テリーに転生したので、ネタキャラ扱いされないよう強くなる   作:なー

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第三話

「いい? 魔法って言うのはね、体内に流れる魔力を操ってね……」

「…………ふむ」

 

 食事を終えた後、俺はバーバラに魔法を教わっていた。

 食事中、バーバラは、周りから認知されない為、真実を映す『ラーの鏡』を探していることを話してくれた(知っていたが)。そして『ラーの鏡』が『月鏡の塔』にあるとの噂を入手したまでは良かったが、一人で魔物が巣くう外界に行くことができないと、途方に暮れていたとのこと。

 そこで俺は、月鏡の塔まで護衛をする代わりに魔法を教えてくれと交渉を持ちかけたということだ。魔法においてバーバラ以上の師匠はこの世界にはいないだろうからな。そう考えると俺とバーバラが出会ったのも運命なのかもしれない。

 

 と思っていたのだが……、これは……。

 

「つまり、集中させた魔力を……なんかこう、一気にガーっと解き放つの、そんな感じよ!」

 

 …………何言っているのかさっぱり分からん。

 

 最初はバーバラに教わることができると、やる気を見せていた俺だが、次第に自身の考えが甘かったことを痛感する羽目になってしまった。

 ちなみにバーバラは「どう、分かりやすかったでしょう?」と言わんばかりに得意げな笑顔を浮かべている。

 

「……すまん、よく分からなかった。もう少し具体的に教えてくれないか?」

「え? どの辺が分からなかったの?」

「…………全部だ」

「ええー!? 全部!? そ、そっか……。私なりに丁寧に説明したつもりなんだけどなぁ……」 

 

 予想外とばかりに驚愕したバーバラは「うーん、どう説明すれば分かるのかなぁ……」と悩みだす。真剣に考えてくれているあたり、やはり良い人なのは間違いないのだろうが、教えるのが絶望的に下手くそだ。

 ……まあ、伝説の大魔女の血を引いているのだから、バーバラにとって魔法は使えて当然のものなんだろうな。魔法を使えない感覚が分からないのだろう。

 

「分かった。なら、いったん感覚で魔法を使ってみるから、だめそうだったらその都度指摘してくれ」

「そ、そうね! その方がいいわね! じゃあ手始めに『メラ』なんてどうかしら。魔力を解放するときに火の玉を想像するのよ!」

「メラか、分かった。……よし」

 

 というわけでとりえあず適当にやってみることに。

 ……ええと、魔力を集中させて、それを一気にガーっと解き放つんだっけ? なんだそりゃ。

 

「……ん? そう言えば、呪文を使う時って詠唱が必要なんじゃないのか?」

「詠唱? ああ、まあ無くても大丈夫よ? あれはイメージがはっきりしない時に使うサポート的なものだから」

「…………そうか」

 

 まさに今、俺に必要なもののような気がするが、バーバラ先生がそう言うのならいいのだろう。というわけで俺はなんとなくほぼ勘に近い感じで意識を集中し、手の平を適当な場所に向け、そして――

 

「…………『メラ』」

 

 まあ無理だろうと思いながら半ばやけくそでそう唱えた直後だった。手の平からボッと小さな火の玉が生まれ、少し進んでそのまま消えた。しょぼいが、確かにそれは呪文だった。

 

 ……え? できた? まじ? ……俺、天才?

 

「あ、ほらほら! ちゃんとできたじゃない! やっぱり私の教え方が良かったのよ!」

「そう……なのか?」

「……どうして疑問形なのよ? でもまだ魔法を形作っている魔力が安定していないようね。まあそこは反復練習するしかないわね」

 

 流石バーバラ。正直俺には魔力の流れなんてものはよく分からないが、バーバラにはそれがはっきり見えるらしい。

 その後、俺はバーバラの助言を道標に魔法をひたすらに唱える。途中で魔力切れになるものの、その度に魔力を回復させる『まほうのせいすい』をがぶ飲みして修行を続けた。

 ちなみに『まほうのせいすい』はカジノの景品で大量に確保していた。こんなこともあろうかと、サンマリーノのカジノで自慢の動体視力を活用しスロットを目押しし、荒稼ぎしておいたのだ。

 尚、俺はサンマリーノのカジノを出禁になった。

 

 しかし、魔力を回復させても体力や気力は回復しない――ぶっちゃけ滅茶苦茶しんどい。魔法を使うと言うのは予想以上に集中するし、神経をすり減らす。が、そこは根性で続ける。強くなる為にはこの程度の苦労はへでもない。

 

 

 

「……ふわぁ」

 

 しばらくした時だった。バーバラが欠伸を漏らした。ここでようやく気づいたが既に太陽は傾き始めている。魔法の修行を開始してから数時間は経過している証拠だ。

 ……集中しすぎたな。

 栄養ある食事を摂ったとはいえ、バーバラは元々疲労が溜まっていた。その上数時間も修行に付き合わせてしまった。現にバーバラの顔色には濃い疲労が現れている。

 ……だめだな、修行をすると周りが見えなくなる。……悪い癖だ。直さないとだめだと分かっているが……。

 強くなる為には、俺は異常なほどに集中してしまうのだ。それは本能に近いもので、それを御するのは正直不可能だと感じている。こんなだから、デュランにも操られてしまうのだろう。しっかりしなくては。

 

「すまん、ぶっ続けで付き合わせてしまったな。俺の使っているものでよければ毛布があるから、これで寝ておいてくれ」

 

 俺はリュックから丁寧に折りたたんでいる毛布を取り出してバーバラに差し出す。バーバラはそれをおずおずと受け取る。

 

「……テリーはどうするの?」

「俺はもう少し魔法の練習をする。ようやく魔力を感じ始めることができたんだ。早く自分のものにしたい」

「テリーも少し休憩したら? 普通こんな短時間でそれだけの魔法を使うと精神がどうにかなっちゃうわよ」

 

 バーバラは俺の周囲にあるまほうのせいすいの空瓶を見て、心配したようにそう言ってくる。

 

「いや、いい。それにこの程度の修行は日常茶飯事だ。……今は一秒でも惜しい」

「……………そう、テリーがそう言うなら私は止めないわ。じゃあ、無茶しない程度に頑張ってね」

 

 何か言いたげなバーバラだったが、結局それを飲み込んでそう言うと渡された毛布を広げて、その場に横になって瞼を下ろした。すぐに、すぅ、……すぅと寝息が聞こえてくる。よほど疲れていたらしい。そんな状態で文句も言わずに修行に付き合ってくれていたことに心の中で感謝しておく。

 俺は、陽が沈んでも寒くならないように焚火を用意した後に、悲鳴を上げ始めている体を無視してすぐに修行を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに安らかに眠りにつくことができる気がする。

 草原の上に草を敷いて毛布にくるまるという、決して寝心地が良いとは言えない環境。それでも安心することができたのは、一人の青年のおかげだ。

 記憶を失い、誰からも認知されなくなった私を唯一認知してくれた青年――テリー。

 

 テリーは謎の多い青年だった。

 剣技や武術においては、既に神業の域に達しているのにも関わらず、強くなることに異常なほど執着していること。何を目指しているのかと問うも、「強くなる為」と答えになっていない答えが返ってくるだけ。

 バーバラは短い時間しかテリーと関わっていないが、テリーは優しい心の持ち主であると判断していた。しかし、修行をしている時のテリーは完全に別人であり、畏怖を感じるほどであった。修行をしている時のテリーの瞳はどこまでも深く、底知れぬ闇を感じた。その様子からテリーの過去に強くならざるを得ないような何か辛い出来事があったと推測する。だからこそバーバラはテリーにそれ以上何も聞かずに魔法の修行に協力したのだった。

 

 それ以外にもなぜテリーだけが私を認識できたのかが謎だ。テリーは「分からない」との一点張り。なんとなくそう答えるテリーが嘘を吐いているような気がしつつも、今はそれでいいかと思うことにした。いずれその答えが分かる、そんな気がしたから。

 

 いつしか私は深い眠りについていた。

 

 

 

 

 

 ――私は、空を飛んでいた。

 なぜ私が空を飛べているのか、それは私が黄金色に輝くドラゴンだから。

 雷鳴が轟く嵐の中、私は背中に三人の人間を乗せて飛んでいる。

 こうすることに不満や文句は無い。こうすることが自らの血筋に課せられた使命なのだから。

 私が向かう先は、孤島の上にそびえたつ不気味で邪悪な雰囲気を漂わせる巨大な城だった。私はそこに降り立ち、背負っていた人間を降ろすと再び大空へと舞っていった。

 その後、その三人の人間がどうなったのかは分からない。無事であることを祈るだけだ。

 

 

 

 

 

「…………んん」

 

 深い眠りからバーバラは目を覚ます。何か夢を見ていた気もするが思い出せない。

 

 …………もう夜かぁ。

 

 ぼんやりとしつつ、そんな感想を心の中で漏らす。

 目に飛び込んでくるのは夜空を彩る無数の星々。すぐ近くからは焚火独特の炭の香りが漂ってくる。目を向けると、すでに火はほとんど燃え尽きており、熱せられてほぼ炭になった木が僅かに赤くなっていた。

 ちょっと冷えるわね。面倒だけど火を……。

 私が腕を伸ばして丁寧に傍に置かれていた新しい薪を何本かくべて、『メラ』を唱えようとした時だった。

 

 

 

 辺りが真っ赤に染まった。

 

 

 

 次いで急激に熱せられた空気が私を撫でて来た。

 

「え、なになにっ!?」

 

 眠気と寒気が一気に吹き飛んだ私は、慌てて周囲を見渡す。

 私が光源に目を向けると、そこにいた。

 

 

 

 巨大な火球を頭上に携えたテリーが。

 

 

 

 ……あ、あれはまさか『メラミ』?

 え、一日も経っていないのにもう中級呪文を!?

 

 魔法において天賦の才を持つバーバラの感覚をもってしてもあり得ない光景を前に、まだこれが夢ではないかと疑うが、正真正銘これは現実。

 ここで気付いたが、テリーの周囲には数十本もの空き瓶が横たわっている。自分が眠る前にあった空き瓶の量より明らかに多い。これだけ魔力を回復させて魔法を使い続けると普通であれば廃人になってしまう。それほどの量だ。

 しかし未だ意識をしっかりもったテリーは自らが生み出した火球を見据え、

 

「……ようやく、か。……これで魔法使いの道も切り開けたな」

 

 そう満足げに呟いたテリーは、限界だとばかりにそのままその場で大の字になって倒れていく。テリーの集中力の途切れと共に火球も霧散してしまう。

 それを見てバーバラは「ああ、もう!」と、疲れている体に鞭打ち毛布から急ぎ抜け出すと、テリーと地面の間に滑り込む。

 なんとかテリーが地面に倒れる前に間に合うが、バーバラがテリーの下敷きになるような形になってしまう。

 

「お、おっも……。ちょ、ちょっとテリー? 起きてー」

 

 バーバラがそう声を掛けるもテリーから帰って来たのは寝息。疲れ果てて眠ってしまったようだ。

 

 はあ、本当、危なっかしいわね……。

 これまでもこんな生活を一人で送ってきたのからしら?

 なんとなくだけど、テリーって弟っぽいのよね、年齢は同じらしいけど。もしテリーにお姉さんがいたら、さぞかし苦労したんでしょうね。

 

 そんな感想を思い浮かべつつもテリーの穏やかな寝息を聞いていると馬鹿らしくなってきて、まあいいかと思ってしまう。

 ……ま、私もできるだけ支えてあげようかな。とりあえず魔法の修行については目一杯協力してあげよう。そう思うのだった。

 

 

 

 …………で、私はここからどう脱出すればいいのかな?

 

 

 

 その後、か弱いバーバラがテリーの下敷きから逃れるまでに数分を要した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここをこうして、……よし」

 

 カチャリと解錠できたことを確認した俺は扉を開く。

 バーバラと出会ってしばらく経過した俺達は、とうとう『月鏡の塔』までやって来ていた。塔に入る為の扉には鍵が掛かっていたが、そんなものは俺にかかれば意味をなさない。

 

「……テリー、あなたどうして鍵の解錠なんてできるのよ」

 

 ちなみにバーバラはそんな俺を見てドン引きしている。

 

「世界を旅していると盗賊のスキル位、身に付くってものさ」

「…………本当に? テリー、そのスキルで悪い事していないでしょうね?」

「別に。まあ、魔物からアイテムは盗みまくって来たけど。……主に種を」

「種……? まあ、いいけど、悪い事したらだめだからね?」

「……分かってるよ」

 

 最近、魔法使いとして順調に強くなってきていることは喜ばしいが、日を追うごとにバーバラが口うるさい姉のようになってきているのが悩みだ。バーバラ曰く、俺は危なっかしくて見てられないのだと。俺にはミレーユとの思い出は無いわけだが、ミレーユもこんな感じだったのだろうか?

 

 …………まあ、そんなバーバラとのやり取りも今日で終わりだと思うと感慨深いが。

 




沢山の感想ありがとうございます!
正直ドラクエ6が詳しい方が多くて驚いてます笑
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