少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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(そーっと投稿すれば)ばれへんやろ…


メアリー・スー

沈黙のさなか、人の身体を間借りした怪物は語り始めた。

 

「それは人類種が繁栄の一途を辿る上で欠かせなかった概念、それは知性を象徴するものであり獣から人を区別させた偉大なる発明でもある」

 

「言葉、あるいは言語。あるいは…意味を持った絵や音。それらは共通して意味を拘泥するように、曖昧模糊たる有象無象から区別することができる。個体という概念は個人あるいは自己と他者という概念へと昇華させた。主観と客観の発明。無意味なものを意味あるものに変える。それこそが知性を持つ人間が人間たらしめるものだろう」

 

頬から裂けた口が明々朗々と言葉を紡ぐ。決められた台本に沿うような、一切のアドリブを挟まないような、予定調和の言葉みたいだった。

 

「何が言いたいか?簡単だよ。先ほども言ったじゃあないか」

 

「会話をしよう。公平で公正な誰もが理性的で知性的な取引をしよう」

 

「人間でいようじゃあないか。争うことなんて猿でも出来る」

 

誰しもが動けない状況、光る鎖は先の言葉を借りるなら拘束力なんてないはずなのに、まるで手錠でもかけられたかのようだった。憎々しげな表情、諦観と皮肉が混じった笑み、冷たい殺意を募らせた顔と各々浮かべる表情は違うものの、誰もがその言葉に逆らえないでいた。

 

「ははっ…」

 

笑えるよ。本当に笑える。自嘲と嗤いがこみあげてくる。

 

こんなことならさっさと頼ればよかったんだ。そうすれば先生がこうなることも、逢坂がボロボロになる意味も燐火ちゃんが『擬神暗来』を出すこともなかったんだ。どうしてそうなったか、なんて俺が勝手に忌避していたからだ。理解できないものと切り捨てていたんだ。まぁ…人の中身を啜る悪魔が一番理性的なんて信じれるわけがないんだけど。でもそんなのただの言い訳だ。やれることをしろ、出来得る限りのことをしろ、最善を尽くせ、それが出来なかった負け犬がキャンキャン喚いているだけ。

 

(酷いじゃあないか。そういうのを偏見あるいは差別というのさ。それにそんなに悲観しなくてもいい。君は十分にやったほうだよ。なにせ世間一般的に人を食べる生き物と交渉しようなんて考える狂人は数えるほどしかいない)

 

それはそうだが自分で言うなよ。人を啜る悪魔って理解があるならもっとマトモになってくれ。契約した後に頭の中啜られてバッドエンドがちらつく相手とか嫌すぎんだよ。

 

(大丈夫大丈夫。君にはしないさ。君が掲げる『感情は流動性で言葉や音楽に型を嵌めてしまえばその形に固まってしまう。心と心でぶつかり合えたならそれこそが瑕疵なく感情を伝える唯一の方法だ』というのはあまりにも毒だと[ワタシ]は思っているからね)

 

瑕疵云々は言ってないけどな。でもそれが一番の感情を伝える方法だと俺は思ってるよ。で、それが何の関係がある?

 

([ワタシ]のやっていることは君が言っているのと同じというわけだ。[ワタシ]のこれはまさしく感情を、その人が持ちうる想いに直接触れている。君が考える最も正確な感情の伝達方法というわけさ)

 

いや啜ってるからな?啜ってたら感情を伝える云々関係ないからな?

 

(なに、[ワタシ]の意見だよ。感情というものはあまりにも不定形で刺激が強すぎる。多種多様な老若男女を啜り理解してきた知見からすれば、心同士がぶつかるというのは酸とアルカリ性の液体同士が混ざり合うようなものだ。中和作用だけが起こればいいほうで、有害な毒ガスを発生させるかもしれない。それは双方に害があるもので、中和作用は言い換えるなら心の混合であり、毒ガスの発生は知性の崩壊だ)

 

心の混合…お前が一番被害あるだろ。何度も混合されてるって事だろ?

 

([ワタシ]の場合、酸性度が強すぎて中和しきれなていないだけだねぇ。いやはや…強固な自我を持ち合わせているわけだよ…それでもある程度自分を見失ってるところはあるがね)

 

…そうか。ってか俺も関係あるんじゃないか?俺だって白鷺燐火と混ざりあってるはずだろ。

 

(それは[ワタシ]がプロテクトをかけたからね。感謝するといい。まぁそれは今は関係ないから割愛するが…大事なのはだ。見えないもの、触れないものあるいは存在しないとされるものはそれこそに意味がある。見えないものは見えれば害を及ぼす可能性があるからだ。感情だってそうだ。不定形で目に見えない。その正体は電気信号かもしれない。しかし、それがもし見えてしまって触れてしまえたのなら…)

 

心が壊れる…?

 

(大正解だ。さすがは愛しい君、愛すべき本体だよ。心は液体とほぼ同義だ。しかし液体以上に繊細で脆い。それこそ波紋を起こすだけで人は狂う。触るなんて言語道断なんだよ。そうした理由で[ワタシ]は出涸らし…そこの元オリジナルが君と混ざり合ったのが嫌だったんだよ。下手したら発狂して君が君でいられなかっただろうからね)

 

ははっ…怖すぎんだろ。危ない橋を渡るどころじゃない。命綱なしで綱渡りされてたらしい。

 

(だから[ワタシ]はそんなことはしない。心と心でぶつかり合うなんてことはしない。君の言葉で、君の表情で、君の行動で、君自身を知りたいんだ。そのために、言葉がある。そのために、音楽がある。そのために、様々な伝達手段がある。想いは型にこそ嵌めるべきなんだ。君は型を探す努力しないといけない。その不定形で刺激が強すぎるものを、君だけの形にしなくちゃいけないんだ。それこそが、人間を人間たらしめるものだと思っているよ)

 

そうかい…っと、放置し過ぎたか。いい加減話を進めないとな。

 

三人をゆっくり見据えて、後頭部を掻きながら溜息交じりに言い放つ。

 

「言った通りだ。頼むよ、俺も土俵に上がらせてくれ」

 

ぼろぼろの敗者が悪魔の手を借りて今一度戦場に立ち入った。きっと二度目はない。一度限りのチャンスだ。だからこそ、君達に則ってこう言おう。これが最後なのだと。

 

「最終ラウンドだ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「はぁ~…何だってんだったく」

 

いの一番に言葉を発したのは逢坂だった。どかっと座り込み、能力を解除したのだろうバルブのハリネズミではなくなっていた。顔をしかめながら頭に手をやり呻いている。

 

「…癪だが従うしかなさそうだな」

 

次いで落ち着いたのが纏先生だった。両手両足を戻してそっと俺の側に座る。あの…ちょっと近いんですけど…。離れようとするがさらに近づかれる。俺の意思は無視されるらしい。仕方がないのでこのままにしておく。

 

「修介、大丈夫?影響はない?お願い…開いて…心配なの……」

 

「大丈夫。大丈夫だから…」

 

燐火ちゃんだけが心配して俺の意をくみ取ろうとするが、汲み取り方が精神の傍受であるために一番厄介だ。今も心のシャットアウトはしているがこれを解除したら激怒間違いなしだ。

気持ち悪いと思うがあれだけ嫌っていた[ワタシ]を俺はもう否定できない。いや…否定はする。そりゃあ人啜ったらドン引きする。けど…こう…忌み嫌うことはないと言える。それは、不良と聞いて忌避していた奴が実は俺とほぼ一緒の苦労や人生を歩んでいたのを知って親近感が湧いたのと一緒だ。一歩間違えれば俺はそっちになっていた。少しばかり道が違うだけで、俺達は仲間だった。それを知って仲良くなったというだけ。

 

でもそれをはたから見たら不良に感化されてグレたと思われても仕方のないことだ。俺が燐火ちゃんを助けようとした時と同じ。人は偏見を常に抱えて生きている。たとえどれだけ良いやつなんだと言っても、ソイツの不良というレッテルが剥がれることはまずない。人はそう簡単に変わることができないし、変えることもできない。

 

俺が燐火ちゃんや纏先生を原作人物(可哀想な人)とレッテルを貼り付けたように。それは…今でも変わらない。

 

([ワタシ]が言うのもなんだが…君の心は君だけのものだよ。[ワタシ]…いや()()が人の心に踏みにじっているだけさ。堂々としているといい。あの出涸らしが怒るというのは、強盗として家に押し入り住み着いた犯人が、家人に罵倒されて怒るのと同じだ。そしてそれは[ワタシ]にも言えることだ。君には()()を罵倒する権利がある)

 

良いんだ。利用しようとした俺も俺だからな。責任の一端は俺にもある。ただ今は…

 

(あぁ…そうだねぇ。この面倒な事を終わらせるのが先決か)

 

そういうこった。

 

「改めて…話をしよう。この争いが始まることになった理由と経緯、そして解決を」

 

「『進行は[ワタシ]が務めよう。あぁそうだ。忘れていたよ。[ワタシ]は白鷺燐火…の別個体と言えばいいかな?そこ出涸らし…白鷺燐火は自身を複製する異能を持っている。それで生まれたのが[ワタシ]だ。異能ももちろん持っているよ。詳しい説明は追々…ね?大事なのは[ワタシ]が部外者であること。公正公平な判断をすることを誓うよ』」

 

『さっさと終わらせようじゃないか。こんな無意味で無益な争いを」

 

異口同音にしゃべりだす。一体どうやってやってるんだかわからない。腹話術みたいだ。

 

「『まず[ワタシ]が知る限りのこの事件の概要を話そうじゃないか』」

 

俺の記憶を読んだであろうから実質俺視点で進む。部外者にしては内情を知り過ぎている。八百長じゃねぇかって思うが…今は頼もしい。

 

「『始まりは逢坂クンが修介クンと出涸らしに接触したこと。接触した理由については、彼らが起こした事件の真相を知るため。ここまでで当事者たちの相違は?』」

 

「ない」

 

「…ないわ」

 

「ねぇなァ。俺は政府の仕事っつー名目で真相を探ろうとした。理由は…言うか?」

 

『手短にに頼む」

 

「あいよ、…気持ちわりぃことになってんな、まぁ元からか。あー…そこの柳田にも話したが、改めて。俺の異能は大雑把に言やぁ相手に対する共感をトリガーに対象の物理的、精神的痛みを共有軽減することができるモンだ。その痛みに起因した才能であったり経験であったり異能であったりを借り受ける形で使うことができる」

 

そう言うとにゅっと一つのバルブが飛び出す。それを捻ると瞬く間に逢坂が二回り膨れ上がった。

 

「これがいっちゃんシンプルで常用する筋肉…異能じゃねぇぜ?純然たるフィジカルを借り受けてる。こういった風に痛みに起因するものはなんであれ借り受けられる。デメリットもあって、使ったバルブの痛みの原因…記憶、経験のフラッシュバックが起こる。この筋肉なら、戦争でPTSDを患った人だからな。その記憶が俺の脳内にぶち込まれる。他のヤツも同様だ」

 

「俺はこの異能で政府所属のメンタルケアの真似事をしている。これが俺が政府の犬って言われる由縁だ。ただ…この異能も限界が近づいている。キャパシティがもうない。あと一人…痛みを背負えるか否かってぐらいでなァ」

 

静かにこぶしを握り締める逢坂は何かを迷っているようだった。

 

「最期くらいは…最後に背負うヤツくらいは自分で決めてェ。そう思ってたら…とある人物に出会った」

 

「名前は柊 真。この学校の生徒会長だ。異能持ちで…今は暴走状態にある。詳細は省くが…俺は会長を救いたいと思った。だが、俺だけじゃ出来ねぇ。仲間がいる。そう思った。そんな折に…お前らを知った」

 

「俺はお前らを利用するために政府を騙った。ホントは気づかれちゃいねぇ。ただお前らはこの話に乗るしかないから騙ったのは保険だな」

 

「『乗らなくちゃいけない理由というのは柊 真が関係していると?』」

 

「あぁ、柊 真は先も言ったが異能の暴走状態にある。その異能は嘘を本当に変える現実改変能力だ。それが暴走して手当たり次第に嘘を本当にしてる。今は家庭内や一部の所である程度完結しているが、いつ外に出るかもわかんねぇ。時間の問題だな」

 

「こうなったのはお前らのせいでもある。お前らがストーカーだかなんだかを殺して騒ぎを起こさなければ、柊 真は誰にも知られることなく完結していた。だが、アンタらの…正確に言えば、脅しをかけたヤツのせいで危機感を持った。殺されると思った。だから、排除しにかかってる」

 

「お前らが一番やばいんだよ。もう狙われてる。自分を嘘で塗りつぶされたくなければ協力するしかない。そういう理由だ」

 

「『なるほどなるほど…』」

 

俺が先に聞かされた話だ。嘘を本当にする、それが出来るなら俺達は認識されただけでアウトということになる。だってそうだろ?目に付いたヤツが死ねばいいのになんて思えば、本当にそうなるかもしれない。その異能が正しければ…即死技だ。まぁそんな都合がいいものだとは思わない。そんな簡単だったら俺は燐火ちゃんと混ざってないぜ。

 

「頼む、救うの手伝ってくれ。鼻からこれを言うためにここまで来たんだ。脅したのは…わかるだろ?そっちのが有利に回れるからだ。こうして負けちまった以上、誠心誠意しか方法がねぇ。この手段になるなら俺は弱者だ。ただ頼むしかねぇ。俺からは……以上だ」

 

「『ふむ、なら次は君、修介クン視点を話してもらおうじゃないか…あぁそこの出涸らしはいい。どういう思考なのかは何よりも知っているからね』」

 

「どの口が…!」

 

「『彼の口だよ?』」

 

パキッ

 

「やめてくれ…話し合いの場なんだろ?[ワタシ]も煽らないでくれよ…」

 

乾いた音が鳴る。燐火ちゃんの鎖が砕け身体に罅が入っている。害意、殺意を持った証拠だ。すかさず止めに入ったが一歩間違えればこの場はお釈迦になっていた。嫌いなのはわかってるが今は抑えてくれよ…。てか俺の記憶読めてるなら説明する必要は…あぁ、全員に状況を理解させるためかよ。ならそうだと言ってくれ…。溜息をつきながら、二度目が起こらないように俺は矢継ぎ早に話し始めた。

 

「俺達にとって、逢坂の接触は死活問題だった。理由は単純、政府にバレればストーカーを殺した俺達は犯罪者で捕まるかあるいは処分されるかもしれなかったから」

 

異能持ちの立場はとても厳しい。ひとたび犯罪を起こせば厳しい罰が下るか、あるいは処分される可能性がある。生徒会長がまさしくそれだ。嘘を本当にできる異能なんてどんな犯罪をされるか分かったもんじゃないし、それが暴走状態にあるなんて国を挙げて殺そうとするだろう。もし罪を犯さないでいても逢坂のように管理される。俺は生きるためなら管理されてもよかったが、燐火ちゃんは違う。普通の生活を送りたいという願いがあった。そして、俺達はその生活のために人を殺した。俺達は政府にバレるわけにはいかない理由が出来た。

 

「最初は…逢坂を殺そうとしていた。例えバラさないことを約束したとしても不安の芽が残る。異能持ちであるなら猶更だ。どんな異能を持っているか分かったもんじゃなかったから、出来る限り不安の芽は摘んでおきたかった」

 

「そのために…先生に助けを求めた…そのあたりは先生のほうが詳しいから割愛するが…そのあと、俺は逢坂の事情を知った。説明されたんだ。…それで考えが変わった」

 

「俺は…手伝いたいと思った。一度は殺そうとした奴が何言ってんだって話だが…嘘を本当に変えるなら少なからず被害はあるだろうしそれに…」

 

「それに、俺自身…見捨てられない…見捨てられるわけないだろって。燐火ちゃ…白鷺燐火を助けたんだ。助けれたんだよ。じゃあ…ほかの人も助けられるって思うのは…傲慢かもしれないけど、思うことだろ。たとえ、他力本願の末だったとしても…見て見ぬふりはできない」

 

一度味わった成功体験に味を占めているといえばそれまでだ。きっとどこかで破綻する。でも…破綻するまでは続けたいんだよ。俺は自分じゃ何もできなくて、人を誑かすことが得意なカスだ。そんな奴でも誰かを救えるなら、それが俺にできる最大限の善行だ。人殺しの俺ができる…最大限の罪滅ぼしだ。そうなはずだろ。誰に対する問いかけなのか。自罰心だけが心を満たす。ただの独り言だ。感傷なんてないはずなのに、どこか胸が苦しい。歩んできた道は本当に正しいのか。踏みしめた茨の感触がもう元に戻れないことを暗示していた。進むしかない。

 

「俺からも、頼む。手伝ってくれ。そして、逢坂、手伝わせてほしい…これで俺の話は終わり」

 

「『……次、笹垣 纏』」

 

「……良いだろう。二人が指導室に来たのは放課後、白鷺が異能を使って駆け込んできたな」

 

「私は二人のストーカー事件にあまり役に立てなかった。危険な目に遭わせたからな。私を頼れと、口煩く言っていた」

 

淀んだ瞳で見つめられる。思わずびくりと肩を震わせれば、燐火ちゃんが纏先生を睨みつけ…即座に双方の光の鎖が罅割れる。本当に狂犬か何かかよ…。てか先生も先生だ。俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(君は随分なタラシだからね)

 

やめろ。そんなはずないだろ。そんなはず…。次第に自信を無くしていくのは仕方なかった。いままでの経験でそうじゃないと言い切れなかったからだ。それでも、そんな、そんな簡単にそうなったらどうやったって変わんないじゃないかよ。どうやって…俺は救っていけばいい。いやなんで救う前提で…でもそれは俺が決めたことだろ…!

 

(あぁマズいか…。精神保護が剥がれかけている。負荷が強すぎたか…忌々しい。『無味乾燥』…サービスだよ。ここで倒れるわけにはいかないからね)

 

頭が割れそうで今すぐにでも塞ぎ込みたい気分だったのが…すぐに何も感じなくなった。フラットだ。心が凪いだといっていい。あぁそうだ。俺が言い出しっぺだ。俺が始めたことだ。最後までやり遂げなきゃな。

 

知らぬうちに強制的に冷静になった俺は議論に耳を傾けた。精神を無為にされるという異常性に目を向けず、心をいじられたということに何も感じず、ただ当たり前のように受け取っていることに…心が軋んで…とっくのとうに壊れた精神はそれを無価値と断じた。大丈夫だ。まだやれる。

 

「逢坂のことは以前から面識があった。とある約束もしていた。異能に関することで互いに無干渉で問題を起こさないという約束だ。私は異能持ちであることが芋づる式でバレる可能性があり、逢坂は異能の無断使用を政府に知られる可能性があった。逢坂の異能は不治の病すら共有軽減し延命することができる。勝手に使われるのというのは政府として非常に困るからだ。なにせ、外交のカードの一枚として扱われているからな」

 

「『ほう?それは事実なのかい?』」

 

「…あぁそうだよ。俺は国の切り札の一枚みてぇに扱われてる。それは俺一人いるだけで複数の異能を扱える点や、不治の病、命を落とし得る傷ですら請け負うことができるからだ。異能を解除してしまえば死ぬかもしれないが…延命は確実にできる。こんなんだから異能を使うにも許可制だ。ただ俺のダチにジャミング…隠蔽妨害に長けたヤツが居るからソイツに頼んでじゃミングしてもらってから異能を使っている。それは今もだ」

 

「俺に自由はない。ただ先も言った通り、キャパシティが限界であと一人しか請け負えない。これ以上は誰かを解除…見捨てないといけない。そんなの俺にはできねぇ。でも…じゃあ政府の言うカスみてぇなヤツを助けてキャパを満杯にしたいかなんてクソ喰らえだ…!最後は、俺自身が助けたいヤツにしたい」

 

「それに、もし嘘を本当にできるなら俺と同じひも付きになる可能性が高い。だってそうだろ。病気をなかったことにできたり、出力が強くなれば死すら…なかったことにできる。そんなの価値が高すぎる。俺よりも最優先で確保…収容されるだろうな。俺でさえほとんど自由がないといっていい。自分の時間を他者のために使う辛さなんざ十分知ってる。……そんな目に遭わせられるわけねぇだろ」

 

「話がズレたから戻させてもらうが…。私にとって、逢坂が約束を破ったことは明白だった。二人が私を頼ることは逢坂からしたら知る由もないだろうがな…。私は二人を優先した。それだけだ」

 

「だから、私は二人の味方をして戦い…この様だ」

 

「『ふむ…』」

 

「そういわないでください先生…。貴女に助けられたのは本当で…ストーカー事件の時から…ずっと、十分すぎるくらい助けてもらってますよ」

 

心は軋んでも声は出る。何の心も籠もってない、ただのフォロー。それがスルスルと出ることに変な笑みがこぼれそうになって…やはり心は凪ぐ。[ワタシ]が使った異能というのは一定値を超えた感情をフラットにしてくれるらしい。何とも便利な代物だ。

 

「…優しいな。柳田は」

 

「『はいはい…いちゃいちゃしない。話は終わってないんだから』」

 

「…っ、本当に。なるほど、白鷺の別個体か…性根も変わらんな」

 

「失礼ではなくて?そこの怪物と同じにしないでほしいのだけれど」

 

「怪物は君…いや私達は皆怪物だろう。唯一被害者と言っていいのは柳田だけだ」

 

「『それには同意だよ。見てくれたまえよ…彼の惨状を。心も体もぼろぼろだ。もっと先生が話を聞いてやればこんなことにはならなかっただろう。先生』」

 

「『もっと平和的に会話していればこうはならなかった。そうじゃないかい?逢坂クン』」

 

「『もっと言うことを聞いていればよかったんだ…出涸らし』」

 

煽るようなことはしないでくれよ…見ろ。俺じゃないとわかってるのに震えあがるほど睨みつけられてんだぞ。

 

(しょうがないさ。ぽっと出の女に君を盗られることなんてダメに決まっているだろう?それに、いま言ったことは正論だよ。全員もっと君の話を聞いていればよかったんだ。そうしたらこうならなかった。誰も彼も自分勝手すぎる)

 

それをお前が言うのかよ…人を啜るお前が…ともかく…まだ話は終わってない。話を乱すな。

 

(はーい、[ワタシ]は聞き分けの良い子だからね。言うこと聞くさ。そこらの女とは違うからね?)

 

自らの良さをアピールする人を啜る化け物放置して俺は会話を勧めた。

 

「すまん、黙らせた。話を続けてくれ」

 

「…つっても、もう話せることは終わったんじゃねぇの。あとは解決策だ」

 

逢坂が不貞腐れたように言葉を投げたが…どうやって解決する?そこが全くの不透明だ。

 

「『そうだねぇ…これは単純に…柊 真の救出…あるいは殺害かな』」

 

「…おい!殺害っつーのは…!」

 

「『君は[ワタシ]達を過信しすぎだよ。確かに[ワタシ]達は異能持ちという点では類まれなるものを持っていると言っていい。だがそれでも限度はある。相手が無限に出力が上がるならなおさらね…?』」

 

「『対処できないと判断できた時点で殺した方がいい。それが被害を増やさないためにも肝要なことだよ』」

 

「…ちっ。わぁーったよ。そんなこと…ぜってーさせねぇ…!」

 

「『そのためにも、柊 真について君が知り得る限りの情報を吐き給えよ。君に拒否権はない…君が言った通り、脅しが効かない今、イニシアチブは[ワタシ]達にある』」

 

「はぁ…わかってる。お手上げだ。だから上取っておきたかったんだよこういう手合いは…。言ってやるよ…必要なことだからな。俺が知ってんのは、柊 真の能力と住所…あとパーソナリティか?能力は嘘を本当にする異能。発声をトリガーとして発動する。この目で見た。能力の適応にはいくらかのタイムラグがある。たぶん嘘であるかどうかを判別する処理時間が発生しているんだろう。大体5秒だ。発動処理に移る猶予…俺達が生き残るための猶予がたったの5秒だぜ。対処はその間にどうにかこうにか俺達でその嘘を本当にしておくこと…屁理屈ごねくらいしか思いつかない。俺がそこからいなくなったと言われたら、俺は落下の異能でその場から消えればあるいは…って感じだな。死んだとか言われたらどうにもならないが…今のところ死に対するワードは言っていない…忌避しているのか…もう誰か殺してトラウマか…だ」

 

「住所はココから近い。異能の出力を追ったら着いた…が改変が一番酷くて近づくだけで危険だ。あと何か所か出力が強いところがある。所縁のある所なんだろう…一つはココの生徒会室。もう一つは…どっかの事務所に行き着いた。それ以上は特にな。見る限り…芸能事務所っぽかったが…改変が行き渡り過ぎて気持ち悪いぐらいになってる。近づくだけで改変されるぜ。たぶんその場所に入った人間に手当たり次第に適応している。入って5秒で即改変…てな具合だな。家もそうだ。アイツにとってのテリトリーなんだろう。入られたら俺達にはどうしようもできない…はずだ。今ンところは」

 

「パーソナリティについてだが…俺の観察に基づくならありきたりな女って感想に行き着く。勉強も運動も可不足なく人からも慕われているが、その実親から言われたことをやってるだけに過ぎない。中身がない…主体性がない。そんな現実に嫌気が差してネットに逃げ込んでるってのがなんともな。行動力だけは突出していた…インターネット活動に飛び込んでいわゆるVtuberってのをやっている。親とそれで揉めたらしいが続けている点からどうにか折り合いがついたのか…揉めてんのか…。親との仲は悪い。十中八九、異能の餌食だろうな。それからというものの、活動が活発になった節がある。そんなに注目されてなかったんだが…異能によるものか徐々に人が増えて注目されて行ってる。インターネットを介して異能をばら撒いているんだろう。現実改変をネットでばら撒くとかいうパンデミックも真っ青なことを現代でやってる。不用意にネットで調べるなよ…特に柳田はな。先生や白鷺は大丈夫だと思うが…即座に干渉されてファンとして徐々に()()()()()()()()()()

 

「その…なんだ。そこまでストーカーじみた調査で調べても対処ができないのか?」

 

「失礼だな…正直なところ、ここまで調べたのは対処法がまるでないからだ。普段はここまで調べねぇよ。5秒経ったら現実を変えられる。どう対処すればいい?一度存在を認識されたら、5秒後に死んでる可能性だってある。俺達は異能持ちで干渉しにくかったとしても…もし横断歩道を歩いていて、そこに突如1tトラックが突っ込んで来たらどう対処する?やってることがほぼデス〇ートなんだよ。タイムラグがあるのだけが救いだ」

 

「あー…すまん。その異能持ちは干渉しにくいって結構な頻度で言うがなんでそうなる?」

 

「あっ?知んねぇのかよ。異能持ちはクソ強固なメンタルの持ち主だと考えていい。周りからの影響を受けにくいんだ。異能が他の異能と干渉しあって打ち消されたり影響が少なくなったりする。ようは声がデカい奴と声がデカい奴でぶつかり合ってる状態なんだよ。異能を持たない声が小さい奴は即座に押し潰されるがな…お前の場合、声がデカい奴の影に隠れて声張り上げてるようなモンだから、離れたら押し潰されんじゃねぇの?」

 

失礼なことを言ったり質問したが、それでも得られた情報は有益だった。そして、敵の異常性も。強い。強すぎる。化け物だ。異能の出力がおかしいのはそうだが、タイムラグがたったの5秒なら、5秒以内に終わらせなくてはいけない。どうやって?無限に出力が上がっていく異能を?

 

「声がデカい奴を意見で押しつぶすことができないならどうする?簡単だ。周りを使って潰せばいい。それができんだよ。相手は。だからデスノ〇トだ」

 

「こっわ」

 

俺だったら、柳田修介に1tトラックが突っ込んでくる。そう言われただけで俺に1tトラックが突っ込んでくることになる。本当にやってることデ〇ノートじゃないか。これを防ぐためには1tトラックが本当に突っ込んでくる状況に持ち込むしかない。嘘ではなくする。本当にするしかないんだ。万全の対応が出来る状態でだ。本末転倒かもしれないが…虚空から1tトラックが突っ込んでくるよりかはいい。異能を持っているからこそできる芸当で…異能を持たない人達からしたら即死技と変わりない。

 

「…先の話、もう私達が狙われているといった。それならもう私達は標的にされてるってことではないの?」

 

「いや…それは違う。言っちまえば、刺客が居ることに気付いたって感じだ。刺客の名前はわからないが確実に自分を狙う相手が居る…そう感づいて調べに回ってる」

 

「癪だが…私は陰に徹するしかないらしいな。私は先生で名が知れてしまっている。仲間だと割れた場合、逢坂が言うような目に遭うだろう。動けるとしたら、逢坂と柳田…白鷺しかいない」

 

「俺達だけでどうにかするしかないってことか…」

 

「……私は自分を複製できる。それで肉壁を作ったとしても、どうやってその高まった出力を止めればいいの?」

 

「そこは…憶測だが、柊 真の記憶を消せればあるいは…ってところだ。記憶改竄できるヤツがいるんだろ?異能っつーのは主観に滅茶苦茶影響されんだよ。出来ると思ったらできるし、出来ないと思ったらできない。なら、出来ないと思わせればいい。そういうこった」

 

「『殺したほうが手っ取り早いと思うがね…』」

 

「んな事…!」

 

「『ちなみにだが、記憶の改竄は[ワタシ]が出来る。そして…記憶の改竄は[ワタシ]が触れていないとできない。正しくは[ワタシ]が干渉できる物体に触れていること…だが』」

 

「『現実改変能力者にどうやって触れる?近づかせてもらえないだろうね。知られてしまえば猶予は5秒だ。抵抗できても無限に出力が上がっていくなら出力負けする。記憶改竄の異能も出力勝負になるだろう。何秒かかるか…最低でも1分くらいはほしい。1分。どうやって[ワタシ]が干渉できる状態を保たせるんだい?』」

 

「っ…そんな都合よくいかねぇか」

 

「癪だけど…万能でほとんど対処できないわ。やられる前にやるしかない」

 

沈黙…八方塞がりだった。どうやって対処する…どうにか…なんかないのか…!

 

「殺すしかないのか………?」

 

 

 

 

 

 

 

「メアリー・スー。ご都合主義ここに極まれり。タイミングを見計らっていてよかったです。巻き込まれたくなかったですしね。その話、私ならどうにかできますよ。だから、私の手を取ってください。貸しは増えますがね」




期間が空きすぎて考えてたもの全部吹っ飛んでる!どうすればいい!メモ書きあって小説も合わせて読み直したけど柊 真をどうやって潰すかわかんにゃい!メモ書きイカれてんのか!?どうやってこれで倒す!?なんだってこんな面倒臭い能力にしたんだ!昔の私はどうしてこれでコイツを攻略しようと……あ。いるじゃん!めちゃくちゃ都合がいいけど、絶対頼っちゃダメなタイプの女その2が居るじゃん!突っ込んじゃえーい!でぇじょうぶ!胃が痛くなって苦しい思いすんのは主人公もだ!作者と主人公は心の友!一緒に苦しもうな!



はい



大変お待たせしました。2024/05/20活動報告見ればわかるんですけど病気になっていまして…。期間が空いてようやく書けた。とりあえず1.5章は気合で畳んでいくので何とか頑張ります…。
書き直したい欲がパナイけど、書き直したらまた失踪しそうだから気合で畳んで第二章を頑張っていくよ…。安易な最強能力を敵に据えないようにしよう。お兄さんとの約束だぞ。

第二章ヒロイン投票

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  • 暴力系ヒロイン()
  • 上位者系ヒロイン()
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