幻想楽迷郷 ~A hedonist lost in a Gensokyo~ 作:ソラセカン
『「あっ、そうだ。橋の所でパルスィが潰れてるから、助けに行ってやってくれ」』
勇儀「見殺しにしたのか?」
『「俺がやったんだ」』
勇儀「意味の分からん事を…」
『「さて、と。俺の役目はこれまでだが、時間はまだたっぷり残ってる…さとり?」』
さとり「げっ」
『「実験…と言っても特に何も考えちゃいなかった様だが、覚り妖怪には興味がある。より俺の心を通じて、記憶や意思を把握できるしな」』
こいし「私は?」
『「覚り妖怪の変異体。人の無意識に干渉し、その先の行動指針を操作可能な完全犯罪洗脳マン…ってまた外しやがったな」』
こいし「うんうん!君の率直な意見が聞けて私は嬉しいよ」
『「それって実質、俺の心を読んでいるのと同じじゃないか?」』
こいし「私は読むよりも暴く方が楽しいもの」
『「良い性格してるぜ」』
さとり「魂の具現化は…私には出来そうもないわ」
『「そっか。似たようなもんだと思ってたみたいだから、他者の魂にも干渉出来ると思ったんだが。いっそのことあんたも、仮想亜空夢喰らってみるか?」』
さとり「止めておくわ。貴方のアイデンティティを奪ってしまっても悪いもの」
『「フッ…ほんの一瞬考えただけの事を、よくもまぁキャッチ出来るな」』
さとり「私にかかればこんなものよ。そして次に目指す場所も決まった様ね」
『「了承してくれるかは別として、妖夢に試してみたくなった。今度会う時は…」』
さとり「…止めて欲しいの?」
『「分からん。この場で歩みを止めてしまいたいし、さっさと進むために背中を押して貰いたい」』
こいし「ただの構ってさん」
『「うっせ。またな」』 ビッ
『「紅魔館は丁度良い中間地点」』
美鈴「うわっ。慣れませんね、その瞬間移動は。あれ、また混ざってるんですか?」
『「おう。地底の鬼に勝つ為に致し方なく」』
美鈴「…勝てたんですよね。その気なら納得です」
『「最初に見せた時はもう、気がほぼ空っぽだったからな。指1本で相手してやろうか?」』
美鈴「門番が喧嘩を売ってしまったら本末転倒です」
『「それもそうか。それじゃ」』
美鈴「あ!それと1つ!さっき会った時よりも、気が一体化してますよ」
『「一体化…?頭に入れておく!ありがとな」』
レミリア「今の…ここまで…!?」
フラン「予想的中じゃないの?化け物染みてたけど」
レミリア「そうね。アレなら負けないわよ」
フラン「どうかしら。強すぎる力は、別のモノを引き寄せてしまうもの」
レミリア「不穏ね」
ビッ 『「強すぎる力には引力が伴うとでも?」』
フラン「えぇ。今度は貴方が引き寄せる番よ」
『「まだまだ引き寄せられる側だと思っていたが。どうしたもんか」』
レミリア「さらっと咲夜みたいな事をやってのけたの、説明願える?」
『「瞬間移動と時間停止を、同じ土俵に持ち込んじゃいけない。アレこそ別次元だ。何だあのメイド」』
咲夜「ただの従者よ。貴方も随分人外染みて来たじゃない」
『「自分が人外側の自覚はあったんだな咲夜さん」』
咲夜「ここは紅魔館よ」
『「理由はそれだけで十分か。俺達は人外同士だが、能力はいかがなものか気になるな?」』
咲夜「よーいドンで始めるつもりなら、貴方ですら先手は掴めないわ」
『「言ってくれるぜ。よーい…ド
ンッ!…ちぇっ。先手を掴めねぇか」』
咲夜「全弾防がれた時点で、私は勝利を掴めないわね」
『「この前やり合った時もそうだったが、酸素が元々無いみたいな、既に起きた事象に干渉するのは出来ないんだろ?ナイフがブッ飛ぶレベルの衝撃波を予め出しておけば、こんなもんか?十六夜咲夜」』
咲夜「こんなもんね。私は」
『「どうだか、手の内マジシャンめ。相手してくれてありがとな。今度は手の内明かしてくれよ」』
咲夜「マジシャンは手の内を見せないからマジシャンなの」
『「それでやられちゃ世話無いぜ」』ビッ
ビッ『「やぁ魂魄危ない。反応速度可笑しいよ」』
妖夢「私が半人前で無ければ真っ二つに…そうでもなさそうですね」
『「魂の壁を斬れるもんならな」』
妖夢「後10年は待って貰えませんか?」
『「そんなに暇じゃない。今回は妖夢に用があるんだが」』
妖夢「私の修行を手伝ってくれるのなら良いですよ」
『「10年って短いんだな。条件飲むから半霊貸して」』
妖夢「何をするつもりですか?」
『「俺と妖夢の違いの検証…」』
今の俺が触ってみて解る。これは文字通り半霊だ。
肉体を持つ妖夢の方にも半分魂が入っていた。こうなってくると俺は半身半霊ではなく、全身分離全霊なのだろう。そして融合している今、全身全霊でこの場に立っていると言える。なんてややこしい。
『「分析完了。妖夢も全身分離全霊になってみないか?」』
妖夢「貴方みたいになれって事ですか?止めておきます」
『「そりゃまたなんで」』
妖夢「死ぬかもしれない危険を承知で、代わり映えのしないその姿に憧れません」
『「全身分離全霊仲間が1人位いても良いんじゃないかと」』
妖夢「私は貴方の
『「そりゃそうだ。
妖夢「斬りますよ」
『「付き合おう」』
魂とは変幻自在。何にでもなれるし、何にもなれない。固体にも液体にも気体にもなれる。と思っていれば何とかなってる。とっくに検証済みだ。
『「そういえば月の剣士は魂を斬ってきたぞ」』
妖夢「へぇ…ふっ!」 ガンッ
『「今の俺をアイツが斬れるかと言われれば分からんが」』
妖夢「斬られている時、どんな感覚でしたッ!」 ガンッ
『「擬音にするならズバッ!って感じ。刀が魂と肉体の芯を捉えている様な…まさに達人の剣技だ」』
妖夢「そこまで斬られながら、よくも生き長らえましたねッ!」 ガンッ
『「執念の勝利だ。今はまだ会ってもいない事になってるけど」』
妖夢「まだ会っていない事になっている?洗脳術でも身に付けたんですかッ!」 ガンッ
『「時間を戻して無かった事にしただけだ。もっとも、魂にその記録があるって事は、無かった事になんて出来ないみたいだけど」』
妖夢「小難しい話をし始めましたね。物事はもっと、単純であるべきですよ!」 ズバ ガッ『「危ねッ!?」』
妖夢「斬れましたね。胴体と泣き別れする準備を整えておいて下さい」
『「10年が早すぎる。斬るなら綺麗に斬ってくれよ。回復技を検証するための自傷行為なんてやってないからな」』
妖夢「私の太刀筋に迷いは無いのでご安心を…!」
ズバッ! ズバッ! ズバッ! ズバッ! ズバッ!
左肩、左太股、右太股、右肩の順で流れる様に斬られ、最後には首が飛ばされた。能力を使っていないとはいえ、防御貫通レベルの速さである。円を描くように斬られたのは流石に初めてだ。
斬られた事に肉体が気付くまでまだ時間がある。ここから魂の意識で能力を使い、斬られた部位が胴体から離れる前に掴み、回復。傷痕すら残らない完璧な治療だ。断面が綺麗過ぎるのもあるが。
『「…とんでもねぇな」』
妖夢「実物があると習得が早くて助かります。今後とも試し斬りさせて下さい」
『「雨と空気と時間を斬れる様になったら良いぞ」』
妖夢「そういうのは、因果が逆と言うんですよ」ズ ガシッ
『「小難しい話をし始めたから終わり!」』
妖夢「都合が悪い事を小難しいとは言いません」
『「因果よりも小難しい話は無い。無視してしまいたくなる程に」』
その欲望が確かに存在したからこそ、『仮想亜空夢』なんて反則技が思い付いてしまうんだ。
『「因果の無視…本当に俺の力か?」』
妖夢「力を疑うのは失礼ですよ。扱えるなら扱うべきです」
『「融合の副作用の1つに自信過剰もあるんだが、そんな状態でも考えちまう。この力を失った時、俺に何が出来るのか…なんて」』
妖夢「そんなこと気にしてどうするんですか?」
『「この先訪れるかもしれない、可能性の1つに備えておきたい。臆病者な自分を、大切にしたいだけなのかもしれないけど」』
妖夢「解せませんね。行動と思考が矛盾している」
『「蛮勇な臆病者…そうでありたいと願っている」』
変化し続ける魂に方向性を。単純明快な欲望を。
『「強く成りたい…思い付く限りの可能性に手を伸ばし、掴む為に」』
願いは1つではない。しかし根底に望むものは一緒だ。
今からでも遅くはない。たった1人の人間に。
溶け合い、交じる。
融合のその先へ。