東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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天狗的日常〜レッツ、お調子Battle!

 

「ふっ!!」

 

先手を切って弾幕を放つ慧音。

レーザーと光の玉が前方の文めがけて放たれるが瞬間移動したようにその姿が消えてしまった。

 

「ふっふっふっふ!幻想郷イチの俊足と呼ばれた私の姿が捉えられますか〜?」

 

文は舞い散る紅葉の渦に隠れながら慧音の背後を突くように動き回り、楓色の弾幕を撒き散らす。

 

「くっ、噂には聞いていたが………まさかほんとうに瞬間移動するほどの速度とはな!」

 

それに対して慧音は冷静に後退しながら背中を取られないように立ち回る。

 

 

 

 

 

「私のカメラワークは、文ほど大雑把じゃないわよ!」

 

はたての手にした小型カメラから光が放たれる。

 

「うわっ!?なんだ、閃光か!?」

 

正面から光を浴びた妹紅は顔を覆って光から視界を守ろうとする。

 

「そして私が撮った光景には、対象者の周囲に弾幕が展開される!」

 

「マジかよ!?」

 

目の前から突如現れた弾を妹紅は間一髪で躱した。

しかし、反応に遅れて腕を少しすりむいてしまった。

 

「この一瞬でこの私に一撃を食らわせるのか………」

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「くっ………はぁぁ!!!」

 

正面から盾を構えて自分の身を守りながら、手にした鉈で攻撃しようとしてくる椛への対応に青葉は苦しんでいた。

狼のようなすばしっこい動きと盾を用いた隙の突けない連携。

そして正確にかつ素早く振り下ろされる鉈の一撃を受けるのは剣の名手である彼ですら決して楽ではない。

 

「つ、強い…………!」

 

「まだだ!!」

 

椛が盾を構えた状態で青葉に体当たりを食らわせてきた。

 

「ぐあっ………!!」

 

地面に尻もちをつかされてから慌ててバク転し、体勢を立て直す青葉。

 

「いっ…………」

 

しかし、青葉は脚を抑えながら呻くようにして屈んでしまった。

 

「オオバ!大丈夫か!」

 

「脚が…………まだ…………」

 

以前大怪我を負った脚がまだ完治していない。

激しい運動をするとまた脚を痛めて動けなくなる。

 

 

「…………!すみません、大丈夫ですか!?」

 

椛が戦闘中にも関わらず、慌てて青葉の下へ駆け寄る。

仮にも弾幕勝負といえど所詮は遊び。

途中での止めどころはだいたい弁えている。

 

「すみません、傷を…………」

 

「…………いや、まだまだこれからだ!!」

 

青葉は不意に刀を拾い上げると椛の鉈を狙って刃を振るった。

 

「─────なんと!?」

 

咄嗟に盾で防いだが、椛は大きく体勢を崩した状態で弾かれた。

 

「ごめん、不意打ちで!」

 

「許しますが、その様子ではもはや情は無用!!」

 

「椛、後ろ!」

 

「────なっ!?」

 

「よそ見してんじゃ、ねぇぇぇぇ!!!」

 

背後からはたての相手をしていた妹紅が飛びかかってきた。

 

「まずい………!!」

 

妹紅の弾幕に合わせて盾を構える椛だが、逆にそっちの背中がガラ空きになる。

 

 

「八霖儚月流────雨降らし〜夕立!!!」

 

遠距離から投げつけられる模造刀の鞘。

それは正確に椛の背中を狙って一直線に飛んでいく。

 

「しまった………!」

 

妹紅の弾幕を防ぐ椛に、これを防ぐほどの余力はない。

これを振り向いた途端に妹紅の弾幕が直撃する。

 

 

 

「────間一髪!!」

 

しかし、青葉が投げた鞘は、疾風の如し速度で慌てて駆けつけてきた文によって弾かれてしまった。

 

「まだまだ…………!八霖儚月流・壺中翔び!」

 

「ぎょっ!?」

 

しかし、青葉は文の姿も見逃さない。

むしろそれもすでに想定済み。

ここでどんな邪魔が入ろうと知ったことでは無い。

青葉は標的を文のほうに変更して、冷静にそちらを片付けようと突撃していく。

 

「文々。新聞より暴風警報発令!!」

 

文は手にした楓の扇を力強く一閃すると、眼の前で暴風が吹き荒れた。

 

「なっ、なんだ…………竜まき………うわぁぁぁぁ!?」

 

荒れ狂う暴風に揉まれて青葉は空中へ投げ出される。

 

「うおおわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

青葉の悲鳴がかき消されるほどの勢力を伴う竜巻は上昇気流で青葉と周囲の小石を空高く舞い上げてしまった。

 

 

(か、刀が重い…………風が…………強い………!!!)

 

青葉は風圧で刀を振り回せない。

 

「くっ………このままじゃ…………」

 

「撮らえたわ!さぁ、笑って!」

 

竜巻の中で身動きのとれない青葉にはたてのカメラが向けられる。

はたてが撮影した場所には弾幕が現れる。妹紅ですら食らったその弾幕を、暴風の中で回避するのは青葉には不可能だ。

 

 

「良く鍛えられているでしょう?これが、うちの優秀な部下たちの力よ」

 

そんな中で戦いを傍観している大天狗の飯綱丸龍はうんうん、と頷きながら自慢するように青葉に語りかける。

 

「さぁ、これがベストショットよ!」

 

「これが私たち3人の連携技!」

 

「とくと味わうが良い!」

 

 

(まずいな………こりゃあ、本当に仲が良い………)

 

息ぴったりすぎる見事な連携に青葉はピンチの中でも感心するしかなかった。

はたてのカメラがフラッシュを放つ。

写真に収められた世界の中に弾幕が展開される。

風の中に作られた弾幕の檻。

青葉がそのすべてを躱すことなどできない。

 

 

「青葉!!」

 

慧音の必死の叫びに青葉もいよいよ決心がついた。

刀を手放し、その代わり風に煽られないように身体を腕で抱えながら左手を振り上げる。

 

 

「────『スペルカード、ナウローディング』………!!」

 

 

空中に出現した透明なガラスのような一枚のカードを青葉は左手で叩き割った。

次の瞬間、吹き荒れる嵐の内からさらに強い風が巻き起こった。

彼の周囲を泳いでいた葉が吹き飛ばされ、文の起こした嵐は逆に弾き飛ばされた。

 

「あやややっ!?」

 

「華恋符『サンフラワースパーク』!!!」

 

青葉の左手から黄色の輝きが一直線に放たれる。

眩しい金色の光が地面を直撃。

火柱が上がってあたり一面に火の海が広がる。

 

 

 

「な…………な、なななななに!?」

 

はたてが慌てて火の海から飛び退いた時にはもう遅い。

 

「ナイスだオオバ!!」

 

後ろから妹紅の追撃が飛んできた。

脚を取って組み伏せ、寝そべってる所にその弾幕を優しく叩きつけた。

 

「ぎゃふん!!」

 

「はたてー!!」

 

文が頭を抑えて叫ぶ。

慧音はその隙を逃さない。

 

「貰ったぞ!」

 

「なんの!まだまだ!」

 

「下がって!!」

 

「うわっ!?」

 

青葉が慧音の襟を引っ張って下がらせたところに椛の突進が降ってきた。

 

「この卓越した反射神経と瞬発性、先程から思ってはいましたがなんという手練れ………もしや、山の外では名の通った剣豪なのでしょうか………!」

 

「そういうそっちも、鉈を片手で器用に振り回しながら、よくそんな大きな盾を扱えるもんだ………あまりこういう戦い方の相手とサシたことがないぶん厄介だ………」

 

「厄介、と来ましたか。武芸者として、熟練者にそう言われるに勝る恐悦はありません」

 

「……慧音さん、ハクタクコースターダイブだ!」

 

「よし、承知した!」

 

「───!?」

 

意味不明な指示を出した瞬間に、青葉が走り出す。

 

「来るか────!」

 

正面から走ってくる青葉とその真後ろを遅れて走る慧音。

二人同時に相手するつもりではない。きっと青葉を椛に引っ掛けている隙に慧音が文を叩く作戦だ。

椛は目の前から走ってくる青葉にのみ警戒する。

 

青葉の脚は非常に速いが文の飛行速度に比べればまだまだ遅い。

文と共に行動するはたてや椛にはこの程度の速度は目視可能。

幼ながらに鍛え上げられた動体視力と、椛の持つ千里眼が青葉の動かす腕の方向の一つ一つすらも見破る。

そして青葉は最後の一歩を踏み込んで椛の間合いに入った。

 

「いまだ!!」

 

迸る太い鉈の一撃。

真横に払われた必殺の一撃を─────

 

 

 

「八霖儚月流奥義、(とんび)返り!!!」

 

青葉の身体は突然として爆ぜて真後ろに向かって宙返りした。

鋭い蹴りが振るわれた鉈を弾き返す。

そして、一回転した状態で下から振るわれた青葉の攻撃。

 

「ふっ!!」

 

「はぁっ!!」

 

しかし、椛はそれを盾で受けた。

まさに隙のない立ち回り。

鉈を返されても反撃を盾で防ぐ。武器が1本しかない青葉にはできない芸当だ。

 

その隙に慧音はやはり椛の真横を抜けて文に向かう。

そう、そしてここまでは彼女の想定内。

文に近寄らせる前に慧音を倒す…………!!

 

 

「──────はぁぁぁ!!」

 

すぐに右腕を立て直した椛の鉈が振り上げられる。

 

 

「─────鳶返り蹴り!!!」

 

しかし、青葉はすぐさま奥義を奥義蹴りに派生した。

まるで防がれるのを完全想定していたように。まぁ、実際にそうだったのだが。

攻撃を盾で防がれたあと、そのまま青葉は踏みつけるように盾の面を蹴り飛ばしたのだ。

 

「ぐぁっ!!」

 

後ろへ抜けていった慧音を狙って鉈を振り上げた椛は背後に意識を持っている。腰を捻って後ろをみているこの状態で、盾に青葉の蹴りを叩き込まれては体制の維持は限りなく困難。

盾からの衝撃を下半身と左腕の筋力だけでは殺しきれず、青葉に盾越しに蹴り飛ばされて転倒した。

そして盾を足場に飛び上がった青葉は上空から文を狙う。

 

 

「前から一人、上空から一人、あや?これどうしたら良いんでしょう!?」

 

対応に困った文にトドメの一撃。

 

 

 

産霊(むすび)『ファーストピラミッド』!!」

「八霖儚月流奥義───稲妻落とし!!!」

 

 

 

文の正面全方を狙った弾幕と退路を塞ぐ急降下攻撃の二段構え。

この避けられない攻撃は俊足の文にも不可能だった。

 

 

「うやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

ズドォォォォォォォォォォン、と大爆発が起きる。

文は爆風に巻き込まれて空へとポーンと投げ捨てられるかのように吹っ飛んでいった。

 

 

 

 

「うむ、そこまで!!!」

 

 

戦いを見守っていた飯綱丸の一声で全員が止まった。

青葉が刀を仕舞っている間に飯綱丸がすっ、と地上へと降りてきた。

 

 

 

「大天狗様〜……………」

 

「もうだめ、クッタクタよ………」

 

「くっ、まだまだ鍛錬不足か…………!!」

 

 

「良いのよ、お前たちは良くやったわ。商人、お前たちもね、力を見せてもらうために加減させて戦わせるつもりだったけど、打ち勝ってしまうか。しかも、男のほうに関しては弾幕を使わずに」

 

うんうん、と飯綱丸は頷く。

 

「椛は熱心に鍛錬を積んでおり、警護の白狼天狗の中では一番を貼れるぐらいの戦闘力はある。文はこれでも異変解決にも何度か貢献した実力者だし、はたてもまた天狗の中では弾幕の実力者。それとまさか真っ向からやり合って打ち勝つなんて。それも含めて、貴方たちの実力は飯空Projectの一要員に相応しいものと見なします。これから、戦闘業務の場合は頼りにさせてもらうわ」

 

「はい、任せてください。俺たちならきっと力になれます!」

 

「よし!その意気よ!………さて、弾幕勝負で疲れたことでしょう、いよいよお待ちかね、いづな旅館の内部見学の時間よ。そして約束通り、飯空Projectの一員となった貴方たちは、今日から異変解決までの間、宿泊費は全面無料とさせてもらうわ」

 

 

 

「やったー!!」

 

「温泉!温泉!温泉ー!!」

 

手を取り合って踊り合う青葉と妹紅。

 

 

「はーれるや!はーれるや!」

「はれるやはれるや、はれーるーやー!」

 

 

 

「………………………………………………………………」

 

 

ほんとうに働く気なのか。

さては温泉をタダで入れると知ったから彼らはあの場に留まり続けたのでは?

と、一人思う上白沢慧音なのであった。

 

 

 

 

 

「ご……号外決定です………記者射命丸、弾幕戦で通常敵キャラに敗北…………がくっ、」

 

「しかも弾幕を使われずに…………ばたり、」

 

「挙げ句の果てに接触で撃墜だなんて………ぐふっ、」

 

 

 

負け犬たちが地面に突っ伏して戦闘終了。

こうして、青葉たちの力は大天狗飯綱丸に買われ、3人は正式に飯空Projectへのメンバー入りを果たしたのだった!

 

 

 

 

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