幻想楽迷郷 ~A hedonist lost in a Gensokyo~ 作:ソラセカン
期待外れの復讐
後始末も仮想亜空夢でやっとけば良かった。
浮かれて頭が回らなかったな。
お前が浮かれるのは可笑しいだろ。
心がウキウキしたんだよ。
それから日が沈むまでに記憶の共有を完了させ、対月人の対策を練った後、戦闘力でブン殴る事にした。
月光が照らす夜。俺達の間に会話は無かった。
紫「私がやるのはここまで。後は何とかしなさいよ」
牡丹「あぁ」
空「ありがとな」
紫「随分と落ち着いているのね」
牡丹「そうだな。宴会の準備をしておいてくれ」
紫「流石、外界人ね」
空「それでも1度敗れたが」
紫「私でさえ、2度と直接戦う真似はしなかったわ。それだと言うのに貴方達ときたら…」
「「それが俺の選んだ道だ」」
紫「そう。なら、ご褒美はいらないかしら?」
「「博麗神社永住の権利を与えるってやつだろ?貰えるものは貰っておきたいんだが」」
紫「…それで良いなら」
思考も、言動も。同じ牡丹空として溶け合い、混ざり合う。あの時の自分を越える為に。
「本当だ。八意様に言われた通り、大きめな穢れと…人間?が入って来たわ」
「んー…片方は妖精か何かかしら」
「珍しく八意様も漠然とした事しか教えてくれなかったからなぁ…」
「侵入者はたった二人、余計な手間や人員を割かない為にも、私達が片付けた方が合理的ね」
「でも…何か…」
「今は深く考える必要は無いわ。侵入者は追い返すか、排除よ」
フュー…
ジョン!
覇ッ!
「俺は運命を捻じ曲げ、都合の良い未来を掴む者だ」
豊姫「一人に、成った…?」
依姫「気をつけてお姉様。さっきまでとは次元が違う…!」
なぁ悟空さん。もし、元々同じ身体にいた奴ら同士でフュージョンしたら、どうなっちまうんだ?
うーん…普通のフュージョンでも強さの次元を越えるみてぇだし、更に強くなれるかもしれねぇな!
そりゃ良いや。そのまま一体化してしまうかもしれないけど。
ポタラで合体した時は、オラでもベジータでもない別の誰か…ベジットが代わりに戦ってくれた感覚だったんだよな。
別人格が生まれるって事か…その辺りはどうなるんだろう。
悩む位なら試してみりゃ良いさ。フュージョンを。
肉体と魂の融合。
出来ている様で皆出来ていない。
そこまで密接にくっついてはいけないのだ。
それは魂の輪廻を無視する行為。
それは肉体の腐敗を無視する行為。
これが全人類が辿り着ける場所にある禁忌。
俗に言う不老不死だ。
またもや人類は、不可能を可能にしてしまうらしい。
「光栄だ」
豊姫「…援軍を呼んでくるわ」
依姫「無駄よ。もう間に合わない」
「やはり月人は特殊な気を持ってるな。より覚えやすい」
豊姫「私達でどれだけ持ちこたえられる?」
依姫「瞬殺でしょうね。私が神降ろしの使い手で無ければ」
「時間を跨いだ復讐劇を完遂させよう』
依姫と豊姫の後へ通り抜け、
豊姫「きゃあっ!?」
依姫「風圧ッ!?」
浮いて無防備となった身体を掴んでしまえば、
『道具頼りの者は兎も角、神頼りの器もこの程度。無様だな』
依姫「きぃ…!さまあああ!!!」
『立場逆転激昂光景いとをかし』
豊姫「依姫!今相手になれるのは貴女しかいないのよ!?安易な挑発に乗らないで!」
依姫「………落ち着いたわ。ごめんなさいお姉様」
『すまねぇな。落ち着きを欠かせるつもりは無かったんだ。ベストコンディションのお前に勝てねぇと意味が無い』
依姫「貴様の目的は?」
『お前らに勝つことだ』
豊姫「月の都に手を出さないと誓ってくれる?」
『その条件を呑む必要は本来ないだろうが…永遠に医者から恨まれても困るしな。また暴走でもしない限り、被害は及ばんだろ』
依姫「私はお前の様な奴を、1度でも相手にした覚えは無いが」
『覚えは無くて良い。ただ1度でも俺に辛酸を舐めさせたのがあんた達であった事を、これから覚えてくれたら良い』
豊姫「会話が噛み合っていないのが気になるわ。でもそうね…ただ腕試ししに来ただけなら、少しは期待しても良いのかしら」
『応えを見せてやるよ』
依姫「神の力に沈め…!」
『俺も神力は使えるんだよ。お前らからしたら紛い物かもしれんが。 圧殺
今思い付いた雑技。技なんざ名前が格好良くて適当に圧倒出来れば良いのだ。
『穢れで攻撃すると随分迷惑が掛かりそうだったんでな。お前らが好きそうな神の力で適当に圧殺で構わないか?』
依姫「神の気配は纏っているものの、根本的には別の何かである事が隠しきれていないぞ!」
豊姫「この程度なら扇げば消せるかしら…あ、良かった」
『雑過ぎたか。んで別の何かであることには気付けるもんなんだな。ご名答だ』
依姫「ただ純粋な力の塊から、変換しているような感覚だ。尤もそんな純粋なエネルギーをどこで手に入れたのかだが」
『そのまま使うとあまりにも純粋過ぎてダメージにならないんでね。欲しければ行けば良いんじゃないのか?幻想の世界に。 神成
依姫「かなりの速度だが…!避けられないものでも無い!」
豊姫「ギブアップギブアップ!私には捌けないわ!」
『ノリが模擬戦みたいになっちまったな…あっちもそれを分かってんのか図太く降参宣言してくるし』
圧倒的な実力差故の余裕か。
それとも最初に対応されなかった時点で冷めてしまったのか。
死ぬ気で倒す気概が削がれてしまった。
『…興が冷めた。合体して差が開きすぎちまったか。次で仕舞いだ』
豊姫「私は降参してるからね」
依姫「私はまだ神降ろしを使っていないというのに、随分と甘く見られたな」
『神降ろしする前に倒せるからな。緊張感が無くなるんだよ』
こんなつまらない闘いをするために俺は…
『分かった。神降ろししてくれ。それで少しは…』
駄目だ。何を降ろされても身体の主導権を依姫が握っている限り、俺が勝つ未来しか見えない。依姫だって実力者だ。そんなこととっくにお見通しの筈なのに。
それから依姫は、俺みたいな思い付きで技を使う奴には思い付かないような、多彩な技を繰り出してくれた。やはり神をその身に降ろしても、身体が強くなければ神本来の強さは活かせないのだろう。似たような事を霊夢も言っていた。
依姫「神頼りの器でも、もう少し抗えると思ったのにな…」
『あぁ。気にしてたのか。テンション上がってデリカシー忘れた発言だ。合体してなかったら事実、俺はお前に手も足も出ないだろうな』
依姫「私達に勝つためにそこまでするか…お前が侵略者では無さそうで本当に良かった」
『侵略者というよりはテロリストみたいだ』
依姫「でも目的は私達に勝つことなんだろう?だったらそれは求道者のようなものだ」
『月に嵐がやって来たとでも思って貰って…じゃ、帰ります』
依姫「今度また来る時があったら、うちの玉兎を鍛えてやってはくれないか?案外面倒見も良さそうだし」
『図太過ぎるだろ…月が強い理由は図太いからか』
依姫「そうだな。それも1つの理由だろう」
『暇になったらまたここに来るよ。今度は合体せずに俺の相手をしてやってくれ。もう穢は切っていいか。悪いな切り忘れてた」
依姫「あぁ。その時を待っていたんだ」 ガシッ
「随分、姑息な真似をするんだな」
豊姫「それが月の強さでもあるわ」
「依然として大した実力差は埋まっちゃいないの分かってるか?」
依姫「穢れさえ封じられれば、我々が恐れるものは無いと断言しよう」
「誓いの破り時だな。ぶっ殺してやる」
穢れに頭を支配されていない筈なのに。
心臓が痛くなる位に高揚している。
あの時とは違う高揚。
視野が狭くなって、力の限り捩じ伏せる事しか頭になくなる。
牡丹空はこの衝動には抗わない。
きっとこの衝動の先にある悦楽を求めているから。
「ほれほれどうした!月の力はこれっぽっちか?」
依姫「そんなわけ…無いでしょ!」
豊姫「…了解」
シュッ 「誰と話してたんだ?」
豊姫「貴方を葬れる方よ」
「楽しみだ」