テリーに転生したので、ネタキャラ扱いされないよう強くなる   作:なー

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第七話

「……こ、これ、本当にテリーが作ったの?」

 

 現実を受け入れたくないという様子で、わなわなと震えながら聞いてくるのは姉であるミレーユ。ミレーユの手には俺が作ったクリームシチューが入った器が握られている。クリームシチューを多めに作ってしまったので(バーバラがおかわりしまくると思って多めに作った)、三人にお裾分けしたのだ。

 『せいすい』を撒いて魔物が来ないことと、料理の香りで食欲を刺激されたのが決定打となり、三人も戸惑いつつ俺の料理を食すこととなった。

 しかし、俺の料理を一口食べたミレーユの様子がおかしい。

 

「そうだが、口に合わなかったか?」

「…………ううん、美味しいわ。…………とっても」

 

 そう答えるミレーユはショックを受けているようだった。小声で「どう考えても私より料理が上手……。私の手料理をテリーに振舞いたかったのに……」なんてぶつぶつと呟いている。普通にミレーユの手料理を食べてみたいと思ったが、何となく触れないほうがいいと判断してそっとしておいた。

 ちなみにレックとハッサンは、

 

「……お、美味しいっ!? …………これはターニアが作るのよりも……いや、ターニアの料理には愛情が含まれているから、ぎり互角か……」

「うめえっ!! これならいくらでも食べられるぜ!!」

 

 と、喜んで食べて貰っている。

 こんなことで驚かれたかったわけではないのだが……。

 というか、これは予想していたがレックには若干シスコンが入っているぽい。まあ、ターニアみたいな男の理想を詰めこんだような妹がいたら普通シスコンになるか。俺も一度でいいから会ってみたいものだ。

 

 ……しかし、パーティー内にシスコンとブラコンがいるのはいかがなものなのだろうか?

 

「……テリー、あなたお姉さんがいたのね?」

 

 俺がなんとも言えない気持ちで三人を眺めていると隣に座っているバーバラが神妙な顔つきで話しかけてくる。

 

「……まあな」

「仲良さそうね……」

 

 そう言うバーバラからはいつもの元気が感じられない。三人と出会う前のやり取りもあって、非常に空気が重い。結局何が原因でバーバラが怒っているのか分からないので俺もどう振舞えばいいか分からない。

 この雰囲気を三人にどうにかしてほしいと願うが、ミレーユは落ち込んでいるし、レックもハッサンも食べることに夢中になってしまっている。

 

「……まあ、そうなのか?」

 

 俺がそう答えるも、ここでバーバラは少し黙り込む。沈黙が俺達を押しつぶさんとのしかかってくる。俺は耐え切れずバーバラから視線を逸らしてちびちびとスプーンでシチューを口に運びだす。

 しばらくするとようやくバーバラが口を開く。

 

「…………ねえ、テリーは、お姉さんと出会ったわけだけどこれからどうするの?」

 

 バーバラの方をちらっと見ると、真剣な眼差しでまっすぐにこちらを見据えていた。驚いて熱いシチューを一気に飲み込んでしまい、むせてしまう。あっつ……。

 

「あぁ、もう、何しているのよ……」

 

 呆れた様子のバーバラは、俺の背中を優しくさすってくれる。

 

 ……しかし、これからか。

 

「まじでうまかったぜ! テリー! じゃあ片付けてとっとと『ラーの鏡』を取りに行こうぜ! テリーとバーバラもそれが目的なんだろ? 一緒に行こうぜ!」

 

 俺がこれからのことについて考えを巡らせようとした時、ハッサンの大きな声によって思考が途切れる。

 

「ご馳走様、テリー。本当に美味しかったよ。そうだね、『ラーの鏡』を取りに行こう」

「……そうね」

 

 レックとミレーユもハッサンに応じる。場が賑やかになる中、バーバラは何か言いたげに俺を見つめるが、「……片付けないとね」と言って食器やら調理器具やらの片づけを始めてしまう。

 

 ……これからのことについて、ちゃんと考えないといけないな。

 とりあえずは『ラーの鏡』だな。

 そんなことを思いながら俺も片づけを始めた。

 

 

 

 

 

 というわけで準備が整った俺達だったが。

 

「…………テリー、本当にその恰好で行くつもり?」

 

 青ざめた表情を浮かべたミレーユが心配そうに問うてくる。

 そんな俺の恰好は、先ほどまでと同様にTシャツ姿だ。流石に腐敗臭の漂う装備を再び身に纏う気にはならない。

 

「何度も言っているが問題ない。こんな所、装備無しでも余裕だ。武器だっていらないくらいだ」

 

 その言葉に嘘偽りは無いし、なんなら思い描いていたシチュエーションとは異なるものの、これから俺の実力を発揮できることを思うと楽しみですらある。三人の驚く姿が目に浮かぶ。

 

「……はぁ、もう分かったわ」

 

 臭かろうが装備を身に付けさせようと必死に説得してきたミレーユだったが、とうとう折れてくれた。ちなみにここまで五分かかった。レックとハッサンは既にげんなりとした様子で俺達を見つめていた。本当に申し訳無い。

 

 ……よし、暴れまくってやる。

 そう静かに心の中で想いを滾らせる俺だったが……。

 

「その代わり私の後方で大人しくしていなさい。テリーには魔物の攻撃を一切届かせないわ」

 

 

 なん……だと……?

 

「いや、姉さん。俺も戦う」

「だめよ」

「でも俺、つよ――」

「だめよ」

「いy――」

「だめよ」

「…………」

「だめよ」

(何も言っていないじゃないか……)

 

 有無を言わさぬ姉のオーラに負けて、俺は戦うことを禁じられてしまった。しかも防御力をあげる『スカラ』を限界までかけられるという過保護なおまけ付きで。

 

「バーバラも下がっておいてくれよ! 美味い食事をごちそうになったんだ。俺達が魔物達を全て打ち払ってやるぜ!」

「そうだね、ハッサンの言う通りだ。ここは僕たちに任せてよ。こう見えても僕達、結構強いんだよ!」

 

 レックとハッサンもこの通りである。

 ……こうなったら無理やり戦闘に参加してやろうか。

 

 

 

「……あ、テリー? もし約束を破って戦闘に参加したら、お姉ちゃん、――『許さない』からね?」

 

 

 

 俺の心を見透かしたように、低い声でそう注意喚起してくるミレーユ。

 笑顔を浮かべているが目がマヒャド状態。弱い魔物なら、この圧だけで逃げていきそうなほど。

 

「はい」

 

 迅速な俺の返事に満足したミレーユは、いつもの笑顔を浮かべて「じゃあ行きましょうか」と振り返っていく。

 ……レックとハッサン、引いているじゃないか。

 流石のバーバラも引きつった表情を浮かべていた。

 

 というわけで俺とバーバラは三人の後からついて大人しく行くことになってしまった。

 ……まあ、いいか。

 ここはレック達一行がどれくらいの実力をもっているか確認させてもらおう。と、無理やり自分を納得させる。

 

 それから俺達は順調に塔の内部を進んでいく。途中、魔物に襲われるものの、三人の巧みな連携によって難なく魔物達を撃破していく。勿論、俺との実力差は大いにあるわけだが、自信をもって任せてくれと言うだけのことはある。魔王を倒す一行だし、これくらいの実力が無いとだめなんだろうが。

 どうも俺が出る幕はなさそうだ、残念。

 

 気の抜けた俺はのんびりと三人について行く。

 やがてこの塔のギミックである最後の水晶玉を破壊して、空中に浮かんでいた建物が地上に降りてきた。後は一階まで戻って降りてきた部屋に入るだけだ。その中に『ラーの鏡』がある。

 

 しかし、ここで一体の魔物が俺達の前に立ちはだかる。

 それは『あくまのカガミ』。巨大で怪しげな鏡の淵を骨で形作ったような見た目の魔物は俺達をじっと観察している。こいつは三人と合流するまで種集めの為に乱獲していた敵だ。……まあ、問題ないだろう。

 

「よし、あと一歩だ! いくぞみんな!」

「おう! 任せろ!」

「ええ! でも油断してはだめよ! テリーも大人しくしておくように!」

 

 ミレーユがその場にとどまり、レックとハッサンが突撃していく。

 次の瞬間、『あくまのカガミ』が呪文を唱えた。

 『あくまのカガミ』の姿がぐにゃりと変形していき、Tシャツ姿の顔の整った美青年に化けていくではないか――あぁ、俺か。

 これは『モシャス』。変身した相手の技を使い、ステータスをHPとMP以外コピーするのだ。つまりこいつは今、俺と同じ――、

 

 

 

 …………あ。

 

 

 

「悪く思わないでね、テリー! はああっ!!」

「ちょっと気が引けるが、仕方ないな! うおおっ!!」

「ああっ!? 変身しているとはいえ、テリーがっ!」

 

 威勢の良い声をあげながら、レックが『はがねのつるぎ』を振るい、ハッサンが『おおかなづち』で叩きつける。二人のコンビネーションの取れた左右からの挟撃(ミレーユは両手で目を覆っている)。

 通常の魔物であればひとたまりも無い二人の攻撃が、俺に化けた『あくまのカガミ』に吸い込まれていく。

 

 しかし――、

 

「え、う、嘘だろう?」

「う、動かねえ……」

 

 敵は、右手でレックの『はがねのつるぎ』を真剣白刃取りで止め、左手でハッサンの『おおかなづち』を受け止めたのだ。それも難なく――まあ、あの程度は余裕だろう。二人が力を込めていることが分かるが、敵は微動だにしない――当然だ。

 ミレーユも二人の戸惑った声を聞き、目の前の光景をその瞳に映すが「え、な、何が起きているの……」と混乱している。

 

 そのまま敵は、レックとハッサンを武器越しに突き飛ばすように力を込める。その見た目の腕からは考えられない力でレックとハッサンは悲鳴を上げながら十メートル以上吹き飛ばされる。心配だが吹き飛ばされた位ならあの二人は大丈夫だろう。それよりも敵の手にはレックが持っていた『はがねのつるぎ』が握られている。吹き飛ばした時にレックから奪ったのだ。これはまずい。

 

 「ちょ、ちょっとテリー、これまずいわよっ!」

 

 バーバラも流石に状況がまずいと判断し、俺に逼迫した声をかけてくる。

 

 ――分かっている。

 ただ、やみくもに突っ込むわけにもいかない。相手は『俺』なのだ。

 俺が狩っていた時は、敵に行動させる前に倒していたから『あくまのカガミ』の脅威を忘れていた。まさかこんな穴があろうとは……。

 

「……バーバラ、隙を見て援護頼む」

 

 俺がバーバラに声を掛けると同時に敵は、目にも止まらぬ速さでその場から消えると、まっすぐにミレーユの元まで超速で迫ってくる。ミレーユは敵の動きを捕捉することができず、呆然と立ち尽くしている。敵は『はがねのつるぎ』を振りかざし、ミレーユに切りかかる。

 

 

 

 ガキイイイインンッ!!!!

 

 

 辺りに金属同士が激しくぶつかり合う音がまき散らされる。

 

 

 

「…………姉さん、これは許してくれよ?」

 

 

 

 ミレーユを守るように敵の前に立ちはだかり、自らの剣で敵の剣を受け止めた俺は、ミレーユに恐る恐るそう声を掛けた。

 




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