少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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お気に入りが下がってるのがちょっとダメージきてるぜ…。あと、自分の作品を振り返って正気に戻ったってのもある。くっ…直したいところとか多すぎる…。

今回は逢坂君のお話です。またもや分割しました。書きたいことが多すぎる。

2023/12/05
前話の先生がやったことは、これしか表現方法がなかったというだけで、メタ的な表現をすれば、劣化版クトゥルフのヨグソトースみたいな…世界=先生って感じです。そんな世界に対する干渉力ないけど…。

世界を身に纏う→脱ぐ 結果:一時的な世界と同化
世界を身に纏う→脱ぐ箇所を変える 結果:A地点からB地点へ瞬間移動したように見える。
イメージとしては、服の右袖から手を通して着た後、左袖から脱ぐみたいなことをしてるだけです。着た場所と脱いだ場所の起点が違うから転移してるように見える。そんな感じ。

大事なのは、ヨグソトースと同じ、世界が先生そのものになるという点。つまり当たり判定=世界



悪魔のやり方 改稿 (改稿前 悪魔のやり方)

さてさて…ひとまず離脱するこたぁできたな。

 

まぁ、先生は大丈夫でも白鷺は追って来そうなもんだから、一時しのぎだが。

 

土管から出てくる配管工のおっさんのごとく地面からポップする。その拍子に思わず手を放してしまったから、屋上に柳田が転がっちまった。

 

「うぼぇっ」

 

「すまんね」

 

透過のタイミングをミスっちまったの原因だ。透過は使い過ぎると、死ぬ危険性が大だから、切れる時に切っとかないといけない。そのまま屋上に倒れ込んでいる柳田の横に降り立つ。

 

「よォ…無事か?」

 

「死にかけたけどな…!透過ホントキッツイな…うっ…うおぇっ…」

 

どうやら慣れない透過にやられたらしく、コイツゲロ吐きやがった。あーあ、学校を汚しよってからに…。まぁ俺のせいだけどな。

 

「オイオイ…大丈夫かよ。おら、舐めとけ」

 

俺は顔を覗き込んで顔面蒼白の柳田に飴をやる。ちったぁ気分はマシになるだろ。

 

「……どーも」

 

四つん這いでダウンしてるやつは片手で飴を受け取ると、口を拭ってから飴を放り込んだ。そのまま横にズレて少し這ってゲロから離れると、腰を落ち着けた。

 

「仕切り直しって言ってたが…誰がどう見ても負けじゃないのか?」

 

幾らか落ち着いた柳田が口を開く。まぁそう見えるだろうが…

 

「俺は人質で最悪俺を使って脅せば他2人を無力化できる。チェックメイトだろ」

 

せっかちで悲観的だなァ。もっと冷静に考えろよ…

 

「話が早ェ。異能持ちがそう簡単に終わってたまるかっての。死にかけの状態だろうが、人質取られようが、自分が気に入らないからって瀕死状態でもラウンド2なんて叫ぶヤツなんざごろごろいる」

 

「それに、相手に負けを認めさせるには、相手の実力をフルで叩き潰してやるのが一番だ。お前はそれをするための道具だよ。どーぐ。わかるか?」

 

俺はわかりやすい講釈を垂れた。コイツは異能持ちを甘く見過ぎてる。基本化け物だと思え。理屈が通じないタイプのな。そんなヤツ等に分かりやすく負けを認めさせるにゃ、相手を正面から叩き潰して、相手の全てを否定させてやればいい。化け物にも共通して勝ち負けの概念があるからできるもんだ。勝ち負けの概念が存在しないタイプのヤツもいるが…そういうヤツは、敵対とかそういう次元にねぇ。なんかそこにいるだけとか。ただ生きてるだけ、みたいな神とかそういう上位存在と同じ部類だ。勝ち負けの概念持ってるヤツは妖怪、持ってないヤツはそれらを超越した神とかそんな認識でいい。神に敵対したら終わりだ。祈るしかねェ。

 

俺は下げちまった気分を上げるように安心と慰めの言葉っぽいものを吐いた。

 

「お前に手荒な真似はしねぇよ。俺の所感だが…お前、異能ろくに使えねぇだろ。目覚めたてっつー所か?」

 

「っ………」

 

黙り込んだところをみるに正解らしい。

俺はコイツの頭をガシガシと撫でる。頭を前後に揺すられてしかめっ面するのも構わずだ。

 

「ろくに異能も使えねぇヤツにぶん殴ったりしねぇよ」

 

「お前が俺ん手ェ出してこねぇ限りな。お前はあの中じゃあ理性的だ。いざとなったときのストッパーになってもらわんといけねぇ」

 

撫でた手で無理やり顔を上げさせるようにして目を合わせる。にっこり笑って相手を不安にさせないようにな。

 

「わかってるよな?」

 

俺は歯列をギラつかせた。ビビったのか頬を引きつらせながらも、コクコクと頷いて

 

「俺一人じゃ勝てる気しないし、しないよ…。二人を止められる気はしないけど…」

 

自信ない言葉を吐く柳田だが、言ってることは全面的に間違っちゃいない。話を聞いてくれればいいって程度だからな。

 

「…そりゃあ異能持ちだからな。イカレてるヤツを止めようっつーのは、ほぼ焼け石に水だ。まっ、最終保険ってヤツだよ。最後の最後にみっともなく助けを求めるからよろしくなっ」

 

「わかったよ…」

 

とりあえず、今後の方針に必要なことを済ませた俺は、ポッケからメロン味の飴を取り出して舐め始めた。英気を養うためってのと、俺なりのルーティーンだな。ヤルって気合を入れる時はいつもこうしてる。

 

「一つ…聞いてもいいか?」

 

テキトーに時間を潰そうかと思ってたが、どうやら質問タイムらしいな?しゃあねぇ。答えてやるとするか。

 

「ンだよ」

 

「国はこの事態をもう知っているのか?」

 

 

「…この件は国は関わってねェ。隠蔽が上手すぎんだよ。現場に居なかったら誰も気づかねぇ。運悪く現場近くに俺がいたから、俺が独自に漁ってるってだけだ」

 

これは事実だ。たまたま俺が居合わせたってだけでこんだけ隠蔽が完璧なのにはビビった。それに、俺自身にも口止めらしきモンはきてたからな。

 

まぁその口止めが、自分の隠し撮りされた写真をバラバラに引き裂かれてるものが、いつの間にかポケットに入ってるっつーホラーテイストなモンだったが。

 

アレはさしもの俺も、ビビり散らかした。しかも数分前の俺の写真だ。俺が隠蔽に気付いて、スマホで知り合いに連絡しようとスマホをポケットから取り出そうとしたときにはもう入ってた。

 

まぁ見てみぬフリして連絡しようと電話付けたら、知らん電話番号に繋がったうえでノイズが走った声で、俺が共有してる被害者の人達の名前を淡々と読み上げられたから黙らざる負えなかったんだが…。怖すぎんだろ…。

 

「そうか…」

 

安心したように漏らした言葉、へぇ、きなくせぇな。きなくせぇが…手出したくねぇんだよなァ…。まぁコイツの口からなら…大丈夫か?

 

「あの日、何があった。周りのヤツは何も覚えてない。それに疑問も思っていなかった。話を聞こうにも、先生にゃ国のヤツだって知られてるから警戒されるし、谷崎にも当たった。だんまりだよ」

 

俺は内心ビビりながらも話を切り出した。他の異能持ちも俺みたいになってんじゃないかと思って当たってみたが…別の意味でダメだったんだよな。ただ脅しは来なかったから、地雷は踏んでねぇってことなんだろう。

 

「谷崎さんが異能持ちだって知ってるのか…?」

 

驚いたように言うが、忘れてんじゃねぇの?俺の目の異能をよ。俺は目をコンコンと眼帯越しに叩きながらいった。

 

「俺の目は大抵のものを見透かす。もしそれで見えないやつがいたら、そいつは同じ異能持ちだ」

 

逆探知っつーか、ジャミングしたヤツは異能持ちっつー判定方法だ。もしジャミングしなくても、異能持ちなら周りと別に表示される。

 

「アイツは俺の脅しにも屈しもしねぇで逆に脅された。怖ェヤツだよ。洗いざらい吐かされた」

 

「油断しちまったんだよ。油断。調子乗ってた。図書室尋ねたら問答無用で拘束されるたぁ思わんだろ」

 

「図書室に人は?」

 

「いた。人がいるのに問答無用でやりやがったんだ。アレでバレねぇのは奇跡か頭がキレ過ぎんのか…」

 

「それは…どう考えても谷崎さんが段違いに強いってだけだろ」

 

「だろ?でも油断にゃ変わんねぇよ。テメェらにも出し抜かれたしな…最近たるんでるわ」

 

そうやって愚痴る。慢心バッカだよ。ホント。

 

一時の沈黙、口を開いたのは柳田だ。

 

「……話、あの時の話聞きたいんだろ。話すよ。逢坂がどう思うか知りたいから」

 

そうして聞かされた内容は、まぁ酷かった。異能を発現したストーカー、ストーカー被害に遭った白鷺、それをやめさせようとした柳田、大して頼りにならなかった先生、ひでぇな。

 

「誰も知らなかったのは燐火…白鷺さんに協力者がいる。記憶改竄できる異能持ちだ。それで異能持ち以外忘れさせた」

 

「なるほどなァ…」

 

一通り聞き終えたが…まぁなにか隠してるな。ただいまは関係ねぇ。俺だって秘密に深入りして余計な虎の尾を踏みたかねぇしよ。

 

「ま、終わったことだ。今言ったところでどうにもならねェ。しいて俺が言えんのは、テメェら無鉄砲過ぎんだよ」

 

「視野が狭い。やりようはいくらでもあったはずだろうにな。どいつもこいつも中途半端だ」

 

「もっと割りきりゃいいのによォ」

 

割り切ることが出来なかったのはコイツ等がまだガキだからだ。それを言ったところで、納得するとは思えねぇ。こういうのは、後々思い出して、理解すりゃあいい。

 

「割り切れるわけないだろ…。死ぬかもしれなくて、実際人が死んだ。生き返ったけどな。俺が死ぬならまだいい。でも白鷺さんが死ぬのは違うだろ…」

 

そういう事が言いたいわけじゃねぇよ。もっと考えろっつーことだ。俺は言葉を変えた。

 

「冷静になれってことだ。異能持ちが関わってるって時は、もう自分が相手の術中にはまってると考えろ。日記を書いて、毎日それを振り返るようにしろ。自分がおかしくなってるところが理解できるようになる」

 

「そうすりゃあ、無鉄砲にならずに済む。掬える(救える)モンが増えるんだよ」

 

「ま、そんな経験してるわけねぇか。新人に多くを求め過ぎだって言われちまうな」

 

「はっ、身に染みる説教だね。ご教授痛み入る」

 

皮肉気に言うが…まぁ可愛いモンだ。だから俺も皮肉で返した。ちぃとばかしの暗喩も込めてな。

 

「いいねェ、先輩として敬いな。()()()()()としてもな」

 

「人生の先輩って…同い年のはずだろ……異能か?」

 

「ご明察。俺は異能を深掘りされてキレるような人間じゃねェ。俺が何で国の犬になったかも含めて語ってやるよ」

 

俺は雑多に語り始めた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

最初に言っとくと、この話は俺の異能が発現するまでの朧げな記憶だ。辛うじて覚えてるだけだから、質問に答えられねぇ時もある。了承しろ。

 

あ、俺ん異能は大雑把に言えゃ、相手の痛みに同情したら、その痛みを共有する異能だ。

 

痛みに種類は関係ねェ。物理的な痛みも精神的な痛みも対象になる。

 

痛みが異能に由来する物なら、その異能も共有される。

 

痛みを共有するっていうが、副次効果…そっちがメイン張ってる部分もあるんだが痛みの軽減もできる。相手が感じてる痛みの負担を俺が請け負うことが出来るんだよ。

 

仕事で精神的な痛みの負担軽減なんてやってるが、やろうと思えば、相手の怪我や傷を負担したりもできる。まぁ一時的なものにしかならんがな。俺が負担した怪我を治しても、相手の怪我は治んねぇんだよ。肉が割れるほどの傷が、負担して普通の切傷になるくらいだ。怪我の応急措置としては使えるが、本質的にゃ治せてねぇ。

 

俺の異能がやるのはあくまで、痛みの共有と軽減だ。それを頭に入れろ。

 

前置きはこんくらいだ。んじゃ、話すか。

 

俺ァ、ガキん頃はそれこそ、いじめっ子だとかそういうタイプの人間だった。カスだよカス。

 

自分さえ良ければ他はどうでもいい。目の前のヤツが泣いていようが怒っていようが俺に関係なかったら放置するし、たとえ俺と関係あろうが邪魔なら無視するし楯突くならぶちのめす。そういう考えをする人間だ。

 

暴力なんてただの手段としか思っていなかった。気に入らなかったらぶっ飛ばす、そういう考えだった。

 

迷惑たくさんかけたよ。でも俺は後悔はなかったはずなんだ。そういう人間だって自分のことを思っていたからな。人間変わる生き物だっていうが、本質は変わんねぇだろうと思っていた。だから、俺の本質はこれで、この先ずっと変わんねぇだろうと思っていた。

 

いつも通りの日だったんだよ。あの日は。いつもみたいに、気に入らないヤツをぶん殴って泣かせたんだ。そしたらよォ、今まで ってくれた先生や親が、怒った顔じゃない顔になった。

 

諦め顔だよ。諦念が浮かんでいた。俺に怒るんじゃなくて、俺に関わったガキに諭すように言っていたんだ。

 

『この子に関わると迷惑係るんだから関わっちゃダメって言ったでしょ』ってな。

 

そうだよ。俺はやりすぎて、諦められたんだ。もうそういう人間だと思われるようになった。自業自得だけどな。でも俺はよかったと思ったんだ。これで俺の言動にケチつけるヤツはいなくなったってな。

 

そんなときだよ。呪いの言葉をもらったんだ。今でも覚えている呪詛の言葉だ。

 

『人の痛みに共感できる人間になりなさい』

 

親の……最後の言葉だ。次の日に書置きで残されてたんだ。その書置きと、通帳の金と、あと家とか…まぁなんだ。捨てられたんだ。朝起きたら誰もいなくなってた。愛想尽かしたんだろうな。俺だってそうなるだろうよ。一片の愛情があったから、金とか残されたんだと思う。

 

俺はガキの頃で初めて孤独になっちまった。

 

飯は作れた。料理は好きでよくやってたんだよ。一日に3回練習できる機会があるんだ。それを無駄にすんのは勿体ねェ、そう思って頻繁に練習してた。

 

洗濯はできた。洗濯機の回し方なんて知らなかったよ。でも俺は親からスマホ強請ってたから持ってたんだ。現代は便利だよったく。

 

掃除はできた。汚い家に住みたくねェ。そう思ってたから掃除のやり方を調べながらキレイにしていった。

 

戸籍とか諸々の面倒…これは俺と同類のカスが親戚に居たから、ソイツの名前を借りた。遺産?って言っていいのかわかんねェ残された金の半分盗られたよ。

 

金稼ぎ…これはまぁ…どうしようか迷っていたが、異能の発現でなくなった。

 

まぁそん時だよ。俺が異能を発現したのは。親に捨てられる、それはカスの俺でも結構心にキたものだったらしい。

 

頭の片隅にずっと『人の痛みに共感できる人間になりなさい』って言葉があった。

 

独りになった家のベッドで、天井を見つめながらずっと、ずっとな。そんなことを思って、いつものように腫物扱いされる学校に行って、いつの間にか異能は発現してた。

 

何でもねぇよくある出来事が俺にとっての地獄に変わったんだよ。

 

クラスにいたヤツのペンを折っちまったんだ。不注意でな。俺ん学校じゃ、鉛筆をまだまだ使っていて、シャーペンを使っちゃダメみたいな風潮があった。だから、ソイツはシャーペンを自慢するために持ってきたんだと思う。

 

マジで不注意だ。アイツが落としたのをたまたま踏んづけちまっただけなんだよ。こればっかりは俺も罪悪感があった。俺が意図してぶん殴ったりするならそれに罪悪感なんか湧かねぇけどよォ。こればっかりはすまんって謝った。

 

あんときは異能の制御なんて出来てなかった。だから相手に同情しただけで発動したんだ。あ、ちなみに俺の異能の発動条件は相手に同情することと、相手の『たすけて』って言葉を聞くことな。昔は相手に同情すれば問答無用で発動だったんだ。

 

だから、ソイツの痛みが俺に流れ込んだ。

 

唐突だが痛みってなんだと思う?物理的な痛みはほら、わかんだろ?つねったり叩いたりすればそれが俺にも伝わる。

 

じゃあ精神的な痛みってなんだ?心の痛みって何が俺に流れ込むと思う?

 

正解はな。

 

 

 

経験、記憶だよ。

 

 

 

人の痛みはその一瞬で感じるモンじゃねぇ。言ってしまえば、ペンを折られて泣いてしまうような人生経験を積んだから泣くことが出来たってことなんだよ。

 

俺の中にな。そいつの記憶、経験全部が流れてきた。ソイツがペンを折られて精神的な痛みを感じるようになるまでの過程全てをぶつけられたんだ。

 

俺の異能は『人の痛みに共感できる人間になりなさい』その通りになった。共感したよ。マジさ。こんなカスみたいな人間でもよ。自分の記憶、経験として取り入れちまったモンを切り捨てることはできねェよ。

 

で、ソイツ、どうなったと思う?

 

 

廃人になっちまった。

 

 

俺の異能は共有軽減することが出来るんだよ。もし、ソイツが痛みを感じるまでの過程を負担したら、それってソイツにとってどうなると思う?

 

いきなり、今まで経験してきた記憶や経験をごっそり取られたら、人間はどうなると思う?

 

そういうことだよ。

 

俺はいきなり流れ込んだ記憶にうずくまった。ソイツはいきなり人生のほとんどが無くなって心ここにあらずになった。

 

俺はパニックになって、本能的に異能を切った。自分を守る為だった。

 

さぁ問題だ。いきなりなくしたはずの人生が戻ってきたとき、人間はどうなると思う?

 

答えはな。

 

 

発狂するんだよ。

 

 

ソイツは発狂したんだ。自分がペンを折られて悲しいと感じるまでの過程をもう一度体験した…っつーか戻ってきたんだよ。忘れてたはずのモンを思い出した。

 

それは子供に取っちゃ劇毒だろうよ。子供ん時の初めて見るもの、初めて聞く音とか、そういう初体験を二度も味わって、子供の精神を保ってられるはずがねぇんだよ。

 

そうだなぁ…わかりやすく言うと、自分の人生を二度体験してんだよ。ソイツ。ちょっと薄味になった人生をな。

 

俺が初めて人を殺したのはそん時だよ。

 

ソイツは、倒れて動かなくなった。息はしていた。動かなくなっちまっただけだ。

 

生きながらに死んでいた。心が死んだんだよ。二度の痛みに耐えられなかった。いや厳密にゃ1.999回分の痛み?かな。俺が負担できるのは99.9%くらいなんだ。それを戻したから、死んじまった。

 

ソイツの親に殺されそうになったよ。返せ、ってな。私達の子供を返せよってな。

 

でもよ。言ったろ?俺はソイツの記憶のほとんどを経験した。

 

だから言ってみりゃあ…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺はソイツの親をホントに親だと思っちまったんだ。ソイツに注いだ愛情も親が子を想う故の怒りも経験したからな。

 

狂ってるだろ?でもそう思っちまったんだよ。異能の怖いところさ。自分自身すら壊し始めちまう。

 

二度の親からの拒絶を食らった。苦しかったよ。どうでもいいって思えなくなったんだよ。ソイツの事。()()()()()()()()()()()()()()。もう他人事だと思えなくなった。

 

俺は、誰かに共感することで、その誰かになることが出来るようになっちまった。

 

そっからあとは国が出しゃばって…色んな実験とかをやって、自分の能力を把握して、異能の方向性を決めて…

 

色んなヤツを経験して、色んなヤツに成って、自分が広がった。

 

痛みに共感できる人間になった。その痛みを自分も味わうことで、本当に、事実として、痛みに共感できるようになったんだよ。

 

俺の言葉は嘘じゃなくなったんだ。人をだましたり、自分のことしか考えなかった俺の言葉に、重みが付いた。

 

ただ相手が感じていることを本当にわかるようになった。

 

すげぇだろ?

 

まぁ代償として…俺がどっかいっちまったんだがな。

 

もう覚えてないんだよ。俺がどんな人間だったのか。

 

色んなヤツを経験し過ぎて、色んなヤツに成っちまったから、もうわかんねぇんだ。

 

昨日の自分を真似して生きてる。それをずっと続けてるから、元々の俺っぽく見せてるだけで、本当の俺はもういない。

 

あの頃の、あったはずの自己中心的だったはずの俺はもうどこにもいなくなった。

 

記憶としては残っていても、あの頃の俺は色んなヤツと混ざってどれが俺かわからないんだ。

 

俺っていったいどんな人生してたんだろうな。

 

俺は…なんで自分勝手に生きてたんだろうな。

 

大事なことがあったからそうなったはずなのに、その大事なことがもう他に塗りつぶされて忘れちまった。

 

確か…誰かに振られたからか?

 

確か…親しい友人を失ったからか?

 

確か…難病を乗り越えたからか?

 

確か…誰かを殺したからか?

 

確か…人の大事なものを壊したからか?

 

確か…誰かを救いたかったからか?

 

確か…確か…確か…確か…

 

ダメだ。たぶん今のは全部人の記憶だ。

 

ま、こんな感じの人間だ。人生経験豊富だろ?もう何人もの人生経験してきたんだ。ほら、よくラノベであるだろ?転生者ってヤツ。アレと大して変わんねぇよ。

 

面白くねェ話だろ?主体性が無くなった男の話だ。知ってるか?哲学的ゾンビ。主観が死んで、客観が残った人間のことをそういうらしい。俺も大体そんなもんだ。俺っていう主観が、他人の主観に殺されたって違いがあるがな。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ぱっぱと語り終えて一息ついた。俺は本題の続きを話す。

 

「俺がお前らに関わったのは取引がしたいからなんだよ」

 

「取引…?」

 

「あぁ、俺すら救えなかったヤツがいるんだ。ソイツを救う手伝いをしてほしいんだよ」

 

座り直して、柳田を見る。

 

「俺があの日、お前らが起こした生徒の記憶改竄を見て、それを使えば救うことが出来るかもしれねェ。そう思った」

 

色んなヤツを救ってきた。誰かに言われてな。でも、ソイツを救いたいのは俺のかすかに残ったエゴによるものだ。俺と似たソイツに、俺みたいになってほしくないんだ。

 

「取引内容はシンプル。ソイツに記憶改竄をかけて、元のソイツに戻してほしい。報酬はお前らの事を政府に黙ることと、お前らがこれから起こす問題やその後始末に協力してやる」

 

「どうだ?」

 

お前らしか頼りがいねェ。もし政府にバレたら、俺と同じ末路になる。いや異能を考えればもっとやばいことになる。

 

「ソイツの概要、話してくれ。どんな人間なのか知らないと、何で記憶改竄が必要なのかわからないだろ」

 

…よし、否定されなかった。悪いが畳みかけてもらうぜ。

 

「おっと…あー…言ってなかったな。焦りすぎたか」

 

俺は後だしで話し始める。考えあってのことだ。

 

「ソイツの名前は、柊 真。この学校の生徒会長だ。俺らの一つ上。異能持ちだ」

 

なにせ、今から話す情報は文字通り爆弾だからな。

 

「柊 真先輩って…あの?」

 

「あぁ、漫画みてぇなスペックしてるウチの生徒会長。クソみてぇな異能で自分を殺しそうになってる女」

 

あぁ、俺が誰に対しても呼び捨てなのは積み重ねた人生のせいで、どいつもこいつも年下に感じるからだ。大目に見てくれや。

 

「殺しそうになってるって…」

 

動揺してるな?まぁだろうな。あの人は自分を殺しかけてるのに、それを周りに出さない胆力がある。だから、まだ世界は()()()()()だ。

 

「嘘を本当にすることが出来る異能持ち。本当の自分を嘘で塗りつぶしちまった、俺と同じ末路を辿ろうとしてる自分を失いかけてる女だ」

 

嘘を本当にする。現実改変することが出来る異能。まぁ…事実を嘘にはできないらしいがな。事実を嘘で塗りつぶすことはできる。

 

「ちょっと待て…!待ってくれ…!情報量が…!整理する時間を…!嘘を本当って…」

 

「いや待たねぇ。表じゃ完璧な生徒会長、裏ではネットアイドルとしてチャンネル登録者50万人を超えた今流行りのネットアイドル。自分の嘘で親をも塗りつぶした(殺しちまった)女」

 

親をいなかったことにはできなくても、親を嘘で塗りつぶして、理想の親にすることはできる。そんなことをしたから孤独になった女。

 

「頼むぜ。中身がない人生を歩んでるあの女を助ける手伝いをしてくれ」

 

哀れな人を救いたいんだよ。人生の先達としてな。

 

「やるこたァ簡単だ。嘘で塗りつぶされた、嘘を本当にする異能で今までの人生を塗りつぶしちまったあの人に記憶改竄をかけ、嘘をひっぺ剥がしてほしい。そしたら後は任せろ。そっから先は俺の領分だ」

 

俺が負担する。あと一人しか救えないんだよ。俺は。異能が限界なんだ。これ以上は誰かを切らなきゃいけねぇ。でもそんなことしたら、俺はまた…あの子みたいに人を殺しちまう。それだけは勘弁だ。

 

「もしこのまま助けられなかった場合、異能が暴走して、この世界が嘘で塗りつぶされる」

 

最後に救うやつは自分自身で選びたい。最後に背負ってやれるヤツは俺自身が決めたいんだ。

 

「俺達も嘘に塗りつぶされて、柊 真にとって理想の人間に塗りつぶされる。異能の強度次第でな」

 

俺の最後のエゴに付き合ってくれよ。

 

「これはたった一人の女の問題じゃねェ。世界が捻じ曲がるかどうかの未曾有の問題だ」

 

俺は柳田の肩を組んだ。絶対に離さないようにグイっと力を込めてこちらに寄せる。

 

「世界を救うために、協力してくれるよな?」

 

顔を近づけて嗤った。聞いたよな?協力してもらうぜ?





遅くなってしまってごめんね…。

自分を失った人間が、自分を失いかけてる人間を俺みたいになるんじゃねぇよバーカって泣き笑いみたいな顔で張り倒すシチュエーションを書きたかった。

他人の人生を味わい過ぎて、自分を無くしてしまった人生経験豊富な男

VS

嘘を本当にする力で、親すら嘘で殺して、自分の人生すら嘘で塗りつぶそうとして自分の嘘で殺されそうになってる可哀想な女

VS

異能持ってる風に見せかけて、ただ原作知識しか持ってないがゆえに、今回の原作に登場しない人間たちの話には役に立たない主人公(ダークライ枠)

こういうことです。
1.5章いる!?早くヤベー女を見せてくれよォ!という方、申し訳ねぇ。現状を説明すると

味方
レべル1勇者、ラスボス第一形態

第二章敵
ギミックアリの裏ボス(第三形態まである)

を倒せる気がしないから、パーティー補充をしなくちゃいけないんだ。単に作者の能力不足なんだけど、どうしても、「これ…こうすれば負けるじゃん」ってルートが多すぎて、それに気づかないような第二章ボスじゃないから、めっちゃ苦戦してるんだ。なんで賢いボスが敵なんだよ…

だって主人公より賢くて、主人公にガチ恋強火厄介オタクで、主人公が苦しんでる姿に身悶えしたりするような、ただ主人公のことを助けたいだけなんだけど、ちょっと自分のことを救うとまではいかずとも、想ってほしいなぁ…とか考えてて、結果的に主人公の助けになるような行動して、それにちょっとでも感謝されたら、フヘへへ…みたいなきっっっっっっしょいへの字型の笑みをする考え方が根本から合わない上位存在的なヤベー女が書きたかったんだもん!!!!(本心)

性癖の為なら、修羅の道に進むぞ私はァ!(そのために不定期投稿に戻して、私自身の性癖と執筆力と向き合って頭整理してきます)

2023/12/05
河川敷から屋上へ場所を変更。それに合わせて、描写も変更。
逢坂君のキャラに合わせた描写を追加(飴を舐めるルーティーン等)

お次は戦闘。いざ…バトル!

先生が第二章ボスを倒すための仲間フラグが立ったよ!やったね!性能?逃走系や制限時間謎解き系のギミックボス。
先生をヒロイン化はたぶんこの先差し込めるところがないなと思ったので突っ込んだ。ヒロイン枠が埋まっててな…。ここくらいしかなかったんじゃ…。

第二章ヒロイン投票

  • 支配系ヒロイン()
  • 暴力系ヒロイン()
  • 上位者系ヒロイン()
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