東方外来禄 -往年幻想物語-   作:くりすてぃあーね2世

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巻ノ二十六 偽りの性

 

 

────海で生まれた生命は、生き残りを賭け長い間闘争を繰り広げた。

やがて海は穢れ、生き残った勝者だけが地上に進出した。

 

陸上では更に生き残りを賭けた壮絶な闘いが繰り広げられ、その中で進化を遂げた者、子孫を繁栄させた者、諦めて海へ戻っていった者もいた。

闘いの勝者はほんの一握りであり、多くの生命種は戦いに敗れ絶滅した。

 

生命の歴史とは戦いの歴史である。

 

血塗られた世界には多くの"穢れ"が存在し、全ての生き物へ平等な死を与えた。

本来ならば永く存命出来る種も、穢れに犯され寿命を迎える。

 

しかし、穢れが与える生死の影響に気付いた賢者がいた。

賢者は満月が海面に映るのを見て、穢れた地上を離れる決意を固めた。

海から地上へ、地上から空へと移住するように、賢者は地上から月へと移り住んだ。

 

後に"月夜見"と呼ばれ多くの月人に慕われ、月の都の開祖、夜と月の都の王と呼ばれる偉人となる者であった。

 

 

 

 

*

 

 

 

 

荒廃した大地の樹木の下で眠っていた彼は、眼を覚まして驚愕した。

今まで砂塵が舞い、妖怪以外の全ての生物が死滅した世界から、緑の豊かな美しい草原に移り変わっていたのだから。

 

眼を覚ました彼は、ふと自分の近くに転がり落ちていた蝶の死骸に目がいった。

その紫色の蝶は、始めこそ何の変哲もない死骸と思っていたが、手にとって調べてみると、それは機械仕掛けによるものだと理解できた。

一体何処の誰がこんな物を置いていったのか。いや、何故自分がこんな場所に居るのか。彼の脳は混乱した。

 

夢だと思って立ち上がってみると、自分の容姿は砂埃塗れ。妖怪の体液が衣服や肌に付着し、その上を黄土色の砂が飾っていた。

 

"夢などではない"

 

彼はそう静かに思考した。

この場に広がる美しい自然は夢ではなく、先程まで存在していた荒廃した土地に居た事も、夢ではなかった。そう彼は判断した。

 

緑豊かな草原を彼は歩き出した。

こんなに綺麗な大地なのだから、人が住んでいても不思議ではないと思いつつ、彼は歩く。

けれど彼は、人と会うことに恐ろしく恐怖していた。。

今まで誰とも会話をしない、言葉すら発さない。そんな異常な生活を続けていたのだ。

まともな応対など出来るはずがない。もしかしたら喉が潰れていて、喋る事ができないかもしれない。

 

様々な思考を続けるうちに、やがて彼は足を止めて座り込んだ。

そして考えを巡らせる。

自分はもう壊れている。人を探し歩いて何になるんだ。また酷い事を言われるかもしれない。もしかしたら怪物扱いされて襲われることだって。

 

草原の中、埋もれるようにして座り込む彼は、その場から動こうとしなかった。

やがて昇っていた"太陽のようなもの"が沈みかけると、周囲は綺麗な夕暮れ模様を呈した。

そよ風の心地良さに、このまま一生誰とも会わずに此処にいたい、と。そう思考した。

故に、彼は自らの背後に忍び寄る気配に気付く事はできなかった。

 

気配の主は彼に近付くと、言葉を投げかけた。

 

「────君、此処で何をしている」

 

不意に言葉をかけられた彼は驚き、その場から飛び起きた。

声のする方へと瞬時に身体を向けるが、不意の出来事や疲労の為に、後方へ倒れ尻餅をついてしまった。

 

「落ち着きたまえ。僕は敵ではないよ」

 

気配の主は、若い男であった。

綺麗な白いスーツを纏っており、機能的とも取れるそれは、まるで制服と軍服を混ぜたようなアクティビティさえ。

反対に、彼はどうだ。ボロボロで色扱け、砂埃で染まった衣服であり、とてもではないが褒められる状態ではない。

若い男……青年は彼に近付くと、そっと手を差し伸べた。

 

「一緒に来たまえ」

 

青年はそれだけ言うと、黙って手を差し伸ばしたまま。

彼は訝しげに思ったのだろうが、それを言葉にする事は無くただ、俯いていた。

しかし、青年の一言によりその均衡は破れる。

 

「どうせ行く当てはないのだろう」

 

その言葉により、彼は青年と一緒に行く事を決意した。

否、決意というよりかは流された。行く当てもなく、身寄りなど端から存在しない彼に、頼るべき導となる者が存在しなかったのだから。

 

 

 

────此処から先は、彼の物語である。

彼が月の都で織り成す出来事は、彼だけの物語。それは彼だけの思い出。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

────此処は何処だ。

まるで酷い夢を見た後のような不快感が、頭の中に長く残っている。

酷く荒んだ地で生活を余儀なくされていたのに、今度は見た事も無いような"都市"が僕の視界一杯に広がる。

 

口内も酷い味。

肉の粕や砂利が混ざった感触がひどく不快である。

 

俺を連れて行くこの若い男は、一体誰なんだろうか。

その気になれば不思議な力で殺す事も出来る。

ひどく短絡的な思考に嫌気が差す。あまり考えたくはない。

身体も異常に軽く感じる。まるで重力が働いていないかのような、不思議な感覚。

 

暫くの間、男に連れられるがまま、車のような乗り物で移動をした。

何故か俺には真っ黒なコートを頭の上から被らされたが、恐らく他人の目に触れないようにしたのだろう。

最早成るようにしか成らないという事は明確であるし、俺がどうこうした事で事態が好転する事はない。

 

 

 

間もなく青年の自宅らしき場所に到着したのか、高速で動いていた乗り物が停止した。

到着して俺は直ぐに降ろされ、建物の中に案内された。

建物の様式は俺が知っているような現代日本調のものではなく、近未来的なシャープな造りをしており、それに伴い周囲の装飾なども施されていた。

青年の着ている衣服も近未来的なものだし、恐らく此処は地球の何処とも知れぬ異世界なんだろう。

 

 

室内に案内されてまず最初に、分厚いタオルを投げ渡された。

青年は俺に向けて「汚れを落としてきなさい」と言われ、浴室まで案内された。

一体どういう思惑なのだろうか、俺には到底理解できない。家無き子を助けて偽善者ぶるつもりなのか。

 

言われるがままに浴室で汚れを落とした。

機能的なシャワーが設置されていて、使い方が分からなくて冷水のままシャワーを浴びた。

シャンプー何かも色々置いてあったが、使わなかった。

身体に付着した水分を先程の分厚いタオルで拭き取り、俺が今まで服が脱衣所に置いてなく、仕方なく変わりに置いてあった服を着用した。

肌触りの良い白いネックシャツに、黒いハーフパンツ。どれも現代で使われている素材に酷似しており、ストレッチが効いていてとても着心地が良かった。

 

とりあえず、青年の居るリビングらしき場所に戻る。

俺が戻ってくると、青年は何かを見ていた。

恐らく日本でいうテレビと呼ばれるものなのだろうが、この世界のテレビは映像が完全に立体化しており、まるで直ぐ傍で演じられているようなリアリティー、躍動感があった。

 

「やあ、終わったのかい」

 

青年がそんな事を言って、グラスを渡してきた。

何が入っているのか分からなかったので、俺はずっと持ったままにして飲む事はしなかった。

 

「毒なんて入ってないよ。ま、座りたまえよ」

 

青年がそう言い促してきたので、ソファーの上へ座った。

ふかふかで座り心地がよく、中に暖房器具が入っているのか、暖かさすら感じられた。

とりあえず手渡されたグラスの中に注がれた液体を飲んでみる事にした。

中身はただの水であった。

 

「……ありがとうございます」

 

掠れるような声でそうお礼だけ言った。恐らく助けてもらったのだろう、何も言わないのは失礼な気がしたのでお礼を述べたが、掠れて自分でも何を言っているのかわからなかった。

 

「声が出せないのか。無理もない、あんな状態だったのだからね。少し待っていたまえ」

 

青年はそう言うと、リビングから何処かへ移動した。

暫くして戻ってくると、青年は飲み薬のようなカプセルを幾つか僕に手渡してきた。赤色と青色の、奇妙なカプセルだ。

「飲みたまえ」と青年が言ったので、俺はそれを飲み込んだ。

 

飲み込んで暫くすると、喉が焼けるように痛み出した。

腹部も物凄く熱を感じ、喉の奥から胃液が逆流してくるような、激痛が走る。

余りにも酷い激痛だった為、気付くと不思議な力が反応して暴走していた。

 

何もかも切断したり、分解したり出来る不思議な力。

この力のおかげで、僕は今まで生き残る事が出来た。今回もきっと、この力が頼りになる。

能力が青年を殺めようとしていた時、慌てたような声で青年が言葉を放ってきた。

 

「待て待て、落ち着けよ。それは薬の副作用みたいなものだ。痛いのは始めだけだよ」

 

「な、何を……ッ」

 

青年が諌めたおかげで、リビングに置いてあったテーブルや、花瓶がバラバラになっただけで済んだ。

酷い激痛がする中で声を振り絞ると、なんと声を出す事が出来た。

今まで長い間、声など出しはしなかったのに。

今ならオペラ歌手のように、自在に声を出せるかもしれない。口の中の嫌悪感も、綺麗サッパリ消えていた。

 

俺は何という勘違いをしてしまったのか。

助けて貰ったのに暴れてしまったとは。俺は申し訳なくなり、青年に向けて謝罪をした。

 

「……すみません、悪い事をしてしまいました。ごめんなさい」

 

失くしかけていた言葉を選び、謝罪する。

自分でも驚くような声を出す事が出来る。とても綺麗な高い声である。喉にも痛みは感じない。

 

俺が謝罪をすると、青年は驚いたような表情で僕に向けて言葉を放った。

 

 

「おや。君は女の子なのかい」

 

静寂の中、立体テレビショーの音声だけが、リビングに響き渡っていた。

 

 

 

*

 

 

 

本当は気付いていた。異世界に生み落とされた、その時点で。

自分が"女性"になっていた事に。

ただ、その事実だけは受け入れまいと、今まで目を背けていただけ。

 

今まで他人事だと思っていた性転換の病気なども、いざ自分の身に降りかかると大変な事だと気付いた。

尤も、それ以上に凄惨な現実が待ち受けていた事により、それどころではなかった……事実から目を背けられてきた。

 

だが、こうして他人に保護される事により、露呈される事実もあるのだ。

俺は男である。しかし、現実は女としての身体で生きる事を余儀なくされている。

 

 

「あらためて、何か飲むかい? 僕は頂くが」

 

青年はそう言い、キッチンのある方へと向かっていった。

俺は何も言葉にする事が出来ず、ただただ俯いていた。

 

青年はマグカップに入れた珈琲と、グラスに注いだ麦茶の二つを持って戻り、グラスの方を俺の方へと渡した。

 

先ずは事情を話さないと。変な勘違いをされたくはない。

そう思った俺は、珈琲を飲み始めた青年に向けて経緯を説明した。

日本という国に居た事、気付いたら荒廃した土地にいた事、そして女性の身体になっていた事、ありのまま全てを。

 

珈琲を半分ほど飲んだ青年がそれを卓に置き、少し間を空けた後に言葉を紡いだ。

 

 

「ふむ。ざっと事情は把握したよ。推測するに、君は"外来人"だね」

 

「……外来、……?」

 

青年は"外来人"という言葉を紡ぎ、意味が分からない俺は言葉を繰り返した。

 

「外来人とはその名の通り、外から来る者の事だよ。君のような境遇の人を総じて外来人と、そう僕は呼称している」

 

「……そうなんですか」

 

「君は日本の何処から来たんだい? "トーキョー"かい?」

 

青年はそう質問してきたが、一つの違和感を覚えた。

微妙なアクセントの違いと、何故青年が日本の事を馴染み深そうに質問するのか。

俺はその事を青年に質問した。

 

「……ま、僕の事は良いじゃあないか。それよりも、君の事を教えてくれよ」

 

青年はそう言い、質問の回答を促す。

特に隠すことでも無かったので、質問に答えていった。

逆に俺の方からも知りたい事が山のようにあったので、それも合わせて質問をしていると、いつの間にやら時刻は夜深くなっていた。

 

 

青年は俺の事を持て成してくれた。

熱い手作りの料理を振舞ってもらい、更に寝床まで提供してくれた。

久しぶりに食べる人間が作った料理は、感動する程美味しく、涙が溢れた。

ベッドもふかふかだし、羽毛の優しい感触に、いつまでも寝ていたいと思えるほどだ。

 

 

何故赤の他人である青年が俺の事を保護してくれたのか、そこまでは分からなかった。

けれど、此処が何処なのかは青年が教えてくれた。

どうやら此処は"月"に作られた都市であり、その中でも俺が居る場所は地方に位置しているらしい。

 

俺が生活していた現代では、月に都市を作るどころか、月面に着陸する事が精一杯だったと記憶している。

更に俺のイメージとして、月は灰色……つまり、岩盤しか存在しない世界だとばかり思っていたが、青年が説明するにそこは"表側"に過ぎず、

裏側では太古から人間が移住し、都市を建てて繁栄したのだ、とそう説明をしてくれた。

 

青年は、暫く回復するまで居候しても構わない、と俺を保護してくれる旨も告げてくれた。

俺はお言葉に甘える事にし、暫くの間世話になる事になった。本当に助かる。

 

 

*

 

 

そうして数ヶ月程の月日が経過した。

 

身体の面ではすこぶる回復したのだが、心の傷が癒える事はない。

過去の出来事や女の身体として生活する事は、いつまで経っても受け入れられない事実であった。

 

青年と自己紹介をした事もあり、互いに名前は知り合っている。

俺の名前は天野義道。有り触れた名前であり、自身としてはあまり気に入っていない。

青年の名前は"羨道"というらしく、不吉な名前だなと思った。

けれど実は、それは本来の名前ではないらしく、本当の名前は昔に捨てたらしい。

 

此処は月の都から少し離れた地方都市だという事もあり、人口も少ない。

青年……羨道が住む家の周囲には、人の住む家は少ない。

その為買い出しに出る時は月の都まで赴く必要があり、数ヶ月に一度月の都に行っている。

 

しかしながら俺が一緒に生活しているせいで、買出しの頻度が増えており、出費も比例して大きくなっているようだ。

あまり長くは居る事が出来ないと考えた俺は、羨道に向けて話をする。

 

 

「羨道さん」

 

「なんだい、天野君」

 

女の身体という事もあり、声質が男性よりも高くなっており、あまり喋りたくはない。

けれども無言で生活する事は不可能な為、喋る時はキチンと喋る。なるべく低い声を意識して。

数ヶ月も共に生活しているという事もあり、互いに若干ではあるものの打ち解けてはいた。向こうがどう思ってるか知らないが、少なくとも俺はそう。

 

「そろそろ、だけど。あまり長く世話になってしまっては申し訳ない。そこで一人で暮らそうと思うんだけど、何かアドバイスを貰えないだろうか」

 

話とは一人暮らしの事であり、月の都がどういう世界なのかを知らない俺は、知識人に訊ねる他なかった。

羨道は僕の質問を聞くと、少し驚いたような表情をした後に、面白そうに表情を崩して質問に答えた。

 

「それが君の選択なら、僕は止めないよ。そうだね……都なら、物件が余っているかもしれない。都市部だから割高になってしまうけどね」

 

「そっか……。あ、仕事とかも。お金を稼がなくちゃあ、生活が出来ないし」

 

「仕事か。悪いけど、僕の仕事は少し特殊だから紹介はできないな。そうだね……都市部になら仕事は沢山あると思うけど」

 

羨道はそう言ってリビングの隅っこの方へ避けられていた雑誌を手に取ると、ページを捲った。

数十ページ程捲った後、俺のほうへ雑誌を寄越して見せてくれる。

 

「見てごらん、このページ。職種ごとに求人情報を掲載しているんだよ。興味があったら目を通すのも悪くないと思う」

 

「おお、ありがとう羨道さん。…………へぇ、コックとかも募集してるんだね」

 

開いたページには、未経験者歓迎でコックの求人内容が掲載されていた。

過去に調理経験のある俺にとって、興味心を擽られる内容であった。

その求人内容を羨道に見せると、少し悩んだような表情で僕に言葉をかける。

 

「へえ、調理師か。とても素晴らしい職業だと思うけど、もう少し読んでみたまえ」

 

何か言い辛そうに羨道がそう言うので、僕は掲載されている求人内容の下方まで目を通した。

するとそこには小さめの文字で、"選考対象は成人男性のみ"と表記されていた。

一瞬羨道が何を言いたかったのか分からず、怪訝な表情をしたが、よく考えてみれば俺の身体は女である。

たとえ心が男でも、身体が女性では選考の対象外になってしまうのだろう。俺は静かにページを閉じた。

 

 

「…………酷い話だね」

 

これが俗にいう男女差別というやつなのだろうか。今更ながら、納得がいかない。

 

「落ち込む事はないさ、次を探せばいい。ほら、この仕事はどうだい?」

 

羨道が雑誌を捲り指差した先にある記事は、警備の仕事であった。

掲載されている内容は豪華に仕立てられており、職務内容や待遇など事細かに掲載されている。

 

「綿月家専属の警備隊の仕事。由緒正しき綿月家の下で働けるのだからね、応募者も山のようにいるだろうけど」

 

「そうなのか。こういった仕事はあまり好まないんだけどなぁ……」

 

「それなら他を探せばいいさ。天野君にとって好条件だと思ったのだけどね、寮が付いていて待遇も良いし。何よりもあの綿月家だ、悪いようにはされないだろう」

 

「……どうしてそんなに勧めるの」

 

自分なりに低い声色で、羨道に向けてそう質問した。

 

「綿月家の直轄する研究所に、僕の知り合いがいてね。天野君が綿月家に取り入れば、僕としても仕事がし易いと思って」

 

「たかだか警備員ごときに取り入ったところで、利益はないと思うんだけど」

 

「そうだね。でも天野君が一介の警備員から、綿月姉妹の親衛隊になれば話は変わってくる」

 

「……俺がそんな出世、出来ると思っているの」

 

羨道は言葉を続ける。

 

「さあね。そりゃあ君の腕次第さ。けれど悪い話ではないと思うんだけどね。僕は研究所で仕事をしている……薬の調合を主としていてね。

簡易な魔法と優れた薬があれば、君を男にする事も可能かもしれない」

 

「……ごめん、もう一度言って」

 

「魔法の話だよ、性転換のね。薬を使って性転換をする事は月の法律で禁止されているが……、魔法で性転換をする事は禁止されていない」

 

突然、羨道がよく分からない話を始めた。

僕が唖然として聞いていると、羨道は言葉を続ける。

 

「魔法によるものならば、それは一時的なものだからね。後は優れた薬を作る方法だが……それには綿月家の所有する研究所から、調合に必要な材料を手に入れなければならない」

 

調合に必要な材料と言った後に、ヤゴコロがどうの、等と言いのたまっていた。

何の事か分からないし、今はそれよりも気になる事がある。

 

「……もしかして、俺がそれを盗んで来ないといけないのか」

 

「そんな事をする必要はない。天野君がそれを貰ってくれば良い、合意を得てね。その為には相応しき地位と、名誉を手に入れなければならないよね」

 

「……たかだか一介の警備員が」

 

「綿月家は実力至上主義なんだよ。実力のある者は、出身を問わずに出世する事が出来ると有名でね。他の名家には無い事だね」

 

何となくだが、合点がいった。

俺が綿月家の警備員として取り入り、名をあげて出世した後に、研究所から薬に必要な素材を入手すれば良い。

そうすれば羨道が性転換に必要な薬を作る事ができ、後は簡易な魔法があれば……

 

 

「……魔法ってのはどうすればいいの」

 

僕がそう質問をすると、羨道はおどけた表情で答える。

 

「それは天野君が自分で考えたまえ」

 

羨道の言葉を皮切りに、リビングは静寂に包まれた。

立体テレビショーの音声だけが部屋中に木霊し、俺はグラスに注がれていた麦茶を飲み干した。









新成人の皆様、ご成人おめでとうございます。
私も可能ならばもう一度成人式に参加したいですね、良い思い出です。

外来禄に関しましては、現行編の主人公の秘密となる部分が露呈しました。
過去編を執筆する際に、いくつかテーマを決めて執筆しております。
現代風、そしてギャップですね。
あくまで過去編のテーマなので、作風に大きく影響される事はないかと思われますが、よろしくお願いいたします。
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