IS BURST EXTRA INFINITY 作:K@zuKY
大荒れに荒れた説教と、千冬が寮監の役目を果たす為に退室した後、性根を鍛え直す名目のガチンコバトルで心身共に疲労していたセンクラッドだったが、翌日の晩飯にはスッキリとした顔で初恋ジュースを飲みつつ、シロウが作った晩飯を平らげていた。
それをシロウは苦々しく見つめていたのだが、完璧にスルーするセンクラッド。
ごちそうさま、と呟き、食器を下げたセンクラッドは、シロウに頼みたい事があると言って、ISの資料集を手渡した。
「随分と分厚いな……これは、ISの教本か。織斑教諭から貰ったのか?」
「ああ。教科書ではないが、資料集としては使えるものだと判断している。それで、ISの防御と使用武器についてお前さんに聞きたい事がある」
「私にか? 私はISを知らないのだぞ? 織斑教諭に聞けば良いだろうに」
「お前さんが言ってただろう。此処は有る意味敵地だ。敵になりかねない状況でISの弱点を教えてくれと言ったら単なる馬鹿だろ。それに、シロウは軍事兵器を扱っていただろう? それを踏まえてISをどう見る?」
そう、シロウは弓や剣などの神秘に関わる武器に加え、それらを一切排除したナイフからスナイパーライフル、果ては迫撃砲やC4爆弾、クレイモア等の現代兵器の技術を一通り習得しているのだ。使えるものならば何だって使い、ターゲットを確殺していたセイギノミカタの生き方を主従関係の過程において知る事になったセンクラッドが、ふと思いついたのだ。
私情を決して挟まぬプロフェッショナルとも、アマチュアとも違うやり方を知っているシロウならば、自分とは違ったISについての対処法が思いつくだろう、と。
ふむ、と声を出しながら、速読のレベルで教本を流し読みしていくシロウの指がピタリと止まったのは、ISの武器についての項目と、ISの絶対防御についての項目だった。その二つの項目を比較するようにページを捲っては戻し、捲っては戻しと忙しなく眼と指を動かしていた。それが数回に渡って起きた後、今度はISの発祥についての項目を凝視し始める。
暫くして、パタンと本を閉じたシロウが、口を開いた。
「私は実際に相対していないので断定は出来ない。それを踏まえて君の口から二つ聞きたいことがある」
「何だ?」
「ISが扱う武器は、通常兵器を流用した実弾兵器と、エネルギー兵器の二種類というのは大前提で良いのかね?」
「ああ、恐らくはな。隠しているモノもまだまだ有ると思うが、少なくとも俺が見たものは、オルコットが扱っていたエネルギータイプのスナイパーライフルと脳波によって遠隔操作出来るエネルギータイプのビットに通常型の誘導ミサイル。一夏が扱っていた実剣と、ファーストシフトによる武器の形状変化したエネルギータイプのブレードだ」
「わかった。次に、代表決定戦の際、起こった出来事を詳しく述べて欲しい」
是非も無いと頷き、センクラッドは出来るだけ客観的に戦闘の経緯を話した。
セシリアのレーザースナイパーライフルが開始早々に生成中の一夏のアーマーにヒットし、アーマーが破損した事、エネルギータイプのビット射出からミサイルが直撃した事、一夏がファーストシフトを終えた事、一夏の武装や外観が変化した事、一夏が負けた経緯まで全て話した。
それを踏まえて、様々な可能性や最悪の想定を含めた状況をシミュレートし続けるシロウが発した言葉は、センクラッドにとって予想の外にあるものだった。
「まず矛盾が発生している」
「矛盾?」
「双方共に使用している武器がそれぞれ現代兵器にもある物ばかりだ。エネルギー兵器でなければバリアが貫通しないわけでも無いという事も、代表決定戦の際にオルコット嬢が扱っているミサイルや一夏が持っていた実剣からも推測できる。ミサイルの中身がなんであれ、ISの防御のみ突破出来る魔法の素材で作成していようともいまいとも、通常兵器で十分に対応できるだろうし、対応できないのならばその素材を弾丸にすれば問題ないだろう」
「成る程。だが、そうなると可笑しなハナシがある。白騎士事件によって全世界の兵器が無力化された、というのはどういう意味だ?」
そこはどうなんだ?と言いたげなセンクラッドに、首を振って答えるシロウ。
「私も君も、それについての情報は教本とインターネットのみで、実際体験した者達からは何も聞いていない。故に本当にその事件が起こったのかも怪しいと言わざるを得ない」
「……どういうことだ?」
「ここに書いている事が嘘でなければだが、発端は全世界の軍事施設が同時にハッキングされ、日本に向けて何千発もの戦略、或いは戦術級ミサイルを向け、その全てがたった一機のIS『白騎士』によって破壊された、と」
「ああ、そう記されていたな。資料集でもインターネットの情報でも、同じように記載されている」
「ハッキングの時点で既に有り得ん」
スパッと言い切ったシロウに、ぽかんとしてしまうセンクラッド。その間に紅茶と菓子をキッチンからセンクラッドが座っていた六人掛けのテーブルへと運んだシロウは、投影魔術で二色のマーカーペンと大きな大きな世界地図を取り出した。それは、資料集にもインターネットにもある、ISの世界の世界地図だった。
それをテーブルに敷き、自身が居た世界において実際に攻撃した箇所や存在を知っている軍事施設を次々とマーキングしていく。核ミサイル保有施設は赤で、通常の軍事施設は青で記されていくと、あっという間に世界は赤と青で塗り固められていった。数は100を下るまい。
「――この世界の事は全く判らないので、私が居た世界のものに置き換えてマーキングしている。赤が核ミサイル等の戦略兵器所有施設、青が通常の軍事施設だ。どう思う、怜治?」
「え、そうだなぁ。ゲリラの施設もあるだろうが、よくまぁそこまで攻撃出来たものだなと――」
「たわけ」
そういう意味じゃないとゴチン、と音を立てて軽く頭を殴られ、あいた、と頭のつむじを抑えるセンクラッド。まるで出来の悪い生徒を見るかのような眼差しを向けるも、全然理解していない事に、まぁ仕方あるまいと溜息をついて説明し始めるシロウ。
「全世界を同時にハッキングするとしたら、一体どれほどの労力が必要になるか、想像してみたまえ。人、時間、言語、物資。ありとあらゆるものが必要となる。しかもハッキングを仕掛けてミサイルサイロを掌握し、日本に向けて発射するまでこぎつける。核も含めるのなら、更に難易度が上がる。世界各国の首脳陣クラスの権限がそっくりそのままの状態で無ければ不可能の筈だ」
「全世界が食い止める事を放棄した、或いは全世界が何らかの理由で日本を……いや、メリットや大義名分が無いのか」
センクラッドの言葉通り、国という視点から見て日本を攻撃するメリットがまるで無いのだ。歴史的に存在してはならない国家や人種というものは確かに存在しているが、戦略兵器を用いて攻撃するとなると、その一帯を全て破壊するだけに留まってしまう。人的物的含めた資源の獲得がまず見出せなくなる。核を使うのならば尚更だ。
また、外交的にも完全な悪手である事はまず間違いない。
万が一、裏表含めた全世界の首脳部が結託して日本の消滅を願い、攻撃を実行したにしても国民が納得する様な大義名分を作り出せないのならば、最悪自国の民に誅殺されてしまう。
「そう、国で動くメリットがまるで見当たらない、という事を覚えておいてくれ。ならば、裏社会の者達が結託して起こしたのか? それも有り得ないだろう」
「何故だ? 過激な原理主義派が組織としてあるのならばやりそうだと思うのだが……」
ヒューマン原理主義者率いる組織によって、地球人からグラール太陽系最初のデューマンへと体組織を変貌させられた人体実験を思い出したのか、苦い表情になりながらそれを言うセンクラッドだが、シロウは首を振って答える。
「君が居たグラール太陽系やアラガミの世界とは違って、地球は人種も国籍も多種多様だ。その中で最大公約数を見つけるとなると、大体は宗教や人種ではなく金に落ち着く。日本はとりわけ、その手のシェアは上位国に入っていた。無論、私の世界でだがな」
「俺の世界でも極道と中韓マフィアがしのぎを削ってたと思うが、成る程。縄張り争いだとしてもそこまでやると金にならないわな」
金銭や勢力拡大にならない方法であるという事を理解したと受け取ったシロウは、紅茶を飲んでから、次の問題を切り出した。
「理由は一度置くとして、では実際起きたとしよう。ミサイルのターゲットを日本に向けた。この教本にはその時に必ず起きる事がまるで起きていないように書かれている」
「何?」
センクラッドは空中投影型ディスプレイを呼び出し、白騎士事件に関する事象をインターネットと自らを介して投影していく。その際、自らの口でそれを音読するのを忘れない。暫く黙って聞いているシロウだったが、或る一文に差し掛かると息を吸った。
「――全世界同時ハッキングにより、ミサイルを日本へ向け、発射――」
「そこだ。日本へ向け、と、発射の間か後に入るものがあった筈だ」
思わず回線を切断してシロウをまじまじと見るセンクラッド。判らないかね?という視線を投げたシロウは答えを待つ事にしたのか、自身からは答えない。
仕方無しにセンクラッドは口に上りかけていた文章をあげるが、その際にふと閃いたかのような表情になった。
「日本へ向け、発射した…………? 向けて、発射? メリットが、無い……そうか、犯行の声明文が無いのかッ」
手を叩いて声を上げたセンクラッドにその通りだと頷くシロウ。全世界を巻き込んだ歴史上類を見ないテロ行為だが、日本へ向けて射出する前、或いはした後、どの国も、どの組織からも発表が無いのだ。
回線を再接続してインターネットの海に深く潜りこんだセンクラッドだったが、その手の文章は一切無かった。例え失敗したとしても、声明文を発表すれば様々な反応がある筈だった。よしんば無かったとしても、その犯人らしき人物が現在に至るまでに何のアクションを取らないというのもおかしなものだ。それ位の電子戦能力があるのならば、再度類似した事件を起こす事も出来るはずだ。それなのにそれが無い。
脅迫も交渉も声明も無いテロ行為というものは、意味を為さない。自身を正義として語らずに起こすそれは、もはや狂気の沙汰だ。
「犯行声明が無いメリットとデメリットか……考えてもわからん。この手の問題に当たった事が無い」
「だろうな。君が居た世界はストレートなものが多かった。ただ、大規模な作戦行動が失敗した場合、下士官や兵士はともかく上の存在と言うのは必ず明るみに出る。出すか出るかの違いで、それは変わらない。今はそれだけを覚えておけば良いさ。それを踏まえて次のステップにいこうか、怜治」
「あ、あぁ。次は何だ?」
「犯行声明が無いままミサイルは発射され、日本へ到達する前に、何が起こったと書いている?」
「――白騎士と呼ばれるISが突如として現れ、全てのミサイルを撃墜し、その後、そのISを捕獲・或いは破壊するべく日本を含めた全世界の兵器が投入された……日本を、含む?」
呆然と呟いたセンクラッドに、シロウは二つのティーカップに紅茶を注ぎ、頷いて口を開く。
「日本を守った兵器ならば、当然日本が所有するものだろう。そうでないとしても、攻撃する理由にはならない。国際情勢を鑑みるよりも国内情勢に眼が行くのが道理だ。つまり、ISは日本にとってもイレギュラーな出来事だったのだろう」
「だが、攻撃する理由が無い。日本が所有していてもいなくても、日本をミサイルから守ったのは事実だ……勿論、白騎士事件が起こっていたのなら、だが――」
センクラッドはティーカップを口にし、喉と舌を湿らせる。その一つ一つの動作に陰りを見せていた。電子の海に飛び込むと同時に思考する際の弊害か、瞬きを一切しておらず、眼の焦点は何処かへ飛んでいた。現実世界の情報を遮断している事によって読み取る速度と思考のそれを早めているのだ。
「そのISは当初、発表した篠ノ之博士を含めて一蹴されたと書いているな……あれほど画期的なマルチプラットフォームスーツを蹴った世界も凄いが、白騎士事件の後のISの扱いから見れば――」
電子の海で泳いでいたセンクラッドの口が凍りついた。今、自分が言った言葉、そして篠ノ之束で検索をかけて出た結果に絶句したのだ。
「篠ノ之束、保護手配? 現在唯一ISコアを生産できる篠ノ之束博士は消息不明となっており、全世界を挙げて捜索中である――」
「特異な存在は常に排される、といったところか。だが、今回はそこではない」
「ISは当初、見向きもされなかった。いやシロウ、待ってくれ。だからと言ってISの有効性を示す為に白騎士事件を起こしたとは考えられないだろう。シロウの言っていた人的・物的資源が圧倒的に足りていない上に、篠ノ之博士は日本人だ。日本が攻撃されたのなら、自衛手段としてそのISを用いた可能性だってある」
「そうだな、それが自然な見方だ。私も白騎士事件が起きたのなら自衛の為に使ったのだと思う。そして、その後は異端を排除する為か、その技術を手に入れるか、どちらが先だったのかは判断がつかないが、篠ノ之博士の保護に乗り出したのだろう……書いてある事柄が真実ならば、だがね」
んんん?つまり、どういう事だ?と考え込むも、わからんとばかりに投げ出したセンクラッドに、シロウは次の話へと会話を持っていった。
「ISが全ての兵器を無力化したとしよう。それで得をするモノは?」
「……篠ノ之博士や女尊男卑主義者?」
「女性でしか乗れないと判明したのは何時だ?」
「――IS発表時には女性しか乗れないと判明していたが、実際には白騎士事件後の適正検査で実証された事実、か……微妙な線だな。後は、そうだな……デメリットの方が多い気がするが、軍事企業や宇宙開発研究関連の企業あたりだろう」
その答えに首肯し、答えるシロウ。メリットだけで考えるのではなく、デメリットの後にメリットを考えるという形で推論は組み立てられていく。しかし、幾つかの疑問が残るな、と零したセンクラッドに、当然だろうと再度頷きながらティーカップを傾けるシロウ。
「全て結託せざるを得ない状況、つまり今代の兵器が全て無力化される程の防御力に、軍隊を壊滅させる事が可能な程の攻撃力を持った兵器の登場、それがIS……結託せざるを得ない状況を作り出した者が篠ノ之博士、それに協力したのが金や利に聡い死の商人や軍事企業、そこから繋がっていく腐敗や不正まみれの政治家、そんな感じか? いや待て、オルコットや一夏が搭乗していたISにはそんな強さは無かった。現存する兵器を無効化したいのならば、最低でもAランクのシールドラインタイプの多目的バリアや広範囲を攻撃出来る武器が必要になる筈――」
「怜治、ISにはリミッターがかけられているそうだ。この教本にはそう記載されている」
「何……」
と呟いたセンクラッドの表情は、次の瞬間には厳しいものへと変わっていた。
言われてみれば確かに、最初の授業中に手渡された資料集には、ISにリミッターがかけられていると記載されていた。
例えばセンサーだが、元々宇宙探索用に使用される筈だった為、視認距離等に限定されていると有った。センサー以外にもリミッターがかけられるとするならば、それは自己進化能力による強化すらも隠す手段に繋がる。しかもISのプロトタイプに制限が無い状態だった場合、セシリアや一夏が乗るISよりも遥かに高い能力を持っている可能性だってあるのだ。
「軍事利用を禁じ、競技用へとISが転用されているのなら、各ISにはそれぞれリミッターがかけられていると見るのが自然か」
その状態なら、確かにセシリア達の武装にも納得出来るものがある、と呟いたセンクラッドに、シロウはそうだと頷いて続けた。
「その為のファーストシフト・セカンドシフトという見方も出来る」
「成る程、シフトではなくリミットオフか……有り得るハナシだ。だとすると戦力をもう少し高く見積もる必要が出てくるな……経済的にも軍事的にもさしたる混乱が起きていない理由は、そうか、軍事企業が今まで培ってきたノウハウをISに活かす方向に持ちかけた……面子を潰しても顔を立てる方向に……成る程、だから『保護手配』と『467個』なのか――」
インターネットの海へと再び飛び込み、未だ小火器から航空機まで、その一切が廃止されていないどころか、むしろ市場が活性化している事を確認したセンクラッドは、そういう事かと納得した。
「つまり、シロウはこう言いたいのだな。篠ノ之博士はISを発表して何らかの目的を達成した。停滞していた軍事企業は新たなパイを手に入れ、死の商人は安価になった兵器で更に儲け、核という汚染前提の戦略兵器よりもISというクリーンな兵器を政治家は選んだ、と」
「加えて、広告塔は全て女性だ。そういう意味でもISというのは役立っただろう」
「篠ノ之博士のみコアが作れるというのも大きいな。ISコアの数や機能や使用方法を限定する事によって、最小限の混乱に留める事に成功している」
しかし、と呟いたのはセンクラッドだ。
解らない事がまだある、と言い、シロウに顔を向け、
「白騎士事件は全世界の国民を騙す為に企業や国家、裏社会の者達が仕組んだブラフだったとしよう。それは良いとして、何故、IS搭乗者の資格を性別にしたのか。もう一つある。何故男性で一夏だけが乗れるのか。遺伝子選別でないのは此処まで誰一人として他に出なかった事でわかる。織斑千冬の弟という記号に意味は無いとしたら、他の要素が有る筈だ」
「確かに。だがまぁ、今まで互いに述べたのは、あくまで確固たる証拠が一切無い状態での推論だ。結論ではないし、証人や証拠を集める必要がある、これ以上話しても無駄だろう」
「……おい。それを自分で言うか普通。だったら結託無しで篠ノ之博士全て一人がやらかした可能性も有るという事にもなるじゃねぇか。しかも性別に関しては自分が使いたかったからとか、誰かに使わせたかったからとか、くーだらない理由かもしれんぜ? そうなると篠ノ之博士は自身すらも利用する冷徹な知能犯からアホな愉快犯へとサマ変わりだ。誰も救われんぞ」
「重要なのは白騎士事件が本当にあったのかではなく、白騎士というISが現行の兵器の無力化をどうやって証明したかではないのかね? そもそも怜治が聞きたいのは白騎士事件やISのあらましではなく、ISの対策だろう?」
「……お前さん、俺が真剣に悩んで答えっぽいナニカを導き出しているサマを見て、昨日の憂さ晴らししてたな?」
「さて本題だ」
「おい」
今までの会話を全て台無しにする方向に持っていったシロウに対し、半眼で睨みつけるセンクラッド。怒りと共に紅茶を飲み干し、ティーカップでビシリと指差し、センクラッドは言った。
「シロウはそろそろ自重を覚えるべきだ」
「君がそれを言う資格は無い。特に昨日は色々とやらかしすぎだ」
馬鹿め、とばかりに鼻で笑われ、昨日の事を持ち出されたセンクラッドはぐぅの音も出ない。舌打ちするに留め、さっさと話せと言葉を出す。
「さて、話を戻して、万が一敵対したとしよう。その場合は相手の獲物を奪って攻撃が一番手っ取り早い。それが出来ない場合は、ISが使用している武器のメーカーを調べ上げて、販売している商品で最も近い物を選ぶのが良い。金なら恐らく、君が換金目的で持ち込んだ木像で大量に得れるだろう。それを持って裏で出回っているモノを買い漁れば良い」
「そうだな、それでいこう。で、相手のリミッターが解除された場合はどうする?」
「それは推論だから意味が余り無いと思うが。本当にリミッターが存在して、それが解除された場合は、君が使用している武器を使えば良い。ただ、そうならない為に、極力迂闊な行動は控えるべきだとは、思うがね?」
昨日の事を言っていると思い当たったセンクラッドはうげっとした表情を浮かべた。逆にフフンと言わんばかりの見下し笑いを見せるシロウ。本当に仲が良い主従コンビである。
頭をガリガリと掻きながら、センクラッドは溜息を付いて気分を一新した。
「ま、取り合えずやってみるさ。ある程度交流しつつ、ただし技術交流はせずに、フレンドリーに振舞っておけば大丈夫だろう」
「君の『ある程度』にどの程度信用を置いて良いのか、些か疑問が残るがね」
「やかましい。当分は大人しくしてるさ。外出許可が何時出るかは判らんが、それまでは大人しく学内の見学程度に留めておく、それで良いだろう?」
そう言って、センクラッドは椅子から立ち上がり、風呂に入る為に歩きながらナノトランサーからバスタオルを取り出し、浴室へ消えた。お休みの一言を置き去りにして。
やれやれと肩を竦めたシロウも、自室へと戻る為に位相をずらし、その場から消え失せた。