テリーに転生したので、ネタキャラ扱いされないよう強くなる   作:なー

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更新遅くなりました。


第十七話

「おい、あれが『ゲントの村』じゃないか?」

「あっ本当だ! 何か見えてきた!」

 

 大きく野太い声でそう言うハッサンが指さす方向には確かに村が見える。間違いなくあれがゲントの村だろう。

 歩くのを嫌がっていたバーバラもはしゃいでいる。その胸元で俺があげた木のペンダントが揺れている。なんやかんや気に入っているようで俺も作った甲斐があったというもの。

 

 ……いよいよ、チャモロ加入か。

 

 チャモロが加入という事は現実世界のムドー戦はもう目前と言うことでもある。そう思うと感慨深いものだ。

 ……いや、そうでもないか。

 理由は明白だ。

 俺とバーバラは晴れてレック達の仲間になり、地底魔城にて夢の世界のムドーを討伐したわけだが、

 

 

 

 ――――まあ、楽勝だったのだ。

 

 

 

 苦戦のくの字も無かった。というかものの数分で決着がついた……いや、一分もかかっていなかったかもしれない。玉座にいなければ雑魚敵と間違って倒していたかもしれない。

 そりゃあ、高レベルの俺とバーバラもいるし、レック達も順当に強くなっているのだから当然と言えば当然なのだが……。死なないことを第一優先に動いてきたのだから、寧ろこれは順当な結果と言える。

 しかし、なんというかこう……盛大な肩透かしをくらってしまった感じである。準備万端だったとはいえ、なんやかんや予測不可能なことが起きたり――なんてことを想像していたからな……だってここドラクエの世界なんだぜ? いや、まあこれでいいのだが……。

 シェーラ王妃も俺達の戦いを見て困惑していたからな。というか俺達が強すぎて若干引いていたようにも見えた。

 結局、俺達はラーの鏡で夢の世界のムドーをレイドックの王様に戻して、その流れで現実世界のムドーを倒す為に再び旅に出たということだ。

 最初、ムドーが偽物であったことにレック達は戸惑っていたが、ムドーがこんなに弱いわけが無いと納得しているようだった。

 今向かっているゲントの村には神の船があり、それを借りてムドーの島に行こうということだ。

 

 ……まあ、順調なのが一番に決まっている。

 このまま順当に旅が進むよう祈っていよう。

 

 

 

 

 

「へーここがゲントの村か。おーすげえなっ! あの立派な神殿に船があるんじゃねえのか?」

「ぷっ、こんな山奥に船なんてあるわけ無いじゃない! 脳みそまで筋肉でできてるんじゃないの?」

「んだとっ!! バーバラ!」

「きゃー、ミレーユ、ハッサンが虐めてくるわ!」

「……ハッサン、バーバラもこう言っているし、許してあげて? ね?」

「――くっ、いっつもミレーユを盾にするのはずるいだろ」

「バーバラもあんまりからかうのはだめよ?」

「はーい」

 

 ゲントの村に着くなりハッサンとバーバラとミレーユが仲良く会話している。まだパーティーに加入して日は浅いがバーバラもだいぶ馴染んできたようである。今もバーバラがミレーユの陰からハッサンに舌を出して馬鹿にしている――、ハッサンがキレないことを願うばかりである。

 気になる点があるとすればミレーユがバーバラを妙に可愛がっている点だ。いつも二人で楽しそうに喋っている――仲の良い姉妹のようだ。唯一の同性の仲間同士だから気が合うのかもしれない。

 ちなみにあの神殿に船があるからハッサンは何も間違っていない。

 

「おい、テリーからもバーバラにどうにか言ってくれよぉ」

 

 情けない口調で俺に助けを求めるハッサンを適当にあしらいつつ考える。

 

 ……ここがゲントの村か。

 癒しの力を与えられた民が生活する村――そして神の命によって船を守り続けている一族。

 ライフコッドと同様に山奥にあることから静寂な雰囲気ではあるが、村の奥にある巨大で壮大な神殿の存在が村全体に神聖な雰囲気を漂わせている。自然と背筋が伸びてしまうような緊張感があり、俺は苦手だ。

 

「よし、じゃあ早速船を借りられるか聞きに行こう!」

 

 緩んだ空気を一気に引き締めるレックの号令に従い、俺達は村長の家に向かった。レックの指示には誰も不満を持たず従う。無論、俺もだ。こういうところが勇者なんだろう。

 

 

 

 

 

「すまないが、いくらレイドック王の頼みとあっても船を貸し出すわけにはいかないな」

「そ、そんな! どうして!」

 

 というわけで村長の家に船を貸してくれるようにお願いしに来たわけだが取りつく島も無い状況。レイドック王から貰った書状も意味をなさない。

 

「悪いが、ゲントの民でも無いそなたらに貸し出すわけにはいかんのじゃよ。――神の船を守ることは、我らの使命じゃからな……」

 

 ゲントの長老は、その皺が刻まれた表情に強固な意志を示している。これではどれだけ頼んでも船を貸してくれることは無いだろう。

 

「ね、ねえテリー、これ大丈夫かな? 王様の書状を見せても駄目ならもう無理なんじゃ……」

 

 バーバラが俺の服の袖を引っ張りながら不安げに小声でそう聞いて来る。服を引っ張るのはやめろといつも言っているのに……。

 

「……まあ、もう少し様子を見てみよう」

 

 この後の展開を知っている俺はとりあえずそうバーバラに答えて、言葉通りレックを見守ることにする。

 ここのやり取りの中では、楽しみにしていることがあるのだ。

 

「……そ、そんな。僕達はムドーを倒すためにどうしても船が必要なんです」

 

 レックも無意味だとは分かっているだろうがそれでも長老に食い下がる。

 

「ムドーを? そなたら一体――。いや、それでも貸し出すことはできん。悪いがお引き取り願おうか」

 

 ムドーと言う言葉に一瞬長老が反応したものの、結論は変わらず。重い沈黙が室内を満たした瞬間だった。

 

「――ただいま戻りました」

 

 ガチャリと開いた扉から、落ち着いた声質でそう告げながらチャモロが現れた。

 ――おお、チャモロだ! 意外と小さいな。そしてその手にはしっかりと重要アイテムである『ゲントの杖』が握られている。

 そう言えばチャモロも俺ほどでは無いにしても、ゲントの杖が本体などと散々なことを言われていたような気がする……。そう思うと親近感が湧いて来た。仲間になったら仲良くしよう。

 

「おや、今日はお客様が多いですね? ……というかやけに重い空気ですが何があったのですか?」

 

 室内の状況を確認したチャモロは困惑している。確か俺より年下だったと思うが、やけに物腰が落ち着いているな。バーバラにも見習わせたいものだ。

 

「チャモロ、帰って来たか」

「はい、遅くなり申し訳ありませんでした。それで、この方々は一体?」

「それがな……、神の船を借りたいと言われておるんじゃ。レイドック王の書状付きでな」

「なんと! まさかお貸しするおつもりでは――」

「まさか。あれはいずれ現れる勇者様にお貸しするもの……。ちょうど断ったところじゃ」

 

 長老の言葉を聞いたチャモロはほっとしたような様子である。

 ……さあ、そろそろ来るはずだ。

 俺がそう思った時だった。

 

 「――うっ!」

 

 チャモロが一瞬、うめき声をあげると共にあたりの景色が止まる。まるで時間が止まったような感覚である。そして脳内に直接語り掛けるように女性の声が聞こえてくる。

 

 ――――来た、『精霊ルビス』だ。

 

 

 待ちわびていた存在がようやくお出ましだ。

 物語の中で時折レック達を導く謎の存在――それが精霊ルビス。深海に行けるようになると意外とあっさりと会えたりするのだが、ゲーム上ではあまり目立たないんだよな。だが、俺の読みが正しいならば精霊ルビスはゲーム上でははっきりと語られなかったドラクエ6の物語に大きく関わっているはずだ、――このゲントの村も含めて。

 ……というか、精霊ルビスは俺が転生している身であることは見抜いていたりするのだろうか? 神とか言われているくらいだしあり得ない話では無い。

 

 

 

『チャモロ、チャモロよ……。私の声が聞えますね。この者達を帰してはなりません。この者達と共にムドーの島に向かうのです』

 

 

 

 ……おお、今のが精霊ルビスか。なんか感動。というか綺麗な声だったな。人間離れした神々しさを感じた。

 こうやってレック達の旅を支えてくれていたわけか……。ドラクエファンとしてこの場面に立ち会えたことに感激してしまう。

 

 

 

『……そしてテリー。……あなたにも私の声が聞こえますね?』

 

 

 

 …………ん?

 ――――俺っ!?!?

 

 え? え? なんで俺!? 

 なんか話しかけられたんだが!?

 こんな展開は無かったはずだ!? いや、それを言ったら、そもそも俺がここにいること自体おかしいんだが。

 ど、どうすればいいんだ?

 

『……慌てなくてもいいのですよ、落ち着いて』

 

 はい。

 精霊ルビスに動揺していたことを見抜かれてしまい、一気に恥ずかしくなった俺は羞恥を押し殺して大人しくする。

 ……ルビス様、結構優しいな。

 もっと淡々としているイメージがあったが、なんとも人間味溢れる心優しさを感じる。

 

『……テリー、あなたもレック同様に不思議な運命を背負いを生まれてきた存在。……いいえ、レック以上にこの世界の未来はあなたに懸かっていると言えますね』

 

 ……おっと、いきなり何やら重いことを言われたんだが。

 ただでさえ予想外のことが起こって心がざわついていたのに。

 というかレック以上って……。

 勇者のレック以上にこの世界の未来を握っているってどういうことだ……? 俺なんて物語上、居ても居なくても変わらない存在だと思うのだが……、言っていて悲しくなってきた。

 

『テリー、あなたの『夢』はあまりにも強大であり、日々それは暴走し増大しています――かつて強くなろうとしていたあなたのように。その力は私ですらほとんど干渉できないほどのもの……』

 

 

 

 ……え? 俺の夢、暴走してるの?

 

 

 

 ルビス様からこんな重々しい雰囲気でお前の夢は暴走しているなんて言われたら普通に怖いのだが。

 というかまた俺の夢か……。グランマーズからの警告が脳内に蘇ってくる。俺の夢、本当になんなんだよ……。というか暴走って具体的にどうなっているんだ……。

 ルビス様に俺の夢が何なのか質問したいが、体や口が動かないのだからどう質問していいか分からない。俺にできることはルビス様の言葉を待つだけ。

 

『近い未来、あなたはあなたの夢と対峙することになるでしょう。……どうかその時、自身の夢に飲まれないように……。どこまで力になれるかは分かりませんが、私も力をお貸ししましょう。ムドーと戦う前にどうしてもこのことを伝えておきたかった。……ではテリー、またお会いしましょう。私はいつでもあなたのことを見守っていますよ……』

 

 何やら感情の籠った様子でルビス様がそう言い終わると、不思議な気配が徐々に遠ざかっていき、やがて完全に消えた。俺は呆然とそこに立ち尽くすほか無かった。

 

 ……ちょっと待て。

 近い未来、俺の夢と対峙するって言ってたな……。

 それってもしかしてムドー戦のこと言ってるのか? 

 ……そう言えばムドーって戦う前にレック達を夢の世界に飛ばしてたような……。

 

 

 

 …………まじか。

 

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