東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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超俊足ブン屋、文やややーん!

 

「綺麗な景色だね〜」

 

ロープウェイの中から見える森の紅葉を見て俺たちはその絶景に酔う。

 

「妖怪の山は初めて行くけど、ここってこんなに景色がきれいだったんだ」

 

「ここは幻想郷でも一番の絶景の一つだ。まぁ……ここの窓から見ると不思議な気分だが、山頂までついたらもっと広い絶景が見れるぞ」

 

「そうなんだ?」

 

「あぁ。楽しみにすると良い」

 

わーい、それは楽しみだ。

妖怪の山………たしかに幻想郷で一番高い場所、なんて所に行ったことはないから。

広い地上を見下ろす事を一度はやってみたかった。

ワンダーランドは地底深くだったが、今度は高い高い場所か。

 

「──────あれっ?」

 

突然───ガタン、とロープウェーが停止してしまった。

 

「─────機材トラブルか?」

 

慧音さんと妹紅がスッ、と立ち上がる。

 

「なぜだろうか。急に止まるなんてこと、」

 

「──────何の音………?」

 

なんか、ガタガタガタ………と何か巨大なものが折れ曲がるような音がする。

 

「─────まさか………」

 

「あ、青葉!何をして────」

 

慧音さんの心配を無視して俺は力づくで緊急脱出用の天井扉をこじ開ける。

 

「くっ……………カァァァッ!!!」

 

飛び蹴り上げでバコン、と扉を開けて俺はゴンドラの上に飛び乗る。

 

『ピンポンパンポーン─────』

 

突然、お知らせのアナウンスが流れてきた。

 

 

 

『ただいま妖怪の山ロープウェーは不測のトラブルにより緊急停止いたしました。すぐに救出員が乗客の皆様はゴンドラの中で安全に待機してください』

 

いや、だって──────

 

 

「─────青葉!なんか来るぞ!」

 

妹紅の忠告でようやく俺は気付いた。

真横から飛来物が飛んできた。

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

ドキューン、と横を通り過ぎた一閃は暴風を伴って俺をなぎ倒すとどこかへと消えていった。

 

「う、わ──────あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

その拍子に俺は上に乗っていたゴンドラから落下してしまった。

 

 

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

下から吹き付ける風を浴びながら俺は紅の中へと投げ出されていく。

真上から必死に俺の名前を叫ぶ二人の声は速度と距離であっという間に掻き消されてしまった。

 

 

「た、助けてくれ─────!!!!!!!」

 

「危なーいっ!!!!」

 

「どおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

さっきの飛来物よりさらにさらに速い疾風が俺を掴んで横に吹っ飛ばしていった。

 

 

「ぐぅぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「さぁ、もう大丈夫ですよー!ここは安心して大船に乗った気持ちで私にまかせてください!って、あやや?ここは船も通らない空でしたね〜あははは!」

 

俺を背後から抱き締めながら猛スピードで空を飛んでいるのは明るい声の少女だった。

風のせいで後ろを振り向けない。誰なのかはわからないが、とりあえずは命の恩人だ。

 

「ロープウェーは緊急停止中です。ここは危険なので一旦山頂の方までお送りしますね。その代わりに、取り残された乗客の救出を手伝ってもらいますからよろしくお願いします〜!」

 

「な、ばばばばばばばばばば」

 

か、風が─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あやややや〜………お兄さん、なんだかお顔が大変なことになってますが!?」

 

「ほ、ほほ……………うお〜ぉぉっん、」

 

か、風で髪が乱れて…………あと高所かつ猛スピードで完全に酔った。

 

「─────ふぅ。助けてくれて本当にありがとうございました」

 

「いえいえとんでもない。幻想郷イチの俊足であるこの私、射命丸(しゃめいまる)(あや)にかかれば、落下している観光客の救出など朝飯前です」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 〜伝統の幻想ブン屋〜

 

   射命丸 文

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

自信に満ちた、得意そうな顔で文さんは笑った。

 

「射命丸文………どこかで聞いたような…………」

 

「おっと!?やはりご存知で!?あやや〜、私ほどの一流記者になればついに一般の観光客の間でも騒がれるほどの有名人になります?まぁ………というのも私何度か異変解決したヒーローの一人ではあるんですがこれはこれで大スクープの予感!ついにこの私の顔が幻想郷じゅうの新聞の一面を飾る日が来ようとは!記者射命丸、興奮のボルテージが抑えきれませ〜ん!」

 

わかった俺この人苦手だわ。

ノリにまったくついていけない。

 

「俺は神門青葉です。文さん、新聞記者をされてるんですか?」

 

「えぇ。日夜、羽根を粉にしてあの有名な「文々。新聞」の刊行に貢献しております射命丸文と申します!以後お見知りおきを」

 

白いシャツに黒いスカート、そして………黒い烏のような翼が特徴の文という少女は深々とお辞儀をしてきた。

首から下げられているのはカメラか?

そしてその六角形の兜巾………

 

 

「もしかして、天狗族………?」

 

「はい。実は私、この妖怪の山を本拠とする新聞記者なんですよ〜」

 

なんと、彼女はまさかの烏天狗か。

天狗はこの幻想郷の種族のパワーバランスの大きな役割を担う種族の一角だ。天狗族の発達した文化は幻想郷の中でも大きな役割を果たしている。その風は人間の里にも轟くぐらいだ。

商売っ気があって何かにつけて胡散臭い感じがするのが難点だが、きっちりと仕事をこなし汚職なんてものは一切ない。

セールスがしつこかったりするのはアレだが。

文々。新聞に関してはうちも取っている。

洗剤とかお醤油つけてくれるからお得だと思って契約しちゃった。

 

「ときに青葉さん。こんなところに来ておられるということは、ご観光か何かですか?」

 

「あぁ………実は、俺に依頼があるって聞かされたんです。たしか新しい温泉街がなんだとか……」

 

「あー!その事でしたら大天狗様をあたってください!お待ちしておりますよ」

 

「大天狗…………様…………?」

 

なんか…………めちゃくちゃ偉そうな肩書。

 

「さて、青葉さん。その前にロープウェーに取り残されたほかの乗客の救出作業にとりかかりましょう。私と管理人天狗が乗客を運びますので、青葉さんはそれの整列と人数確認をお願いします。乗車履歴はゴンドラ終点の管理室に表示されているので担当役員と手分けしてお客様の安全な救出をお願いいたします。怪我人発生の場合は大きな声で助けを呼んでください」

 

一方的に指示を下してきたら文さんはピューン、と飛び上がって俊足で降りていってしまった。

待てと言いたかったが人命安全に関わる事態なので引き留めないようにしておいた。

とりあえず、ゴンドラの終点を探そう。

案内板…………案内板…………

 

──────あ、あった。現在地は………

 

 

 

「────────げ、」

 

 

1.5キロ先、ゴンドラのりば…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃぃぃ…………死ぬかと思ったよ」

 

主にこっちの作業のほうでね。

パニックになった人をあやすのは大変だ。

慧音さんみたいなカリスマ性ある人が現場にいなかったらどうにもできなかった。

 

「まったく、しっかりしてくれ………」

 

「ホントだよ。てゆーか、お前は落ちたほうが問題だろ」

 

慧音さんは飛べる妹紅に抱えられた状態でほかの乗客よりも早くやってきた。

かなり焦った顔で俺に合流してきたが二人とも俺が無事だと知って安心したら口々に文句を言い出した。

 

「なんか、あそこだけ急に突風が吹いたんだ。妹紅も見たでしょ、あの謎の物体」

 

「鳥…………じゃなかったよな、あの速度」

 

まぁ、今はあれに関してはなにもわからない。

 

 

「あ、青葉さん!お疲れ様でした~!」

 

文さんが飛んでここまでやってきた。

 

「文さん、お疲れ様です。こちらは全員無事でしたよ、怪我人もゼロ」

 

「ふぅ、良かったです。ご協力感謝します」

 

「またややこしい仲間を拾ったなオオバ」

 

まったくだ。

 

「文、こういうことは良くあるのか?」

 

「誰かと思えば慧音さんと妹紅さんじゃないですか~。お二人ともお元気そうで何よりです。………はい、最近になってから急に弾幕状の飛来物が飛んでくるようになりましてね。危険を察知したらゴンドラを止めるようにしているんですがまぁ、その度こうやって救出チームが動くんですよね」

 

「弾幕?何者かの攻撃か?」

 

「こういうことは初めてです………今までなかったのに。ですから、本気でつい最近なんでしょうね。我々も真相を掴むために調査に出ているのですが、我々の里の周囲に変化は今のところ見られず………ですが、大きな変化としては守矢神社になにやら大きな異変が生じているらしいです」

 

「守矢神社が………!?」

 

慧音さんと妹紅が驚きの声を挙げる。

 

「えぇ。しかし大天狗様曰く「今は近づくな」との事です。おそらく、今回の事とは無関係であるという風にお考えなのでしょう。こちらの問題が片付くまで天狗族の総戦力にわたる守矢神社調査には出られなくて………」

 

「ロープウェイのレールがこの先のものは取り外されているのはそういうことか」

 

「………オオバ、もしかしたら仕事って言うのはこっちの事かもしれないぞ」

 

「ごめん、何の話?」

 

妖怪の山の歩き方も知らない初心者の俺にはわからない。

 

 

 

「────この妖怪の山の山頂に、守矢神社という人気の神社があってだな。そこには強大な力を持ったある神が暮らしているのだが、文の話によると、その辺りが現在、何らかの原因によって近寄れない状態になっているようだ」

 

「え?山頂?じゃあ、すぐそこじゃないの?」

 

「けど、天狗のリーダー、大天狗はどうやら守矢神社の異変とこの周囲で起きてるゴンドラ停止騒動は別件と考えているみたいだぞ。なんでだろうな………普通はこんなの関係性しかなさそうなのに」

 

妹紅の言う通りだ。お隣さんち………いや、なんなら同じ庭で起きている異変が無関係だと言うのだ。

どんな聡明な考えをお持ちの大天狗なんだ。その様子だと、色々と真相を知っていそうだが。

 

「もしかしたら、私たちが請け負ってしまった仕事とは、温泉の事ではなく、この騒動を解決することなのではないのか?」

 

「それなら妖怪退治と賽銭にしか興味がないあの博麗の巫女がわざわざ出ているのにも説明がつくな」

 

─────わからないが、また獣人の山賊案件の可能性がある。

あの飛来物は敵の攻撃なのか。

獣人の山賊の連中め………人間だけじゃなくて他の種族にまで迷惑をかけるつもりか。

今度こそ、かならず首謀者の尻尾を掴んでやる。

あ、そうだ………梓ちゃんに組織のこと訊くの忘れてた………

 

「さて!それでは今から観光にいらっしゃった皆さんに、新しくできた妖怪の山最大級の温泉街をご案内致しましょう!」

 

文さんが先へ歩き出す。

 

「この温泉街はつい数週間前にできたばかりの全く新しい施設。見直された熱源、改善された水回り、そして新たなる絶景。これこそが今後の天狗社会の発展にさらなる貢献をもたらし得る、外の世界より持ち込んだ温泉街の技術────それこそがこの【御湯殿いづな】なのです!」

 

 

 

少し立ち止まったところで俺たちも止まる。

そして俺は視線を文さんの背中からその先へと向ける。

 

 

 

「─────うわぁ………!!!」

 

 

 

 

─────そこには、温かな湯気と落ち着く木造の長屋などが並んだ見ての通りの温泉街だった。

街中を歩く一般の観光客たちが全員浴衣姿だ。

この周囲にいくつか温泉がある、ということか。

長屋の向こうにある山々の絶壁に建物が掘られて掘られていてそこにも天狗たちが暮らしているようだ。

てゆーか………ここ、広い!!!

 

 

「よっしゃー!ここが噂の温泉街だな!慧音、オオバ!早く行こうよ!」

 

言うが早いか、妹紅は慧音さんと俺の腕を掴むと強引に引っ張って走り出した。

 

「ちょ、ちょちょちょちょ!?」

 

「ま、待ってくれ妹紅─────!?」

 

ずだだだだだだー、と坂道を駆け下りて真っ先に温泉街、御湯殿いづなを目指して俺達は進んでいった。

というわけで、ここから俺達3人の楽しい楽しい秋休みが始まったのだった。

 

 

 

 

 

──────と思っていたんだけど…………





上白沢 慧音(かみしらさわ けいね)

主人公。人間の里に構えた寺子屋で子供たちに勉強を教えている教師。
同時に「幻想郷の歴史編纂者」という肩書も持っており、満月の夜に幻想郷の歴史を記す職務を担っている。
半人半獣のワーハクタクであり、満月の夜に歴史を創るためにハクタクの姿になるそうだ。
いかにも堅物といった物静かでいて規律に厳しい生真面目な性格であり、真面目すぎて時に頑張りすぎて心も体も疲れてしまうことが多々ある頑張り屋さん。
服装は青い冠と半袖のワンピースだが、今回はそろそろ寒い時期に近付いているのと、妖怪の山の高い標高で寒冷な気候であるため、普段のワンピースの上からピンク色の綿織物を着ている。
──────もう服ごと着替えろよ。





神門 青葉(みかど あおは)

通称オオバ。首元で結った長い碧髪と綺麗な碧眼が特徴の三度笠の青年。
道具屋を経営するワーハクタクであり、慧音たちと一緒に里の人々を困らせる山賊を壊滅させるために奔走する。
弾幕を放つことはできないが、月人の剣術を使うことができ、手にした模造刀で「誰も傷つけずに」事件を解決させることを目標としている。
普段は紬に袴という出で立ちだが、今回は加えて青灰色の羽織も着ている。
慧音と同じぐらい頭が良い上に窮地における機転の良さが異常に高く、そのため地頭については彼女以上らしい。
頭が良くて力が強くて顔がめちゃくちゃ良くて手先も起用、加えて可愛げがあって優しいという、非の打ち所のない男の子。
アリス編で深傷を負ったため、戦うのが少し苦手になっている。
買った模造刀の代金を無料にして貰うために妖怪の山で起きた異変に立ち向かうという、今回の件におけるある意味発端となった人物。





藤原妹紅(ふじわらの もこう)

慧音の親友。青葉とも友達同士の関係。
竹林の案内人をやっており、どうやら青葉の修行していた永遠亭とは切っても切れない因縁があるらしい。
老いることも死ぬこともない不老不死の蓬莱人であり、この肉体になってしまって以来、いつかかつて人間だった時らしく死ねることを夢見ているという悲しい身の上を持つ乙女である。
それでも、「死ぬのは仇敵を倒してから」だと己に誓っており、まだまだ元気に振る舞っているらしい。
今回訪れた温泉街を一番楽しみにしており、実際一番楽しんでいる。
焔の弾幕を操るが、不老不死でも寒いのは嫌なのだそうで、防寒対策はバッチリの模様。
青葉や慧音と違って、外見はいつも通りのモンペだが、中にいつもより多く着込んでいるらしい。
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