きりのいい所で切ったら、物凄く短くなった……。
明日には続きを上げます。
「……始まったか」
遠雷のように響く砲声に、私は少し感慨深く呟く。
『……少佐、味方は大丈夫でしょうか……?』
「なに、ガルマならば保たせてくれるはずだ。
その間に、我々は我々のできることをせねばならん。
味方を思うならば、今に集中することだ」
『はい……』
私の言葉にエリスは頷く。
私の率いるリザド隊は現在、連邦との戦闘には参加していない。
私の役目、それは……。
『少佐、捕えました。
最大望遠、10時方向の岩場。
情報通りビックトレー2隻を含む敵の中枢です!』
「ごくろう……」
クスコの声に、私は頷いた。
そう、私の率いるリザド隊の任務は、こちらの最大の懸念事項であり敵の司令部でもあるビッグトレー2隻を撃破することである。
大軍同士のぶつかり合いはまともにやっても双方に出血を強いられ、互いに体力を奪われていく。しかし、連邦はまだしもジオンにはそんなものに付き合っていられるような体力は無い。
そのため早期決戦が必要となるが、その手段として頭を潰すという策に出たのである。ビッグトレーを潰すことで混乱する連邦軍を押し返し大出血を強いる。そしてこの北米に対する反攻作戦をしばらくの間頓挫させようというのが狙いだ。
「これだけ濃いミノフスキー粒子下だ、未だあちらも気付いていない。
奇襲を行いビッグトレーの連邦の上層部を叩いて、敵の指揮系統を混乱させる……言葉にすれば単純だが、61式戦車約100両の弾幕の中に飛び込まねばならん。
我ながら、正気の沙汰とは思えんな」
『……』
通信機の向こうで全員が息を呑むのが分かった。
「しかし、諸君らの乗るドワッジの性能、そして今までの訓練の成果を、実戦で培った実力を信じろ。
諸君らならこの任務を全うできると私は確信している。
では……リザド隊、出撃!!」
『『『『了解!!』』』』
私はそう言ってペダルを踏むと、私専用のドムが猛然とした勢いで進み始める。
私のドムは決戦仕様とも言うべき重装備だ。今回は多量の敵と戦うことが予想されるため開発されたばかりで装弾数の多いMMP80マシンガンを装備し、前腰のアーマーにその予備弾装を装備。後腰にはジャイアント・バズとその予備弾装を2つ、左右の腰にはパンツァーファウストを2本に背中にヒートサーベルである。
その私の隣を走行するのは副隊長のクスコのドワッジだ。
装備はジャイアント・バズにその予備弾装4つ、パンツァーファウスト2本に背中にヒートサーベルである。もっとも標準的な装備だ。
私とクスコの後ろにはエリス、ニキ、レイチェルのドワッジが付いてきている。
エリスのドワッジは両手にMMP80マシンガンを装備し、前と後ろの腰アーマーにその予備弾装を4つ、左右の腰にはパンツァーファウストを2本に背中にヒートサーベルという装備だ。ばら撒きによる制圧射撃を中心で考えられた装備である。
ニキはジャイアント・バズにその予備弾装4つに背中のヒートサーベル、そして面白いことにグフ用のシールドを装備していた。シールド内部には3連装ガドリングガンの設置されたタイプで、手に持たなくても射撃ができる。本来重装甲でシールドを用いないドワッジだが、仲間のフォローに廻ることが多いニキは、仲間を庇い、攻撃にも転用できるこのシールドを好んでいた。彼女らしい武器選択である。
レイチェルはMMP80マシンガンを装備、その予備弾装を前に1つ。腰にはジャイアント・バズに後ろの腰にその予備弾装1つ。右の腰にはパンツァーファウスト1本に背中にヒートサーベル、そして左の腰の前後にはクラッカーを装備していた。これも乱戦への突撃を好むレイチェルらしい装備と言えよう。
この5機で、ビッグトレーに向かって突っ込んで行く。
「!? 気付かれたか!!」
こちらに気付いた61式戦車たちが、こちらに車体を向けようとしてくるがそれより早く、私はパンツァーファウストを撃ちだしていた。61式戦車の一団のただ中で炸裂したパンツァーファウストの爆風が61式戦車をなぎ倒す。
「つづけぇぇぇ!!」
私はMMP80マシンガンを乱射し、その戦線に穴をこじ開ける。
それに続いて、クスコたちも思い思いの武器を撃ち込んで61式戦車たちの陣形に穴を開けた。
「普通にやっても61式戦車の主砲は動きまわるドムを捕えられん!
絶対に足を止めるな!
各機連携を怠らずに進め!!」
『『『『了解!!』』』』
我々の動きに、明らかに61式戦車は混乱して統率を失いかかっている。
これならば……私がそう思った瞬間だった。
「ぬっ!?」
私はドムをロールさせながら急速旋回させると、そこを砲弾が通り抜けて行った。
今のはマグレではない。明らかに私を狙い、当てに来ていた。
見ればそこにいたのは連邦のザクⅡだ。180mmキャノンを装備し、その銃口から硝煙がたなびいている。
その横には連邦のシールドを左手に持ち、右手には100mmマシンガンを構えた連邦のザクⅡがいる。
「角付き……隊長機か」
油断のないその動きからは相当の技量が見て取れる。
その瞬間、エリスたちの声が通信機から響いた。
『隊長! こちらに連邦のザクが2機護衛に付いています!
つ、強い! 当たらない!?』
『エリス、下がって!』
『ニキ、このままだとエリスが挟まれる!?
私が突貫するから援護して!!』
どうやら苦戦しているようだ。しかしドワッジに乗ったエリスたちを苦戦させるとはこの直衛のザクに乗った連邦パイロットたちは明らかにエースだ。
特に角付きの隊長機からは強者の気配を感じる。
「しかし、前線ではなく自分たちの護衛にこれだけのエース部隊を温存できるとは……連邦の人的資源はうらやましいな」
『……どうします、隊長?』
「やることは変わらん。
あの2機を突破し、ビッグトレーを叩くぞ!
クスコ、援護しろ!」
『了解です、隊長!』
私はドムのモノアイを激しく動かして周囲を見ながら、その2機のザクに向けてペダルを踏み込んだ。
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「へっ! こんな後方に配置されて腐ってたけどよ!
俺たちゃツいてるな!
ジオン野郎に鉛玉を味わわせてやる!」
『おう、3匹もいるんだ。
俺にも残しとけよ!』
連邦のパイロット、ベルナルド・モンシア中尉は僚機のアルファ・A・ベイト中尉に答えて、手にした100mmマシンガンを乱射する。
だが、その攻撃を3機のドワッジは高速で回避する。
「ちっ! やっぱスカート付きは速ぇな!
当たりゃしねぇ!」
モンシアがそう舌打ちすると、それに答えるように通信が入った。
『やれやれ、情けないですね。 そんな無名の雑魚を墜とせないなんて。
こちらは大物、『
通信機の先、チャップ・アデル少尉から飛び出した名前に、モンシアは度肝を抜かれる。
「マジかよ! 勲章もんの獲物じゃねぇか!
俺達にも残しとけよ!」
『死体撃ちくらいなら、させてあげますよ』
そんな風に軽口を叩きあうモンシア、ベイト、アデルの3人に怒号が飛んだ。
『こら貴様ら! 戦場で何を話しとるか!!』
彼ら3人を率いるサウス・バニング大尉である。
『戦場で手柄の話などするな!
そんなことを気にしている暇があったら、敵を倒し生き延びることに集中しろ!!』
『『『りょ、了解!!』』』
いかにモンシア、ベイト、アデルの3人とて、バニング大尉には敵わない。萎縮し、借りてきた猫のように大人しく返事をするとモンシアとベイトは目の前の3機のドワッジへと意識を集中させる。
モンシアとベイトの足止めによって時間ができたせいで、61式戦車部隊が集結しつつある。
「おい、スカート付きの足をやるぞ!」
『任せろ!!』
モンシアの100mmマシンガンとベイトの構えるロケットランチャーが火を噴く。それは動きまわるドワッジの足を狙っていた。
そしてそのうちの1機に100mmマシンガンが当たり、その動きが止まる。
『いまだ!!』
ベイトのザクⅡの放ったロケットランチャーが、そのドワッジの左の膝に直撃した。
左足が吹き飛び、その加速のままドワッジが派手に倒れ込む。そこに61式戦車がトドメを刺そうと火力を集中させた。
だが、その一斉発射は割り込んできた2機のドワッジによって防がれる。1機のドワッジは盾を構え、もう1機のドワッジは右腕を盾に使って仲間を守ったのだ。
1機の盾が砕け、もう1機のドワッジの右腕が派手に吹き飛ぶ。
「ケッ! 仲間を庇うってか。泣かせるじゃねぇか!
でもな……戦場にはレフリーも審判もいねぇんだよ!」
そしてモンシアはトドメを刺すべく、ヒートホークを抜き放った。
「死ねよや!!」
必殺のヒートホークがドワッジへと迫る。