少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった 作:よくメガネを無くす海月のーれん
これにて閑話、終了です。次回から1.5章、「アイドルになっちゃった系ギャップつよつよ陰キャ真面目嘘つき罪悪感マシマシ委員長と強制的中二病系口ばかり達者で自己保身に走りがちだが最終的には面倒を見る不良」のお話、始まります。
ちょっとばかしお話こねこねに入るので投稿がいつになるか若干不透明ですがなんとかなるはず…よろしくお願いします。
あとセカンド性癖バトルを1.5章最初の話前書きでやるので、覚悟の用意をしておいてください。
さぁ放課後、死刑執行直前の死刑囚が如く、あるいはテストで赤点を取り、家族会議に発展してリビングに足を運ぶときの如く、重苦しい足を動かしながら、処刑場たる生徒指導室へと移動する。
泣きたい、何で隣の燐火ちゃんは幸せそうな顔をしてるんだろう。こやつ一回マジでシバいた方がいいんじゃないか。そう思ったが、シバかれる絵が全く想像できなかったので断念した。どうあがいても抱きしめられる未来しか見えねェ…。
まぁそれはさておきだ。これからどうするのかを考えておかなくちゃいけない。
まずは整理。俺は異能によるもので死にかける未来が見えたから先生に助けを求めた。これが先生側から見た少し前の俺の状況。
次、俺は先生の心配を無下にしながらも自分が死なないような計画を立てる。そこに先生を組み込んで、俺が生き残れる保険とした。
計画実行。俺は死にかけたが先生は来なかった。ここは改めて聞いておきたいが…まぁ燐火ちゃんのせいだろう。[ワタシ]使って証拠隠滅したとか言ってたし。
さて、次にやらなきゃいけないこと。
まず、なぜ助けに来なかったか。これを改めて聞く。あとは…経緯と先生のお話を粛々と聞くくらいか…。最終奥義土下座も用意しとかねばならない。ワンチャンというか8割がた死んでたし。先生の忠告無視して死にかけたバカがいるらしいぜ…誰だろうな…()
現実逃避したってどうにもならない。そうこうしてるうちに生徒指導室にたどり着いてしまった。事の経緯を握る横のポンコツエイリアンと化した燐火ちゃんに一抹の希望を抱きながら、俺は生徒指導室の扉をノック…する前に二度三度深呼吸を挟んでいたら、燐火ちゃんが速攻でノックして入りやがった。メンタルダイヤモンドかよ。
「失礼します」
「し、失礼します…」
同句異音で覚悟を決める。先生は重苦しい雰囲気を発しながらゲンドウポーズで座っていた。威圧感がすごい。もうおうちに帰りたくなった。
「そこに座れ」
明らかに怒ってるという口調で着席を命じられる。
「はい」
「は、はい」
ロボットみたいに左手左足、右手右足を同時に動かして着席した。相も変わらず落ち着き払った表情で座る燐火ちゃんを横目に、肺の中の空気を全部吐き出して、高鳴る心臓を無理やり抑えつけた。これが…恋…?
「何で呼ばれたかわかってるな?」
おっとふざけてる場合じゃねぇ。これはひとまず…
「理解しています…。すいませんでしたぁ!」
初手謝罪!まずは自身が反省していることを示すのが、怒られた時の対処法だ。
「えぇ、本当にご迷惑をおかけしました」
燐火ちゃんが追従してくれたぞ、やったぁ。これで許される可能性も2倍だな(?)
「……経緯を話してみろ。私の認識とすり合わせをしたい」
「は、はい!えっと…じゃあ俺の方から」
というわけで俺視点の経緯、燐火ちゃん視点の経緯を説明することになった。
俺視点では、異能っぽいナニカに目覚めたこと、それのせいで自分が死ぬ未来が見えたこと、それを回避するために燐火ちゃんの問題に首を突っ込んだこと、軽率に首を突っ込んだせいで自分が見た未来と同じ結末になりかけたこと、それを燐火ちゃんもとい白鷺さんに助けてもらったこと、事件を解決したが事件のせいで結構な大けがをして今まで休んでいたことを話した。
燐火ちゃん視点では、ストーカー被害に悩まされていたこと、最近交流が出来た俺に解決の手助けを求めたこと、ストーカーと俺が取っ組み合いのけんかになってたところに合流し、俺を助けたこと。その後、俺の大けがの看病をしていたことを話していた。
異能について、俺は未だにこれが何なのかよくわかってないため、あまり話すことはなかった。燐火ちゃんは自分の指を増やすことで自身が異能持ちであることを明かしつつ、自分の異能に振り回されて、ストーカー被害で暴走仕掛けたが、俺が助けてくれたという風に説明した。
思ったよりも長話になってしまって、気づけば話し始めてから30分は経過していた。俺が燐火ちゃんの、燐火ちゃんが俺の話を随時補足、時系列を整理していたためだ。
先生も俺達も話疲れたから、一旦一息置くこととなった。
俺は肩の力を抜き、先生はゲンドウポーズを解く。燐火ちゃんは増やした指で髪を梳かしていた。えぇナニソレ便利そう。
思い思いに休憩して、5分、先生が口を開いたから俺も燐火ちゃんも佇まいを直した。しっかりとお叱りを受けなきゃいけないからね…。
「大体事情は分かった。まず柳田。お前は異能に振り回されたとはいえ、もっと考えて行動しろ。あと大人を頼れ。頼ることに関しては白鷺もだ」
「はい…」
「はい」
「それに…心配されるほど先生は甘くない。自分を守れない人間に生徒が守れるわけがない」
「はい…すいません」
「はい」
「異能というのは、一人で抱えるようなものではない。確かに世間へバレたら腫れ物扱いされるだろう」
「だが、私は生徒を異能を持っているからと見捨てるような冷たい人間ではない」
「逆に、異能を持っているからこそ、理解を示せることもある」
「一人じゃない事を理解しろ」
「はい…」
「はい」
心配を噛みしめる。自分がやったことに対する後悔が今更ながらに溢れてきた。
言ってることは正論で、否定も否定する気もなかった。粛々と心配をかけたことの罪悪感を喰むしかなかった。
沈黙が訪れる。気まずくて息苦しい。先生はすごい重たい表情をしてるものだから、余計に空気が死んでるように感じる。自分のせいだから何も言えない。暗澹たる時間がその場を支配していた。
「先生は……そんなに頼りないか?」
長い沈黙の後に、吐き出された祈るような言葉。
「頼りないわけじゃないです…!ただ、言った通りなんですよ。巻き込みたくなかった。だって、先生は白鷺さんと同じようなものを抱えていて、それがバレたらアウトじゃないですか」
きっと先生も色々考えているんだろう。それを否定しないように、自分を責めないように、慎重に言葉を選んで自分の意見を話す。軽いタメ口になってしまったのは、言葉の意味を選んだ結果自分が一番伝えやすい言葉としてまろびでたからだった。
「まだ俺達2か月も経ってないのに、先生のことを心配するくらいには先生のことを慕ってるんですよ。それくらい良い先生だってわかってるから…」
「先生の将来を台無しにしたくないなって思ったんです」
あぁ、後悔が押し寄せる。
「まぁ…俺は助け求めましたけど…。それについては本当に申し訳ないんですけど…」
破れた紙が元に戻ることがないように。
「先生が頼りないんじゃないんです。ただ…その―…自分で何とかできるって思っちゃっただけです」
進んだ時間が巻き戻らないように。
「無鉄砲に突っ走ったのが悪いんですよ」
ただ、
「止められなかった私にも責任はある。第一怪我させてしまった。私は教師失格だ」
「いや、いやいや違いますよ!そりゃあ先生だから生徒がやらかしたことに責任持つのはわかるんですけど…!」
「こう…若気の至りみたいなので済まそうとした俺達が悪いんです!大人を頼らずに自分たちで何とかしようって考えた俺達が悪いんですよ!」
「先生が気に病む必要はないですって!」
くっ…ちゃんとした大人だからちゃんと責任感じてる…!良い人だけど…!今はその責任感が邪魔だ…!
「白鷺さんもそう思うよね!?」
なんかもう先生を慰める会と化しつつあるこの場を何とか収めたいがゆえに、たぶん助けを求めちゃいけない人間に声をかけてしまった。
「…先生には、自分の立場があります」
「先生には先生の仕事があって、生徒のプライベートの問題に首を突っ込むのが先生の仕事じゃないはずです」
「ちょ、燐火ちゃん!?」
それはまずいって!?エグイくらい刺さるよその言葉!
「確かに、ストーカー被害は生徒のプライベートで済ませていい問題ではないですが」
「少なくともそれを扱うのは警察の仕事であって先生の仕事ではないはずです」
「だから先生が気に病む必要はないと思います」
一番言っちゃいけないことをダイレクトに伝えきった燐火ちゃんにドン引きの視線を向けながら俺は絶句した。この女、俺に止められる前に一息で言い切りやがった。
ほら見ろ!先生顔を覆っちゃったじゃん!もうメンタルにエグイダメージ入っちゃったじゃん!ダメだこの女!俺が何とかしないと…!
「せ、先生はさ!十分に色々手助けしてくれたから!俺がこっそり助けを求めた時も、ちゃんと手助けしてくれたし、俺が体調不良で休んだ時も心配の言葉かけてくれたし!すごい尊敬してるから!だからね!?大丈夫!大丈夫ですよ先生!」
自分でも何を言おうとしているのかわからないままに必死に励まし続ける。立ち直れるのか…?きつそうだなぁ…俺こんなこと生徒に言われたらキレるか泣くよ?それくらいダメージ受けるわ。
「ほら、先生のおかげで生き残れたわけですしね?俺生きてるし、ストーカー問題は解決できたし、もーまんたい…みたいなね?」
なんかもう色々わからなくなって結果論的な言葉を吐き出し始めた己の口を恨みながら、先生の様子をうかがう。
両手で顔を覆って、無言で、動かない。
どうすればいいんだ。この状況。俺はどうしたら正解なんだ?このまま励まし続ければいいのか?
わからない。誰も答えを教えてくれない。現状を打開できそうな人間がこの場に誰もいないもんだから、ただ事態の収拾がつかなくなっていっている。
必死になって宥める俺、我関せずという顔の燐火ちゃん、顔を伏せたまま動かない先生。俺はもうどうにもならなくなってキレた。逆ギレだった。
「先生!俺はちゃんと生きてるんです!先生のおかげで救われました!燐火ちゃんもストーカー被害がなくなりました!先生のおかげです!これじゃあダメですか!?」
いよいよもって、打開できる策が思いつかなくなってきたとき、先生がやっと口を開いた。
「私は約束を守れなかった。柳田を助けに行くという約束があったのに、私を止める生徒を優先した。あとから来た人間を優先した。遅かった。なにもかも。あのとき無視していればと思った」
「ちょ、ちょっと待ってください。誰が先生を止めたんですか?」
俺は思わず口を挟んだ。確かに、先生が来なかったのは疑問だがそれは[ワタシ]が何とかしていたからだと思っていた。しかし、別の第三者が関わっているなら話が変わってくる。
「谷崎だ。谷崎 結華に止められていた。火が見えた時点で、向かおうとしたが、止められた。もう終わってるとな、そう言われた」
「……谷崎さんが?」
なんだ?何の意味があって、だって止める意味がないはずだ。そも谷崎さんの異能は万能だが、それにしたってどうして?というか事件が起きていることを知ってるなら助けに来たっていいはずだ。高望みが過ぎるか?いやでも止める理由には…。
浮かんだ疑問が瞬時に頭を高速回転したが、その疑問をひとまず横に置いておいて、目の前のメンタルバキバキ先生をどうにかしないといけない。
「ともかく、別に来なかったのは怒っていませんし、先生のことを頼りにしていなかったわけじゃないです」
頭をフルに回して、先生のことを考える。大人、責任、不甲斐なさ…
「先生が責任を感じてるのはわかりましたから…」
頼りない、助けを求める、一人じゃない…これか?
「だから…」
頭の中で思い浮かんだワードを組み合わせる。たぶん、先生が一番に欲しているのは…
「助けてくださいよ。先生。俺も白鷺さんも…まだ自分の異能にどう向き合っていけばいいのかわからない。俺に関しては…そもそも異能なのか?とかあるのは置いといて…」
「白鷺さんだって、幼少期から発現したとはいえ、わからないことだってある…はずですよ。俺だってちゃんとした知識があるわけじゃない。かじったくらいの知識しかないんです」
「お願いします。今度こそ、頼りにさせてください」
これだ。先生が欲している言葉、先生としての責務を果たせないことへの無力感が先生を支配しているなら…
顔を上げてこちらを見る先生。酷い顔だ。情けない。俺達がそんな顔させたのに、他人事のように思ってしまった。
笹垣 纏、大人としてふるまっているが、本質的には異能持ちなのだ。闇を抱えて苦しんでいる。それを隠して、大人であろうとするのが先生だ。
その大人の顔が剝がれてしまえば、一気に中身のか弱い笹垣 纏が出てくる。
弱くて、卑屈で、情けなくて、見ていて可哀想になる。先生に対する評価じゃないと思うが、それを必死に隠してよき先生であろうとするから、尊いとか愉悦部から美しい…とか言われたりするのだ。
原作が変わって、第一章では見れないはずの先生の弱い部分がここで曝け出されてしまっている。
これも…俺の責任だ。俺がケアをしなくちゃいけない。
身を乗り出して、顔を覆っていた手を掴む。気持ち悪いと思われるかもしれないが、やらないよりましだ。こうして距離感の近さを演じて、弱さに付け入る。
「それに…俺、ここ数日休んでいて授業追いつけていないんですよ。自業自得ですけどね。テストの為にも、付き合ってくださいよ」
詐欺師。過去の自分の言葉にめった刺しにされてる。責任を取らなくちゃいけないなんて思っていたが、まさか自分がしてきたことをもう一度やる羽目になるとは。
自己嫌悪が、燐火ちゃんの視線が、先生からの縋るような視線が、グサグサと刺さる。
自分自身を殺したい。その場を何とかしようと甘い言葉を吐く口を引きちぎりたいし、責任を取ると言っておきながらいざ責任がのしかかると逃げようと思考を巡らす頭をカチ割りたい。
今の俺は笑えているだろうか。たぶんきっと笑えているはずだ。気持ち悪い、人が好むような笑みを浮かべていることだろう。さっきの逆ギレしていた人間とは大違いだ。
「……すまない。かなり気負っていた」
縋る視線はニ三の瞬きでなくなり、いつもの先生が戻ってきた。もう大丈夫そうだ。先生の手を放し、椅子に腰を落ち着かせる。
横からの視線が痛い。まぁ…やったことほとんど結婚詐欺のソレと同じだ。俺詐欺師の才能あったりして…そんな才能ドブに捨ててやるわ。
はぁ…、自己嫌悪が肥大化するが、この場を何とかできたのは大きい。よかったと捉えるべきだろう。
「ホントに…先生しっかりしてくださいよ。生徒に心配されたくないとか言って、心配されてるじゃないですか」
「お前が言うな」
いたっ、チョップを食らったが甘んじて受け入れる。ホント…これだから先生に迷惑かけたくないんだよなぁ。良い人過ぎて、すごい…自分が嫌になるし迷惑かけたくないと思ってしまう。先生自身は迷惑をかけろと言ってるようなものなのに。
頭を押さえながら、教室上部の時計を見やる。下校時間近くだ。そろそろ帰ってもいいだろう。
「えーっと、じゃあこれで終わりですかね?」
「あぁ、また何かあったら二人とも必ず相談しに来ること。必ずな。あと何もなくてもこっちから声をかけることもあるだろうが、逃げるなよ?」
「はい」
「……はい」
若干返事が遅れた燐火ちゃんは…まぁあんまし関わってほしくないからだろう。俺が一緒にいればたぶんどうにかなるから、デコイ役としての務めを果たそう。その方が燐火ちゃんのストレスは減らせる…はずだ。
「柳田、授業に関することは随時聞きに来い。必要ならプリントも用意しよう」
「うっす、お手柔らかに…」
宿題はちょっとなぁ…。まぁ…うん…しょうがない。
「あぁあと」
席を立ちあがって、帰ろうとしたその時、声をかけられる。
「柳田、今日は時間がないからいいが。反省文、忘れてないよな?」
「………あっ」
アッ、スー…
「これから放課後1時間は反省文を書きに来い」
「………ウッス。ガンバリマス」
うん…俺が悪いから…くっ…
放課後拘束されることが確定した俺は、悲しみを背負いながら生徒指導室を後にするのだった。
……横にいるエイリアンを忘れて。
「ねぇ…少し、いいかしら?」
「はいはい、なにかn、ヒエッ」
いる…!隠さなければいけない触腕を身体から放出した燐火ちゃんが…!
「ちょ、隠して隠して!!!」
「先生に…随分と優しかったわね」
「隠せてない!隠せてない!」
少し抑えてくれたものの、それでもチラ見えしている触腕をわたわたしながら隠そうとする。下校時刻間際とはいえ、まだ人いるから…!
「私も、おはなし、したいのだけれど」
「帰ったらね!?帰ったらゆっくりしようね!?」
そうして、俺はラスボスを乗り越えたと思ったら、仲間になっていた裏ボスからバックスタブを受けるのだった。
異能持ちはやっぱロクな人間居ねぇわ!脳裏をよぎる異能持ちの人間を振り返り(先生除く)、心の底からそう思った。
感想評価よろしくお願いします。
さて、充電期間はいりますが…ちょっと予定が重なって充電期間が伸びそう…な気がする。ちょっと予定が未定というか安定しないので、どれくらいになるかわかりませんが、2週間空くというようなことはないので、気長に待っていただければ。
第二章ヒロイン投票
-
支配系ヒロイン()
-
暴力系ヒロイン()
-
上位者系ヒロイン()