少年少女が抱える闇で殴りあいをさせたかった   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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やっぱりみんな好きなんですね~。モチベ上がる上がる。


死にたくはない。けど納得もできない。

「あ”ぁ”~…」

 

目が覚めた。うめき声が口から漏れる。身体が痛い。そりゃそうか、床で寝てたからな。吐瀉物はそのまま、固まって気持ち悪い臭いを放つ。朝からこれを処理しなきゃいけないのかよ。昨日のうちに処理してくれよ…なんて。

 

そんなことを思いながら身体を起こす。スマホに手を伸ばして時刻を確認しようとする。腕を枕にして寝ていたからか痺れて片腕が使い物にならない。腕を限界まで伸ばして投げ置いてあるスマホを手に取った。

 

………つかねぇ。充電切れたか。頭をガシガシと掻いて時計を探す。俺は朝に弱いから、ベットからなるべく遠い場所に目覚まし時計を置いて、目覚ましが鳴ったときに身体を起こして立ち上がらないと止めれないようにしている。だから、幾分遠い場所に時計の面を下にして無造作に床に置かれているのだ。

 

四つん這い、緩慢な動きで目覚まし時計を手に取ると、時刻は8:50を過ぎたあたりを指していた。昨日は目覚ましをONにしてなかったらしい。…だろうとは思っていたけど。

 

「…遅刻じゃん」

 

遅刻だ。普通に遅刻。家から歩きで15分くらいだから…間に合わないな。まぁ行く気なんてこれっぽっちもないけど。

 

「休むか」

 

四つん這いから立ち上がって、ゆらゆらと左右に揺れながら固定電話があるリビングに向かう。

 

………

 

「ひでぇ顔」

 

リビングに向かう廊下、扉が開けっ放しの洗面所の鏡に映った自分の姿が酷すぎて、一瞬誰なのか本気でわからなかった。なんて顔してるんだ俺。

 

「…顔洗っとくか」

 

そのまま吸い寄せられるように洗面所に行き、顔洗って歯磨いて髭を剃る。気分も身体も最悪なのに染み付いた朝の動きは抜けず、そのまま髪まで整えてしまった。今日は休むのにな。

 

プルルプルル……

 

電話を鳴らす。受話器に顔を傾けたせいで、シャツに染み付いた吐瀉物の臭いに顔をしかめる。これ捨てるか…あ、出た。

 

「お電話させていただきました。…1年の柳田といいます。笹垣先生はいらっしゃいますか?」

 

淡泊過ぎる言葉を言うと、数分と待たず、相手が代わり聞きなれた声が受話器から響いた。

 

「どうした柳田?まだ学校にも来てないようだが…」

 

「すみません、今日休みます。体調が悪くて」

 

話を続けようとする先生に差し込むように休む趣旨を伝える。

昨日の嘔吐で喉が焼けているのか声がかすれる。今は都合がいい。

 

「……わかった。今の体調はどうだ?」

 

「あー…全然ですね。すぐにでも寝たい気分っす」

 

「そうか…無理はするなよ。休める時に休んでおけ」

 

纏先生は優しいな。こういう大人になりたいよホント。……俺がなれるとは思ってないけど。

 

「うっす…あっ、先生。進捗どうですか」

 

纏先生にチクったとき、俺が追っている犯人がストーカー行為をやっているかもしれないという追加の情報も出しておいた。今までの犯人(予定)より纏先生的には動きやすいだろう。わかりやすい被害というものが出ているからな。

 

纏先生に犯人は別々かもしれないなんて言われたがそれはない。理由なんて原作知識だから言えるわけなくてごまかすのに大変だったが。

 

「進捗…ああ、犯人探しか。一応進展はあるにはあったが…今でなくてもいいんじゃないか?」

 

「いや、今、今がいいです。早く知りたいんすよ」

 

「俺にとって…大事なことなんで」

 

終わらせたいんだ、纏先生。時間をおけば…覚悟が鈍る。

 

「そうか…わかった。こちらで調べた限りだが…」

 

そうして伝えられた人物は、2年B組 畠中 洋一。部活動等には所属していない所謂帰宅部。性格は纏先生が調べた限り、あまり人と関わらず休み時間を一人で過ごすような人物。特徴は栗色の瞳に焦げ茶色のくせっ毛。いつも猫背で前髪で目が隠れるから、生徒指導で覚えていたとのこと。先生が生徒の情報を教えてもいいの?とは思うが、その人物が最近不審な動きをしているらしい。生徒の間で噂になっていて、纏先生から少し探りを入れてみれば相談もされたりしたそうな。

 

なんでも、1年生の下駄箱周辺をうろついている、色々な人に1年生の白鷺燐火のことについて聞いて回ったりしている、ぼそぼそと独り言をつぶやいて気味が悪い。最後のはほとんど言いがかりみたいなもんだが、放課後、誰かをつけているといった噂もされていることからまぁ確定だろう。後はこっちからアプローチをかけて反応を見ればいい。

 

やることは変わらない。

 

そうだ、今までと何も変わらない。

 

「ありがとうございます。助かりました」

 

お礼の言葉を胸にこもった感情と一緒に吐き出す。

 

「……無理はするな。自分一人で抱え込もうとするなよ」

 

「…先生は優しいっすね。ありがとうございます。大丈夫っす」

 

…はぁ、先生が曇らせ要員ってわかった気がするね。優しい、優しすぎるんだ。自分がやろうとしている時にそんな言葉かけられたら、鈍っちゃうよホント。迷って立ち止まって、本当にこれでいいのかって曇っちまうんだ。人を思い留まらせる才能といってもいいね。

 

でも…やらなくちゃいけない。やらないといけないんだ先生。先生の優しさ踏みにじることになるけど―…ごめんね。生きてたらマジでちゃんと謝ろう。

 

 

死にたくない。昨日の夢を見てますます思ったんだ。自分は最低な人間だけど、それでも生きたいと思ったんだ。誰かを利用して生きようと考えてしまったんだ。それを肯定しようとは思わない。たぶんきっと……悪いことのはずなんだ。それに折り合いをつけてしまったら、致し方ないものだと受け入れてしまったら、諦めてしまったら、もう戻れない……んだと思う。自信ないけど。誰かの犠牲を前提に物事を考えるようになってしまったら、たぶん、……終わりなんだ。子供の俺が終わって、大人の俺が始まる。

 

俺はまだ、子供で居たい。この感情に折り合いなんてつけたくないんだ。受け入れたくない。諦めることが成長だなんてそんなの……納得できない。

 

しょうがない、その言葉で片づけたくないんだよ俺は。今までだって誰かを犠牲にして生きてきただろ?なんて言われたら、何も言えなくなっちゃうけど。でも、それでも、原作知識というもので知ってしまったから、誰かを助けられて、生きる武器としても活用できるものを手に入れてしまったから、それを活用しないで腐らせたままにするなんてそんなのダメだろ?

 

たとえ高校生特有の謎の向こう見ずな決断力と変な責任感でそうなってるって言われてもいい。自暴自棄になってるって言われても、そうだなって笑って肯定するさ。ただ、俺にしかできないことをしたい。自分ができる最大限のことをしたいんだ。それで誰かを助けられるなら、ほんの少し、たった一歩だけだけど、命を投げ捨てよう。そう思えたんだ。

 

死ぬのは怖い。でもただ死ぬよりも、誰かを利用して、何にもできずに死ぬ方がもっと怖い。死ぬなら、悔いが残らない死に方をしたいんだ。…利用しようとした責任を取りたいんだ。

 

 

「先生、俺…頑張りますよ。ここまでやってもらったんです。今度は俺が頑張る番ですよ……あっ、しつこいようですけど、先生が入ると絶対こじれると思うんで、ちゃんと待機、しといてくださいよ?先生が入ったら、生徒同士の揉め事で解決するはずの問題が、大人対子供の教育委員会沙汰とかになりそうですからね?ホント、信じてますからね?」

 

電話をして抱えていた感情に整理がついたからか、元気が出てきた。ありがと纏先生。あんたのおかげだ。

 

「はぁ…すぐに駆け付けるからな?ましてや異能者かもしれない相手なんだ。一人で対処しようとするなんて…」

 

おっと、お小言が長くなりそう。ここはそろそろ…

 

「あー…ちょっと眩暈がしてきたなー。熱があるかもなー!ということで切りまーす。………大丈夫っすよ。先生。俺だって対策考えているんですからね?それに、いくつか罠仕掛けるんで、もーまんたいってやつです。厳しいこと言いますけど、生徒同士の揉め事で収められるものに先生が入ってきたら、おっきな責任問題みたいに扱われるんですから、静観しといてください。それじゃ!」

 

「あっおいっ!?」

 

プツッ

 

よし、切れた。たぶんことが終わったら確実に怒られるだろうけど、怒られるかどうかは俺の生存次第だからな。先生にちゃんと怒られることを目標に生存頑張りますか!

 

誰かを利用して生きようとしたことは、後悔として一生抱え続けると思う。その後悔を次に生かせるように、やってやる。白鷺燐火も俺も今後出てくるヤツぜーんぶ助けて、ハッピーエンド目指してやる。

 

鬱作品なんざクソくらえ。これは生きている"俺達の世界"だ。俺達が幸せになるために生きてるんだ。それをクソみたいなストーリーのせいでぶち壊されてたまるかよ。あんだけ苦しんでる女の子放置してられっか。

 

「やってやる」

 

とりあえず…着替えて、諸々の準備しなきゃな。少ない貯金で買い物行って、作戦立てなきゃな。今度は白鷺さんに頼ってられないから、自分でなんとかしなくちゃ。

 

「成し遂げてみせる」

 

さぁ、やるぞ




主人公君の立ち直り早くない?と思ったそこのあなた。よーく見てください。コイツ、ただ目の前の現実に納得できないって必死に足掻いてるだけなんです。顔洗って人と会話して、ちょっと心の中を振り返る余裕ができて、自分にしかできないことだからって、変えられる力があるからって、立ち直ってるわけじゃなく、自分がそうまでしないといけなくなった現実を受け入れずに、立ち向かおうとしてるんです。若いですね~。

思考プロセス
他人を利用とした俺は最低なヤツだ→(一晩寝て顔洗って人と会話してちょっと余裕ができて)→こんな理不尽な世界の方もおかしいよなぁ!(責任転嫁)→反省する前にやれること全部やってから反省しよう!(現実逃避)

自分しか(原作知識を)持っていないという特別性、誰かを利用しようとしたことへの自責志向、納得できないというエゴ、それらが合わさったのが主人公だよ。

諦念と絶望、諦めきれなかったかすかな希望、自分は悪くないという他責志向、そこにほんのわずかな、自分が何とかしなくちゃいけないっていう自己犠牲が入り混じったのが第一章ヒロイン。

闇では後者の方が強いけど、パッションでいうなら前者が強い。ヒロインはほら…諦め気味だから…。

感想評価誤字脱字報告ありがとうございます!
実はこれ書いてる時に聞いてた音楽が結構影響されていたり…。そのせいか主人公の曇りが薄くなったけど、これからどんどん曇るしモーマンタイ。

1.5章のシチュエーション

  • 嘘つき少女と人の痛みに共感できる男子()
  • 幸せをかみしめている少年と愛されたい少女
  • 幸福の価値が分からない女と不幸体質の男
  • 天才と天才女になり切れなかった凡才男
  • 自分に価値を見出せない男とまぶしすぎる女
  • 忘れた少年、忘れたかった少女
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