少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった 作:よくメガネを無くす海月のーれん
「どうした柳田、入ってくるときはまず失礼しますだろうが。それは礼儀と今から始まる説教よりも大事なことなのか?」
職員室の自分の席で足を組み、待っていたのであろう不機嫌そうな笹垣先生。愛称:纏ちゃんで親しまれている国語教師で異能力者の笹垣 纏だ。ファンからの愛称は、纏ちゃんの他に能力に引っ張られてダイ〇ンと呼ばれていたりする。ダ○ソンセンセーだ。
纏ちゃんのことを補足すると、高校生の頃から異能に目覚め、一切を秘匿して生活してきたいわば主人公たちにとって先輩にあたる存在だ。異能というのは発現したのが国にバレると、監視の対象になったりするんだが、それらを搔い潜って周りと何ら変わらない生活を送る猛者だ。しかも、生徒の為なら異能の行使をためらわない人格者。
高校生の時にとある件で、友達と一緒に異能に目覚めたが、その友達が異能を暴走させ傷害事件に発展させてしまった。それを止められる立場にありながら、止めることが出来なかった自責の念から、先生となって異能を発現させた生徒を守ろうと心に決めたこの作品の良心の一人。まぁ…鬱作品なんで、絶望が待ってるだけなんだが…。
纏ちゃんの異能は『万物流纏』。周りにある物を吸い込んで自身のまわりに纏うことが出来る。纏えるものに制限はなく、やろうと思えば空気や光、熱や炎といったものまで纏うことが出来る。吸引力の変わらないただ一つの異能というわけだ。また、纏っているものが纏ちゃんを害することはなくなるという利点もある。
纏ちゃんの願いは、『孤立したくない/させたくない』というなんとも闇深な願いだ。これは友達を孤立させてしまったことと、自分もそうなるかもしれないという恐怖からきているらしいのだが…それがどうして、周りのものを吸い込んで纏うという能力になるのか、コレガワカラナイ。
ある考察では、孤立したくない/させたくない→周りと同じになりたい/貴方と同じになりたい→周りのものを吸い込んで同化する。ある種の同一化欲求があるとみなされたのではないかと考えられている。そうはならんやろ…。なっとるやろがい!とツッコミが多く発生したが、それ以上のやべー理由を持つキャラが多いためか、まだマシかぁ…と読者から流されている。闇が深すぎんよー。(白目)
とまぁ、纏ちゃんの黒歴史を赤裸々にしていったが…
「今日、居眠りしたことと関係がある事ですね」
「ほう…?話してみろ。下らん話をするようなら追加で反省文を書いてもらうからな」
纏ちゃんには弱点がある。それは…
「実は…本当に悪夢みたいな変な夢を見たんですよ。俺の手足が先からどんどん焼かれていく夢で、身体が全部が焼かれる直前で、先生が来るんです。それで先生が『流纏』って叫ぶと…次の瞬間には先生が火だるまになるんですけど…なぜか無事で…そんな、ありえない夢が…妙に現実的で……」
そう、異能力者っぽい人間には甘くなる…!利用させてもらうぜ!
「ふむ?……そうか。ちょっと生徒指導室に来い。二人で話そう」
纏ちゃんはとんでもなく勘がいい。嘘をついてると話の途中で急に「妙だな…?」とか言って嘘を看破してくる。そういう纏ちゃん対策は、嘘をつかないことだ。
俺は嘘"は"言っていない。手足の先から焼かれる未来は、今後あり得る未来だし、纏ちゃんが火だるまになっても無事なのは能力のおかげだ。流纏のことを話すことで、信頼性も増す。今の言葉には嘘がない(嘘かホントかわからないものを含む)から、纏ちゃんは信じてくれる。
こっからだ。どうにか纏ちゃんをこっちに引き込む。まぁ異能力者じゃないから、能力を見せて見ろとか言われたら終わりなんだが…。それも、予知夢的な能力に誤認させることで乗り越えることが出来る…!冴えまくってるぜ~俺の灰色の脳細胞はよ~!
「着いたな。さて詳しく話してみろ。少々気になる点があるからな」
生徒指導室の備え付けの椅子に座る。二者面談でもここまでの圧力はない。まだ始まってすらないのに、背中に冷や汗が流れ始めた。はえーよホセ。
こっからだ。ここはあえて情報を絞る。纏ちゃんは異能力者に甘いがその分、めちゃくちゃ気にかけてくるから、主人公がその対象になると、主人公のストレスがマッハで上がっていくのだ。そして、無自覚に地雷を踏む。
『もしやめてほしいなら、ちゃんと言葉にして伝えるべきだ』
これが、主人公が多重人格者であることをボカして伝え、かつその他の人格に対してどうすればいいのかを聞いた返答である。うーん……
纏ちゃんは優しいは優しいのだが、対人面がポンコツで地雷源でタップダンスをして、曇らせるという流れがテンプレと化している。なにせ動画で纏ちゃんの失言に対する皆の反応集とか作られるくらいだ。
ともかく…多重人格であることを隠したい主人公からしたらメチャメチャ気にかけられるのってストレスしか湧かねぇよなって感じだ。また、異能力で誰かを傷つけようとすると率先して止めてくるので、それでもストレス値が上がる。
燐火ちゃんはフツーに自分の邪魔するなら殺しも辞さない派になる。というより、他人に構ってられない切羽詰まった状況だから、道に立つ邪魔者をなぎ倒して直進していくというタイプだ。
もし、今の状況で主人公や図書委員ちゃんさんの異能力持ちであることがバレてしまうと、今後の進行に影響が出てしまう。いやまぁ、俺が生存ルートになるから、影響は否が応にも出るんだが…。その影響は小さければ小さいほどいい。その方が、原作を知っている俺が有利になるからな!
ここ以外にも、俺が死ねるところはいくつもある。というか、そこら中に埋まってる死亡フラグを回収するハメになる。それを乗り越えていくにはなるべく原作改変を控えめにしていくしかない。図書委員ちゃんさんには、killcount1位になってもらわないと凄ーく困るのだ。お話的に。
「っあの、変な話なんで話半分で聞いてくださいよ?俺も眉唾というか、信じてない部分もあるんで」
「いい。生徒の話は最後まで聞いてから判断している。心配するな」
緊張をほぐすかのように微笑んでくれる。やっさしー!結構生真面目でお堅い感じかと言われるとそうでもないのが、纏ちゃんの魅力だ。ファンが多かったのもうなずける。まぁ油断禁物なんだが。勘が本当に野生動物並だからマジで発言には気をつけないとな…。
「一から話します。気づいたら学校三階の空き教室にいたんすよ。それで目の前にひょっとこのお面をかぶった男子生徒が居ました。たぶん2年生っす。靴のラインの色が2年でした。その2年生が俺に手をかざすと、俺の手足が急に燃えるんですよ。でもこう…全体が燃えるんじゃなくて、先からじわじわ焼けていく感じで…。俺、必死に消そうと転げまわるんすけど、全然消えなくて、どんどん体の方に燃え移っていって、最終的に首まで燃えていって絶叫してました。あ、俺死ぬんだってそう思ったときに、先生が空き教室入って来て、俺に向かって手をかざすんです。そしたら、俺の体を焼いていた火が、先生の方に行って、先生が火だるまになるんすけど、先生は焼かれてる様子はなくて、2年生はめちゃくちゃ焦ってました。それで、先生が何かしたのか、2年生が教室後ろの壁まで吹っ飛ぶんです。それを俺は意識が朦朧としながら見てて、先生が駆け寄ってきたところで、意識が途切れました」
主人公、図書委員ちゃんさんの情報は抜いた。言ったら確実に目を付けられる。
一気にしゃべったからか喉がカラカラだ。それに気づいたのか、纏ちゃんがお茶を入れてくれた。ありがてぇ。ゴキュゴキュと飲み終えると纏ちゃんが口を開く。
「なるほどな。気になる点が増えたが…聞いていくぞ」
「うっす。答えられる範囲で頑張って答えていきます」
「その2年生の男子生徒でお面や靴以外で覚えていることは?」
「…ないっすね」
これは本当だ。前世記憶でもマジでモブキャラだったし、その後の主人公ナイアガラゲロ事件にもってかれてひょっとこのお面つけて火の異能を使うことしか記憶にない。
「そうか、では次だ。そういう夢はいつ頃見るようになった?」
「それが……今日というか、授業中からですね」
これも本当。
「ふむ…そうか。その悪夢での日付はわかるか?」
今の所、嘘はついてない……はずだ……。
「日付は中間試験の最初の試験日から二週間前の日だったと思います」
さぁ大体話せること話せたぞ…!どうなる…。
「最後だ。それ以外はいらない情報なんだな?」
ヒィ~ッ、隠してることバレてる~!なんで、情報絞ったことがバレたんだ?勘が化け物過ぎる!終わったか?これはもうムリか?いやここまで来て無理でしたはシャレにならんぞ…!覚悟を決めろ…!
「……必要なことです」
生唾飲み込んで、目は逸らさず、口腔内を嚙み締めて、なんとか気を保つ。利用されていることに纏ちゃんは気づいてる。だからここは真正面から向かわなくてはいけない。迷えば敗れる…。前世のトンデモ忍者死にゲーの名言だ。迷うな…!
「……それで?柳田は私にどうしてもらいたいんだ?」
…!勝った…!goodcommunication!
「俺は先生が異能を持ってる前提で話を進めます。悪夢を現実のものにしたくないんですよ。先生が異能持ちだってことを信じるしかない。気狂ってると思われても仕方ないですよ。今のところ、悪夢が現実になるかもしれないっていう妄想でここまで本気でビビってますからね」
一つの山場を越えた安心感からか、口数が多くなるのはご愛嬌だ。
「先生には、3階空き教室で大きな物音が出たりしたときに、すぐに向かえるようにしてほしいんです」
ここは先生に待ちの一択に徹してもらいたいのだ。あくまで切り札。初手に切り札を切るバカはいない。温存してこそ相手に圧をかけられる。
「その空き教室で一緒に待つというのはしないのか?」
やっぱ提案してくるよなぁ…。ただここで先生合流しちゃうとワンチャンモブ異能力者に勝てない可能性がある。
「…出来ればしたくないっすね。先生が異能持ちだって相手にバレたら相手に逃げられたとき、先生も危険になりますし、それに…」
「不意打ちだからこそ、先生は攻撃されなかったんだと思います。たぶん焦りとかもあったんだ」
これは考察だが、俺の手足が先から焼かれていったとき、消そうと転がっていたが消える描写はなかった。そして、炭化してボロボロと落ちていく自身の欠片をみて、泣き叫んでいたのを覚えている。迫真のトラウマシーンだ。ここから、外部から焼かれているのではなく、内部から焼かれているのではないかと俺は思ったのだ。
これが異能による消えない炎だからです!とか言われれば俺は手の打ちようがない。が、もし、万が一に内部から相手を焼く異能だとしたら、纏ちゃん特攻になりうる。身体の内側に発生した炎を纏えるのかという疑問だ。俺は十中八九纏えないと思っている。どうやって纏うんだよって思うしな。
つまり、下手すると纏ちゃんが死ぬ。
それを防ぐためにも先生には待機してもらいたい。
そういったことをかいつまんで説明した。
「なるほどな。わかった。待機しておこう」
そういって、メモ帳を取り出しカキカキと何かしら書き込んでいる。ひとまずあんし「ただし」ひょえっ!?
「柳田が本当に危ない時は、私はたとえ国にバレようと能力を使うからな」
そういって、左手の周りに風がそよぎだす。徐々に強くなる風を纏わせる先生は…ははっ
「アンタが先生でマジで良かった…!」
クソ頼もしい!
やっべ、嬉しすぎてタメ口出ちゃった。あぁ、でもクソ嬉しいな。本当に被害妄想みたいな話だから、マジになってくれるとはほとんど思っちゃいなかった。ちょっと不信感を植え付けられたら御の字だと思ってた。考えられる選択のうち、ベストな選択引き当てたみてぇだ…!
「あー…すんません。つい嬉しくて…。あ、じゃあ頼みますよ。その日、放課後空けといてくださいね!ホント…!デカい物音がなるまで、絶対来ちゃダメですからね!マジで!頼んます!」
「あっおい…話は…!」
言いたいことは言えたので、ダッシュで帰宅だ!家でいくつかやることがあるし、今後に備えて情報収集しなくちゃいけない。時間は有限だ。
「反省文は全部乗り越えたらいくらでも書くんでー!それじゃ、せんせーさよならー!!!」
肩が軽い!一つの山場乗り越えたァ!次ィ!
評価・感想よろしくお願いします。
1.5章のシチュエーション
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嘘つき少女と人の痛みに共感できる男子()
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自分に価値を見出せない男とまぶしすぎる女
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