【✨書籍化✨】怠惰な悪役貴族の俺に、婚約破棄された悪役令嬢が嫁いだら最凶の夫婦になりました【悪役✕結婚】   作:メソポ・たみあ

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第264話 悪役による制裁パンチ

 

「お~い、お前ら~」

 

 俺はサメ尻尾ゴスロリ使用人(メイド)から金品を奪い去ろうとするゴロツキたちに、気の抜けた声で話しかける。

 

「あぁ? なんだ手前(テメェ)、俺たちのやることに文句あんのか?」

 

「別に文句なんかないけど。でも妻が放っておけないって言うからさ~。お前ら阿呆な真似はやめて、痛い目に遭う前にどっかいけ」

 

 ヒラヒラ、と手の平で追っ払うジェスチャーをして見せる俺。

 そんな俺の発言に神経を逆撫でされたのか、一番ガタイのいいスキンヘッドのゴロツキがザッと立ち上がる。

 如何にも怒ってますよと言わんばかりに、額に青筋を浮かべながら。

 

「ククク、上等じゃねぇかクソガキが。女の前でカッコつけてヒーロー気取りってか、あぁ?」

 

「ん――? お、おい待て! ソイツ――いやその方(・・・)は――ッ!」

 

 スキンヘッドのゴロツキは拳をポキポキ鳴らしながらこちらへ向かってくるが、一方別のゴロツキの一人が俺の顔を見た途端に驚いて血相を変える。

 

 まあ俺って今じゃ有名人(・・・)だしな。

 街のゴロツキの中にだって俺の顔を知ってる奴がいてもおかしくない。

 

「くたばれや、ガキがッ!」

 

 野太い腕を振り上げ、殴りかかってくるスキンヘッドのゴロツキ。

 俺はそんな阿呆のパンチをあっさりと回避し、

 

「お前がくたばれよ」

 

 お返しとばかりに、スキンヘッドのゴロツキの顔面を殴り付けた。

 ムカついたので、ちょっと強めに。

 

「ごぁッ……!?」

 

 スキンヘッドのゴロツキの顔の形が大きく変形し、口と鼻から血が噴き出る。

 頬の辺りをぶん殴ったので、少なくとも顎の骨の半分がほとんど粉々に砕けただろう。

 

 さらに俺はこの阿呆の胸倉を掴み上げ、顔面におかわり(・・・・)をお見舞い。

 一発、二発、三発、四発――半殺しよりやや殺(コロ)にするつもりで連続パンチ。

 

 俺が殴打を食らわせる度にスキンヘッドのゴロツキの顔の形状が見る間に変わっていき、〝メキャッ〟〝ゴキッ〟みたいな快音を奏でる。

 その度に血が噴き出て、折れた歯が地面に転がる。

 

 あーもう、お前の汚ったねぇ血で手が汚れるじゃんかよ。

 俺の手は愛する妻の手を取るためにあるんだぞ?

 それを汚しやがってこの野郎め、もう一発食らえ。

 

「ありがとうアルバン。でも、流石にちょっとやりすぎ」

 

 スキンヘッドのゴロツキを何度も殴っていると、レティシアが俺を止めに入る。

 彼女に言われたらこれ以上やる意味もないので、もはや意識があるかどうかも怪しいスキンヘッドのゴロツキをパッと手放してやる。

 

 しっかし、これくらいで許すなんて優しいな~レティシアは。

 俺なんかまだ殴り足りないくらいなのに。

 でもそんな優しいところもホント好き。

 俺以外に優しさを向けるのはちょっと嫉妬(ジェラ)っちゃうけど!

 

 レティシアは残ったゴロツキ二人の方を見て、

 

「ねぇ、あなたたち」

 

「は、はいぃッ!」

 

「さっきの反応、どうも私の夫をご存じのようですわね」

 

「も、ももも勿論です! そこにおわす方はこの国の大英雄、アルバン・オードラン様でありますぅッ!!!」

 

 ピシッと直立姿勢となり、怯え切った顔で俺の名を呼ぶゴロツキ。

 よほどビビッているらしく、その表情からは「死にたくない」という想いがわかりやすく溢れ出ている。

 

 いや~悪役としては照れるね~、そんな見事に怖がってくれちゃうとさ~。

 やっぱ悪役は恐れられてナンボだからな~。

 

 なんて俺が内心でちょっと喜んでいると、レティシアは俺の腕に自らの腕を絡ませてくる。

 

「アルバン・オードラン男爵は、あなたたちがやろうとしたような下劣な悪事を決して見逃さないわ。覚えておくことね」

 

「「はいいいぃぃぃッ! すみませんでしたッ! もう二度と致しませんッ!!!」」

 

「なら結構。倒れているお仲間を連れて、どこへなりとも失せなさい」

 

 見逃してやる、とレティシアに言われた二人はスキンヘッドのゴロツキを担ぎ、文字通り逃げるようにこの場を去っていった。

 

 ――ん、あれ?

 なんか俺、まるでいいことしたみたいになってる?

 正義の味方みたいなことしちゃった感じになってる?

 俺、悪役なんだけど……。

 

「レティシア~……俺はキミのためにやっただけなんだが……」

 

「フフ、わかってるわ。ありがとうアルバン」

 

 レティシアは満足そうに少しはにかんで、俺の腕にぎゅっと抱き着いてくれる。

 可愛い。

 

「でも私は、アルバンが他者のためになにかしてくれる人だと知ってほしいもの」

 

「いや……う~ん……」

 

「それにあなたの言う悪役にだって、たまには善行が必要でしょう?」

 

「そ、そうですよオードラン男爵! 実にお見事でした! 本当にありがとうございます!」

 

 レティシアに続き、シャノアまでもが俺の行いを賞賛してくる。

 

 必要か……? 悪役に善行って……?

 俺はぶっちゃけどうでもいい……どうでもいいけど、レティシアが言うならまあいいか! そういうことにしておこう!

 どっちにしても、レティシアが喜んでくれたらなんでもいいし!

 

 俺は自分にそう言い聞かせることにして、ギュッと妻を抱き返す。

 すると、そんな時――

 

「お助けくださいサメ……死にそうですサメ……」

 

 地面の方から声が聞こえる。

 改めて視線を向けると――そこには地面に向かって顔を突っ伏す謎の存在が。

 

「で…………なに、これ?」

 

 例えるならば、まるで海から陸へと打ち上げられ、今まさに臨終の時を迎えようとしている憐れな魚類のような……そんな様相すら呈している謎のゴスロリ少女。

 無駄に太い尻尾なんか力が抜けすぎて、さながら濡れ雑巾みたいにシナシナになっちゃってるし。

 

 なに? この尻尾? なんで女の子にサメの尻尾が生えてるの?

 なんというか助けておいてなんだが、見つけてはいけないモノを見つけてしまった……という感覚で、ソレを見下ろす俺。

 

 たぶん、いや絶対に関わってはいけないヤツだ。

 間違いなくそうだ。確定でそうだ。

 

 俺の直感がそう言ってる。

 一ミリでも関わったら後悔すること請け合いだと、俺の面倒くせぇセンサーがバチゴリに警報を鳴らしまくっている。

 

 スルー推奨。絶対に推奨。

 用は済んだんだし離れよう、今すぐここから離れよう。

 そう思った俺だったが――

 

「だ、大丈夫ですか!? どうなされたんです!?」

 

「あっ、ちょっとシャノア……!」

 

 我先にと、シャノアがサメ尻尾ゴスロリ使用人(メイド)へと駆け寄る。

 そしてレティシアもシャノアに続く。

 

 ええ、ええ、そうですよね~……。

 ここまできたら無関係とはいきませんよね、知ってました~……。

 

 それに困った人を放っておけないのがレティシアのいいところであり、引いてはその親友であるシャノアのいいところでもあるもんな。

 そう思えば仕方ない。

 今ばっかりはスルーしてほしかった気もするが。

 

「しっかり! どこか痛むんですか!?」

 

「お……お……」

 

 急いでサメ尻尾ゴスロリ使用人(メイド)を抱き起すシャノア。

 対してサメ尻尾ゴスロリ使用人(メイド)は力なく片腕を動かす。

 そしてゆっくりと――その腕を自らのお腹へと当てた。

 

 同時に〝グゥ~~~……〟と奏でられる、特大の空腹音。

 

「お……お腹が減って……死にそうですサメ……。なにか食べ物を……恵んでくださいシャーク……」

 




???「ナム、ナム……」
???「私たちは友達。友達は食べるものじゃない」

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