ほ~むらん☆倶楽部   作:姉村一男

7 / 18
(……んん? ってことは……なるほど……)

(……んん? ってことは……なるほど……)

「わかった。今から草サッカーですね? 廃れてしまった球技をよみがえらせる少女たちの挑戦、青春の物語が、このグラウンドから始まるんでしょう?」

「ちゃうよ?」ほのかが即答。

「何ィ!? じゃあこの集まりは何!? ってか円佳先輩どこです!? あたしをポ○モンバトルのあと拉致しといて、なんでいないんです!?」

「か、肩つかまんとって。あんたの左手だけ握力強すぎや。めっちゃ痛いっ」

「こっちは何度も痛い思いしてるんです! 説明責任があるでしょう!」

「じきに帰って()はるからエンちゃんに聞いて……あっ、()うてたら来たで! エンちゃん!」

 チリンチリン!

 自転車が土手から降りてくる。でっかいリヤカーが後ろについている。

「ごめんなさーい! 遅れました!」

 円佳が深緑色のジャージを着て運転している。

「あれ? ブレーキが壊れてる……」

 つぶやくやいなや、速度MAXでグラウンドに突っ込み、薫を轢いた。

「グォアアアーッ!?」

「わあっ!? 大丈夫ですか王乃さん!? 下敷きになってるわね!? 今引っぱり出します! うんしょっ、よいしょっ……!」

「いいいいい痛い痛い痛い!! ストップ!!」

「抜けないわね……? 見たところ、太ももの付け根あたりの柔らかい袋に包まれたような何かボール状の物体がふたつ、リヤカーの車輪のスポークに、たまたま、挟まってるみたいね! みんな手伝って! がんばって引っ張って助けてあげましょう! ――さあ、みんな用意はいい? 思い切りいくわよ? いっせーのーで……、それーっ!!」

「ゲエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」

 人生で一番叫んだ。

 

 

「わたしの家が立川(たちかわ)(東京都立川市)でここに近いから活動日はみんなの用具を運んでくるのよ」と、円佳。

 リヤカーの荷物は貧相な野球道具だった。古い軟式ボールが二十個ほど、傷だらけの金属バットが三本、積み重なってペタンコになったグローブが十数個、一・二・三・本塁の薄っぺらいベースが一枚ずつ、キャッチャー用の汚れたマスクが二つ――たったそれだけ! ちゃんとした野球をするならヘルメットやスパイクシューズ、キャッチャーのミットや防具が不可欠なのに。

 さておき薫は股間をおさえてうずくまり、しくしく泣いていた。

「うう……女の子になっちゃう……」

「王乃さんごめんなさい、無理に引っぱって。太ももの内側って洗濯バサミとかで挟んだら結構痛いわよね」

「ふつう洗濯バサミで太もも挟まないですけど……あー痛い、吐きそう……もはや女の子の日だよ……」

「ロ○ソニン飲む? 持ってるけど?」

「いらないです……」

 地面をいじりながら、

「あー、今日は悪夢だ……変な先輩に捕まって何度も激痛食らってその次は野球だってよ。どうなるんですじゃ……」

「王乃さん?」

「そうか、夢! これは夢でござる。ただの夢でござる。かようなことがありえようはずがござらん。夢だ、夢だ、夢だ夢だ夢だ、ゆ~め~で~ご~ざ~る~ッ」

「一九七九年の映画『柳生一族の○謀』のネタはわたしたちの世代じゃ誰もわからないと思うけど……」

「じゃあ野球ネタはわかるんかって話ですよ! ったく、どの読者層を意識してるんだが。今どき野球に詳しくない人はON(オオェヌ)伊一朗(イィチロー)も知らんでしょ。だいたい作者は本格歴史バトルファンタジーを構想してたくせに飽きたからって放り出して書いたのがこれとか迷走しすぎだろ……

「しっかりして! 目が変よ!」

「はっ!! 俺は何を言ってたんだ……?」

 揺さぶられて薫が正気にもどる。

 ただし野球をしたがる女子たちに囲まれている現実は変わらない。

 どこまで俺を苦しめるんだろう、野球は。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。