密かにアイドルを目指していたら「君となら命の重さを知れるかもしれない!」と半狂乱の大看板俳優に狙われ始めた   作:SUN'S

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神木ヒカルは「自分で『殺す』より意図せず言いなりになる『過程』こそ大事だ」と楽しそうに話す。そういうのは私以外に話してほしい

彼女は僕の希望とも言える女性だ。

 

自分の命の重さを感じる事の出来ない僕と同じように彼女もまた自分の命の重さを感じる事が出来ていない。それゆえに彼女は過激な演技を率先して受けたり、どこか形容しがたい威圧感を僕達に与える瞳に見入ってしまう役者が続出している。

 

「キヒャハハハハハハッ!!死んだッ!死んだぞォッ!!!私のイタみをおもい知れ!このクズ!クズ!クズ!クズ!クズ!クズ!クズ!クズ!クズ!クゥゥズッ!!あっ、コワれちゃったあぁ……クヒッ、ケヒャヒャッ!」

 

そう言って倒れ伏す人の背中や頭を平気で踏みつけ、ゴツッ!ゴギッ!ゴリュッ!という骨や肉の砕ける音が響き渡る。

 

ああ、いいっ、すごくいいよ♥

 

「カァーット!さすがにやべぇよ、泉ちゃん」

 

「………だめですか?」

 

「ありゃあね、マジでやばいね。うん」

 

ちらりと僕を見て泉は考え込む。

 

どうしたのだろうかと僕も考えていると彼女は顔をあげると一直線に僕のところにやって来た。僕は柄にもなくワクワクしながら彼女の言葉を待つ。

 

しかし、彼女は僕ではなくうだつの上がらない三流役者の上原清十郎の近くに行き、どこをどうすればいいのかと訊ねている。ふふっ、君の教育係は僕なんだけどなあ……。

 

ふと上原さんが僕を見て勝ち誇ったように笑顔を向けてきた。へえ、そんな顔もするんだ。いつも恨めしそうに僕達を見ているのに、ちょっと相談されただけで舞い上がるなんて。

 

彼はほんとにかわいそうだ。

 

「泉ちゃん、はじめるよ!」

 

「はい、すぐ行きます!」

 

彼女が僕の横を通り過ぎるときに「上原さんは殺しちゃダメですよ」と呟くように言われた。なるほど、なるほど、彼女の標的ってわけだね。

 

上原さんは演技のアドバイスをしているつもりなんだろうけど。彼女からすれば貴方はオモチャのようなものだ。

 

もしかしたら僕も彼女にとってオモチャなのかもしれないけど、それはそれで面白そうだ。そんなことを考えながら彼女の演技を眺める。

 

彼女がやっているのは『恋人に裏切られたと思い込んで復讐に走った勘違い女の役』という女性としてはやりたくない役だろう。だが、泉はそれを当たり前のようにやっている。

 

「やはり神木君のおかげかな?」

 

「いえ、彼女の才能ですよあれは」

 

僕は演技を終えて休んでいる「劇団ララライ」の仲間に話し掛けられ、ほんとうに事実を話す。しかし、彼は「はははっ、謙遜するねえ」とつぶやき、また彼女の演技を眺め始める。

 

やっぱり本当の彼女を分かってあげることができるのは僕だけだ。だからこそ彼女の隠している本性が知りたくて仕方ない。

 

 

 




〈上原清十郎〉

三流役者。

実力の伴っていない自尊心の塊で才能の無さを誤魔化すため女優やアイドルなど人気があって才能に溢れている女性と関係を持ちたがる。しかし、数ヵ月前に結婚したばかりで浮気することができない。

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