セカンドインパクトの影響で四季の移ろいを失い、年中ギラついた太陽が幅を利かす常夏の島国となって久しい日本だが、その日はいつにも増して暑かった。
容赦なく降り注ぐ灼熱の陽射しと、へばりつく様な湿った空気。外を歩いているだけで全身から汗が吹き出し、カラカラに乾いた喉が涼を求めて喘ぎを漏らす。
「あついね…」
「そうね…」
そんな焼けつく様な猛暑の中、ふらふらの足取りで下校道を行くのは、少年と少女の二人組。
「はぁ…」
「ふぅ…」
うだる暑さに耐えかねて、しきりにため息を漏らしながら。
「はやくかえろう…」
「えぇ…」
シンジとレイは、汗ばんだ手と手をしっかりと握り直した。
今年一番の猛暑を記録したこの日は、よりにもよってシンジとレイがいつにも増して『したい』日であった。
「……」
「……」
繋がれた手から伝わる互いの体温が、真夏の外気に熱った二人の頭をいっそう甘やかに溶かしてゆく。
「……」
俯きがちに歩くレイが、小さな親指でシンジの手の甲をすり、と撫でる。シンジはドキリと心臓を跳ねさせながら、夏の陽射し以上の熱がこもった目でレイを見た。
しっとりと濡れて艶めく空色の前髪。伏目がちな瞳。上気した頬。真っ白な肌の上をつつと流れ落ちてゆく汗の一滴。それら全てがシンジの胸を切なく疼かせ、目頭を熱くする。
隣を歩く愛しい人の白い喉元から、目が離せない。今すぐそこに唇を寄せて彼女の熱を感じながら、自分の証を刻みつけたくてたまらない。カラカラに渇いた喉をごくりと鳴らし、シンジは身体の奥底から湧き出し続ける若い衝動に甘く酩酊した。
「…あやなみ…」
かすれた声で囁くシンジが、信号待ちで足を止めたレイにそっと顔を寄せる。レイはぴくりと小さく目を見開き、すぐにぎゅうっと切なげに細めた。赤くなった頬をよりいっそう赤くして、恥じらう様に俯きを深くする。
「…ん…」
か細い声を漏らしながら、レイは繋いだ右手の五指をシンジの五指にしゅるりと絡みつかせた。隣から突き刺さる視線が更に熱ぼったいものになり、彼女の胸をドキドキと高鳴らせる。自分を欲しがるシンジの熱が、欲しくて欲しくて仕方がない。
レイはシンジにそっと顔を擦り寄せ、彼の唇の端に自分の唇の端をほんの少しだけ擦れさせながら、囁いた。
「…まだだめ…」
濡れそぼった囁きが、シンジの唇を悪戯にくすぐる。
「っ…、あやなみ…」
衝動的に唇を合わせようとするシンジ。レイはするりと顔を下げてシンジの求愛を躱し、彼の肩に頭を預けた。
「もうすぐ、家、だから…」
「あやなみ…」
「もう少し、だから…ね?」
「…うん…」
信号が青に変わり、ゆっくりと歩き出す二人。
小さな二人の小さな歩幅は、レイが住む団地が近づくにつれて、忙しないまでに大きく広がっていった。
『あつくて、したくて。』
お目汚し失礼しました。