テリーに転生したので、ネタキャラ扱いされないよう強くなる   作:なー

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第十二話

「……俺の夢?」

 

 転生がばれるのではと冷や冷やしていた俺は、予想外の内容に呆気にとられる。

 

「そう、夢じゃ。昨日、『現実の世界』と『夢の世界』の話をしたじゃろう?」

 

 確かに昨日、宴の前にグランマーズからそのことについて話があった。

 そこで話された内容は、この世界は、『現実の世界』と『夢の世界』の二つが存在しており、主人公達は、誰かが見ている夢の世界の住民であるというところまで。

 既にそのことについてグランマーズから話を聞いていたミレーユ以外は皆酷く驚いていたのを覚えている。無理もない、いきなり自分が現実の人間でないなんて言われたら混乱するだろう。

 話を進めていく毎にさらにこの世界について詳しく知っていく事になるのだが、正直に言って――、

 

 滅茶苦茶ややこしい。

 

 二つの世界に分かれていることがこの物語をややこしくしている最たる所以だ。俺もプレイをしたばかりの最初は訳が分からなかったのを覚えている。

 しかし展開が進んでいくと、いかにこの物語が細部まで作り込まれているかが分かっていく。それらを理解した時、初めてこのドラクエ6の魅力に気付くのだ。だからこそ、俺はドラクエ6に引き込まれ夢中になったのだ。

 

 この世界のことについて語るには、主人公達がまだ冒険に出る前までに時間をさかのぼる必要がある。

 昔、世界征服しようと大魔王『デスタムーア』が、自らにとって都合の悪い施設に目を付けた。

 人々の才能を開花させ勇者をも生み出す『ダーマ神殿』。

 強力なアイテムを保有する『メダル王の城』。

 究極呪文『マダンテ』を生み出し、代々引き継ぎ続ける魔法都市『カルベローナ』。

 これらを攻め落としたデスタムーアだったが、それらの施設が人々の心の中で存在し続けていることに気付く。

 このままでは壊滅させたはずの施設がいずれ復活するのではと危惧し、デスタムーアが人々の『夢』を具現化させた。

 この時、デスタムーアが具現化させた夢こそが『夢の世界』であり、そして今俺がいるこの世界こそが『現実の世界』である。

 デスタムーアは、具現化させた『夢の世界』の重要施設までも攻め落とし、封印した。そして最後には、夢の世界を束ねる『ゼニスの城』まで封印した。そしてそれらの封印が解かれないように、ムドーをはじめとした魔王達に管理させたのだ。

 

 『現実の世界』と人々が見る夢によって創られた『夢の世界』。

 二つの世界を通して、人々や異種族の様々な想いや願い、恋心、時には嫉妬や怒りに触れていく事により、色々考えさせられ、感動させられるのだ。

 

 そしてもう一つ、このドラクエ6が魅力的である要素がある、それは――。

 

「ああ、ちゃんと覚えている」

「うむ。儂は夢占い師を生業としている。人々の夢を通して色々なこと占ったり、予言してたりしているわけだが……」

 

 ここでグランマーズは言葉を切って、昨日と同じようにじっと俺を見つめてくる。真剣な表情を浮かべるグランマーズだが何を考えているのかは読み取れず、思わず身構えて続きを待つ。

 

「お前さんの『夢』については、ほとんど見えないんじゃ」

 

 そのグランマーズの言葉は不自然なくらいにシンとした室内に響いていく。

 

 俺の夢が見えない……か。

 グランマーズでも見えないのか。

 ……まあ、それは仕方ないのかもしれない。

 そんな感想を思い浮かべつつ、俺の鼓動がどんどん高鳴っていくのを感じる。

 

 物語中では、全キャラに対して『夢』についての描写がある。

 例えばレックの正体はレイドック王子であるが、そんなレックの夢は田舎であるライフコッドでターニアと静かに暮らしているというもの。

 現実世界でムドーに敗れて記憶を失い、大怪我をしているところをターニアに助けられ、まるで兄妹のように一緒に暮らしていくうちにターニアが本当の妹だと思うようになったのだ。その想いが夢の世界に反映されたのだろう。

 といっても夢の描写が無いキャラもいる。それは『チャモロ』だ。しかしその謎を解き明かすためのヒントはいくつかある。まあ、これは今はいい。このことについては、チャモロに会って直接確かめたいと思っている。今はまだ推測の域を出ないからな。

 

 ……アモス? 知らん、誰だそれ。

 

 というわけで『主要』キャラについては、はっきりとではないものの夢についての描写がある中、『テリー』はどうだろうか?

 

 ――そう、テリーについては、夢に関する描写が一切ないのだ。

 

 描写どころかそのヒントも無い。俺が見逃しているだけという可能性もあるわけだが、あれほどやり込んだ俺が見逃しているとは思えないのだ。前世ではテリーの夢についても色々な予測や説が謳われていた気もするが、その辺の記憶は残念ながら思い出すことはできない。過去に何度も思い出そうと挑戦したが無理だった。ドラクエ6の記憶だけはばっちりあるのにおかしな話である。

 ではテリーの夢の描写が無いのは、制作陣の単なるミスなのだろうか? そんな訳は無い。あれほど念入りに作り込まれていた作品でそんな初歩的なミスを犯すわけも無い。必ず、何か理由があるのだ。

 

 これこそが――ドラクエ6のもう一つの魅力だと思っている。

 

 先ほどのチャモロの夢の件や、バーバラの正体もそうだが、このドラクエ6は物語上では多くを語らないといった特徴がある。しかし、そこには必ず理由があり、ドラマがあり、それらを読み取った時、このドラクエ6の真の面白さに気付くのだ。

 

 そして今、ドラクエ6の中でも大きな謎の一つである俺の夢の正体についてグランマーズがヒントをくれようとしているのだ。思いがけない嬉しい展開に、興奮しないでいられるわけも無い。

 グランマーズもあまり状況を理解できていない様子だが、聞けるだけ聞こうと俺はグランマーズに続きを促す。いつの間にか、先ほどのまでの気分の悪さなどとうに忘れていた。

 

「見えない? それはどういうことだ?」

「そのままの意味じゃ。見えないんじゃよ、長く生きているがこんなことは初めてじゃよ……」

 

 それが夢占い師としては、プライドを傷つけることなのかどこか力なくそう呟くグランマーズ。しかし、彼女はキッと力を込めた瞳で俺を見据えながら続ける。

 

「じゃが、お前さんの夢は必ず存在する。感じるんじゃよ。――それも想像もできないような強い力じゃ。これは間違いない。夢占い師の名に懸けてもいい」

 

 グランマーズの鬼気迫るようなその勢いに俺は思わず一歩下がる。この様子ではグランマーズの言っていることに間違いはないのだろう。

 ……俺の夢は存在するか。やはり、そうなのか。

 それにしても俺の夢が強力か……。いいじゃないか。格好いいじゃないか。

 主人公達みたいに、夢の自分と合体してさらにパワーアップ、なんてことがあるのかもしれない。

 そんな風に前向きに興奮気味に考えている時だった。

 

「……嬉しそうにしているところ申し訳ないが、嫌な予感がするんじゃよ……。その強力な夢がいずれ、お前さんに、そしてこの世界に影響を及ぼすんじゃないかとね。いや、もしかしたら既にこの世界に影響を及ぼしているかもしれない……」

 

 ……顔に出ていたのか?

 少し恥ずかしくなり、顔が熱くなるのを感じながら、それを顔に出さないように努める。冗談を言っているわけでないことはグランマーズの険しい表情を見ればすぐに理解できた。大袈裟な、と思わないでも無かったがこれは俺も把握していないこと。グランマーズの話を聞き洩らさないように意識を切り替えて集中する。

 

「そして、昨日聞いたお前さんの話だ。テリー、お前さんは『強くなりたい』そう強く願っているということだったね? 実際、人間離れした強さを持っていると聞いたし、これまでのお前さんの人生を振り返っても、その想いの強さははっきり言って異常だよ。そして間違いなく、その強すぎる想いはお前さんの夢に影響している。もしかしたら、強くなりたいというその想いが日々夢の世界で膨張しているのかもしれないね」

 

 俺の強くなりたいというこの想い。確かに俺自身も不可解に思うほど。これが夢に影響していることは充分に考えられる。しかし、それがどうこの世界に影響してくるというのか?

 しかし、グランマーズがここまで言ってくるとなると無視もできないのも事実。

 

「……なるほどな。俺はどうすればいいんだ?」

「強くなろうと言うその想いに飲み込まれないようにするだけさ。……といっても、お前さんにはミレーユもいるし、あの娘っ子もいる。お前さん一人だと不安だが二人がいれば大丈夫だろう」

 

 突然、グランマーズが脈らくの無い事を言ってきて、理解できない俺。

 

「娘っ子ってバーバラか? それに姉さんも……。どうしてここで二人が出てくるんだ?」

 

 俺の質問に対し、呆れたようにはぁと溜息を吐いたグランマーズが俺を睨んでくる。怖いから睨むのはやめてほしいものだ。心臓が縮むような感覚に襲われる。

 

「とにかくだ、お前さんは仲間を大事にすることだね。そうすれば儂の嫌な予感もそれこそ夢物語として終わるじゃろう。言いたかったことはそれだけじゃよ。精々気を付けることだね」

 

 グランマーズは話はこれで終わりだとばかりに、席を立ちあがってキッチンの方に歩いて行こうとする。

 あまり具体性の無い話ばかりだったが、いくつか俺の夢についてヒントは得れた。

 なにより俺の夢が存在することが分かったことは大きい。

 ……あれ、待てよ。よくよく考えると俺は転生した身だ。元々のテリーとしての記憶はあるものの、転生したことで本来テリーが見るはずの夢に影響はしていないのだろうか?

 ……全然分からないな。そもそも元の夢の内容を知らないのだ。無理もないわけだが。

 ここでふと俺はグランマーズが最初の方に言っていたことを思い出す。

 

「そう言えば、俺の夢を見ようとした時、『ほとんど見えない』と言っていたが、少しは見れたってことなのか?」

 

 俺のその問いにグランマーズは、

 

「ん? あぁ、確かに一瞬見えたよ、意味はよく分からなかったがの……。そもそもあれが本当にお前さんの夢なのかもよく分からなかったんじゃよ」

 

 と振り返りながらそんなことを答えてくる。

 

「……それは、どんな光景だったんだ?」

 

 俺が僅かに緊張しながらそう聞くと、グランマーズはゆっくりとこう答えてきた。

 

 

 

 

 

「魔物と楽しそうに触れ合っている子供の姿のお前さんが見えたよ」

 

 

 

 

 

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