「うちは
「全然知らんのエセ京都?」
「京都弁ってかわいいなあと
「変な人……」
「よう言われますわぁ」と微笑む。
確かにエセっぽいかも……でも本物の京都弁って聞いたことないなあ……と薫は思った。
「あんさん、うちのエンちゃんにさらわれたとき、しびれ○な食らいましたやろ?」
エン? あ、
「エンちゃんって円佳先輩?」
「せや。あの花粉の成分を体から出すには水を飲ませて全身マッサージせなあかんらしいんよ。せやから皆で揉んどるんどす。もうじき動けるはずやけど」
「まだ全然……」
「うちがもっと揉んだるわ。どれどれ……アキレス腱からふくらはぎ、太ももへ、リンパを流すみたいに……どうどす? 効きます?」
「触られてる感覚はあるけど……」
「太ももの付け根も丹念に……あら? こんなところにウズラの卵みたいな大きさで、上下左右によく動いて、柔らかい袋に包まれたみたいなボール状の物体がふたつ……おうちの鍵のキーホルダーやろか?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
薫、飛び起きる。
「ひゃっ!? なんや!?」
ほのかが目を丸くする。
「そないに騒ぐなんて……ようわからんけど、うちのマッサージが効いたんか……?」
「そ、そうですね……あー痛え、『玉砕』するとこだった……」
ともかく神経が一気に覚醒したらしく麻痺が治ったので、薫は周囲を見た。
女子たちの服装はタンクトップ、ブルマ、作務衣、レオタード……動きやすそうだが統一されていない。スポーツをする団体だとしたらこれは締まりがない。
見まわすと、雑草まじりの土のグラウンドが広がっていて、
「ここは多摩川の河川敷どす」
「……!!」
薫は身震いした。多摩川といえば野球だ。
関東有数のこの川の両岸は公営の野球場が数千面あり、少年野球、クラブチーム、一般の草野球が毎日使い、週末になれば応援も含めて二十万人がつめかける。薫も中学時代はここで練習した。昭和のころはさらにプロ野球の
けれどこの一角はバックネットもマウンドもない。
左右が一〇〇メートル、奥行きが七〇メートルくらいの、四角いフィールドに見える。
白塗りが剥げかかっている四角い鉄枠(幅七メートル、高さ二.五メートルくらい)が向かい合うように敷地の左右に置かれていて、見ているとなんとなく白黒のボールをそこに蹴りこんで得点王を目指したくなってくる。つまり……
「ここって……昔のサッカーグラウンド?」
「そうどす」
漢字で「削靴」と書くサッカーは、平安時代に貴族の蹴鞠から派生し、
最後のブームは平成初期、プロサッカーリーグができて野球の人気を奪うかと思われた。
だが一九九三年、日本代表チームが意外な逆転負けをするという「悲劇」があって一気にファンが離れた。
そのころ作られた古いグラウンドが日本全国でここだけに残っているのだ。