少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった 作:よくメガネを無くす海月のーれん
主人公君には正気に戻ってもらいます。怒りという感情は瞬間爆発力があるだけで持続力はないからね…。
闇バトルはヒロインちゃんの勝ちってことで、感想戦です。
あいも変わらず、気分が悪くなる描写がございます。お気をつけて、気分が悪くなったら即座にブラウザバックを…。
微睡みから浮上する。耳から入るかすかな音に目が冴える。どうにも身体が重たくて、それでも深く息を吸って身体が朝を迎える準備をしていた。
あれだ。デカイ仕事…テスト終わりだとか、文化祭の次の日だとか、そういう…大きなイベントを終わらせた次の日の朝の、あぁ…俺やったんだなっていう達成感とまた日常が始まるっていう徒労感が綯い交ぜになった時の感情だ。アレか?燃え尽き症候群に似てるな…。
ともかく、そんな感じだ。目覚めたくない、今日を始めたくないと思っても、朝は来て、身体が勝手に生きようとしてしまうので……
こうして開けたくもない瞼を開けて、面倒な今日を始めなくちゃいけない。
体感1日経ってる感じはする。後始末や今後の対応が面倒くさそうだなぁホント。
渋々目を開けて…数秒、数十秒、何も考えずゆっくり目を瞑る。
まぁ、まぁね?確かに…俺はやらかしたよ。だからまぁ警察沙汰になってもおかしくはないし、あんな怪我をしたんだ。病院に居るのかな?とは思っていた。違うらしいがね。
いやぁ〜まさかね……。
白鷺燐火の顔面がどアップであるとは思わないじゃんね!!??
えっ?私にどうしろと?そんな鼻先数cmにいることある?めっちゃ瞳孔開いてたんだけど?思考停止時間中、瞬き一度もしなかったけど?ずっとカッ開いていたの?えぇっ…?
目を瞑って思考するも空回りだ。視覚情報や記憶という名の書類が脳内でぶちまけられて、必死に拾い集めている状態な今、どうやったって理解を深めることが出来ない。
つまり思考停止状態で対応しなくちゃいけないってことだ。寝起きでハード過ぎない?
そっと目を開ける。
うん、居るね。なんならもっと近くなったね。鼻先数cmどころか鼻先当たってるね。息遣いすら聞こえるね。なるほど?
眠り姫にキスする王子様の如く、顔面を近づけてきた白鷺燐火、普通逆じゃない?一部の性癖に刺さる方向けなの?…まぁそれはともかく、俺が二度三度瞬きするとヌッと身体を起こして距離を取った。
視界が開ける。ここどこ?なーんか見たことあるようなないようなところだ。小ぢんまりとした部屋、俺が寝ていたベットと本棚と机と椅子、それしかない。ミニマリストの部屋かな?
椅子をベットの横に引っ張って来ていたようで、白鷺燐火ちゃんがぽすんと座り直したのが見えた。
…沈黙、話してくれるのかと思ったが口を開いてくれなかったので、うん…どうしよう。
気まずい。あれだけのことをしたのだ。例えるなら喧嘩した次の日に別の場所でばったり会ってしまった友達みたいな…。冷静になって酷かったなアレ…と思って謝らなきゃなとか思うけど、いざ会ってみると凄い気まずくて無言と居心地の悪さが世界を支配しているみたいな空気感だ。アレ?この世界私達しかなかった?みたいな、世界から隔絶された感と誰も助けてくれない孤独感がある。
後なんか言いしれぬ違和感あるな…。なんだろ?
「あぁ~…おはよう?」
意を決して挨拶するも動揺が言葉に出て疑問形になった。コミュ症かな?コミュ症だな。
「えぇ、おはよう。身体の調子はどうかしら?」
最初に出会った時と変わらない感じで返してくれたのはうれしい…。ひとまず友好度はそれほど下がってない…でいいのか?
わからない。あの堰を切った発言が脳裏をよぎる。ため込まれていた鬱憤が吐き出されたのだとしたら、敵として認められてもいいんだけど、その前後の発言がヤバ過ぎてどうにも読めない。ぶち殺されないだけマシなんだけど。
「…あ、まぁ…大丈夫…かな?特に痛みもないし違和感は…多少あるけど。疲れかな?まぁあれだけしたらしょうがないかなって」
「…そう、よかったわ」
…またもや沈黙。聞きたいことじゃんじゃか聞いていくか…。たぶんこのままずっと無言の時間続きそうだし。
「あー…ここどこ?学校でもないし、俺の家でもなさそうだけど…」
「私の家よ。連れてきたの」
「えっ」
えっ
「貴方が意識を失った後、教室の惨状をどうにかするために
しれっと怖いことを言われたが…えっ、マジ?いやまぁここが見覚えある理由がわかったけどさ。確かに、ここ原作で見たわ。えぇ…でも、えぇ…?
「いや…今はいいか。じゃあその…あの後どうなったか…教えて欲しい」
「えぇ、もちろん大丈夫よ」
そう言ってそっと手を握ってくる。
「えっ」
二度目の動揺。ベットの上に置かれた手の甲に被せるように手を置いた。柔らかで温かい感触に手が包まれて内心が焦る。
ただ続けられた言葉に冷水を被せられたように冷静になった。
「貴方が助けてくれなかったら私は死んでいた。だから貴方に少しでも恩を返していきたいの」
「だから…こうして脈を、貴方の生を感じられることがたまらなく嬉しいの」
「貴方が居なかったら私は…」
こうなることは……予想はしていた。
目を反らすのはやめよう。あの時、あの瞬間、俺は確かに白鷺燐火を助けるために身を犠牲にした。それが彼女にどう影響を与えるのか考えていなかったといえば嘘になる。だから、これは私が責任を取らなくちゃいけない。
「貴方が気絶した後、貴方の息は弱くなっていくばかりだった」
「貴方の異能は少なくとも自分に干渉する力を持ち合わせているようには見えなかった…。貴方の助かる可能性はゼロに等しかった」
俺が異能持ちだと思ってるらしい。実際私もこの原作知識は異能によるものだとしてもおかしくない。それだったら俺が抱える闇ってなんだろうなって話だがな。
「貴方の身体は焼け焦げていて、特に喉が酷かった。無理やり声を出していたもの、肺まで焼けていたわ」
「腕も足も黒く炭化して、もうほとんど生きてられる状況じゃなかった」
とっさに握られてない方の手で喉をさする。正体不明の違和感があった。腕も足もだ。自分の身体じゃないみたいな感触がする。でも声が出せて息は出来ているし、手を握って開いても特に問題もない。なんだこの違和感は…?
「だから、だからね」
「
「…はっ?」
はっ?
何を言ってるんだ?
「私も貴方と同じく異能持ち」
「私の異能は、『肉体増殖』。肉体の生成、変形、操作することが出来る異能。今までの私だったら、ただ自分そっくりの身体を作ることしかできなかった」
「私は自分の身体しか作ることが出来なかったの。身体を変化させてしまうとそれは私ではなくなっちゃうと思っていたから」
「私の作り出した身体が、新しい
背中にじっとりとした冷や汗が流れる。知っちゃいけないことを知ってしまいそうな、この先を聞きたくないと思うほどの恐怖感。だが俺は口を開けなかった。握られた手に込められた力が、徐々に強くなっていくそれが、まるで俺の発言を遮っているように感じられたからだ。
現状を聞いたのは私だ。黙って聞くしかない。ん…?
「でも貴方のおかげで私は異能への理解を深めた」
「私は自分の身体を変えることが出来るようになった」
確かに原作知識でもそうだ。異能を覚醒させた白鷺燐火は自身の身体から無数の腕を生やしたり、異形となることができた。ただあれほど自分を変える力はなかったはずだ。もっと後半、確か第3章の街を支配する自身の人格と戦うとき、大挙する操られた人に対抗するために新しく身に付けた力のはずだ。
「貴方のおかげ。私はどんな姿になっても私だった。貴方が私を肯定して、
「私は自分の一面に囚われていたの。私という存在は一人しかいないと思っていた。でも今は違う。貴方が変えてくれたから」
俺の…せいか。俺を救うために異能をより深く強くしていったのだろう。結局……私は誰かに頼らなきゃ何もできなかったのかよ。
ん…?なにか…
「私が、私達が…白鷺燐火だった。姿形が変わってもそれは私だったの」
「たとえ違う記憶を持っていたとしても、たとえ違う性格をしていたとしても、たとえ
ん…?性別?いやそんなのはない。自身の性別を変えることなんて原作でもなかったはずだ。ない……なら、俺は…彼女を何に変えたんだ?
鳥肌が立つ。手足の末端から冷えていく。うっすらともやのように視界がぼやける。焦点が合わなくなる。この感覚を知っている。あの時、俺が彼女や先生にしでかしたことに気付いて…
「それは私。白鷺燐火という存在なの」
「貴方がいるからよ」
「貴方を守るという目的が」
「私だけの幸せを守るという目的が」
「私という存在を広げたの。どれだけ私が変わっても、目的が同じならそれは私なの。変わることがない信念を同じくすればそれは私になるのよ」
イカレている。そんなの、目的さえ同じだったらそこらへんにいる人でさえ白鷺燐火という存在になるだろ。そんな暴論がまかり通るって言うなら
「姿形が変わった私が私でいる基準点が貴方なのよ」
な、なんだよ。基準点?俺が基準?なんでだ?俺を基準をしているならどうやって?しかもなんだ?今確かに自分を私って?
「たとえ私が死んでも貴方が生きていれば他の私に引き継げる」
引き継ぐ?はっ?な、なんだよそれ…。そんなら…
理解ができない。理解したくない。でも勝手に脳が答えを導き出そうとする。犠牲、引き継ぐ、目覚めた時から思い出して自分の違和感に気付く。自分を私って表現しないはずだ。一人称は確かに俺、俺のはずなのだ。
「たとえ私が化け物になろうと、貴方がいれば私は存在していられる」
私が存在していられるって。い、いや、いやね?そんなまさかね。ありえないだろ。そんなの、それってつまり…
「でも貴方を失ったら私はもう私を保てなくなる」
息が上がる。うまく呼吸ができない。冷や汗が全身を濡らし、冷静でいられなくなる。じっとり湿った背中が酷く不快だ。吐き気がこみあげてくる私の背中を
「私が私で居られなくなる」
「だから、だからね」
「
あっ…
「貴方のボロボロになってしまった身体を私で埋めたの」
明滅する視界
「私は自分の身体にしか影響を与えることが出来ないから」
聞かされる言葉はどんどん遠のいていく
「貴方の口から私の血肉を流し込んで、身体の一部を私にしたの」
他者との同化、精神汚染、異能は違えど
真似したのか…?いや違う。同じ、同じなんだ。新しい身体が人格を持って動き出すことを恐れなくなったから。
別人格を自分と認められるようになったから。
別人格の異能と自分の異能を合わせて…
「貴方の血に、肉に、骨に」
は、ははっ…
「私が混ざっている」
胸を打つ鼓動が早い。全力疾走した後みたいだ。
「貴方は白鷺燐火の本体となった」
俺はとんでもないものに手を出したかもしれない。いや手を出したのだ。
「貴方に私を混ぜて、異能の対象とした。最初の私をね」
なんだよ。これなら死んだほうがマシじゃないか?
「大丈夫、最初の私は生きているわ。貴方の中でずっと生き続ける。ただ…貴方に溶けているだけ」
首の裏を必死に擦る。頸動脈が妙にむず痒い。
「貴方を助けるために私を刻んで入れて、異能を使って足りない部分を埋めて直したの」
手足に別のナニカを幻視した。アレだ。右手に寄生する宿主をシンイチ呼びするヤツ。
「実は貴方の身体のことはあまりわからなかったから、私を元に直してしまったの」
違和感の正体を理解した。
「だから喉や手足が私に近くなってしまったわ。ごめんなさい、完全に直せなくて」
俺の慣れ親しんだ手足じゃない。声にも違和感を持っていた。自分の声に近いようで違う。
「初めてのことだったから、上手くいくかどうか不安だったけれど」
俺は誰だ?私は柳田修介のはずだ。そうだよな?
「こうして目を覚ましてくれて、生きてくれて本当によかった」
かき集めた意識が霧散していく。吐き気を通り越して胃をひっくり返したい気分だ。
「好きな人と一つになったの。これほど幸せなことはない。でもね」
一緒って肉体的にかよ…。ははっ、笑えねぇわ。
「嫉妬しちゃうわ。どれも私だけど、貴方と一緒になれた最初の私が羨ましくて妬ましいの」
今更身体に拒否感が出てきたのか、頭がぐるぐるして
「貴方の中で生きて、貴方の生を支えている私が」
回る世界。部屋の隅々が蠢きだして、ナニカが這い出てくるのを幻視した。
「とてもとても」
あっ…これ…幻覚じゃ…
「「「「「「「「「「「「「「「「「うラやマしイ」」」」」」」」」」」」」」」」」
歪む視界に映し出された最後の光景は
「私達も貴方に混ざりたいけどそれは叶わないだろうから…」
壁や床、天井から歪なヒトガタの白鷺燐火が
「「「「「「「「「「「「「「「「「ずっとずっと」」」」」」」」」」」」」」」」」
ハイライトのない瞳で俺を一斉に見て
「ずっと一緒」
「私の、私たちの側に居て」
「放さないわ。貴方が言ってくれたんだもの。貴方の言葉に従うわ。私の、私達の」
「
あぁ…クソ…
視界が暗くなっていく
絶望感に支配された俺は、最後に微かに聞こえた別の声を聞こえないフリをした。
なんせ…
これ以上はキャパオーバーだ…
「やぁやぁ…久しぶりだねぇ。愛しい私。無知蒙昧だった哀れな私。成長したねぇ、嬉しいよ。ただ少し…やりすぎだよ?」
感想評価、誤字脱字報告ありがとうございます!
長くなったのでひとまず主人公視点を投稿。次回はヒロインちゃん。次々回は先生と図書委員ちゃんです。分割して申し訳ない…流石に分割前1万字は(文章量的に)重いんじゃ…。
Q:ヒロインがやったことって?
A:主人公の身体に自分を埋め込んで異能でバックアップを取ることで、生きるリスポーン地点にした。メリットは他にも主人公の位置を常時知ることが出来る。
自身の溶けた肉体からある程度主人公の聴覚や視覚といった五感を他の白鷺燐火に共有できる。
肉体の操作権を一部保有している。
デメリットは
主人公への精神汚染。
他人格に主人公の位置がバレる。
他人格が主人公からリスポーンしてくる。
主人公…お前はヒロインを無敵にするためのギミック装置になるんだ…。
第二章ヒロイン投票
-
支配系ヒロイン()
-
暴力系ヒロイン()
-
上位者系ヒロイン()