タイトルまま。おふざけで書いています。怒っちゃイヤン。

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数あるお話の中、このお話と出会って下さりありがとうございます、はすみくと申します。

ふと思い立ち、短編を書きました。
おふざけが過ぎますが笑って許してやってください。

ちな、キャラ設定ですが、勇者は19歳。
ローラ姫は38歳にございます。

※Pixivにも掲載しています。


さらわれた姫はアラフォーだった -勇者の選択-

 

 

 俺はどこからともなく現れた勇者だ。

 歳は十九――。

 

 趣味は魔物狩りと、人助け。

 感謝されると気持ちが好いので、困ってる人がいたら進んで助けている。

 

 賞賛が欲しいわけではない。

 助けた人が喜んだ顔を見るのが好きなのだ。

 

 ……俺には頼まれると嫌と言えない優柔不断なところが少しある。

 

 現在フリー……恋人はいない。

 

 絶賛彼女募集中である。

 闇に覆われた世界じゃ、いつ何時なにがあるかはわからないから、できれば早めに身を固めたいと思っている。

 

 タイプは年下で、小さくて可愛い子。

 性格は明るくて元気な子がいい。

 魔物の肉を笑顔で頬張ってくれるような子だと尚良し。

 

 竜王を倒す途中で素敵な出会いがあればいいなと思っている。

 

 

 

 

 そんなわけでラダトームの城を訪れた俺は王さまとの謁見を済ませ、竜王を倒すべく今、旅立つ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、うっ、ローラ姫さま……。ぐすん、ぐすん」

 

 

 ……ラダトームの城で、俺が道を訊こうとした兵士が半べそをかいていた。

 

 彼はローラ姫のファンらしく、半べそをかいている内に眠ってしまい、寝言で「ローラ姫、ローラ姫……」と切なげな声を漏らしだす。

 

 この先には何があるのか訊きたかっただけなのに、ローラ姫を恋しく思う兵士の泣き言を聞かされ、欲しかった情報は手に入らずじまい。

 

 まあ、先に進めばわかるか……と俺は先へ進んだ。

 

 進んだ先には魔法使いと思しき老人がいて、「光あれ!」とつるつるの頭を俺に向けて光らせる。

 

 

 ペカー……!!

 

 

「ま、眩しい……!!」

 

 

 ……なぜか俺の魔力が一気に回復した。

 なぜかはわからないが、ハゲは偉大だ。ありがたい。

 

 竜王を倒し終えた暁には、きっと彼が闇夜を照らす光明となるにちがいない。

 竜王は俺が倒すから、その後は彼に頼みたい。

 

 彼には長生きして欲しいものだ。

 

 

 

 

 ……俺はその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、ローラ姫は一体どこに……」

 

 

 城を出ようとした俺は、手を組み祈るように呟く女性とすれ違う。

 

 ……ローラ姫の名を聞くのは何度目だろうか。

 

 ローラ姫は随分と慕われているようだ。

 

 ローラ姫がさらわれたのは半年前――。

 

 聞いた話じゃローラ姫、彼女は見目麗しい王女さまで、王妃さまが亡くなられてから王さまの心の支えになっていたそうだ。

 兵士にも人気で、城にいた女性も慕うほど、性別を問わぬ人望の持ち主らしい。

 

 

 ……なるほど、そんなにローラ姫とは魅力的な女性なのか。

 

 早くお助けしたいものだ。

 

 勇者として姫をお助けするのは当然。

 邪な考えなど、勇者の俺がするはずがない。

 

 

 だが、美しい王女か……。

 

 

 どんな女性(ひと)なのだろうか……、無事でいて欲しい。

 

 

 

 

 ……俺はラダトームの城を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――人の話はきちんと聞かなくてはいけない。

 

 

 疑問があったらその場できちんと訊いてみなければならなかった。

 あの時、たった一言――。

 

 

『ローラ姫はおいくつなんですか……?』

 

 

 この一言さえ誰かに訊くことができていたならば。

 ……未来は違ったものになったに違いない。

 

 

 そうすれば、世界は……。

 

 

 まさか、魔物にさらわれた姫がオバ……いや、熟成された女性だとは……。

 

 

 期待していなかったわけではない。

 姫を盲目に慕う兵士もいたし、麗しいとばかり思っていた。

 

 

 だのに、出会った彼女は――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ズゥゥゥンン。

 

 

 

 

 緑の鱗に覆われた巨体が地面に崩れ落ちて行く――。

 

 勇者である俺は、マイラとリムルダールを繋ぐ沼地の洞窟の奥、魔法のカギの扉を開けた先にいたドラゴンを倒した。

 

 

「はぁっ、はぁっ、……姫っ! ご無事ですかっ!?」

 

 

 ローラ姫がこの洞窟に捕らえられていると聞いた。

 一刻も早く姫を救い出し、城へお連れし――そしてあわよくば姫と……。

 

 淡い期待を胸に、俺はドラゴンの亡骸を飛び越えローラ姫の元へ。

 

 ……ところが、俺の思惑は無残にも崩れ去った。

 

 

 

 

 洞窟奥に特別に誂えただろう、その部屋――上質な絨毯と、姫を思い遣り置かれたような調度品の数々。

 淹れたてのお茶がテーブルに置かれてまだ湯気を放っている。

 

 ……俺が部屋に侵入したと同時、席に着いていた女性が立ち上がった。

 

 煌びやかなドレスを身に纏い、金の髪を振り乱し走ってくるどう見てもオバ……コホン。

 

 仕切り直して――。

 

 長い洞窟生活の中、清潔さを必死で保ったのだろう、美しいドレスを身に纏ったみょ、妙齢……っ、のっ……女性が瞳を輝かせて走ってくるではないか。

 

 

「ああ! 私を助け出してくださる方がいらっしゃるなんて!」

 

 

 俺の手を――ほうれい線や目尻の(しわ)が目立ち始めた……否、おしろいがたまたま割れてそう見えただけだろう、笑顔の女性がギュウギュウと強く握りしめて来る。

 

 

「……あ、はい」

 

 

 やっちゃったかなぁー……と、俺は女性に上目遣いで見つめられ返事をした。

 

 女性の瞳はキラキラと輝き、彼女は頬を赤らめている。

 ……確実に俺に何かを期待しているような目だ……。

 

 確かに俺も期待はしていた。

 ……していたよ?

 

 だが、しかし。

 

 

 ――あ、俺詰んだ。

 

 

 俺はドラゴンを倒したことを後悔し始めていた。

 

 

「私はラダトームの王女ローラと申します。もしあなたがおいでにならなければ私はいずれ竜王の妻に……。ああ、考えただけでも恐ろしいですわ……」

 

 

 女性……ローラ姫はすでに俺の腕にしな垂れかかり、腕に纏わりついている。

 

 

 ――竜王の妻の方が良かったんじゃ……?

 

 

 囚われの身とはいえ、部屋を見回せば、何不自由のない生活をしていたように見える。

 

 テーブルに置かれたティーセットは貴族の使うそれで、恐らく城に居た時と何ら変わりはないのでは……?

 

 ……竜王はローラ姫を大事にしていたように思えた。

 

 妻にしようとしていたくらいだ、当然だろう。

 

 俺は他人(ひと)の恋路を邪魔してしまったかもしれない。

 

 ギュウギュウと胸を押し付けてくるローラ姫を見下ろし、何とも言えない感情が湧き上がる。

 

 

「勇者さま。わたしをお城まで連れて帰ってくださいますのね?」

 

「あ、いや、ぼ、ぼくは……」

 

 

 俺の口から“ぼく”と出ていた。

 俺は恐怖に駆られると自称が“ぼく”になってしまう癖がある。

 

 俺は何かに怯えているようだ。

 

 手を出してはいけないものに手を出してしまった……そんな気分。

 

 

「そんな、ひどい……」

 

 

 俺の返事を否定と受け取ったのか、ローラ姫が泣き真似をする。

 そんなこと言われても、ローラ姫の靴は高いヒール。

 

 そんな足で洞窟を抜けるなんて無理だ。

 

 

 ……いや、これは――俺に抱き上げろと……?

 

 

 小皺が目立ち始めたオバ……いや、素敵に年を重ね、熟された女性を抱え上げ城に戻るなど……!

 

 

 俺はまだ若い。変に期待させてしまうのではないか?

 

 

「ぼ、ぼく、ちょっと肩を痛めておりまして」

 

 

 ――そうだ! 主張しなければならない時は主張せねば!

 

 

 俺は先ほどのドラゴンとの戦いで肩を痛めたということにして、ローラ姫を抱え上げるのをそれとなく躱そうとする。

 

 

「勇者さま。わたしをお城まで連れて帰ってくださいますのね?」

 

 

 期待に満ちた瞳で、ローラ姫が俺を上目遣いに見上げて来た。

 間近で見ると、やはり小皺が目立つ。

 化粧のノリもいまいちなのだろう、肌のかさつきも少々……。

 

 

「っ……、その、ぼくは、か、肩を……」

 

 

 ……俺は抵抗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その抵抗は無駄に終わった。

 

 

「まあ勇者さま。うれしゅうございます。ぽっ……」

 

 

 俺はいつの間にかローラ姫を抱え上げていた。

 

 ……別に彼女の身体は重くない。

 

 彼女は細身だし、好い匂いもする。

 見た目は美人の部類に属するだろう。

 

 だが、どう見てもオバ……あ、いや、お歳を召している。

 仕草は少女のようなのに、近くで見ると隠しきれない顔のたるみ……。

 

 どう見ても俺の一回り以上は絶対上だ。

 

 その彼女が俺の腕の中で頬を赤く染め、大人しく抱えられているのを見ると、なんとも言えない。

 

 

「で、では城に戻りましょう……」

 

 

 ……俺は洞窟を出ることに神経を注ぐことにした。

 

 

 そもそも俺の好みは年下だ。

 年上でもいいが、せいぜい二、三歳までが許容範囲。

 

 いくら美人でも一回り以上、上はない。

 

 自惚れかもしれないが、ローラ姫は今、俺に恋をしている……!

 

 ……これはひょっとして、ひょっとしなくても一目惚れされたのではなかろうか。

 

 

 移動中、彼女がちらちらと俺を窺い、目が合うと頬を赤くしてはにかむ……。

 

 

 マズイ。

 非常にマズイ。

 

 

 このままだと俺は彼女と結婚させられるかもしれない。

 

 

 ……変な汗が頬から首に滴り落ちていく。

 

 

 こんなことなら竜王に嫁いでもらった方が良かった。

 それか、城のローラ姫を慕う兵士に譲りたい。

 

 泣きべそをかいていた兵士はオバ専なのだろう、きっとローラ姫を大事にするに違いない。

 俺は同年代か年下がいいのだ。

 

 

 洞窟を抜けるまでローラ姫が何度か話し掛けてきたが、俺は聞こえていない振りをしてやり過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローラ姫、これをどうぞ」

 

「まあ、ありがとうございます。わたしの分まで。勇者さまはお優しいのですね」

 

 

 夕闇の森の中、俺は焚き火で焼いた肉をローラ姫に手渡す。

 ローラ姫は骨の付いた肉に齧りついた。

 

 こんな風に食べるのは初めてだそう。

 

 

 ……とても楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟を抜け、俺はローラ姫を抱えながらラダトームの城を目指した。

 途中で何度か野宿することになったが、ローラ姫は文句も言わずにいつもにこにこと食事の用意をする俺を眺めていた。

 

 もちろん、彼女に手は出していない。

 綺麗な女性とはいえ、手を出せば取り返しがつかなくなる。

 

 明日にはラダトームに着けるだろうか。

 さっさと城にローラ姫をお連れし、俺は竜王を倒しに行きたい。

 

 そして、竜王を倒したら町でデートしたあの子と――。

 

 ラダトームの町で出会った可愛い女の子。

 俺の後ろに楽しそうについて来て笑ってくれたあの子。

 

 ローラ姫より見目は少し劣るが、若くて良かった。

 

 もう、彼女でいい。

 竜王を倒したら、俺はあの子と結婚しようと思う。

 

 

 ……だから、早くラダトームの城に着きたい。

 

 

 俺が用意した食事をおいしそうに頬張って、「ありがとうございます、勇者さま♡」なんて無邪気に笑うローラ姫を見たくない。

 

 どうみてもオバ……歳が離れ過ぎているのに。

 それが可愛いと思えてきてしまうなんて……俺の頭はどうかしている。

 

 

「明日にはラダトームに着けそうです」

 

「そうですか……」

 

 

 俺の言葉にローラ姫は口の周りを汚したまま小さく呟いた。

 彼女の手には食べかけの骨付き肉……、今夜は食が進まないようで黙り込んでいる。

 

 ドレスも洞窟を出てから随分と汚れてしまった。

 だが、彼女は文句ひとつ言わない。

 

 

「……明日でお別れですね」

 

 

 俺は親指で彼女の口元を拭ってやった。

 

 

「……あの、勇者さま、お願いがあるのです」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は不本意ながらローラ姫の“お願い”とやらを聞き入れ、次の日ラダトームの城に行く前に、町に寄ることになった。

 

 町に着いたのは夕暮れ時――。

 

 

「……ローラ姫……、いいんですか?」

 

「いいんですよ」

 

 

 ……俺とローラ姫は宿屋に一泊することにした。

 

 

 ローラ姫の願いとは、俺と最後の夜を共に過ごしたい……というものだった。

 

 

 ローラ姫は俺とただ一緒に眠りたいだけで、手を出しても出さなくてもいいらしい。

 そもそも、男女が共寝する意味をよく解っていないようで、連日俺が野宿で火の番をしていたから、俺が眠っている姿を見たい――という。

 一応昼間に休憩を取り、仮眠は取っていたのだが、最後だから一晩中眺めていたいとか……。

 

 

 労いに肩揉みをしてくれるそうだ。

 王さまにたまにしていたんだと。

 

 

 ……変な女だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とローラ姫は宿屋の一室に入るとベッドに腰掛けた。

 

 

「では、勇者さま、楽な恰好をなさってください」

 

 

 ローラ姫に言われるまま、俺は鎧を外す。

 

 ……俺にはローラ姫に手を出さない自信がある。

 だって、俺の好みは若い女の子。

 

 断言する、今夜はなにも起きない。

 

 起き得ない。

 ないったらない。

 

 

「ぁっ……、っ……」

 

 

 俺が鎧を脱ぎ去った姿を前に、ローラ姫が息を呑んだ。

 

 

 ――おっと、中のシャツも脱げてしまったか……。

 

 

 まあ、俺の身体は鍛えられているから?

 見たくなるのもわからなくもない。

 

 とはいえ、ちょっと見過ぎではなかろうか……恥ずかしい……。

 

 ローラ姫は手で目を覆っていたが、指の間から鋭い眼光が光っているのが見える。

 

 

「……そんなに見ないで下さい」

 

「す、すみません……わたしったら……。あまりに美しい身体でしたので、つい見惚れてしまいました」

 

 

 “では座って下さい”

 

 

 ローラ姫の誘導で、俺はベッドに腰を下ろす。

 姫の小さな手が俺の両肩に掛かった。

 

 

「ここまで連れて来て下さりありがとうございました。勇者さまはわたしの命の恩人ですわ。眠くなったら眠って下さいね」

 

 

 ローラ姫が一揉み、一揉み、丁寧な手付きで肩を揉んでくれる。

 女性だからか揉む力が少し物足りないし、くすぐったさも感じたものの、その丁寧な指圧からは彼女の思い遣りが感じられた。

 

 

「……」

 

 

 俺は肩を揉まれている間に、ローラ姫と過ごした日々を思い出す。

 彼女は少々年上だが、いつも笑顔で朗らかだ。

 

 旅の間は不便だったに違いない。

 なのに彼女は何も文句を言わなかった。

 

 ちょっと視線が恐ろしいと感じることもあったが、性格は良い。

 美人だし、小さいし。

 

 

 それに、好い匂いがする……。

 

 

 

 

 ……さっきから彼女の香りが行ったり来たりで落ち着かない――。

 

 

 

 

「ぁっ、ゆ、勇者さま……?」

 

「……ローラ姫……」

 

 

 

 

 俺は気付けばローラ姫の手首を掴み、彼女をベッドに押し倒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます。ゆうべはおたのしみでしたね。ではまたどうぞ」

 

 

 宿屋の主人がニヤニヤしながら俺と、俺の腕にしがみつくローラ姫を見やる。

 

 

「ははは……」

 

 

 ――やってしまった……!!

 

 

 あれほど! あれほどないって言ったのに……!!

 

 

 俺は頭を抱え俯く。

 今朝、目が覚めてローラ姫の笑顔が間近にあり、普段は目覚めの悪い俺だったが速攻飛び起きた。

 

 

 ……そう、昨夜俺はローラ姫に手を出してしまったのだ。

 

 

「勇者さま♡」

 

「ははは……」

 

 

 上目遣いで見つめて来るローラ姫……、昨日一緒に過ごしたからか可愛さが増している気がする。小皺も気にならないほどだ。

 

 

 ……俺はさっさとラダトームの城にローラ姫を引き渡しに行くことにした。

 

 ラダトームの城に向かう途中、以前デートした女の子が俺とローラ姫を見て頬を膨らませていたが、俺はそれに気付かない振りをして通り過ぎる。

 

 女の子は不機嫌そうに眉を寄せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……俺はどうかしてしまったんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇者さまを愛する私の心。どうか受け取ってくださいませ。そしてローラにもあなたさまから、何かひとつ……薬草をローラにくださいませね」

 

「え……、あ……」

 

 

 王さまに姫を引き渡すとローラ姫が目にも留まらぬ速さで、俺の持ち物の中から薬草をくすねていく。

 そして、身に着けていたペンダントを差し出した。

 

 

「あ、いや、これは姫の大事なものなんじゃ……」

 

 

 俺は抵抗したが、ローラ姫は俺の片手を下から支え、受け取りを拒むことを許さない。

 

 仕方ない……受け取るか。

 

 ……俺は大人しく受け取ることにした。

 受け取った瞬間、それがなんであるか瞬時に理解する。

 

 

 これは――。

 

 

 “王女の愛”……というものらしい。

 

 

 ローラ姫の手が俺の手の平を覆い、離れると手の中で“王女の愛”がキラキラと光っている。

 

 

「ああ! たとえ離れていても、ローラはいつもあなたと共にあります」

 

 

 王女の愛……、いつも俺と共に……?

 

 

 王女の手が再び俺の手の平を覆った。

 ……彼女の表情は恋に恋した女の顔――、俺の手を掴んで放したくなさそうだ。

 

 

 ――俺のことが好きって顔に書いてある……。

 

 

 わ、悪くないじゃないか。

 なぜだろう、ローラ姫が俺と離れたくないという気持ちがなんだか心地いい。

 

 

 ……いや、俺はあの子と結婚するんじゃなかったか……?

 

 

「ぁっ……」

 

 

 俺は乱暴にローラ姫の手を振り払っていた。

 

 

「どうか、お元気で」

 

「勇者さま……」

 

 

 竜王を倒すまで、もう会うことはないでしょう……と、ローラ姫の悲し気な瞳を振り切るように、俺は玉座の間を後にし再び旅立っ――

 

 

 たのだが――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇者さま……。あなたはローラのことを想ってくださいますか?」

 

「いいえ」

 

「そんな ひどい…」

 

「ウソです。想っていますよ」

 

「ローラはあなたをお慕いしています……ぽっ」

 

 

 気付けば俺は、もう三度もローラ姫の顔を見に来ていた。

 俺が来る度、ローラ姫が明るい笑顔で出迎えてくれる。

 

 王さまは“竜王討伐はまだか”という目を向けて来るが、ローラ姫の目は優しい。

 ちょっと小皺は目立ってはいるが、可愛い――。

 

 

 ……どうも俺はローラ姫に惚れてしまったみたいだ。

 

 

 歳の差は少々あるが、愛があるならそれでいい。

 愛の前では年齢など……!!

 

 

 竜王を倒し、ローラ姫と共に新たな土地へと向かおう。

 そして彼女にプロポーズを……!

 

 

 愛があれば年齢の差など、どうとでもなる……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……去り際、王さまに言われた。

 

 

 

 

「そなたはもう充分に強い! なぜにまだ竜王を倒せぬのか?」

 

 

 

 

 そして“早く竜王を倒し、ローラ姫と結婚して国を治めよ”……と続けたのだ。

 

 

 ……そう、俺は強い。

 充分過ぎるほど強い。

 

 竜王も尻尾を巻いて逃げるだろう。

 

 だが、どうしても竜王を倒しに行く決心がつかないのはなぜなのか。

 

 

 ……竜王を倒せばローラ姫との結婚が待っている。

 

 一国の王女が、どこから来たのかもわからない、得体の知れない俺に降嫁してくれる……こんな光栄なことはないではないか。

 

 だが、俺はこの国を治めようとは思っていない。

 別の土地へと流れてゆき、新たな国を作るつもりだ。

 

 

 そうなった時――、ローラ姫は……ついて来るのだろう。

 彼女は芯の強い女性だから。

 

 

 きっと彼女はずっと俺を愛し、付き従ってくれる……、わかってる。

 

 

 ――わかっているんだ。

 

 

 

 

 その彼女のためにもそろそろ竜王を倒さねば――。

 

 

 

 

 ……そうして三度目の面会を済ませた俺は、ローラ姫との未来を思い描き、今度こそ竜王を倒しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜王の城にて――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――世界の半分をお前にやろう。どうじゃ? わしの味方になるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なる!(これでローラ姫と結婚せずに済む!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Next >>> ドラゴンクエストビルダーズ……?

 

 

 

 

 ……おしまい。

 




勇者はローラ姫との未来に踏み切ることができず、竜王の手に落ちた……という(大分端折ったけど)。
絆されかけるも我に返った勇者くん、19歳。

恋愛と結婚は別でした……。

始めはローラ姫エンドだったんですけど、なんかやっぱ無理ってなって……勇者は逃げました……スイマセン。
ハッピーエンド至上主義なのですが、これはこれで広い意味でハッピーエンド……ということで。

大好きなビルダーズに繋げられたので満足です。

これの対で、勇者がアラフォーだったという話も書こうとしたのですが、怒られそうなので断念しました。

このお話も充分怒られそうですけどね(汗・汗)
怒っちゃイヤン。

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読了おつかれさまでした&読んでいただきありがとうございましたっ!

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