東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅 作:マジカル赤褐色
──────さて、
「ま、まさか青葉の親友とは………」
化野安曇。
ワーハクタクの里に住まう陶芸家の息子であり、神門青葉とは幼い頃からの親友だそう。
─────お前はたちはどうしてここに?
─────俺も飯空Projectの一員なんだ。
彼はいづな旅館に飾りとしての陶器を設置したりする役割で呼ばれたそう。
旅館の柱やタイルなど、建築面でのサポートを行っていたそうで、今回の飯空Projectには大きく貢献していたらしい。
で、肝心のいづな旅館もう完成しているのだが、折角の旅行を満喫しようとしてまだ滞在していたそうなのだ。
そして、隣にいるこの一千子という少女も似たような役割で呼ばれていたとのこと。
「─────その刀は………捌意宝珠」
「知ってるのか?」
私はまず青葉の刀に銘があった事自体初耳だが。
「知ってるも何も、その刀を打ったのは私さ」
「え゙っ!?」
青葉の新しい模造刀を鍛えたのは彼女か。
ということは、彼女は刀鍛冶か?
「刀鍛冶なんだ、一千子さんは」
「刀は魔除けとして置かれるのさ。私はこの旅館にも複数本置くよう、大天狗サマより言いつけられたのさ」
壁に掛けられていたりして飾られていた刀が数本ほど確かにあったが、あれはそういうことだったのか。
「よりにもよって安曇と組まされるなんて、苦労したでしょ」
「あぁ、相手するのは骨が折れたさ。でも、職人として通づる部分も多かったし、結果としてはこいつが相棒で良かったと思ってるさ」
「それは果たして俺を褒めてるのか」
いや、褒めてないと思う。
─────説明しよーう!!!
今回俺からゆーちゃんに教えるのはこちら、御劔一千子だ!
貴方………そろそろ本格的に何がしたいの。
俺は魔界で言う賢者にあたる存在だぞ!てゆーか、母さんに並ぶ最高神だからね!
ホントは君も頭下げないといけないんだよ?
………………………。
御劔一千子は
通常の幻想郷には現れない「この世界限定で」登場する人物だね。
鎌鼬は知ってる?
鎌のような爪をした鼬、だったかしら。
出会った人間の肌をそれで切るという…………
ま、小学校で訊かれたのならそれで正解。
鎌鼬ってのは
旋風の中央にある部分は気圧がほぼ真空状態になっている。その空圧で皮膚が切られる現象を鎌鼬と考えられる事もあるね。他にも風によって飛ばされた砂や石片など、説もまた色々。
鎌鼬の名前の由来は「構太刀」とも言われていてすなわち刀にまつわる妖怪だ。
大陸では檮杌や饕餮と同じ四凶の一つである窮奇とも言われており、また地域によっては皆伝に至らずに山を降りて土着した「飯綱使い」の成れの果てとも言われていてその正体については現在にわたって考察が続けられているよ。
飯綱…………?
飯綱というのは標高の高い火山で産出されるゼラチン質の微生物の塊、通称「天狗の麦飯」と言われる物質の事なんだけど、同時にその産出元である飯綱山をこそ指し示す。
飯綱山の御神として真っ先に挙がる飯綱権現に近いとされる妖格が幻想郷における飯綱丸龍だよ。
飯綱山で修行する修道者はこの天狗の麦飯を食らって生存し、高い山で過酷な修行を詰むんだ。これを飯綱修験と言われていて、いわゆる飯綱権現の授けるとされている飯綱法を会得するための手段だ。最初は単純な忍法の亜種として確立された伊藤流が代を重ねていくうちに天狗や管狐を使役するといった現代の飯綱法へと昇華され、それが天然として残ったものが邪法飯綱だ。
要は、一千子は大天狗・飯綱丸の親戚って事ね。
了解………ところで、名前の由来はなんなの?
鎌鼬っぽい要素がないのだけど?
さぁ?俺にもそこまではわかんないけど………
まぁでも俺の要素としてはあれかな、刀鍛冶と言えば、血濡れた妖刀として伝説を刻まれることになった銘刀を作った稀代の刀匠、村正で有名な
「ともあれ………私たちはこの旅館の周辺で起きている異変について調査をしにきたというわけなんだ。知っている範疇で情報を教えてほしい」
私たちよりも前にやってきた彼らなら、この山の異変…………特にロープウェイを襲ったあの不思議な飛来物についても何か知っているのかもしれない。
「そういえや、最近この山に武装した変な連中が増えてきたって噂だったな」
「武装した連中………?」
「私らが来た時は軍隊のようなものを拝んだものさ。薙刀で武装した天狗たちが並んでいて、戦にでも行くのかよって思ったさ………もしやすると、あの乱暴な連中が関わってるのかもしれないさ」
武装兵…………その武装兵の話がほんとうならば、あの飛来物とは何やら関係がありそうだ。
手当たり次第に観光客に危害を加え、ロープウェイの停止でその他多くの民と運営側を困らせるような愚か者には制裁を加えなければなるまい。
「だが、当たるなら気をつけたほうがいいぜ。あそこは烏天狗とは違う。天狗族の中でも特に戦いに長けた天狗、『鞍馬天狗』の縄張りだからな」
「鞍馬天狗…………?鞍馬天狗って、あの鞍馬天狗?」
青葉が呟く。
「オオバ、鞍馬天狗ってなんだ?」
「優れた剣術と体術を扱う偉大な天狗のことだよ」
鞍馬天狗には、とある最強の武士を作り出してしまったという伝説がある。その武士は圧倒的カリスマ性て優れた戦闘能力を持って仲間を率いて数々の戦績を残し、その伝承の中には8つの船を飛びついで空間そのものを自由自在に飛び回る、まさに空を駆る天狗そのものと言われていたこともあったとか。
「マジかよ………そんな強い天狗がいる所に殴り込みに行けっていうのか?」
別に殴り込みに行くと決まったわけではないが……
「どうしたの?妹紅にしては珍しく弱気じゃない」
「だ、だって…………」
「嬢さんの心配も無理はない。天狗の中では最も戦いに優れた種族なんだ。あそこはか弱い女の子と細身の草食男子が喧嘩売れるような所じゃあねぇ」
「へへっ、そんな事ないよ。オオバは喧嘩の達人なんだからな!」
「ちょっと語弊があるよ」
それは青葉のイメージが大幅に損なわれる。
「ふん、オオバが喧嘩の達人?笑わせちゃいけねぇ。この中の誰よりもコイツと長く付き合いやってきた俺が言うには……………オオバは弱い」
「安曇、勘違いしてるみたいだけど付き合い最長は君じゃないよ」
青葉はきっぱりと言いきった。
「ハァ!?おい待てそりゃどういうイミだ!?」
「安曇とはたしかに一番古い付き合いだけど、年数自体は2年程度でしょ?妹紅と俺、6年ぐらい一緒だから」
「お前そんなのいちいち数えて………」
妹紅が照れたように呟く。
「う、嘘だぁぁぁ!?」
「なぁに女に負けてんのさ………こんな優男が出先の娘と仲良くしてる時点で察しがついただろうさ化野………」
私はまず妹紅と青葉の付き合いも私と妹紅の付き合いと大体同じぐらいだということが初耳だった。
6年前、私が爆発事故に遭って永遠亭に搬送された年か。
───────脳裏に、思い浮かぶ。
自分の身体に身を寄せて泣き叫ぶ一人の少女を。
悪かったと必死に謝り、「自分を殴れ」とまで言ってきた彼女を。
あの中に……………青葉の姿があったというのか。
「それにこいつ、一回私に『ガチ振り』されてるからな」
妹紅が青葉を指差す。
「──────────────え?」
「う、うん…………」
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
私の知らない話だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?
化野 安曇(あだしの あずみ)
青葉の幼なじみで親友。
ワーハクタクの里にある有名な陶工『鳥辺の屋』の長男。
第一印象では、青葉の性格とはまるで波長の合わなさそうな義理人情に厚く強気で頑固で大雑把な性格をした一般男性。
青葉とは兄弟分だがその付き合いそのものは長くなく、ただ単に仲の良さでやってきている。
青葉が帰郷して再会した少し後に飯空Projectで招かれ、作品提供という自分の仕事を終えて帰宅しようとしたところに青葉と遭遇。大親友との旅行を楽しもうと滞在期間を延長することになる。
どうやら喧嘩は青葉より強いらしい。
御劔 一千子(みつるぎ いちご)
見た目は麗しい乙女だが、その気質はあの妹紅にも負けない強さであり、心は
青葉の新調した模造刀を鍛えた張本人であり、彼らの事は気に入っているそう。
仕事は終わったが青葉につきまとって残ろうとする安曇につられてもう少し温泉街を楽しんでいくことにしたそう。