IS BURST EXTRA INFINITY   作:K@zuKY

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前書きや活動報告に記載した通り、第二章は原作キャラクターの過去関連での捏造が入り、結果として原作キャラクターの性質や性格の差異が出始めます。


33:結果の感想と反応

 合同授業が終わり、昼休みとなった為に自室へと戻ったセンクラッドは、オラクル細胞による表情管理を解除して、大きく息を吐き出した。久しぶりに長時間、左眼を使ったのだ。フィルタリングを殆ど解除しないまま使用する事で負担は減っているが、精神、もっと言えば魂に負担がかかる為、疲労しているのだ。肉体的疲労とは違う、精神的なそれとも違う不思議な感覚は、本人でなければ判らないものだ。

 テーブルについて少しも経たない内に、コトリとコルドバジュースが眼の前に置かれる。シロウだ。

 一口、ズズリと呑んで気分を一新したセンクラッドが、あの時視たモノをシロウに教えるべく、口を開いた。

 

「まぁ、あの少女……更識簪、だったっけな。どうにもあの子が気になってな」

「どんな風に気になったのかね。確かに良くない雰囲気を纏っていたが」

「一夏に対する憎悪に近い悪感情、自身に対する嫌悪感が妙に強くてな。左眼が反応していたよ」

 

 その言葉に左眉を上げるシロウ。左眼の事は聞いている。絶望やそれに付随する感情のみを映し出すものだと。副次的なものになるが、その感情を辿れば隠れている存在も把握出来たり、何処を攻撃してくるかすら把握出来るという事も。そして、普段は反応し過ぎる為、自身でフィルタリングをかけて反応しにくくしている事も、センクラッドから教えられている。

 その左眼が反応したという事は、相当に強い感情なのだろう。

 

「……織斑一夏を害する可能性があるという事か?」

「それは無いと思いたいな。ただ、この世界に来てからずっとネットで情報を仕入れていたんだが、一夏の立ち位置は非常にアレなんでな」

「言いたい事は何となく判るが、指示代名詞を多用するのは君の悪い癖だ」

「あぁ、すまん。つまり、狙っている勢力が多いんだよ。女尊男卑至上主義者、マフィア、マッドサイエンティストとか、もしかしたら国家すらも狙っているかもしれない。とまぁ、とにかく敵が多い。いつIS学園内で自爆テロばりの暗殺や誘拐が起きてもおかしくない。それを防ぐ為に、専用機を渡したのかもしれん」

 

 いつものように、ふむ、と顎に手をやって考えるシロウ。確かに、唯一の男性操縦者だ。未だ次が出てこない以上、狙われるのが道理だろう、と推察していた。

 シロウもセンクラッドもこの時点では、シャルル・デュノアの存在を知らない。知っていたところでシャルル・デュノアがISを持ち歩いている以上、センクラッドの仮説はほぼ揺るがない。尤も、仮説なのだが。

 

「成る程、思考と反射をリンクさせる事を優先的に叩き込もうとしているのも、暗殺を防ぐ為か」

 

 そういう事だろう、と肯定するセンクラッドだったが、人差し指でテーブルを秒単位で、かつ精確にリズムを刻みながら、しかし、と言葉を繋げる。

 

「ハナシを戻すが、あの子の感情は酷く強い。専用機に反応し、敗北直前に諦めが入り、何よりも一夏が千冬に褒められた際の、嫉妬……だと思うが、とにかくそれが酷く強かった。まぁ、強いだけで歪みが余り無いのが救いだな」

「待て怜治。何時、褒めていたんだ?」

「あぁ、そうか。流石に聞こえなかったか。まぁ、凄い小声だったからな。オラクル細胞サマサマって処か。まぁ、アレだ、千冬が一夏に対して何が足りていて何が足りていないかの総括の直後に言っていたぞ。普通に判り難い言葉だったが。そこから感情が発露していたから、まぁ、そこから推測出来るものは安直だが――」

 

 その言葉を継ぐ様に、それなら家族間の問題もありうるか、とシロウは言葉を舌の上で転がした。生前の記憶や記録を鑑みても、家族間の問題となると流石の英雄も殆ど経験が無い。家族間の問題に男女の問題が入るのなら経験はあるのだが、そういう問題では無い為、その手の経験は全く役に立たない。

 これを解決するのは私では荷が勝っているな、と判断したシロウだったが、

 

「家族間の問題、ねぇ……うちらの面子で考えると、クー辺りに聞くのが良いのか?」

「やめておけ。妻帯者にアドバイスを貰うとしても、彼は大雑把過ぎるし、問題の種類がズレすぎているだろう」

 

 即断した。伝説や神話上、或いはクー・フーリン自らが語った内容を鑑みれば、この手の問題はハッキリ言って厳しいだろう。そもそも彼は戦闘時はとんでもなく鋭い癖に、平時ではとんでもなくアバウトになったり、たまに信じられない位マメだったりと使えるかどうかがブレ過ぎてイマイチ判別出来ないのだ。

 シロウの言葉に、1つ唸って、

 

「ならアドバイス無し、と。喧嘩でもしたのかね、あの子達は。ただ、それにしたってあの感情は無いと思うん――あぁ、居た、居たな。そういやライアと似た様な感じだ、あの感情の発露っぷりは」

 

 微妙に違うが、負の感情の強さや種類に関しては大体似ている事を思い出したのだ。となると、アレは保護者と被保護者のやりあいでもあるのか?能力にどんだけ差がついたのやら、とセンクラッドは自己完結し、溜息を大きくついた。ついでに、脳に刻まれている彼女のデータを呼び出し、口に出して諳んじる。シロウが怪訝な表情で、誰だそいつは?と視線で伺ってきた為だ。

 

「ライア・マルチネス――グラール太陽系ビーストにして、ガーディアンズ現総督。前総督であるオーベル・ダルガンの養子で、オーベルとはよく親子喧嘩……というよりは一方的に絡んでたんだよ。親の期待だの何だのが凄い煩わしく感じてた上に、周囲からは縁故だと思われてな、そりゃもう腐ってたぞ。アレでローグス……盗賊にジョブチェンジしなかったのは奇跡だな。お前さんが見たら毎日説教してたんじゃないか?」

「そんなに、その……アレだったのか?」

「俺は理解して回りに迷惑をかけてどうにか切り抜けるタイプだが、昔のライアは判ってなくても迷惑というかトラブルを撒き散らすタイプだった。しかも尻拭いは、何と殆ど俺がやっていたときたもんだ」

「うわぁ……」

 

 想像力豊かなシロウは瞬時に想像し、その結果、普段の彼あるまじき一言感想を捻り出していた。フォロー役に向いていないセンクラッドがフォローに回らなければならなかった程なのか、と戦慄を禁じえなかったのだ。

 ただまぁ、とセンクラッドが呟いて、

 

「親子喧嘩を仲裁して一発シメた後にドッキリ仕込んだら大人しくなったぞ。視野が広くなったというか、別人になったというか」

「……何をしたのだね、何を」

「許可を貰って、テロ側に回ってオーベルの殺害未遂をした後、一騎討ちでボコボコにした上で、オーベルに庇わせた。親がピンチになった時に子は必ず動くと聞いていたのでな。逆も然りだろうと実際やってみたら成功したし、結果オーライだ」

 

 絶句。

 正に絶句以外何物でも無いという表情を浮かべるシロウ。さぞ肝を冷やしただろう、センクラッド以外の周囲に居た者達が。想像力豊富なシロウはそれを瞬時に描けた為、当事者でも無いのに胃がキリキリと痛み出し始めた。

 

「……許可を貰ったとは言え、その後が大変だったのではないのかね?」

「そりゃな。その時点で芝居ってバレたら余計拗れるからな。グラール教団を壊滅に追いやり掛けた後でやらかしたから、あの時代では最大の懸賞金かけられたぞ。御陰でスタンモードとフォトンモードの切り替えが巧くなったなった。あぁ、ほら、スタンモード中にフォトンモードの武器で来られると出力差が有りすぎて防御出来ずに斬られるんだよ。だから瞬時に切り替え出来るように持ち方を変えたり、色々研究してたんだ」

 

 今となっては良い思い出だ、と言う風に遠くを見つめて温かく語る内容ではない。シロウは完全にフリーズを起こしていた。月の聖杯戦争でも相当無茶な事をやっていたし、本人から多少聞いた話だが、アラガミが跋扈する世界でも異物であるオラクル細胞をその身にブチ込んだりと、常識を彼岸の彼方までぶっ飛ばすような所業をやらかしているのだ。

 となれば、この世界でも絶対何かやらかすのは、もう既定路線だろう。悲観ではなく、現実的に考えてそう思わざるを得ないシロウ。

 

「話が飛び過ぎたな。まぁ、戻すが、ライアとはなんつーか真逆ぽいが、根っこは大体似た様なものだろう。となると、一番手っ取り早くやるとすると」

「……やるとすると?」

 

 もう、答えが見えている為、モチベーションがほぼ0だと言わんばかりの表情を浮かべているシロウに、センクラッドは告げた。

 

「生徒会長の方の更識楯無から事情と関係を聞いて、仲が悪いけど本当は仲良くしたい系なら、先ずは楯無をボコる。次に紆余曲折を経て簪に庇わせ、2人きりにする。後は本人達でどうにかさせる」

 

 コイツ本当に言いやがった、という視線をセンクラッドに向けるシロウ。

 じっとりとした視線をぶち込みながら、反対意見を出す為に大きく息を吸ったシロウに対し、センクラッドは、

 

「冗談だ。流石にオーベルと同じ事をやらかしたら、例え上手い事いったとしてもその後がヤバイのは判っているし、ザル過ぎるのも理解している」

「それは良かった、本当に。本当に、良かった」

「……お前さん、俺を何だと……まぁ、良い。先ずは2人に一体何があったのかを聞く。ただ、本人に接点が無い以上、一夏か楯無に聞くべき……なんだろうな。俺アイツ苦手なんだが仕方ないか」

「我々はともかくとして、一夏が狙われている可能性がある以上、それを知らぬ存ぜぬで通さないのなら、万が一に備えるべき――」

 

 シロウの言葉を遮るようにして、それは判っているんだがな、そう呟いて、センクラッドは額に手を当てて大きな溜息をついた。もう今更関わらないという選択肢は殆ど無い。手札をドンドコ開示していっているのだ。此処で知らないフリをして後味が悪くなるのは、自分だけではない。

 そもそも最初にグラール太陽系星人として名乗ったのだ、この世界には居ない者達だからといって、彼らの面子を汚すような真似は、センクラッドの選択肢には無い。

 技術的云々、精神的云々と言った手前、それに似合うような行動を採らざるを得ないのは、やはり判っていても面倒な事だな、とぼやく。

 シロウは先の発言に引っかかりを覚えたようで、首を傾げてセンクラッドに問い質した。

 

「――待て怜治、生徒会長と会った事が有るのか?」

「ん? あぁ、此処に来てまだ日が浅かった頃……いや、日数経過という点で見ればまだ全然なんだが、とにかく最初の頃にオルコット関連でちょっとした騒動があってな。屋上であっちからちょっかいを出してきたのが、縁だった。尤も、そこからは全く連絡を取っていないが……さっき言ったが、俺、あの手のタイプは苦手だし、こっちから積極的に連絡を取る理由も無かったから避けてたんだけどなぁ」

「正直に言わせて貰うがな怜治。君にも苦手なタイプが居た事が、本気で意外だ」

 

 何気に酷い事を言っているシロウに、いやいや待てよ、ちょっと待てよと待ったをかけるセンクラッド。

 

「お前さん、俺にも苦手なタイプは居るんだぞ。お姉さんぶる性格に愉快犯的な性質、更に言えばやらかしても自分の実力でどうにかしたり、自分の手に余る場合は周りを巧く使うタイプは、俺はどうにも苦手だ。巻き込まれては敵わんからな」

 

 そういうタイプか。確かに、それは苦労するな。そう呟いたシロウだったが、センクラッドが言った特徴を反芻していく内に、気付いてしまった事がある。シロウはスッと手を挙げて、サッと指摘した。

 

「怜治。それは君に似たタイプ、つまり同属嫌悪と言う事になるのだが」

「は?」

「君とてそうだろう。月での聖杯戦争から脱出する際には我々を盛大に周りを巻き込んだし、グラール太陽系での話を聞いてきた限りだが、ある程度までは抱え込んで無理だと判った途端に全力で周りを巻き込んだり、色々と被っているぞ。この世界でのみ言える事だが、周囲と比べて君は年上だから、お兄さんぶるというのもある意味当たっているのでは?」

 

 ショックを受けるセンクラッド。いや俺流石にあんな余裕ぶっていない筈、と思ったようだが、実際は口調と言動が違うだけでやっている事は殆ど変わっていない。家族関係が良好ではない、というのを人間関係が良好ではない、と置き換えても良いなら、ドンピシャだろう。少なくともセンクラッド=怜治は受肉させた英霊達全員からまだ許しどころか、会話すらしていない。つまり、問題を先送りにしているのだ。姉と妹、元マスターと元サーヴァント、関係は違えどダメさは同じ程度だ。

 ショックで項垂れたセンクラッドがポツリと言葉をテーブルに転がした。

 

「俺、あそこまでダメな子じゃない」

 

 楯無が聞いたら私はダメな子じゃない、と憤慨するだろう。棚上げ上手はバッチリ共通点だ。

 盛大に凹んだセンクラッドを暫く眺めてから、シロウは話題を変えた。方針が決まったというのもあり、また、慰める必要は無いだろうと断定している辺り、主従……友人関係は良好だ、極めて。

 

「それはそうとして、怜治。ISの模擬戦を見たのは2回目だが、やはりアレは厄介だな」

「あぁ、やはりそう思うか?」

「勿論だとも。空を高速で自在に動き回り、武器の入れ替えも可能、おまけにワンオフ・アビリティという、こちら側で言う処の宝具もある。ボーデヴィッヒ嬢は相手の動きを停止させ、一夏の場合は防御を無視して斬撃を叩き込める、全く、科学の進歩で魔術めいた事が出来るようになるとは思わなかったよ。少なくとも私の世界ではあぁいった兵器は無かった」

 

 実際にはラウラの停止結界はワンオフ・アビリティではないのだが、そう見えてもおかしくはない程、特異性の高いものに見えるのだろう。

 見えない砲塔で全方位に攻撃をかけられる迎撃兵器、衝撃砲や、全方位から攻撃をかける機動兵器、ブルーティアーズも含めれば、現代の戦闘で扱われる兵器とは一線を画す代物で、コレを対策するのは決して容易ではない。救いがあるとすれば、弾が曲がったりし無い事位だろう。コレがイナーシャルキャンセラーの応用で減速せずに弾丸を自在に動かせる、等に進化でもしたら、それはもう最初から全力で攻撃を叩き込むしか方法は無くなるだろう。

 そうぼやくシロウに苦笑せざるを得ないセンクラッド。神薙怜治としてみたら今の自身を含めてファンタジー世界の住人だろうと言いたいのだ。進歩した科学は魔法と変わらないとは良く言ったものだ。

 

「ただ、何よりも恐ろしいのは、山田教諭の動きだな」

 

 シロウが驚いたのは何も第三世代型ISの性能だけではない。第二世代のラファール・リヴァイヴの性能を現状考えうる限りの最大限のパフォーマンスを発揮し、多対一の戦況を物ともせずに冷静沈着に仕留めていった真耶の腕と頭脳だ。普段とは全然違う姿に、謂わばギャップには大変驚かされた。

 センクラッドも、確かにと腕組みをして考えを口から放り出す。

 

「カタログスペックを信用するのなら、第三世代の性能差で比肩し得るところなんて、ラファールなら機動性と拡張領域だけだしな。正直真耶が候補生止まりだったとは到底思えないよ、俺はな」

「私もだよ。オルコット嬢達の最低到達点が彼女だとすると、恐ろしいな」

 

 アレでもまだ機体性能を把握し切っていない、という事を知らない2人。これで知ったら絶句するのだが、それを戦慄と共に知るのはもう少し先だ。PICの限定解除等、まだ知らない要素があるのだ。実際に動かせずに教本のみでしか情報を得る事が無い彼らからすれば、全力かそうでないかというのはカンと経験から導き出すしかないのだから、それで察しろと言うのは些か無理な話だ。

 

「ま、千冬に相談してみるか。早い内に生徒会と渡りを付けた方が今後を考えれば良いだろうし」

「ツテを作りすぎるのも考え物だがね」

「判っているさ。精々雁字搦めにならないように上手い事立ち回るよ。さて、腹が減ったな」

 

 という言葉で、センクラッドがこの会話を終わらせる気だという事を察したシロウは、昼食を作る為に席を立ってキッチンへと足を向けた。今日はパスタにしよう、と考えている最中、異変は起こった。

 

「――グッ!?」

 

 苦鳴が、次いで椅子から転がり落ちる音が部屋に響いた。シロウがハッと振り向くと、蹲り、左眼を抑えて苦しむセンクラッドの姿が、テーブル下、椅子の足の隙間から見えた。

 

「怜治!? どうした!!」

「待て、触るなっ」

 

 瞬時に距離を詰め、肩に手をやろうとするシロウに、そう返したセンクラッドは、痛烈な負の感情を察知し、勝手に開き掛けた左眼に対して、一切の躊躇いを持たないまま指を鋭く突き立てた。

 激痛と不満が左眼から脳髄へ直接叩き込んでくる嫌な感覚に吐き気を覚えながらも、

 

「いい加減に、諦めろッ!!」

 

 一際強く、指と語気を強めてどうにか鎮める事に成功するセンクラッド。ジクジクと血が滲み出てくる感覚はあったが、どうせ眼帯から下には零れないのだ、今更気にする事は無い。むしろそれよりも、強い負の感情が此処に来て発露した事が気になる点だった。

 

「……全く、相変わらず面倒な奴だ」

 

 そう吐き捨てるセンクラッドだったが、シロウが怪訝な表情をしているのを受けて、淡々と事実を口に出した。

 

「IS学園で誰かの強い負の感情が発露した結果、左眼が嬉々として動こうとした。それを今しがた抑え込んだ。原因はフィルタリングを甘くしたままだったって処だな。クソ忌々しい」

「そうか、その眼は確か――」

「それと。お前さんに言い忘れていたが、左眼が暴れている時は、絶対に解析とか魔術を使うな。辿られて確実に汚染されるぞ」

 

 汚染、という言葉に酷く強張った表情を浮かべるシロウ。センクラッドの言葉は、本当に重く、苦いものを含んでいたのだ。

 表情を固まらせたままのシロウには眼をくれず、左眼を制御して感情が発露した場所の特定を急ぐ。

 程なくして、見つかった。IS学園裏庭だ。

 

「……シロウ、お前さんは飯を作っておいてくれ。俺は感情の発露先で何があったのかを確かめる」

「待て怜治、君1人で出歩くのは拙い」

 

 言外に、この世界でかわした取り決めを破るわけにはいかないという意味を持たせた言葉に、センクラッドはそれもそうだったと頷いて、シロウと、その背後に言葉を飛ばした。

 

「シロウ、ついてきてくれ。ロビン、飯と此処の警護を頼む。左眼については後で話す」

「あいよ」

 

 弾かれたようにシロウが振り返った先には、ロビンフッドが立っていた。何時もの軽薄な雰囲気ではない。センクラッドを心配しているそれを浮かべている。

 センクラッドに気を取られていたとは言え、シロウですら気付かなかった。此処までくれば狙撃者というよりも暗殺者に近いだろう。クラス適性が削除されていても、そのマントの隠密性は確かなようだ。

 ドアを開け、センクラッドはオラクル細胞を励起させ、シロウは強化魔術によって人外めいた脚力を手にして現場に急ぎ向かう。ショートカットとして欄干を伝って飛び降りたり、人の気配が無い場所を選んで進んだ為、些か時間はかかったものの、それでもその速さは確かで、物の数分で辿り着いた。

 眼の前で繰り広げられている光景に、シロウは眼を細め、センクラッドは溜息を吐いて、声をかけた。

 

「2人とも、何をしている」

 

 冷たい敵意を瞳に宿しているラウラの胸倉を掴み、隠し切れない殺意や憎悪で瞳を炯々とさせている一夏の姿が、そこには在った。

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