよ……………悪かったな無害なワーハクタク。私のマスタースパークを浴びせようとしてしまって」

 

魔理沙…………さんは柄にもなく頭を下げて謝ってきた。

 

「別にいいよ。結果的に浴びたのはそっちのほうだし、俺の方こそ強気な対応してごめんね」

 

「はい、握手」

 

霊夢の指示にしたがって俺たちは握手をして和解できた。

 

「元はといえば魔理沙の勘違いが悪いんだけど、それはそれとして、あんたが勘違いしたってことは、他のみんなも彼を襲うかもしれないわ」

 

「そうだな、咲夜たちには私が説明しておくから、心配要らないぜ、私が蒔いた種だ、きっちりケジメは付けるさ」

 

「─────霊夢、さん」

 

「なによ、馴れ馴れしく呼ばないで」

 

どう呼べって言うんだじゃあ……………

 

「その…………さっきからずっと、俺と間違われる悪党っていうのは…………」

 

「あぁ、あんたの今後に大きく関わる内容だから、じっくり話させてもらうわ。────ついていて」

 

そう言って、霊夢さんは俺と魔理沙さんを連れて森を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────博麗神社。

ここが、そう…………あの博麗神社か。

 

一度もここへ参拝したことないからわからん。

けれど、わりと人間の里に近いから名前だけは知っている。なんでも、何度もこの幻想郷で起きた異変とやらを解決してきた名探偵?いや、便利屋?みたいなほうで有名。神社としては決して人気がない。

 

 

 

「さて、話の続きね。まぁ、お茶でも飲みながら気楽に聞いてもらえばいいわ」

 

おー、弾幕した後のお茶美味い。

一息つけるわー。

 

「─────どうも、最近の話、「獣人の山賊」が増えているらしいの」

 

「獣人…………?あんたたちがしつこく追っているワーハクタクじゃなくて?」

 

「えぇ。ワーハクタクも含め、それ以外の種族も含めた、「獣人」の山賊が多くなっている。たとえば、人狼や鬼人とかもその類いね」

 

「ふむふむ、それって、昨日の連中みたいな感じかな?」

 

昨日俺と妹紅が出くわしたあの泥棒3人組。あいつらは全員獣人だった。

あーいうのが増えている…………なんか度々聞いた話だな。人間の里で迷惑を掛ける連中…………奉行所のお兄さんからも聞いたなそんなこと。

なんなんだ、ここ最近。

 

「そういうこと、あんたは昨日運悪く鉢合わせたのよ。ま、撃退できたようで何よりだけど」

 

「なんだが、特にワーハクタク族が首謀のようでな。一月ほど前の満月の日に、とんでもねぇもんを連れて強盗をした輩がいたんだが、そいつには角が生えていたらしいぜ。被害者の証言を元に調べたところ、その角はワーハクタクの特徴を持っていたらしいんだ」

 

一月前の満月の日…………あの日か。

 

「その日は俺、遠くの故郷に帰郷していたんだよな…………被害はどんな感じだったんだ?「とんでもねぇやつ」って?」

 

「とんでもねぇやつ…………私も霊夢も見ていないんだが、まるでヒトじゃなかったとかなんとか」

 

「………………?」

 

その……………なんだ、獣そのものってことか?

 

「なんていうかなぁ。人間の見た目しているのに、人間していないっていうか…………」

 

「獣として生きた、って感じかしら」

 

「そうそう!それだぜ!」

 

「はぁ……………?」

 

よくわからないが……………

 

「要は、理性の欠片も見られないケダモノってことだね?」

 

「あぁ、ついでに見た目も原始人かってぐらいに野蛮だったそうだな」

 

「えぇ、肥満体で背が高く、小さくてクリクリした目に鋭い牙、もうグールかと思うような姿だったらしいわ」

 

なるほど、それは確かにとんでもねぇもんだ。

ヒトの世界に育たなかった存在を持ち込むなんて、相当何か大きな動きを起こしたかったに違いない。計画性のない、なんというか…………暴力そのものというのか?

そういうのをやりたかったのが手に取るようにわかる。

 

「けど角が生えたやつは、きちんと理性を保ったワーハクタクだったんだとかな」

 

「ほんっと、どうなっているのかしらね」

 

「ワーハクタクなんだったら、わかるもんじゃないのか?夜に角が生えたらワーハクタクだよ」

 

「ワーハクタクは満月の夜にしか角は生えないんだよ、ワーハクタクのくせに知らないのか?」

 

え?そっちこそ、こんな初歩的なことすら知らないのか?

 

「あのね、俺の里にいるやつは、全員ワーハクタクだよ。月が出ている日は月齢を問わずハクタクの姿になるのがワーハクタク族共通の体質だ。俺みたいに、日光に反応するような敏感なタイプもいるが、それは遺伝みたいなものだよ。利き手が左の人ぐらいの頻度で見る。満月の夜にしかハクタク化しないなんて、そんなのおかしい。ネイティブじゃないんじゃないの、そいつ」

 

「ネイティブ…………?」

 

魔理沙さんが耳をひくつかせる。

霊夢さんも俺のほうを見つめてくる。

 

「これ、俺も一月前に友人から聞いたんだけど、ワーハクタクには俺みたいな先天性のものと、後天性のものがあるらしいんだ」

 

「後天性のワーハクタク?人間がワーハクタクになる条件ってあるの?」

 

「さぁ…………それはわからないけど、ワーハクタクの体質が不完全っていうことは、どこかにワーハクタクじゃない血が混じっているはずなんだ。それか、ハクタクの血が【薄すぎる】か」

 

「待ってくれ、じゃあ……………」

 

「えぇ、どうやら、私たちの知っているワーハクタクと、ワーハクタク側にとってのワーハクタクは、認識が違うみたいね」

 

「ワーハクタクは月夜に角を生やすものだ。月齢は関係ない。決まった日にしか角が生えないのなら、それはワーハクタクじゃない他の種族か、不完全なワーハクタクだ」

 

そう、それこそ………………

─────あ、そういえば。

 

「これは俺の里に伝わる話なんだけど。昔、ハクタクに食べられてしまって行方不明になった子供がいたらしいんだ」

 

「へぇ?」

 

「もしかしたら、そいつは、ハクタクに食べられたことでワーハクタクになったんじゃないかなって、俺は思うんだ」

 

「馬鹿言え、死ぬだろ普通」

 

「いいえ魔理沙。案外、理にかなっていなくもないわ。生まれがじゃないのなら、どこかでハクタクの血を浴びないといけない。その子供とやらは、襲われた時についた傷口からハクタクの血を浴びたんだわ」

 

「ハクタクの血を浴びるだけでワーハクタクになれるのか人間は?」

 

「ハクタクは幻獣の一瞬よ。もしかしたら、そのような普通の生命にはないような能力があるのかもしれない」

 

「よっしゃ完全にわかったぜ。食われた子供はどんなやつなんだ?えーと…………お前は…………」

 

魔理沙さんは名前も知らないワーハクタクを見て戸惑う、

 

「あぁ、俺は神門青葉。よろしく、魔理沙、霊夢」

 

「えぇ、よろしくね、青葉」

 

「よろしく、頼むぜ、あうぉぉ…………あぁぁ、言いにくい名前だぜ!」

 

「言いにくかったらオオバでもいいよ」

 

「よし、じゃあオオバ。よろしくな!」

 

魔理沙は元気に座布団から立ち上がると真上に拳を突き上げた。

 

「危な!お茶こぼれるじゃないの!」

 

霊夢が倒れかけた湯飲みをキャッチして抗議する。

 

「元気なもんだね……………」

 

俺も頭をかきながら仰向けに倒れて一安心する。

 

 

 

 

「あんたが言うな!!」

 

返す言葉もございません。

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