少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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感想評価ありがとうございます!通算UAが50,000ですよ50,000。すごいですね(語彙力)


「好きでいられたい 好きでいられたい 好きでいられたい」
Guiano x 理芽様作曲 『言っちゃいけないことばっか浮かぶよな』より一部歌詞引用


私が死んだ日。俺が生きた日。 俺もお前も魅入られたんだろ

3階空き教室

 

ガララッとガタつく扉を通り抜けて、後ろに整然と重ねられた椅子と机の群れから、椅子を二脚、教室の真ん中に向かい合うように置く。

 

俺は教室後ろ側の椅子に座り、手を組んで膝に置いた。

 

考える。

 

図書委員ちゃんから聞いた話は俺にとって少なくない衝撃があった。言ってしまえば、舐めていた。相手はまだ良識が存在する人間だということを知らず知らずに信じていた。確かに白鷺燐火への手紙を見て気色悪さを感じていた。ただ疑問があったのはそうだ。相手の行動と事前に知っていた異能が結びつかなかった。相手を燃やす異能がなぜストーカーに発現したのかが気がかりだった。

 

だが先の話、具体的には魔女狩りで行われたことを知り、やっと結びついた。結びつけたくなかったが。結びついてしまったのだ。

 

相手は白鷺燐火に対して偏執的で狂った想いを寄せている。なにがどうして燃やすという行為に至るのかわからないが、少なくとも白鷺燐火を魔女だと認識していて、自分は誑かされた被害者だと思っている。だから自分には罰する権利があって、それを行使しようとしている。

 

俺はそう結論付けて吐き気がした。ストーカーに対してだけでなく、自分に対しても。

 

だからこそ、止めなくちゃいけない。やらなくちゃいけない。俺のこれは贖罪だ。少なくとも、俺は白鷺燐火をこれからも傷つけようと考えているわけじゃない。

 

時間は16時を過ぎた。春の温かさが頬撫でて、外はゆっくりと赤く染まっていく。逢魔時、黄昏時ともいうこの時間、よくないものに逢うとされているが、確かに、これから良くない者と会うのだから、ぴったりの時間帯だろう。

 

この教室周りにはめったに人が寄り付かないからか、廊下の音がよく聞こえる。タッタッと確かな足取りで、でも確実に焦ってるような足音が廊下をこだまし、空き教室の前で止まる。ガララッと扉を開けた相手に対して、まず俺は牽制の一言を放つのだった。

 

「話をしようか」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

何もできなかった。ただ眺めているだけだった。今日、学校に来ていた貴方に一言も話すことが出来ないまま、一日が過ぎようとしていた。

 

なんて、なんて意志が弱い人間なんだ。あれだけ覚悟を決めて学校に来たのに、いざ本人を目にしてまるで風船のように覚悟が萎んでいく。自分が傷つくかもしれないという怖さが、優しくしてくれた貴方が失望する顔が、そんなことはないと信じているけど冷たい言葉を放つかもしれないという可能性が、私の思考を暗色に染める。

 

朝、HRが始まる前、貴方に話そうと思って貴方が来ることを待っていた。入ってきた貴方がすぐさま教室を出て行った時、立ち上がって上げかけた手が行き場を無くした時、安堵すると同時に私にふさわしい末路だと感じた。…なんてね。哀れな女を気取るなんて馬鹿みたいだ。

 

見向きもされなくて当然だろう。

 

この力を利用しようと考えたこともあったが、生憎私の力は半身のように利便性も汎用性もない。身体を増やすだけで、私の心を押してくれるだけの力なんて……ない。

 

これが【俺】なら、知ったことかと話しかけに行き、自分の気が済むようにするだろう。それにふさわしい力がある。

 

これが〈ボク〉なら、そうするべきだと考え、しっかりと謝罪と埋め合わせをするだろう。それを為せるだけの能力がある。

 

これが[ワタシ]なら…うん、まともじゃない方法ではあるが片付けることは出来てしまう。能力を使わずとも実現させるだろう。

 

なら私は?なにができた?

 

頼ってばかりだ。手紙をもらって自分で対処するわけもなく、ただただ一人で我慢して、自分はなんて境遇にいるんだと不幸を騙って、何も行動しないままじゃないか。誰に向けたかわからない不幸自慢で自分を慰めて行動することの怖さから動こうとしない。

 

違う。もうやめよう。行動したことで貴方を傷つけたから行動しないなんて、ただの怠慢だ。一度始めてしまったことに責任を持って。もう後悔したくないんでしょう?この関係が壊れるなんて、とっくのとうに壊れている。なら、せめて貴方に本心を伝えて感謝を述べるべきじゃないの?貴方の怒りを受け止めてあげるべきじゃないの?

 

昼休みすぐに貴方は教室を出てってしまって、帰って来た時にはなんだか怖い顔をしていたね。

 

大丈夫。貴方の怒りは正当なものだから。

 

私は半身達のような貴方の力になれる異能ではないし、貴方の隣に立とうなんて勘違いはしない。

 

でも、貴方の怒りを、感情を、受け止めることくらいはできるの。

 

大丈夫。遠慮しなくていいの。私は貴方に最低なことをしたわ。耐えられる痛みも普通の人に比べて大きいはず…。こんな人生を送ってきて初めてよかったと思えることかもね。

 

私のせいで苦しんだ。だから私に何をしたって貴方は許される。半身達が絡んでくるかもしれないけど大丈夫。これから貴方だけには危害を加えないように言うわ。

 

いいの。貴方の近くにいることが出来ればそれでいい。もし貴方が私以外で苦しい思いをするなら、半身達を使ってそれらを消してあげる。大丈夫、どれも()よ?私がやれと言えば最後には必ず言うことを聞いてくれるわ。だって私は白鷺燐火なんだもの。

 

視界に入れたくないかもしれないけど、なんだってするわ。家事も勉強も、経済面でも、もちろんそういうことだって、貴方が望むなら。私は全てを捧げるわ。

 

簡単なことだったんだ。そう、半身がどうとかじゃない。全て私、全て白鷺燐火なんだ。ただ役割が違うだけ。だから意見が違っても最終的には()()は同じ考えになる。

 

貴方が気付かせてくれた。マンガのことを教えてくれた時だって、手紙の差出人をどうにかしようとカメラの設置を提案した時だって、貴方は変わらず私を助けてくれようとしていたんだね。もう大丈夫。

 

今度は私が貴方を助けるの。

 

わかった、わかったんだ、ようやく理解したんだ。

 

助けはとっくのとうに来ていたんだ。差し伸ばされた手を振り払っても変わらず貴方は手を伸ばし続けてくれていたんだ。

 

とっくのとうに救いの手は目の前にあったんだ。

 

遅い、遅いね。ごめんね、気づくのが遅すぎて。

 

もう間違えないから。

 

 

 

 

だからこそ、放課後、私は……人でなしになる決意をした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「話をしようか」

 

静かに言い放った。

 

相手、畠中洋一は聞いていた通りの見た目していた。焦げ茶色のくせっ毛、猫背で暗い印象を受けた。

 

ただ一つ違う点があるとすれば、ひょっとこのお面を被っていることだろう。ふざけているのかと怒りたくなる。名前も割れているのに、頑なに顔を隠す理由は何なんだ。だんまりを決め込んでいる相手に苛立ちながらも、話を続ける。

 

「まず最初に俺はお前が何をしたのか全てわかっている」

 

「まぁ白鷺燐火に対することってのは、手紙で脅してきたアンタにもわかっているだろうよ。あ、手紙は拝見したぜ。随分と熱烈な恋文で…震えたよ。恐怖で」

 

牽制のジャブ。問答無用で火をつけられてもおかしくなかったがどうやら話を聞いてくれるらしい。油断か?怠慢か?異能を持っていることで慢心してるのか?その落ち度がお前自身の首を絞めることになるんだぜ。

 

ひょっとこ野郎はなおも口を開かない。会話をすることが大事なんだが…致し方ない。話を続けよう。

 

「今回呼び出したのはそのことだ。本人を連れてくるってのはさすがに無理をさせ過ぎだなって思ってな。代わりに俺がお前に話をつけにきた」

 

「もう白鷺燐火に近づくのはやめろ。迷惑してるんだ、彼女のことが好きなら、傷つける現状は本心じゃないんじゃないか?」

 

「なぁ、なんとか言ったらどうなんだよ。それともなにか?アンタが隠していることをネタバレしなくちゃ口を割らないかい?」

 

時刻は16:08。あと22分…証拠を出し切ったら俺の勝ちだ。なんとしても本人の口から引き出さないといけない。

 

「なぁ、アンタ異能持ちだろ?」

 

少し身じろぎする。ビンゴだ。動揺したな?

 

「まぁ座れよ。そこで突っ立っていたってしょうがないだろ?それに…言っとくが俺は異能持ちじゃない。アンタに対抗する手段を持ってないんだ。だからアンタと話をしに来た」

 

「俺自身が人質さ。俺がここで死んだらお前は疑われるだろうし動きにくくなる。隠すにも俺の死体を処理するのはアンタにとっては難しい問題だろ?」

 

「俺はアンタに勝てねぇ。だからこうして自分の命を引き換えに話をしにきたってわけよ」

 

相手に格下だと思わせろ。交渉の席に立たせろ。それが第一だ。第二の布石は打ってある。

 

相手は椅子に座った。まだ口を開こうとはしないらしい。警戒心が強いな。だが、座ったな?

 

にやつく頬をなんとか抑えつける。仕込みはOK、展開も予想していた通りだ。結構運要素が強めなんだが、まぁ賭けに勝ったということで。

 

「白鷺燐火への想いについてはとやかく言わないさ。でもそれの伝え方を間違えたな。あれじゃ只のストーカーだ。しかも周りを脅してくるなんてな。……っとなんもしないさ。カーテンを閉めるだけだ。お前だって誰かと話している様子を見られたくないだろ?」

 

話しかけながら、席を立ち、カーテンを閉める。窓から見るとこちらを観察する纏先生が見えたんで先生的に用意はできているらしい。頼もしいね。

 

シャっと閉めると夕暮れの光がカーテンというフィルタを通してより淡く、より薄くなる。廊下側は薄暗くなり、ちょうど真ん中にいるひょっとこ野郎の半身に影を落としている。いい暗さだ。やりやすくなる。

 

「さて…アンタの口から聞きたい。アンタはなぜ白鷺燐火に想いを寄せるようになったんだ?」

 

椅子に戻って問いただす。どうやって想いをこじらせたか、どうやって魔女狩りに関する異能に目覚めることになったのか。知らなくちゃいけない。まぁ異能についてはそうとは決まったわけじゃないがね。間違っているのか合っているのか知るためにもな。

 

「……」

 

「…はぁ、だんまりかよ。じゃあいい、俺の推理を話そう。間違ってたら恥ずかしいが…まぁいいさ。最後にアンタがストーカーを辞めるかどうかを聞ければそれでいいからな」

 

16:12。あと18分だ。

 

「アンタはどういうわけか、白鷺燐火に想いを寄せるようになった。そうだな…美人だし周りにない見た目だもんな。外見に惹かれたとしよう」

 

ここら辺はほぼ俺の偏見と考察だ。動揺さえさせればそれでいい。

 

「アンタは白鷺燐火の特別な容姿に惹かれていった。だが、その容姿のせいで孤立していることを知った。そうじゃないか?」

 

「アンタは自分と似ている白鷺燐火の姿に同情と仲間意識を持ったんじゃないか?アンタも孤立していたんだろう?調べはついてるさ」

 

「俺はアンタを止めるためにそれなりに調べてきてるんだ。アンタが学校でどういう生活をしているのか、交友関係、色々とな」

 

「さぁ話を続けようか。アンタは「違う」っと?口を開いたな。なにが違うんだ?教えてくれよ。アンタが言わなきゃ何も始まらないんだ」

 

孤立していることを突かれたのが痛かったか?なんにせよ反応を引き出せた。攻め時だ。

 

「お前は何もわかってない。彼女がどういう存在か、なにも、なにもわかってないんだよ…!」

 

お面越しにぼそぼそと、しかし確信しているような声で言葉を続ける。

 

「なにが分かってないんだ?俺はアンタより白鷺燐火と関わりが深いと思ってるぜ?少なくともアンタよりは詳しいと思ってるが」

 

当てつけだ。

 

「いいや、いや、いや違う。お前は!彼女の美しさを何も知らないんだ!知らずにお前は…!」

 

顔を伏せてまるで独り言のように言うひょっとこ野郎。釣れた。話し始めたな…!

 

「じゃ、教えてもらおうか。アンタが思う白鷺燐火の魅力について」

 

16:20。残り10分。

 

「彼女は魔性なんだよ!彼女はその美しさと何者にも触れざる高貴さを持ち合わせていて、靡くことがない花、完成された絵画、彼女はそういうものだ。そういうものなんだよ!誰にも頼ることはない孤高の存在で、そこに人が入り込む余地はない。ないはずなんだ。それをお前が穢した!汚したんだ!美しく咲く高嶺の花を手折ったんだよお前は!!!」

 

「完璧な絵画に幼稚な筆が入った!神聖な彫像に価値を知らぬ馬鹿が落書きをした!駄作になった!凡作になった!お前のせいだ!お前のお前のお前のお前お前お前お前!!!!」

 

「折れた花は元には戻らないんだ!どうしてくれる!!?お前のせいでこうなったんだ!!どう責任取ってくれる!!!彼女はもう立ち直ることはなくなった!!!頼ることを覚えた!!!順調だったのに!計画を台無しにしたんだよお前は!!!!お前さえいなければ…!」

 

「でもまだ間に合うんだ…!お前を今消してしまえば、彼女は再び完成するんだ。一度傷がついてしまったことを糧にして、二度と誰にも関わらない孤高の存在として、美しさを体現する存在として完成するんだ!」

 

立ち上がってまくし立ててくる。抑えられない感情をむき出しにぶつけてくる。なるほどなるほど、よーくわかった。

 

「よくわかったよ。アンタが白鷺燐火に向ける想いってのは」

 

俺も立ち上がる。ポケットに仕込んだ催涙スプレーを手を突っ込んで握りしめ、いかにも怒っているという足取りで近づく。実際ふつふつと湧き上がる怒りを抑えられそうにない。横目で時間を見やる。16:28、来たな…!

 

「うれしいよ…!アンタと同じ考えらしいなっ!アンタみたいなヤツのせいで俺が死ぬって考えると腹が立ってきたぜ?なんでアンタの都合で俺が死ななきゃいけないんだって怒りが止まらないんだよ…!」

 

気圧されたように一歩下がるひょっとこ野郎。

 

「同じ言葉を言ってやるよ。…お前さえいなければ!お前が白鷺燐火に踊らされてなければ!!俺はこんなに動くこともこんな苦しい思いもしなかった!」

 

「お前のせいで知りたくない自分の一面を知っちまったんだよ!!自己嫌悪に陥ってるんだ…!クソっ!」

 

こんなのただの自己満だ。ぶつけられる場所を無くした衝動を、相手を見つけて嬉々としてぶつけている!醜い争いだが、止めない。止まらない。

 

「でもアンタよりはマシだって思ってるよ。なんせ白鷺燐火のせいにしてないし、自分が首を突っ込んだせいだって反省してるからな!それに?アンタとは違って頼られてるぜ?アンタとは違うんだよ!」

 

わかった。やっと理解した。ストーカーに対して怒りが止められない理由が言葉を吐き出して理解できた。

 

同族嫌悪だ。俺もこいつもベクトルは違えど、白鷺燐火を利用しようとした。片方は自分の未来のために、もう片方は自分が求める美しさのために。

 

だから嫌いなんだ。コイツが白鷺燐火に対して、やった行いは白鷺燐火の好感度を上げるために話しかけたり、俺がコイツをどうにかしようとカメラの設置を提案したりしていることと被っているように感じたから。

 

まるで鏡だ。ちょっとでも立場が違えば、俺も自分が助かりたいがために、ストーカーまがいのことをしていたかもしれないという感触がある。

 

認めない。俺は理解したんだ。反省して、助けようと覚悟を決めて、悔い改めたんだ。

 

「…お前ェ!!!」

 

「はっは―!やっと本性を現しやがったな!自分の行いを反省できないヤツに未来なんてあるわけないんだよ!!その短絡さが!その後先考えられない空っぽ脳みそが!アンタの怠慢を招いたんだ!」

 

鬼の首を取ったように、口から吐き出される棘塗れの言葉とは裏腹に、思考は冷静で…自分自身すら含めて鼻で笑っていた。

 

全部全部、自分に返ってくる。自分が吐き出した言葉は全て自分に当てはまる。なんだこれ。醜過ぎて笑えて来る。失笑ものの喜劇を見ているみたいだ。見てられなくて客が途中退席するレベル。

 

「死ね!『燃えr!!』ピピピピピピピピピピピピ

 

バカでかい音量でアラームが響き渡る。俺が朝一で教卓の裏に設置していたスマホだ。アラームを16:30に鳴り響くように設定しておき、そこまで時間稼ぎをしていたのだ。

 

それまでに燃やされる可能性の方が高かったから、あくまでBプラン。もし俺が燃やされていたらAプランに入る予定だったが…うまく誘導できた。Bプランを実行できるとはな!

 

鳴り響くアラームの方向、つまり後ろを振り向くひょっとこ野郎にくるりと一回転するように座っていた椅子を持ち上げて遠心力で思い切り振りぬく。

 

ガッシャッッッン!!!

 

アラームに負けず劣らずデカい音が鳴り響き、教卓にたたきつけられたひょっとこ野郎に素早く近づく。行動させるな。させたら俺が殺される!

 

「いっっっっ!!!っ『燃えろ』!『焼け死ね』っ!」

 

椅子が燃えた。金属部分が持ってられなくて思わず離すと真っ赤になった椅子の金属部分と火がパチパチと弾ける赤色で暗くなっていく教室を淡く照らし始める。

 

それと同時に自分の体の中に、火が灯る。比喩表現じゃない。本物だ。自分の内部が焼けついていく感触が、口の中を火傷したときのような痛みが身体を巡り始める。

 

喉が熱い。喉を焼いてきたらしい。それでも俺は抑えきれない感情を言葉として吐き出した。酷く濁った言葉、むき出しの本心を表しているようだった。

 

「お前の…!異能を当てて…やるよ!」

 

「お前の異能は魔女裁判が元ネタだ!女性に対する偏見、自分は魅入られただけという自己防衛、自分が美しさを完成させるという身勝手な使命感!」

 

「魔女裁判の最後は火あぶりだ!自分の身勝手な欲望のために!!白鷺燐火を焼こうとしてるな!」

 

「『燃えろ』『燃えろ』『燃えろ』『燃えろ』『燃えろ』『燃えろ』!!!!」

 

身体がどんどん焼けていく。でもいい。コイツだけは許さない。

 

目の前まで来た。焼かれる痛みで緩慢な身体を気合を入れて動かして、教卓にへばりつくひょっとこ野郎に倒れ込む。ズレたお面、恐怖にまみれた顔がよく見える。右手で制服を掴み。左手に催涙スプレーを握りしめる。よかったよ。内側から焼いてくれて。引火せずに済んだ。

 

プシュー

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛っ゛っ゛」

 

間抜けな音が教室に響き渡り直後、絶叫。効くだろ?高かったんだぜ?

 

「アンタも焼かれるんだよ!いいだろ?俺とお前は似た者同士だ!アンタだけが逃げようったってそうはいかないさ!!俺と同じ末路を辿るんだよ!」

 

催涙スプレーを投げ捨てて、懐からロープを取り出す。取り回しがしやすいよう結んでおいてよかった。後結び方もな。おかげで引っ張るだけでほどけてくれる。

 

俺は暴れる男の左手首を掴み、自分の手と一緒にぐるぐる巻きにする。これじゃあ解かれるから、ロープの余りをまとめてもう片方の腕に巻き付ける。後は腰にがっしりとしがみつき、自分でも凄惨だと思うような笑みを浮かべる。

 

「火あぶりの刑だッ!存分に味わえよっ!」

 

異能は本人を傷つけないんじゃないか?って思ったからこの行動はほとんど賭けだ。だが、盛大な嫌がらせにはなるだろ?じゃあやるしかないよな!

 

命がけの嫌がらせ、絶対死ぬという確信と死んでもこいつを殺すという意志を持ってしがみつく。

 

暴れて暴れて、何度も殴られて、蹴られて、それでも絶対離さない。

 

膠着状態、俺が死ねば解けるこの固まった時間の中。

 

一番来てほしくない相手が空き教室に現れた。




感想評価誤字脱字報告ありがとうございます!
好き嫌いが分かれる文章。本作はかっこよく戦ったりするわけでも、勧善懲悪でもなく、ただただ、登場人物が、闇をぶつけ合うお話なので、どうにも生々しくなってしまうのです。

主人公君とヒロインちゃんの闇のぶつかり合いではなく、主人公君VSストーカー君VSヒロインちゃんみたいな三すくみです。ヒロインちゃんはダークライ枠です。

ちょっとしたお知らせ
投稿が遅くなってしまって申し訳ない…。意欲はあっても時間がなければどうにもならないと痛感しています。
もうすぐ第一章が完結するので、予定として考えていたヤンデレシーンの幕間と合わせて、1.5章を書こうと考えているのですが、どのシチュエーションが良いのかアンケートに答えていただけると幸いです。

1.5章のシチュエーション

  • 嘘つき少女と人の痛みに共感できる男子()
  • 幸せをかみしめている少年と愛されたい少女
  • 幸福の価値が分からない女と不幸体質の男
  • 天才と天才女になり切れなかった凡才男
  • 自分に価値を見出せない男とまぶしすぎる女
  • 忘れた少年、忘れたかった少女
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