少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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やりたいこととやらなきゃいけないことに殺される…。

今回も例によって、グロ描写と感じるところがあります故、無理だと感じた方はすぐにブラウザバックをば。今回は本当に気持ち悪いからね…。ヒロインの姿じゃない(お侍様の戦い方じゃない風)


倫理を失った人間の行きつく先/年季がちげぇんだよなァ…俺とお前らじゃ 改稿(改稿前 倫理を失った人間の行きつく先)

勢いよく開いた扉、半ば飛び込むようにして指導室へと入る。いきなりの発言に当惑した先生を尻目に、俺達は迫りくるヤツに備えるべく準備を進めた。

 

まず俺、転がるようにして燐火ちゃんの手から離れながら、念のためと携帯していた難燃性ロープを懐から引っ張り出し(ボロボロになったから二代目だ)、それを構えて扉に向き直る。

 

俺ができることは足止めだ。攻撃できるほどの力も相手に追いつけるほどの速さもない。だが、ここは閉所で障害物も結構ある。ここが学校だということもプラスになってくる。なんせ、ここで下手な真似をすればまだいるはずの生徒にも被害が及ぶからだ。必然的に、相手の殺傷能力は落ちたものになるはずだ。

 

ロープの使い道は捕縛だけじゃない。例えば、何かに結び付けてアンカーの役割もできるし、重りとなるものに結び付ければ即席のフレイル、分銅が出来あがる。今回は使わない。周りへの被害もあるし、何より閉所での運用には向かない。アレ等は中遠距離用のものだ。だから、これを使う。

 

そうして俺が取り出したのは、これまた二代目の催涙スプレーだ。シャコシャコと振って中身を確かめる。よし、OKだ。

 

俺は催涙スプレーについているストラップの輪を親指に通し、そのまま左腕に握り込む。あとは…

 

俺が今やっていること、それは俺が出来る限りの異能持ちの対策だ。

 

異能持ちは確かに化け物だ。しかし、一応、本当に一応だが人間の範疇に収まっている。食べなければ(食べることを排除した異能持ち以外)生きていけないし、寝ない人間は(それに類する異能持ち以外)いない。殴れば(そういう異能じゃなければ)死ぬし、骨が折れればそれだけで行動にデバフがかかる(すぐに治る異能持ちもいる)。

 

例外要素ばっかじゃん!!!クソっ!相手の異能が何なのかわからないと、どれが適切な対応なのかわからない。初見殺しにもほどがある。

 

だから…俺がやることは異能の大雑把な算定だ。物理が効くなら上等だ。それで攻めればいい。だが、もし効かなかったら?

 

どうやって無効化された?持続時間は一瞬か十数秒か?射程は?どういう原理でそうなっている?ナニカを途中で嚙ましているのか?発動前の予備動作は?発動後の後隙は?

 

そういうのを見破るためのものだ。一つの行動で複数の情報を手に入れられるようにしなければ、イカれた異能が蔓延る世界をやっていけるわけがない。

 

俺は、上着を脱いで左腕にかけた。目くらましだ。相手にぶん投げて催涙スプレーを当てやすくする。あと燐火ちゃんの行動を予測させないためだ。視線切り、相手を視認せずとも行動できる相手ならそれはそれで相手の手の内が割れるからいい。

 

大事なのは情報を得ることだ。

 

手早く準備を済ませた俺は、先生に事情を説明した。

 

「先生!今この部屋に政府公認の異能持ちが来ます!名前は逢坂勇人!ウチのクラスのヤツです!わかります!?」

 

「…あぁアイツか。そうか、手を出したか…なるほどな」

 

なにかに納得したかのように独り言をつぶやくと、先生が左ポケットから何かを取り出した。携帯型のケース?白い何かが大量に詰め込まれている。

 

そのまま、左腕を横に伸ばし、ケースのふたを開ける。すると、中にある白いナニカが下に…落ちずそのまま浮遊、先生の周りをグルグルと回っていく。

 

「私の異能はあまり融通が効かなくてな。相手に手加減をするとなると途端に下手になる。なにせ、纏うものがそのまま攻撃にも防御にも転用されてしまうからな。自身の守りを固くするということは、同時に相手への殺傷能力も高くするということになる」

 

先生の姿が歪む。いや、違う。先生の周りが歪んでいる…?

 

「だから…こうする」

 

先生が空になったケースを上に放った。そのまま、一定の高さに達して手に戻ってくるはずのケースは、途中で不自然な加速をして、先生の手に半ば投げられたような速度で落ちてくる。先生は難なくキャッチし、それをポケットにしまった。

 

「外側にあるのがペットボトル等を砕いたプラスチックだ。安価で大量に手に入れやすい。補充も容易で、細かく割っておけば殺傷能力もそこそこのものになる」

 

「内側が重力だ。私の周りだけを歪ませている。大概の攻撃は通さん。そして、重力の方向も自由自在だ」

 

「合わせればこうすることが出来る」

 

そういうと、プラスチックの破片が勢いよく入口方向に射出された。風を切って、飛んでいく様はまさに弾丸そのもので、それがプラスチックというのがなお恐ろしい。

 

「覚えておけ。異能は工夫次第で様々な姿に変わる。見方を変えろ。欠点はときに利点となる」

 

プラスチックの破片と重力の二重の層を纏う先生は、凝然とした態度で入口を見据えている。

 

「異能持ちであることは把握していた。少し過去に関わりがあってな。その時にまた会っても踏み込んだことはしないと決めていた。だが…」

 

「手を出したのはあちらなら、約束を反故にしたのがあちらなら、私も容赦はしない」

 

やっぱかっけぇな…先生。うん、さっきあんなこといった燐火ちゃんをお説教しなきゃな…。これ見て頼りないとか嘘だろ…。

 

プラスチックというのが安っぽく感じるが、言われたことを考えると納得がいく。例えば、ペットボトルを買って中身を空にして、細かくすればそれだけで武器になる。しかも、要らなくなったら捨てればいい。先生がプラスチックを携帯している点は、入手できなかった時のことを考えているのだろう。プラスチックの殺傷能力は如何ほどなものなのか、それは重力との合わせ技で補っているのだろう。

 

異能持ちとしての経験が違う。思考が違う。自身のできることを把握して、できないことを別のものと合わせて補おうとする力、これが…作中でも強いと評判の笹垣 纏の実力…!頼もしすぎて俺いらないんじゃないかなと思うね!私のほうがすごいのだけれど?

 

内心激褒めしていると、厄介毒電波が思考を汚染してくる。それやめろぉ!気持ち悪くなるからぁ!マジで一瞬自分の思考かどうか判断できなくなるんだよソレェ!

 

厄介毒電波をぶつけてきた燐火ちゃんの方を見る。むすっとした表情でこちらを見つめてくる。いいから、ほら、わかってるよ。なんかとっておき見せてくれるんでしょ?

 

「私の方がもっとすごいことできるわ」

 

どうしたって怪物博覧会になる未来しか見えないが…。まぁ見てみよう。

 

燐火ちゃんは、長身そのままの姿で、ポケットから何かを取り出す。ア、アレは…ミートスティック?でもミートスティックにしちゃ小さすぎる。単三乾電池くらいの大きさだ。ミートスティックは普通に片手で握り込めるほどの、具体的に言うと10cmくらいの大きさのはずだ。

 

カシャンッと本来人体からなっちゃいけないような音が響き渡り、左腕に…回転式拳銃のシリンダーだアレ!

 

左腕、肘の少し前あたりの肉や骨が一緒になって、右へとズレる。

シリンダーと化した部分に単三サイズのミートスティックを差し込んでいく。6発装填式?

 

「私の基本的な攻撃方法は身体を変化させての攻撃だった。ただそれだと、私一人のリソース分だけで戦うことになるから限界があった」

 

全てを差し込み終わると、腕を元に戻した。燐火ちゃんが腕を上から下にこすると、その部分が不自然なほどきれいに、人体としてあり得ない挙動であるはずなのに、()()()()()

 

「この学校にも私はたくさんいるけれど…彼ら彼女らは私が動かせる人間ではない。他のわたしたちに介入される恐れがあるから」

 

それと同時に腕に変化が生じた。手の平から銃口が生えてくる。手指もおかしい。妙に伸びて…指も銃口?

 

違う、手指だけじゃない。腕全体が咲いてるんだ。花開くみたいに。割いてるんだ。中身を表すみたいに。

 

「リソースの確保を考えた時、私は少し前の戦闘を思い出した」

 

腕に無数の触腕じみた銃口があらわれる。筋繊維一つ一つが蠢いて、海月みたいに揺蕩わせる。

 

右手を使って、ひときわ大きな銃口と化している中心をぐっと押し込んだ。

 

ドクドクと得体のしれない液体が中へと充填されていく様が見える。えっ…エグ…。

 

「私は自分の血から私を生み出すことが出来た」

 

触腕銃口の一つがピシャリと液体を吐き出す。真っ赤な液体。香る生臭さ、血だ。量としてはほんの少しの量しかない。靴で拭ってしまえるほど小さな血だまりだ。

 

その血だまりが、蠢いて…泡立って…う、腕…?

 

「だから私は思考を変えたの。発想を転換させたわ」

 

「私を武器にするよりも、武器に特化させた私を生み出せばいい」

 

最低なマリーアントワネットみたいなことを言い出した。

 

視線をうごめく血だまりに戻せば、そこにはマド〇ンドがある。マドハ〇ドが生まれた。そのマ〇ハンドも、左手と同じように変形して…花開いて…触腕銃口を形成していく。

 

「自分自身を武器にするよりも、武器を形成する血をばら撒ける構造を作り上げた方がいい。私が剣となるよりも、私が銃となって、銃弾を発射する方がはるかにリソース効率がいい」

 

彼女がまたシリンダーを回転させる。そして、また右手で真ん中の銃を押し込んだ。流れる液体が変わる。今までの赤い血ではない。どす黒い色をしている。

 

また、触腕銃口から液体が放たれた。

 

「武器を作るより、自分の身体に元から存在しているものを利用した方がはるかに効率がいい」

 

今度の黒い血だまりは、ドロドロとした液体から加工されていき…手だ。爪が鋭利な形状となっている手首の先しかない手が生み出された。ソレは五本の指を器用に動かして、教室中を駆け巡る。その黒い血だまりがどんどん手を生み出していく。

 

「心臓を加工し圧力で装填した液体を射出する。肝臓を加工して液体貯蓄兼液体混合としての役割を与え、膵臓を加工して補助心臓としての役割を与えた」

 

「それでも足りない部分は自分の肉体を加工して補ったけれど…それでも一から武器を作るよりはるかに効率的に済ませられた」

 

武器人間だ…。そんな身体でどうやって生命維持を…と思ったけど、ミートスティックで生存している生き物だった。いやな納得をしてしまった。人体の冒涜レベルじゃないな…。走り回る手はそのまま壁や天井を身軽な動きで這い上がっていく。

 

「後は銃身の形成、これも元からある腕を流用した。骨を加工して刀身を作り上げるよりも、穴を開けて弾丸を打ち込めるように加工して補強する方がはるかに効率的だった。元の形状をそのまま転用できたから」

 

腕を振った。様になる姿。それでも異形であることには変わりなく、それこそ人を模した兵器といっても過言ではなかった。全身の白色と対照的な赤黒い銃がひどく現実と乖離して見えた。

 

「弾薬は研究した設計図をプログラムした血を採用した。まず、素体となる私を加工して武器にして、そこから血液を抜き取って瓶に詰めた。携帯性と生産量を高めるため」

 

銃の中にうっすらと液体が揺れてるさまが見える。元人間で満たされた銃内を見て吐き気が湧いてきたが…一定以上を超えた地点で心がスンと冷めた。精神干渉、混ぜられた白鷺燐火がストッパーになっていた。

 

「打ち込めば、飛散した血液が加工された私に()()()()()()

 

エグイ、ひたすらにエグかった。人間として逸脱した生態。自分自身を人間としてみていなかった。どうやったら相手を最低限の力で殺傷できるかを考えた殺意の効率化によって歪に進化を遂げ、一種の到達点、あるいは進化の袋小路にいきついた人工生命体のようだった。

 

「血液の量的に素体となった大きさとまではいかないけれど…小型化とリソース削減、安定した量の生産、殺傷能力を抑えたものを目的としていたから特に問題にはならなかった」

 

「希釈液と混合させれば、質の低下と引き換えに大幅な生産が可能になる」

 

えぇ…?

 

困惑しかなかった。俺は冷めた吐き気の代わりに悲しみが湧いてきた。

 

「今撃った弾は試作ナンバー74、75。持ってきているのは他に76と77と78。あと試作品の到達ナンバー12」

 

「無数の触腕を使って、希釈液と混合した弾薬を対象や部屋に打ち込み、全方位から攻撃を行う」

 

いやぁ…これは…

 

「対閉所個人物量攻撃形態」

 

「形態名、花海月」

 

表情のうっすい顔が確かなどや顔を披露した。

 

「生物兵器目指してるの…?」

 

この女は人間社会に馴染むことはない。そう確信できた。

 

生み出された手は俺へとよじ登ろうとしてくる。気色悪いので振り払うもすばしっこく即座に張り付いてくるので、面倒だから放置する。手首の先しかない手が身体を這いあがってくる様は恐怖そのものだが、害意はないはずなので我慢する。俺を守ってくれるもののはずだ…。きっと。

 

「失礼ね。貴方を守る為よ。でも不安視しているのはわかるわ。弾薬が切れれば戦う力はなくなる。その点はちゃんと考えてあるのよ」

 

「弾薬は他の液体を侵食する性質を持たせたのだから、継戦能力を落とさずこのスペックを載せることが出来たわ」

 

「相手が私の血と皮膚接触、経口接触すれば、相手の体液を使って内側から相手を殺すこともできる。今研究しているのは気化した血の生成と運用方法ね」

 

生物兵器と化した人間が目の前にいる。感情や倫理観、そういったものを奪われ自身を量産することが出来る人間の行き着く先はこうなのか。そう考えると言い知れぬ恐怖が湧いてくる。作られた生命の生き物に対する冒涜を体現したかのような女が存在していることに諦念しかなかった。

 

いやもう…駄目だよコレ…駄目。駄目だ。人間社会に馴染むのは到底無理だろう。そんなことやるんだったら擬態を覚えさせたほうがいい。もう人間に戻すというより、人間になじませるように偽装させたほうがいいという考えだ。

 

「マジで生物兵器じゃん…」

 

ほら見ろよ、先生を。もうドン引き通り越して理解したくないって感じで目を反らしてるじゃん。そらそうなるよ。俺だって目そらしたいもん。

 

行きつく未来が、最早生物兵器しかないがこの状況では頼もしいだろう。うん、頼もしいはずだ。やってることえげつないが、その分嫌な意味で絶大な信頼がある。信じよう。うん、信じるしかない。

 

手にしがみ付かれてる(直喩)俺は、この先の未来からそっと目を離すように、入口に目を向けた。

 

結構な時間たってるはずだが、いつ来るんだ。その緊張感だけが身体を支配している…はずだ。たぶん違う緊張も持っているがそれは味方に対するものなので意識から除外する。

 

クソッ…徐々に化け物化する燐火ちゃんに対応できる気がしねぇ。マジで、監禁でもされたらR-18がR-18Gとかになってもおかしくない。俺はこれから触腕に襲われるのか…?そんなハードなR-18の未来がきてもおかしくない。俺は凌辱される女騎士だった…?クソッ、誰が

 

「「『触手くっころもの』かよ…」になるかっての…!」

 

「…ん?」

 

「…あっ」

 

シンクロした言葉、下から声が聞こえた。俺は足元に目を向ける。

 

半透明な男と、目が合った。

 

「居たぁぁぁぁぁ!」

 

「やっっっっべ!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

バレちまったなァ。まぁしゃあねェ。なんかコイツの末路がR18Gなのが容易に想像できたから、普通に声出しちまった。

 

注目を集めちまったから再度床に()()

 

潜行、透過、言い方はいろいろあるがやってることは物理的干渉を無視してるってだけだ。

 

コイツの異能は『消遮必滅』。

クソみてぇなネーミングだろ?元ネタが生まれたやつは必ず死ぬっていう生者必滅からだ。コイツは、自分の存在を薄くする。いや、自分に関する干渉を無くすとかいうバケモン能力だ。異能による干渉も無効化する。しかも、干渉の度合いをいじくることが出来る。チートもチートだ。

 

まぁ軽いデメリットはいくつかあるがな。

 

一つ、なにものにも干渉されなくなるから、息が吸えない。下手すると死ぬ。

二つ、干渉の度合いでヘマすると、壁の中にいる、土の中にいる状態になる。だから、基本干渉の度合いをいじくるときはジャンプするか、空中にいる時でしか使えない。接地状態でいじくると、足が埋まる。普通に死ぬ。

三つ、使い過ぎると世界に溶けて死ぬ。

四つ、実体に戻るときに失敗すると死ぬ。

五つ、実体に戻るときに身体の形を覚えてないと死ぬ。

六つ、実体に戻るとき、中途半端に干渉されると身体がぐちゃぐちゃになって死ぬ。

七つ、存在が溶けていく感覚になれず、精神が弱ってる時にやるとショックで死ぬ。

八つ、他の異能と組み合わせるとき、噛み合わせが悪いと、良くて身体が風船みたいになってから死ぬ。

 

以上だ!な?軽いデメリットだろ?

ちなみに、持ち主は一応生きてるぜ?ギリギリ、ギリギリな。なんかもうディストピアの脳缶みたいな感じになってるけど生きてるぜ?生存を他者に依存してるけどな。寄生虫の化け物に成り下がった。まぁ俺が生かしたんだが…それァいい。使えるから使ってやったってだけだ。

 

どうやって異能のデメリットを洗い出したかって?分身、犠牲、試行錯誤、これで察してくれ。消えてったヤツは全員この世の終わりみてぇな顔してたぜ?そういう末路を辿るんだ。

 

犠牲の山から分かった上記の点に気を付ければ、馬鹿ほど有能なんだ。だから常用できるように研究した。

 

潜り直して、生徒指導室の入り口とは反対側、ちょうど奴らの後ろ側に出てくる。ダイナミックエントリーだぜ?

 

透過を切る。ふぅ、慣れねぇなァやっぱ。

 

床から登場の俺、距離的に一番近いのは先生か。次に柳田、白鷺の順。先生クソほど厄介なんだが…まぁいい。出たとこ勝負だ。

 

「よォ、先生。生徒にそんな物騒なモン向けちゃあ先生の『風上』にも置けねぇぜ?俺ァちぃとばかしそっちのヤツらに用があるだけなんだ」

 

「お前が国の犬じゃなければ生徒としていうことを聞いていたな。だが国に所属した時点で私にとって敵だ。今までは生徒だから見逃していただけのこと。他の生徒に危害を加えるなら話は別だ」

 

「ひでぇことを言うよ先生。中学の時の俺に自分の時間の大切さを説いたのは先生じゃねェか」

 

「それでも守るべき一線を踏み越えたら、一時の教え子であろうと敵だ。逢坂。それが私だ」

 

「……変わらないなァ先生。じゃあ俺も、やることやらなきゃな」

 

渦を巻く白い破片、なるほど、プラスチックか。その内側は重力を歪ませている。先生の常套手段だ。柳田は…うーん微妙だな。何してくるかわからねぇという点で不安がある。ただ、異能を出す気配がねェ。その点、奥の白鷺はわかりやすい。肉体の変化系だ。あぁいう手合いは対応させないことを念頭に置けばいい。やるこたぁ初見殺しで叩き潰すだけだ。不確定要素一つ、いつも通りでいいな。

 

バネも風雷も透過のバルブも全部閉めた。今の俺は唐突に床から現れた筋肉ダルマだ。アイツ等からしたら、透過の異能を持つ筋肉ダルマだとしか思ってねぇだろうな。

 

「逢坂は複数の異能を持つ。何をしてくるかわからん手合いだ。気を付けろ」

 

ってオイオイオイ…!クソがよォ!

 

「先生ェ!言わないでくれよ!面白くねェじゃんか!!俺の手札は隠してこそ輝く。それなのにネタ晴らしなんて…『大富豪』で初っ端から手札晒す馬鹿がどこに居んだよ…」

 

ホント、堅物で困っちまうぜ。種明かしされたマジックほどつまらねぇものはねェってのに。

 

「生憎大富豪をやってるわけではないからな。柳田、白鷺、こういう手札が多い相手への対処法は二つある。一つは相手に出された手札に合わせた手札をこちらも出す。後手のやり方だ」

 

先輩風吹かしよってからに…。

 

先生の周りを揺蕩う無機物の白蛇がこちらに鎌首をもたげた。来るぜ…!

 

「そして、相手に手札を切らせる余裕を持たせず押し切る。先手のやり方だ。こうする」

 

ピッと飛ばされた無機質な牙が俺に殺到する。顔の前で両腕をクロスさせて身体を出来る限り丸めながら、力を入れて固める。クッソ、やっぱ先生にゃ俺の弱点はわかってるか。

 

今は当たり判定がデカくなってる。出来るだけ判定を小さくするのは当たり前のことだ。代償は視界不良。まぁまぁのトレードじゃねぇか?

 

刺さるプラスチックの破片。痛みはそこそこだ。まぁ先生がやる攻撃手段の中じゃマシなほうだからな。受け得ってやつだ。

 

俺の弱点、それは異能の発動にゃひと手間要することだ。バルブの出現、バルブの開閉、異能の発動と停止の手順で進むから、バルブの開閉をさせてもらえないと俺は何もできずに死ぬ。まぁ対策はしてあるぜ?

 

「何もさせずに殺した方が楽なのは同感ね」

 

白鷺がこちらに銃口を向ける。一息で吐き出された赤黒い液体が俺へとばら撒かれた。

 

数は十と三つ。俺に対するものが半分、俺の周りにばら撒かれたものが半分。回避しにくいなァ。透過してきたときの話を聞く感じ、着弾=死じゃねぇかよ。

 

床や天井、どっからか隠れていたのであろうきっしょい、あえて言語化するならカサカサとゴキブリみてぇな動きで手首のみの生き物がこちらに殺到する。マド〇ンドモドキが低位置から液体をばら撒いてくる。嫌な位置だ。横に避けても当たるし、ジャンプしても本体の液体に当たる。空中に逃げたら手首やプラスチック破片にやられる。じゃあどうするか?

 

手札は使いまわすものだ。そうだろ?

 

俺は窓にタックルするみたいな姿勢になってその場でジャンプした。

 

バルブを回す。勢いよく噴き出す黒い煙に反して俺の姿は世界に溶けていく。まるで俺の存在黒い煙になって噴き出してるみてぇだ。

 

一気に干渉度合いを下げて、液体プラスチック破片諸々を透かす。即座に閉めようとするその瞬間、ロープが飛んで来やがった。

 

すんでで、俺は腕だけ干渉度合いを上げた。腕だけの実体化、失敗すると腕が弾ける。だがそうもいってられねぇ。

 

元に戻るときに身体をかき回されたらよくてロープと一体化。悪くて死ぬ。戦えなくなるのは必須だ。

 

咄嗟に迫るロープをつかみ取る。間に合った…!数瞬遅ければお陀仏だぜ…。

 

俺はお返しとばかりにロープを引っ張り上げて、掴んだロープの先にいる柳田を笑った。

 

引っ張られて体勢を崩す柳田もにやりと笑った。

 

あ?なんだ?なんで笑いやがって…

 

「いっ…!?」

 

そう思ったとき掴んだ腕に痛みが走った。ロープを見る。赤黒いロープだ。何で痛むかわからねぇ!?なにをされた?いや、コイツァ…!?

 

「うぐぉぉぁぁ~~!?!?」

 

す、吸われるッッ!!実体化した腕から血がなくなっていくッ!

 

そうか!コイツ!ロープに白鷺燐火の液体を…!しみ込ませてやがった!

 

ロープが解けるように筋繊維が生まれていく。俺の血が相手の武器へと変わっていく。無数の銃口、近距離射撃…!

 

俺は急いで干渉度合いを下げて透過した。身体すべてが透過する。

 

あぶねぇ…緊急回避だ。数瞬判断が鈍れば死ぬ状況だった…!

 

一時的に床へと潜って避難する。このまま逃げてもいいが、今度は俺が後手に回る番だ。普通に死ねる状況となる。だからここでケリをつけなきゃいけねェ。少なくとも互いに腰を落ち着けるような状態にまで話しを進めないといけねェ。俺ァ戦うことが目的じゃねぇのになァ。

 

そのすぐ後に俺がいた場所にばら撒かれた液体。俺は床に潜ってから、とある作戦を思いついた。そのために…

 

柳田、利用させてもらうぜ?

 

俺は天井から飛び出す。ちょうど柳田の上からだ。体を最大限伸ばして、足をひっつかんで持ち上げ、体勢を崩させる。前のめりで床に叩きつけられてら。ぜって―いてぇわ。ま、俺も痛い思いしたしお互い様だ。

 

そのまま引っ張り上げて、首に片手を添えた。

 

もう片方の手で他のバルブを回す。

 

黒い煙が噴き出す。さぁなにを使ったと思う?

 

答えは簡単!

 

「『セプテンバー』ッッ!」

 

相手が身構える。何が来るかとビビんだろ?なにせ、コイツは不可視の攻撃、避けれるもんなら避けてみな。ま…

 

「ハッタリだよバーカ」

 

嘘なんだがな。

 

俺は得意の口八丁で異能を発動する時間を無理やり作り出した。

 

生まれた意識の空白を使って片手で一気にバルブを回した。一つ、二つ、筋肉ダルマと合わせて計四つ。閉所戦闘での俺の十八番見せてやんよ。

 

「っち、嘘か。小賢しい」

 

忌々し気な顔でこちらに手をかざしてくる。ヒュー容赦ないねェ。

 

巻きあがるプラスチックの破片が不規則な軌道でこちらへ迫る。しかし、準備ができた俺にゃ効かない。ブラック企業もかくやという勢いで、透過の異能を使う。

 

「オイオイ!柳田に当たっちまうぜ?」

 

天井からゆらゆらと煽るように柳田を揺らして先生を脅す。

 

「問題ない。当てるようなへまなどしないからな」

 

自信ありげに言うねェ。まぁそれがホントなのが手に負えねぇ。

 

白鷺の液体散布も追撃で浴びせられる。が、効かねェんだな。またもや透過する。怒涛の連続使用だ。

 

柳田にも付着してら。コイツは影響を受けないらしい。これ実体化したらまた二の舞じゃね?

 

俺はさっき回したバルブの異能で、付着した液体を浮遊させた。浮遊の異能による対象の分離、物は使いようだぜ?透過と合わせて使ってるもんで、応用力はピカイチなんだ。

 

そんでもって俺は柳田と合わせて透過を使用した。一瞬だけな?そうすることで、白鷺の液体を落とす。

 

「っはぁ、はぁはぁはぁ…なんだ今の?」

 

「味わったか?俺の透過。発動すると世界が全部真っ白に感じるんだ。視覚も聴覚も嗅覚も味覚も触覚もすべてな」

 

俺は逆さまで青白い顔をしている柳田に語り掛ける。説明は大事だ。意識逸らしにも使えるからな。

 

「身体が世界に溶ける感覚だ。知ってるか?死ぬときに感じるのは真っ黒な空間じゃねぇんだ。闇におちる感覚じゃねぇんだ。真っ白な誰もいない透明な世界に身体が溶けて死んでいく、そういう感覚だ。それを再現しているんだよ。この異能はな」

 

「それは…辛いな。…今の俺の状況も辛いから離してくれない?」

 

「ソイツァ無理な相談だな。あの二人を止めてくれたら考えてやるよ」

 

柳田を尻目に二人を見やる。いいね、理解できる人間がいるってのは化け物にゃ嬉しいことだ。それに比べてソイツ等は…

 

「無敵…?いえこれは」

 

「面倒だな…長時間は使えないはずだ。後隙を狩るぞ」

 

柳田そっちのけで話し始めている。おいおい、人質取ったのに気にもしねぇのかよ…。

 

「その異能…存在の透過だっていうなら…デメリットは…干渉されなくなるから、息ができない…とかか?」

 

柳田が口を開いた。鋭いな。

 

「そうだよ。あと『干渉』されないから空中に居ないと下へ沈む」

 

柳田は宙ぶらりんの状態で言葉を続ける。

 

「…だから浮遊してんのか。組み合わせてデメリット打ち消すってのはうまい使い方だ。今使ったのと合わせて四つだろ?いや五つか?黒い煙で判別できる。効果はそれぞれ、筋肉、透過、浮遊、その目からかすかに出る黒い煙はわからないからパスだ。少なくとも戦闘系じゃないだろう。そして、もう一つ」

 

「目の奴はずっと使っていた。単体で力を発揮するものだと考えていい。透過と浮遊がセットなら、もう一つはその筋肉とセット。もしくは他三つと合わせて真価を発揮するタイプ」

 

「セプテンバーって叫んだな。でもなにも起きなかった。もし発動しているなら」

 

「体内での発動、外見に反映されていない状態。条件指定、まだ条件を満たせていないかだ」

 

冷静に状況を分析できてる。なるほど?増々気に入った。コイツは使える。自分ができることを常に考えて行動しているタイプだ。今後の作戦に使えそうだが…それはまぁいい。あとだ。なにせ…

 

もう手遅れだ。

 

残念ながら…もう俺をどうしようも出来ねぇぜ?術中にはまってる。対話してる時点で終わりだ。

 

ま、気付かねぇかぁ~!やっぱ俺ァ天才らしいなァ。

 

「頭の回転が速くて助かるぜ。だが惜しい。90点だ。浮遊と透過は『セット』で使う。目は情報集めの為だ。使い勝手がいい。ここまでは合ってる。筋肉は見た目通りだ。コイツ単体で運用できる便利なモンさ。もう一つは」

 

自慢気に言う。俺の勝ちは変わらねぇ。目的も達成できそうだしな。

 

「条件発動。筋肉を見誤ったのが惜しい点だ。次は満点目指せよ?」

 

ひっきりなしにくる攻撃は全部透過してある。連続発動してるから、地味に疲れるんだよコレ。そうしないと息は吸えねぇし、ミスったら身体にプラスチックとエイリアンが植えつけられるからするしかないんだがな。受けれそうな攻撃は、筋肉でカバーしてあるから、まだ楽なほうだ。

 

可哀想なことに、柳田も連続発動の苦しさを味わってもらってるが…耐えてくれ。必要なことだ。

 

「俺が扱う異能ってのは結構融通が効いてよォ。バルブを回して異能を発動するんだが、条件発動系の異能はバルブを回してない時でも、一部条件を満たしてるヤツを『マーク』してくれてんだ。それで、バルブを回したら、その瞬間異能の対象となる」

 

喋ってる間もじゃんじゃか攻撃してくる。手を休めるつもりはないってのはいいことだが、こんなペラペラと喋る人間の言葉なんざ聞いてて良いのか?

 

「俺が使った異能は、設定したキーワードを聞いたヤツの舌を裂く。列挙してやるよ」

 

「風上、大富豪、セプテンバー、干渉、セット、マーク」

 

「そして、異能の名前だ」

 

「ありがとよ。話を聞いてくれて」

 

咄嗟に動こうとするがもう遅い。俺が言うほうが早いんだ。()()()()が違うんだよ。見た目通りだと思ったか?信用しちゃあいけねぇってのは理解できてたはずだろ?これで学べたな。だから、これは授業料だ。貰ってくぜ?

 

「『舌裂散寸』」

 

俺の異能が叩き込まれた。




先生がやってることはプラスチックと重力の二重バリアです。つおい

燐火ちゃんがやってることは邪悪なスプラトゥーンです。陣地を塗って、自陣を増やして相手を攻撃!ってな感じ。でも今回は控えめだよ。一応7割がた人の姿を保ってるからね。本気?人間やめて全身を左腕と同じようにするよ。でも、主人公の目があるからしないよ。恥ずかしいからね!(?)

やりすぎたかなって思ったけれど、化け物には化物をぶつけんだよってことで。

主人公が相手にしてるのは、全身にバルブが生えて、半透明な、身体に風と雷を纏って、足がバネになった筋肉ダルマだからね。

化け物バトルなら負けてないよ。

2023/11/30
次話の前半をこちらに。また、少々の加筆と描写追加。
持ってくれ…プロット…!戦闘描写を盛るってしか書かれてないプロットから未来の私への丸投げを感じる…!あと少しの盛り込みたいワードしか書いてねぇ!ほぼ落書き帳だこれ!

第二章ヒロイン投票

  • 支配系ヒロイン()
  • 暴力系ヒロイン()
  • 上位者系ヒロイン()
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