少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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感想評価ありがとうございます!

ようやく終わりが見えてきましたね…。アンケートが結構割れたな~と思う今日この頃。選ばれなかったお話は2.5章や別の所で吐き出す予定です。

今話も人食表現、グロ描写がありますので、お気をつけください。

「カニバリズムは最も明確な優しさの表現の一つだ」

画家サルバドール・ダリより文章引用


私が死んだ日。俺が生きた日。 私の幸せを奪うなッ!!!!

一番来てほしくない人物が空き教室の扉を通して居た。

 

「なんで…なんで来たんだよッ…!」

 

思わず声を荒げる。荒げざるを得なかった。

 

被害者が加害者に接触したらどうなるかって?そんなのわかりきってることだろ。乱暴されたり、消えない傷を残されたり、他にも色々考えられるはずだ。

 

しかも他者を燃やす異能を持っているのだ。燃やされてもおかしくない。なんで自ら地獄に落ちようとするんだ!なんで…!

 

惨状を見て息を飲んだのかしばし硬直する白鷺燐火、だがそれも刹那に留め、悠然と歩を進めた。確かな足取りでこちらに近づいてくる。

 

なんだ…?

 

白鷺燐火本人だ。そのはずだ。しかし、いつもと纏う雰囲気が違う。何か、何かが違う。決定的なものを掛け違えたような、取り返しのつかなくなってしまったような危うい雰囲気を感じた。

 

他人格が出てきた…?だとしたら今の状態は…!!

 

俺は咄嗟に叫んだ

 

「やめ…ろ…!それはダメ…だッ!」

 

息が熱い。火が付きそうだ。喉から漏れた吐息に混じる血の匂いが異臭よりも強くなっていくのが、自分の命が残り少ないものであることを如実に表していた。

 

人体が焼ける異臭が鼻を突き抜け、炭化が進む腕や足を必死に動かしてストーカーを押さえつける。コイツだけは何もさせてはいけない。俺は身体の拘束が緩むのを許容してまで、ストーカーの口を塞ごうと腕で頭を押さえ込んだ。発言させないためだ。コイツの発言は全て白鷺燐火にとって毒となる。

 

必死になって俺は直も近づいてくる白鷺燐火に対して毒を吐いた。

 

「来る…なよッ!死ぬぞッ!ガハッ」

 

肘鉄が喰らわされた。クソッ、息がしづらいのに強制的に吐き出された空気を身体に取り入れようと、身体が無意識に息を吸って、口腔を、喉を、肺を焼いていく。

 

どうしようもないほどにあふれ出した感情が、焼かれた身体に行き場を無くして誰かれかまわず噛みつくように飛び出した。

 

「何してんだよッ!さっさと逃げろよッ!お前のためにやってんのにお前が傷ついたら台無しになるだろうがッ!もういいんだよッ!一人で背負おうとするんじゃないんだよッ!代わりに背負ってやってんだからッ!大人しく背負われておけよッ!」

 

身勝手な思考、だけど本心から思う言葉、支離滅裂で何を伝えたいのかさっぱりとわからない。

 

「動くんじゃねぇッ!…助けてほしいんだろッ!だからこうしてんだッ!救われたいんだろッ!救ってやるよッ!」

 

俺はその場の雰囲気に流された。自分の本心を口にしていい場所だと思ったのだ。だから、()()()()言葉を放った。

 

「幸せになりたいんだろッ!今まで苦しんできた分ッ!幸せでいたいんだろッ!だったらッ!」

 

 

「俺を殺して幸せになる覚悟を決めろよッ!」

 

 

原作知識から放たれる言葉、今まで他の人格に奪われてきた人生を楽しんでほしかった。幸せになってほしかった。ハッピーエンドが一番なんだよ。そこに俺はいなくてもいい。そう思った。

 

「クソッ、力が抜けて…!…今までの人生分楽しめよッ!」

 

「なくしたモンを取り戻して来いよッ!」

 

「お前の人生はお前のモンだッ!」

 

「誰かを犠牲にして幸せになる権利がお前にはあるんだッ!」

 

「もう自分に言い訳するんじゃねぇッ!」

 

最後の力を振り絞って、押さえ込む力すら抜けていくのも厭わず叫んだ。叫ばずにはいられなかった。

 

「自分だけの幸せを手放すのはやめr「私の幸せを奪うなッ!!!!」

 

白鷺燐火が膨れ上がる。

 

()()()()()()…?

 

膨れ上がった身体、手足含めて身体が太く大きくなっていく。まるで何かが生まれてきそうな、()()()()()()()()…?

 

知っている。俺は、その状態を。その姿を。あぁ、まさか…

 

臨界点、数刻置いて、破裂した。

 

無数の白鷺燐火が溢れていく。二人三人、四人五人…新しく生まれた白鷺燐火から新たな手足が生えてくる。人間としていびつな形。腕が四本、内二本がお腹から生えている。ぐぐっとまるで粘土を掻き分けるようにして、六人目。顔が二つ、首元から裂けるように七人目。生まれきれず、弾けた者もいた。しかし、肉片は蠢き、身体の一部分だけで生まれ直し這い回る。腕、腕、腕、腕…

 

白鷺燐火は増殖していく。それも歪に。腕が四本のままで止まっている者や、腕が異常に肥大化した者なんている。それら全てが腕に関する異常を残したまま、この世に生まれ落ちた。

 

「っ……!私の幸せに触れるなッ!穢すな!それはッ!私のものだッ…!私の幸せだ!」

 

元の白鷺燐火が激情に震えるように、暴れる怒りを抑え込むように、身体を丸め、胸を両手で制服のシワが塊になるくらい握りしめ叫ぶ。

 

なんだよ…。幸せってなにが…

 

『触るな触るな触るな触るなッッッ!』

 

同句同音の言葉、張り詰めた空気、俺もストーカーも唖然としていた。だが俺はいち早く立ち直り、ロープを巻き付けた腕を抱えるようにして、自分を重りとしなおした。結局、やることは変わらないんだ。イレギュラーが生じても、俺がコイツをどうにかできる。そうだ。そうのはずだ。

 

そして俺は叫んだ。想いを伝えるのはいつだって言葉だ。だが、言葉にしかならなかった。この感情に型を嵌めてしまったから、その形で固まってしまった。想いは流動性だ。言葉すら適切に表せないときがある。言葉でも音楽でも文章でも、どれほど世界を探しても、この想いを表現できない時がある。きっと心と心でぶつかり合えたなら、それがこの想いを相手に伝える唯一の方法だ。でも世界にはむき出しで触れることが出来る感情なんてないから、自分が持つすべてを使って表現しなくちゃいけない。

 

本心に近ければ近いほど、言葉は相手へ伝えるものではなく、自分自身が納得できる言葉に変わっていく。文章の構成を度外視した言葉、自分の脳内で補完された継ぎ接ぎの言葉となる。

 

「来たって意味がないだろうッ!死にたくないよッ!でもじゃあそれで納得なんてできるわけがないだろうッ!」

 

ただの我儘、我欲が溢れて、それでも、それでも俺は

 

「俺が勝手にやってることだッ!邪魔を「うるさいッ!」ッッッ…」

 

吐き出された傲慢をうち消す、彼女がおおよそ言わないと思っていた言葉に思考が停止した。

 

「うるさいのはもうたくさんッ!」

 

「私にだって心があるッ!大人しく平穏に生きようとしてるのに好き勝手言われてッ!なんなの!私はッ!」

 

「私は白鷺燐火だ本人だ!周りが貼り付けたレッテルにはもう散々なんだよッ!」

 

激情が吐露されて俺は言葉を紡げなかった。返す言葉もなくしてしまった。その通りだったからだ。俺だってレッテル貼りをしていたから。口を出してしまったら、今までの偽善に泥を塗って、コイツと…ストーカーと同じになる。

 

「っ…」

 

「もう間違えない…!今度こそ…!」

 

「幸せになるために…」

 

「私の幸せにあなたが居ないことなんて考えられない。あなたがくれた物を私はまだ何も返せていない。ちゃんとしたお礼もできていない。私は私らしく居るために貴方がいないと、私は私を保てない。私は幸せになる。私は幸福を掴む。私は私は私は私は幸せ、私は私私私私は幸せ私は幸せ私は幸せ、私の幸せ…!」

 

「ソレは私だけの幸せなんだ!私のものだッ!」

 

『奪うな奪うな奪うな奪うな奪うな奪うな奪うな奪うな奪うな奪うな奪うな!!!!!!!!!』

 

一斉に動き出す白鷺燐火、俺とストーカーに取りつき、巻き付かれたロープを引きちぎっていく。慮外の力、異能の覚醒に伴う肉体の強化が、彼女が正真正銘の化け物になってしまったことを如実に表していた。

 

ブチブチと引きちぎれる。俺とストーカーが引っ付いているのが心底嫌なのか、無数の腕をもつ白鷺燐火がストーカーにしがみつき、ストーカーの肉体の許容量を超えて引きはがし始める。それでいて、俺には負担が来ないように、引っ張られるロープをしっかりと握り押さえ込んでいる姿に。俺を傷つけないようにする姿に。ただただ安堵していた。

 

「あ”あ”あ”あ”あ”……」

 

無理やり引きはがされたからか、掴まれた部分は青痣が出来ており、ロープを巻いていた腕はありえない方向に曲がろうとしていた。内側から外側へ。肩が外れるのではないかと思うほど、ひっぱり。ゴキッ、いやな音と共に、腕が異常な方向に曲げられた。

 

「違う、違うッ!私は貴女を愛しているんだッ!貴女を完成させようと私は…!そこのゴミをッ!私は…ここで終わっていい人間じゃないッ!貴女の為を想ってッ!」

 

焼けた服をいとわず、必死にまくしたてる。痛いのだろう。いまさら弁明のつもりなのか?謙遜と自己防衛が混じったその言葉を聞いても、彼女は止まらなかった。

 

引きはがされた俺とストーカー、俺はあおむけに倒れ込むように離された。白鷺燐火、その本体に背中を支えられ、抱き寄せられながら、異形となった白鷺燐火へ指示を出す。

 

「バラバラにしてやる…ッ!」

 

異形の腕を持つ白鷺燐火が一斉にストーカーに取りつき、無数の腕がストーカー四方八方に引っ張り出す。口の端に手を入れられ、頬を引き裂こうとする手、腕を引き抜こうと巨大な手が左右に引っ張る。足を折ろうとしているのか、膝を起点に逆に折り曲げようとする腕、お腹を一周するように腕と腕が重なり合って結びつきあって鯖折りにしようと力を込めている。首には手が添えられ、顔が真っ赤になって土気色になるまでに絞められていた。

 

声も出せないのだろう。だが視線で人を殺せそうなほど、殺意が籠もった視線を俺に向ける。ははっ、羨ましいのか?俺はあんまりうれしくないよ。

 

ストーカーの末路、奇しくもそれは原作再現となっていた。テトラアライメンツの第一章、終盤。白鷺燐火がコイツを殺したときに使った人を無残にバラバラにする技。死んでもバラバラにしようと力が込められていて、本当にバラバラになる。血飛沫が顔につくのを茫然と見て、自分がしでかしたことに気付いて嘔吐する。するはずなのだ。

 

だが原作とは違う。俺は生きてて、白鷺燐火はその顔、自分がしでかしたことに絶望する顔ではなく、ただただ激情に駆られ、憎悪の目でストーカーを見つめる顔だ。

 

原作収束ってのは存在するらしい。が、すべてが原作に収束するってわけじゃないらしいな。

 

まぁつまり、何が言いたいのかというと

 

失敗したってことだ。

 

諦念、諦観、無気力…まぁそんな感じの。

 

ただただ疲れ切った感情と、じゃあ俺がやったことってなんだよという自嘲の笑みがこぼれる。大したことしてねぇじゃん。

 

今から起こりそうになっている惨殺事件、それを前にして力が抜けて霞んできた視界は、俺が終わることを表していた。結局は、白鷺燐火に頼っちまったじゃないか。俺だけでどうにかしようとしてたのに…結局、俺は一人じゃ何にもできない。

 

見誤った。白鷺燐火が抱えるものを。ストーカーの本心も。全部全部間違えた。

 

というか笹垣先生来てないけど大丈夫か?俺、そこでも間違えたか?来れない何かが起こったのか。単純に見捨てられたか。

 

暗くなっていく視界、用意した保険が通用しないと知って、天罰だなって思いながら…もう目を開けるのも億劫になって…それで

 

ただまぶた越しに見た彼女の輪郭が、ひどくぼやけて見えた。

 

あーぁ、死にたくない…な……

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

終わらせた。始末をつけた。私を邪魔するものを私の手で排除した。

 

そんなことはどうでもいい。

 

抱えた私の救世主を見る。

か細くなる息。顔は蹴られたり殴られたりしたのか痣がたくさんだ。腕を見る。鬱血した痕。きっとロープを巻いていたからだ。でもそれらは違う。今は関係ない。腕を取る、痛みにうめく力すらないのか、ただ顔をしかめるだけだ。焼けた臭い、表面は焦げている、かすかに何かが焼ける音、どうすればいい。

 

失う失う失う失う失う失う…それだけは嫌だ。

 

私にはどうにもできない。治療する術を持たない。そして彼は生き残ったとしてもこれを機に遠いところに行ってしまうかもしれない。嫌だ、嫌だ、嫌だ…!

 

私は半身を思い出した。私よりもうまく異能を扱う半身達。その力の使い方。

 

思い出して思い出して思い出して思い出して思い出して…

 

あぁ

 

「ちぎろう」

 

増やした私の一人に彼を預ける。彼だって痛い思いをしたのだ。私が耐えられないでどうする。

 

惨殺死体を作り出した私たちを呼ぶ。私は立って、服を脱ぐ。異能のせいで破れた制服。新しいものを買わなくちゃ。

 

上半身裸になって、私は私に身体を預ける。

 

大きな腕を持つ異形の私が腕を変える。骨が飛び出し、分岐し、新しい関節を生み出して、それを肉が覆う。指から骨が細かいメスのようになって突出し、それが分化していく。鋭利で刃物みたい。無数の骨製メスの出来上がり。

 

無数の腕を持つ異形の私、その肋骨が飛び出る。私に抱き着き、飛び出た肋骨で私を固定していく。

 

口を、足を、腕を、私が抑えていく。

 

私と同じ何の異形も持っていない私が、ただ口を開けて待っていた。

 

準備はできた。

 

「んんんんんんんんんんんんんん…………!!!!!!!」

 

漏れ出る絶叫。でも耐える。救うため、救うために必要なことだから。

 

私の肉が細かく切り離され、細かく切り刻まれていく。それを口を開けた私に流し込まれ、咀嚼し、そして…

 

「おごっ…もがっ…」

 

彼に流し込んだ。

 

私が彼になればいいんだ。そうだ、僕、私を嫌う私の半身、僕は他人を自分に置き換えていたじゃないか。私の異能と僕の異能、それらを合わせて、人を僕に塗り替える異能に昇華していたじゃないか。

 

じゃあそれを真似すればいい。別に塗り替える力なんて持ってないし、塗り替える気もない。ただ、私という範囲を少し広げるだけなのだ。

 

私の肉を食べた貴方は私といってもいいのでは?

 

なんたって、貴方は私の救世主。私の、私だけの幸福。

 

私のもの。

 

だったら私の異能が届く。異能だって所詮は思い込みだ。

 

出来ると思えば出来るのだ。

 

私の異能で傷を癒す。内から治す。

 

私の肉片、その一片までも感じ取って、彼の中に入っていく様に、言いようのない多幸感を持って…

 

焼かれた身体を私で埋めていくという事実が、私を何よりも興奮させる。高揚させる。

 

「貴方は私…私が貴方になる。大丈夫、貴方も半身も同じ()だから」

 

「貴方にたてつく塵芥はすべて、すべて」

 

「私達が排除してあげるから…」

 

あぁ、今日は、幸せな一日だ。

 

私は…幸福だ…!




感想評価、誤字脱字報告よろしくお願いします。

おまたせして申し訳無い…。
難産of難産…。まとめる力がなくて困っちゃうよ…あと月初に予定が詰まっちゃいましてね…。

タイトル回収は次回…!そして新たなアンケート。
第二章のヒロイン投票です。例によってアレばかりなので、好みで選んでもらえれば。第三章から新たなヒロインとか追加していきますが(スマブラDLC並感)、第二章までは選択肢は固定です。
お願いします〜。

第二章ヒロイン投票

  • 支配系ヒロイン()
  • 暴力系ヒロイン()
  • 上位者系ヒロイン()
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