告白した少年。少女は俯いてニヤけ、「でもわたしなんて……」と言う。そこから続く言葉は、少年にとって耳を疑うほどのものだった。

1 / 1
告白の攻防

 放課後、体育館の裏。

 

「つ、付き合ってください!」

 

 少年――清野誠(せいの まこと)は、そう言って頭を下げる。

 

「でもわたしなんて……」

 

 下を向いて否定しようとする少女――小鷲楓(こわし かえで)。それをさえぎって清野は言葉を発する。

 

「真面目で、謙虚で、自分を客観視できて、ミステリアスで、そんなあなたが好きなんです!」

「わたしそんなんじゃないよ……」

 

 暗い顔で小鷲はそう言う。

 

「あなたがそう言っても、僕はそうは思いません!」

 

 自信満々な様子でそう言われた小鷲は、下を向いてから上目遣いで口を開く。

 

「だってわたし、釣りが趣味だし――」

 

 清野はそれを肯定しようと身を乗り出す。

 

「陰謀論を日常的にRTしてるし――」

 

 言い返そうと開いていた口が、あんぐりと、予想外に大きく開く。

 

「オタク共から貢物を巻き上げて売ってるし――」

 高価そうなバッグに視線が行く。

 その目に動揺が現れる。

 

「AI絵ですよねってリプしまくってるし――」

 

 眉間にシワがよった。

 

「――嘘をついて君を試しちゃうし」

 

 清野は目を丸くする。

 

「えっ?」

 

 小鷲は舌を出していたずらっぽく笑う。

 

「ごめんね、こんなことして。嫌な女でしょ?」

 

 自嘲して続ける。

 

「こんなわたしでも、君がいいって言うなら付き合ってあげる」

「……ぁ、えっ……と」

 

 清野は声を詰まらせ、赤面する。

 

「むしろ……方が……」

 

 ごにょごにょと呟く。が、小鷲には届いていないようだ。

 消極的な清野の様子。それを見てか、小鷲はため息をついてガックリとする。

 

「あー、やっぱダメか〜。ざんねん。白馬の王子様がやっと現れたと思ったのに」

「違いますっ!」

 

 間髪入れずに清野は強い調子で言う。言ってからハッとして赤くなる。

 

「……え、もしかしていいの?」

 

 そう聞き返されて、引き返せないと悟ったのか清野は早口で捲し立てる。

 

「は、はい! もちろん! 全然幻滅とかしてません! むしろその……う、嬉しいというか……」

「へ? 嬉しい?」

「……その」

「教えてよ! ダメなの?」

 

 清野は一度目を瞑り、ふぅ、と息をつく。

 次の瞬間、覚悟を決めたかのように目を開ける。そして小鷲の目をまっすぐ見て、やっぱり目を瞑ってから口を開く。

 

「僕はあなたみたいなグイグイくるタイプが好みなんですよ!! べ別におかしなことでもなんでもないです! あなたが卑屈になるから、い、言いづらくなっちゃったじゃないですか!」

 

 そう一気に捲し立てる。

 それに対して小鷲は目を丸くしてから、すぐに笑顔になる。

 

「あははっ!」

 

 その笑い声に、驚いた様子で清野は目を開ける。小鷲は引き続き言葉を紡ぐ。

 

「そう、そうだよね! わたしが悪かったわ!」

「ほ、ほんとですよ!」

 

 ムッとして笑う清野と、そんな様子を見てもっと笑う小鷲。

 しばらく、そんな微笑ましい空間がそこにあった。

 

「ひー、ひー」

 

 ひときしり笑い終わって息を切らしているところに、小鷲が口を開く。

 

「……で? わたしたち、付き合ったってことでいいのよね?」

「……そう……ですね……はい!」

「そこはシャキッと答えなさいよ! 締まらないわね!」

「す、すみません……」

 

 笑いながら、清野は頭を搔いた。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。