少しあっさり過ぎたかもしれない。
動けない〈クサナギ〉を護衛していたムウは、突如襲ってきた
「――この感じ……、まさか!?」
名状し難いこの感覚は、間違いなくラウ・ル・クルーゼが付近に居ることを示している。……しかし、だ。一体、ザフトがこのL4になんの用があるというのだろうか。
そんなことを疑問に思いながらも、ムウは〈ストライク〉を返して〈アークエンジェル〉へと向かう。
「至急エールを用意してくれ! ……メンデルへ向かう!」
『え?』
『あ? おい、おっさんっ!?』
「おっさんじゃない!」
ディアッカの言葉に言い返しながらも、ムウは低い声音でマリュー達へと告げた。
「……ザフトがいる!」
〈ストライク〉のストライカーパックを〈エールストライカー〉へと換装し、ムウはディアッカの駆る〈バスター〉と共にメンデルの港口を抜ける。
中へと入ると、視界に入ってきたのは一面赤褐色の人工の大地だ。住人の居ないコロニー内部は、一度徹底的な殺菌処理が行われていたために、微生物すらも住んでいない。コロニー廃棄の際に一緒に遺棄された研究施設らしい建物だけが、静寂の中に粛然と残されていた。バイオハザードで放棄される前までは、遺伝子研究の聖地として名高かった、その名残り。
しかし、今のムウにはそんなものを見ている余裕はない。……クルーゼが居る。ただ、その感覚だけがムウの精神を極限まで研ぎ澄ましていた。
〈ストライク〉のモニターの中に、二つの光点が煌めいていることに気づいたのと同時に、名状し難い感覚がムウを襲う。
「――来るぞ!」
告げるのと、ほぼ同時。〈ストライク〉のセンサーが二機のモビルスーツを感知し、そのアップ映像と共に機体名が映し出された。一機は〈デュエル〉。そして、もう一機は――見たことも無い形状の、白銀の機体。
『え?』
ディアッカが聞き返すのには反応すらせずに、ムウはビームライフルを構えて白銀の機体へと撃ち放つ。直後、相手の方からもビームの光条が伸びてきた。それをシールドで受け止めつつも、ムウは左手でサーベルを抜き放って白銀の機体へと肉薄する。
「新型かっ!? ……クソ、クルーゼっ!」
白銀の機体が迫る。互いにビームライフルを連射するが、その悉くはシールドで防がれ、躱される。〈ストライク〉のビームサーベルが横薙ぎに振り切られるが、その先にあるのは
ビームの火花が散り、モニター内がその光に当てられて明滅する。
『ここで貴様とまた戦えるとはな。嬉しいよ、ムウ』
「っ……!? クルーゼ!」
突然明瞭な声がスピーカーから聞こえてきて、ムウは思わず呻く。やはり、この機体の
一度機体を引かせ、サーベルを戻して再びビームライフルを撃ち放つ。連射されるビームの光条を振り切り、
「貴様――、今日こそ……!」
〈ジン〉と〈メビウス・ゼロ〉。今まではどうしても機体の不利があり、対等にクルーゼと渡り合うことが出来なかった。
しかし、だ。今回は。この〈ストライク〉ならば。今度こそ、クルーゼを討てるかもしれない。
そんな思いを胸に、ムウは機体を駆る。クルーゼの機体を再び捉えると、左腕のシールド部からは二連装のビームサーベルが煌めいていた。接近してくる白銀の機体を見やって、ムウは右手でビームサーベルを引き抜く。突撃。
二機の機体が交錯し、次の瞬間シールドには二連装のビームサーベルが斬り付けられていた。
――――かかったな!
ムウは胸中で会心の声を上げる。ビームサーベルを封じた今、クルーゼの機体はシールドが使えない。そして、今、〈ストライク〉の右手にはビームサーベルが握られている。
――勝った。そう、確信と共に操縦桿を引こうとした――その時だった。
『貴様に討たれるなら、それもまた――とも思ったがな、ここで』
「なに?」
クルーゼの意味不明な言葉に、ムウは一瞬動きを止める。
『――だが、どうやら貴様はその器ではないようだ』
次の瞬間。白銀の機体の腰部からはワイヤー付きのアンカーが射出されていた。
「なっ!?」
ムウは咄嗟に操縦桿を引き、〈ストライク〉をクルーゼの機体から下がらせる。しかし、もう遅かった。
〈ストライク〉の右腕が肩から切り飛ばされ、もう一つのアンカーがコックピットを穿ち、掠めていく。飛び散る破片の一つが、ムウの脇腹を突き刺した。
制御を失い落下していく〈ストライク〉を何とか減速させる最中、ムウはクルーゼの声を聞く。
『所詮、
「何を言ってるんだ貴様は!」
機体を何とか立て直し、残った左腕でビームサーベルを引き抜く。〈エールストライカー〉のスラスターを全開に吹かせながら、ムウはクルーゼの機体へと突っ込んだ。
『なにっ!?』
撃たれるビームライフルの光条をシールドで弾き、〈ストライク〉とムウはクルーゼの機体へと吶喊する。二連装のビームサーベルに光が煌めくのとほぼ同時。白銀の機体の左腕をたたっ切った。
『ちぃっ!?』
「クソっ! ここまでか!?」
即座に反撃を食らい、ムウは光条を受けた〈エールストライカー〉をパージする。十分な推力を失った機体は、重力のままに赤褐色の地面へと落ちていった。
――→フリーダム登場へと続く。