ほ~むらん☆倶楽部   作:姉村一男

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学校のある奥多摩町から立川市までは

 学校のある奥多摩町から立川市までは青梅線に乗って駅からは徒歩。

 昼下がりの河川敷に着いたら、盗まれたベースがサッカーグラウンドに置かれていた。

 薫が叫ぶ。

「なんなんだAV兄妹! 大体わかるけど!」

 グラウンドにいる彼らは米武劉須高校野球部のユニフォームを着ている。濃紺の野球帽と、白地にピンストライプの服の左胸に『※』と書かれている。

 ちなみに米武劉須のファッション性は世界に認められ、野球帽は若者のおしゃれアイテムだし、アメリカ野球のニューヨーク・ヤンなんとかスってチームはこのユニフォームを丸パクリしたという。

 互いに背中を預けて腕組みしている兄妹。

「「クックックック……」」

「笑ってねえでなんか言えよ」

「クックック……ここで会ったが百年目! どっちがヤるかヤられるか、どっちが組み敷かれて受け入れるか決める時だァ!」

「勝負したいんなら変な比喩やめろヴィッキー!」

 円佳がきょとんとして聞く。

「あれ、王乃さん……? 今の荒っぽいしゃべり方、なんか男の子みたい……?」

「げっ」

 やばいやばい!

「そそそそうですの? 空耳じゃありませんこと? いやですわ、おーほほほほ……」

 あわてて奴らに聞いた。

「おい、AV……多河兄妹! なんで俺……あたしに執着なさる! さっさと聞かせろなさい!」

 アンディが眼鏡を光らせた。

「とにかく勝負したいのさ」

「だからあたしは右手がっ」

「次はサードとホームベースを盗むぞ?」

「あたしはあんな野球冒涜団と関係ない! 勝手にして!」

「ヴィデオ百万本を送りつけるぞ?」

「やめて! やり方が汚いです!」

「今ここで女装を心堂君にバラしてもいいのだが?」

「ガチで汚いのはやめろ。友達なくすぞ」

「どうあれ、こちらがピッチャーでもいいから勝負をやりたいのさ。早く済ませよう。それともきみは必勝でなきゃ戦えない臆病者かな?」

「……んなわけねえだろ」

「では、やろう」

「本当に早く済ませるんだな?」

「二言はない」

 ……しかたない。

 再起不能という事実を見せれば「友人を再起させる夢」など諦めるはずだ。

 靴のつま先を使ってタンポポの前にホームベースを書き、ファールラインと打席も書き、ピッチャーの立ち位置も決めた。ホームから二十三歩の距離がだいたい正式規格の一八.四四メートルになる。犬のうん○をどけるのが面倒なのでその横にピッチャーズプレート代わりの横線を引いた。

 昼休みの小学生がやるキックベースみたいなゆがんだ野球場(ダイヤモンド)が完成。

「ルールは二打席勝負! まずピッチャーはこの多河ヴィッキーちゃんだ!」

 と自分で言う妹は小学生のとき投手経験があり、今は三塁手だが、アンディをキャッチャーにしてさっそく投球練習を始めると一三〇キロほどのスピードが出ていた。

「薫が快打(ヒット)っぽいのを打てば勝ち! 四死球はノーカン! 次の打席はお兄ちゃんが投げます」

 そのとき薫は――円佳を羽交い締めにしていた。

「で、なんで円佳さんが打ちに行くんですか!」

「王乃さん! 多河さんたちはわたしと勝負したくてほ~むらん☆倶楽部に挑戦状を出したのよ!」

「そんな手紙じゃなかったでしょ!」

「受けて立たなきゃ女が廃るわ! ふんす!」

「あたしが負ければあいつら引き下がりますからっ」

「それに、人間の『生きた球』を打ってみたいもの!」

「どうせ当たりませんよ!」

「……『どうせ当たらない』?」

「わっ、それは空手の構え!?」

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