東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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いづな旅館はなんかおかしい

 

ざわ………ざわ………

 

 

「くっ……………」

 

 

ざわ………ざわ………

 

 

「妹紅〜、早くしてよ〜」

 

「─────どうすりゃいいんだこれは………!」

 

「勝負に出れないの?妹紅ならもっと大胆に攻めてくると思ってたのに、」

 

 

ざわ………ざわ………

 

 

「どこをどう切るか、それが難しいんだろうね。顔からして迷い方がわからんでもない」

 

「くっ……………好き勝手…………」

 

「俺が君なら、せめて大胆に打って死ぬよ。その顔からして、どうせ負けるんだ。なら、失くすもんは失くして死んだほうが本望だ。どうせなら捨身で一か八かって賭けてみないと。麻雀もポーカーも本質は同じだ。茨の道を下駄で踏む、その覚悟があるやつがワンチャンで勝つ。負けるかもしれないからといって躊躇しているその姿が、君を敗北へと導くんだ藤原妹紅!」

 

「う、うるさい───なら、この一発に全てを賭けてやる!!────行くぜ!!この五筒切った!!」

 

 

 

「─────本当にそれでいいの?」

 

「あぁ、どうせ死なないのが蓬莱人だ、なら………燃え尽きてやるのが不死鳥のあるべき姿だ!」

 

「なるほど──────」

 

 

 

 

 

 

「………………ごくり、」

 

 

「───────────ロン」

「だー!!!くそぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

「あはははははははは!!!!!なに麻雀でも自滅してるの妹紅!!!」

 

 

 

青葉は普段の彼からは想像もつかないような邪悪な笑みを浮かべて大笑いする。

なるほど、賭け事は人を変えるとはこの事だ。

 

「どれどれ………あー、なるほど」

 

床に突っ伏す妹紅に目もくれず、青葉は妹紅の編成を確認するために裏に回る。

 

「五筒を切って一筒ないしは四筒待ちか。安手に中で済ませとけば良かったものを………」

 

「くっそぉぉ!!騙しやがったなコノヤロー!!」

 

「妹紅が大胆に自滅しただけだよ………あそこであんな詰められ方しておいて、それに踊らされて五筒切るって相当麻雀苦手でしょ妹紅………まぁ、賭けに走っただけまだ良いのかな」

 

 

────というわけで、私、上白沢慧音は麻雀で楽しんでいる青葉と妹紅を遠目に眺めていたのであった。

このいづな旅館にはなぜか賭場があり、そこに辿り着いてしまった青葉たちはそこで止められてしまった。

 

 

 

 

「────おやぁ………そこの笠の坊や、なかなかやるようだね………」

 

そこにやってきたのは…………

 

 

 

「あ、どうも。まぁ、そんなルールわかってないんですけどね」

 

「おや。初めてなのかい?だとしたら、相当見込みがあるよ………頭が利く子は大好きだねぇ………」

 

銀の煙管で煙を吸うその女は見た目は若いが口調と仕草がなんとなく年寄りに見える。

確か、ここの賭場の管理人だったような気がするが………

 

(あね)さん、ここの人ですか?」

 

「おっと、自己紹介がまだだったようだ。私はこの賭場の胴元をやらせて貰っている、駒草山如(こまくささんにょ)だ。駒草太夫、の方が通りが良いかね?ま、よろしく頼むよ」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 〜高地に棲む山女郎〜

 

   駒草 山如

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「お前たちは確か、飯空Projectに加入した数少ない子だったね。大天狗サマの演説、遠目に見させてもらったよ。一時はどうなるかと思ったが、お前たちがやってくれたおかげで一安心さ。礼を言わせてくれ」

 

駒草山如という女は青葉によりかかると顎を指でなぞるようにして遊び始める。

胴元というのは、わかりやすく言うと賭場のオーナー。

ここを仕切っている人物なのだろう。

確かに、妖怪の山に住まう妖怪にとって、博打は大きな娯楽というふうに聞いたことがある。

 

「………………?」

 

究極の無垢といえる彼にはそういう扇情的な仕草による魅了は全面的に無効化される。

たしかに、あらゆる意味で子供っぽい彼は彼女みたいな妖怪には大好物なのだろう。

子供好きの妖怪と言えば山姥と山女郎が挙げられる。

山姥のほうだとあまり世俗的な様子ではないのだが、賭場を開いたりして積極的に他種族と社交的に関わろうとするこの様子だと、彼女は後者のほうか。

 

「いい男じゃないか、取って食ってやりたいところだが、大事な役員だしそうは行かないか」

 

「おい、特殊スキルの効果でオオバに魅了は無効だぞ。諦めな………」

 

「そのようだねぇ、私みたいな系統は苦手か……」

 

(そういうことじゃねぇんだよな………)

 

残念そうに山如は畳の上に座りこむ。

なるほど………青葉の純粋無垢さは子供のそれによく似ているから山女郎にとっては大好物なのだろう。

確かに、青葉は男子の中では可愛いのジャンルに分類される。

 

「おや、山如でねぇか。どしたんべや、こなとこで座り込んで」

 

そこへ、着物に割烹着を着た女将さんらしい風貌の女性が登ってきた。

 

「おぉ、ネムノじゃないか。見ておくれよ。この坊や、なかなかツイてるんでさ」

 

「あら!こりゃあ可愛い子でねぇか!おぉ〜よしよし、お二人の付き添いか?」

 

青葉をわしゃわしゃと撫でてくるその女将さんもこの旅館の関係者なのか。

もっとも、この人物の顔は非常に広い。

 

 

 

「ね、ネムノって…………あのネムノさん!?」

 

「お?知ってんのか、嬉しいべ〜」

 

「オオバでも知ってるって相当有名なんだな」

 

「あぁ。それほど名の売れた伝説の女将だからな、彼女は」

 

 

 

  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 〜浮世の関を超える山姥〜

 

    坂田 ネムノ

 

  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

彼女は坂田(さかた)ネムノ。

幻想郷随一の料理マスター。

本屋に行ったりすると時々料理本が置いてあったりするのだが、なんと彼女が監修しているものがたまにあったりするぐらいだ。

発行しているのはもちろんこの山の天狗の連中なのだが、こんなところにも出てくるだけあって、我々以外の一般人にも浸透しているほどの大物だ。

むろん料理好きが知っているというだけで料理に興味がなくてまったく知らない人もいるが、料理界隈ではとりあえずこの人を挙げないわけには行かないほどだ。

そして、朴念仁の青葉でさえ、料理好きとして生きれば自然と名前が入ってくるほどの大物だ。

青葉が知っているんだ、これは相当な知名度だとわかってもらえるだろう。

 

「ネムノ?この子ら実はあの飯空Projectに参加してるとの事だ。頑張り屋さんだからしばらくこの旅館に滞在って形になるそうだ」

 

「そうかそうか!そいつは喜ばしいことだべ。実は飯空Projectにはうちらも関係してんだ」

 

なに、なんだって?

 

「そ、そうなんですか?」

 

「あぁ。私はこの旅館の賭場の胴元、ネムノは料理を振る舞ってくれるのさ。なかなかどうして、大したもんだろう?この旅館はさ。こんな規模の大きな賭場があって、幻想郷一番の三食が食べれるっていうんだからね」

 

「一番は持ち上げ過ぎだべ………まぁ山姥は料理があってナンボとは言われてるがねぇ。ところで、あんたらは何が仕事なんだ?」

 

「俺たちはこの山の周囲で起こっている異変について調査しているんです。大天狗様にそう言われてます」

 

「おや、荒事担当かい。それなら博麗の巫女がいる。そこを当たるといい」

 

「山如、連中は神社の方だろう?しっかりしてくんろ」

 

「おっとすまない。たしかに、異変解決のエキスパートはこんな所で油売ってる場合じゃあないか」

 

なるほど、霊夢たちは守矢神社の異変の解決に挑んでいるのか。

確かにあそこはこちらよりもさらに危険地帯なのだろう。ここはこんな綺麗な温泉街が開かれていて人々が観光に来ている。しかし、向こうは現在閉鎖中。

いったい何があったらこうなるのか。

獣人の山賊の件以外にも、何か起きてないか?

 

「だども、うちはさっき飯空Projectに関連している2人組を見たべ。あの子ら仲が良くってな、何の役で来たのから知らねーが、一度挨拶してくといい」

 

飯空Project、戦闘員以外にも結構な数いるな………

 

「そうなんですか?できれば、どこで見たのかを………」

 

「心配いらねぇべ。二人の部屋はあんたらの部屋の隣だ。大天狗が飯空Projectに関わってるやつはみんな最上階のいい部屋とってくれたんだよ」

 

「あぁ、私たちだってそうさ。隣かその隣でもノックしていれば会えるさ」

 

「そうですか、ありがとうございます。じゃあ、俺たちはその人たちに少し挨拶してきます」

 

青葉はそう言うと立ち上がって座敷から降りる。

 

「妹紅、慧音さん、行くよ〜」

 

「わかったわかった。それではお二人共、失礼」

 

「おぅ。初めて見る子らだったべ、慧音先生もきっと気に入るさ!」

 

「なかなか人が良い連中だ、うまく行けば戦闘員に招けるかもな」

 

坂田ネムノと駒草山如が笑って見送ってくれるのに一礼して、私達は賭場を出た。

 

 

 

 

 

 

 

いづな旅館本館12階。

3号室、ここが私たちの部屋らしい。

あの二人が言うにはいい部屋とのことだが、廊下の窓から見える景色だけでも絶景だ。

そして中に入ってみたらそれはもう圧巻の一言。

あまりにも広い高級そうな部屋に、寝心地の良さそうなベッドやソファが並べられた部屋だった。

間違いなく一撃でとんでもない財産がふっとぶ部屋だった。

 

「おぉ………これはなかなか………」

 

青葉もここまでは予測できなかったのか、人生で最大の待遇に頬を緩ませていた。

妹紅はというと、まっさきにソファに飛び込んで8個ぐらいおいてあるクッションを抱きしめて遊んでいた。

 

「いい部屋〜。あ、見て見て。バルコニーに出れるんだ」

 

バルコニーには椅子が何脚かおいてあって、机まである。

ここから窓の外に広がる妖怪の山の紅葉を一望できる。こんな状況じゃなければ安心して楽しい観光ができたに違いない。

 

「露天風呂までついてるじゃないか!しかもきっと貸し切りだよこれ!」

 

妹紅が飛び上がって喜んでいる。

なんだかんだって彼女が一番楽しんでいるように見えるのは私だけなのだろうか。

 

「さて、それじゃあお隣さんに挨拶といこうか」

 

隣の部屋にいるのも飯空Projectの関係者だ。

今後共同作業をする可能性もあるので今のうちに信頼関係を築いておかなくては。

 

「そうだな」

 

「うん、そうしよう」

 

部屋でくつろいでるところ悪いが、妹紅と青葉を連れて隣の部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

右隣はノックしても反応がなかった。きっとネムノと山如の部屋だったのだろう。

というわけで左の方へ行った。

 

「ごめんくださーい、」

 

青葉が扉をノックするが、反応がない。

 

 

 

「……………留守かな?」

 

「この温泉街、楽しすぎるからな」

 

「仕方ない、夜になったら出直すとしようか」

 

そう言って帰ろうとしたその時、

 

 

 

「あいよ、悪いな遅くなっちまって。手が離せなかったんだよ」

 

扉を開けて中から人が現れた。

 

 

「──────なっ!君は…………!!!」

 

青葉がそれに驚いた表情を見せた。

中から出てきたのは砂のような白髪をした若い男だった。

上半身裸でその上から赤い法被のようなものを羽織っており、下半身は野武士のような具足を纏っている。

外観の異色さとは異なる飄々とした顔立ちをしており、見た目だけで言うのなら何かの職人のような風貌をしていた。

 

 

 

「よろしく。隣のモンだよ、」

 

妹紅が彼に声をかけていた所、青葉が妹紅を掴んで引き剥がし、男の前に出る。

 

 

 

 

「やっぱり君───安曇(あずみ)なのか………?」

 

え…………?

 

「そういうお前はお前なのか?オオバ、」

 

 

 

「……………やっぱ本物だ〜!」

 

「また会えたなオオバ!」

 

「うん!まさかこんな所で会えるなんて〜!」

 

 

 

 

え、え──────はぁぁぁぁぁいいい!?

 

 

 

 

「お、そこの女子たちにまだ自己紹介してなかったな。俺は化野安曇だ。オオバの幼馴染だよ。───おーい、一千子(いちご)〜!!隣の部屋のが挨拶に来たぜ。お前も来いよ!」

 

安曇と名乗った男が部屋の中に叫ぶと、遅れて一人の女が現れた。

安曇とは違い、剣道の具足から胸当てや小手、面といった重い部分を取り外したような物を着ており、後ろで結った長い黒髪が特徴の若い娘。

 

「化野に付き合わされた御劔一千子(みつるぎいちご)だ、よろしく頼む」

 

 

 

な、なんだ彼らは………飯空Projectはこんなのも招いているのか…………?

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

 

 〜匠の陶芸青年〜

 

   化野 安曇

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 〜妖刀造りの鎌鼬〜

 

   御劔 一千子

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

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