スライム
異世界
海辺
オフ
悪魔娘
・・・・好き
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『俺、夢があるんだ。
よくあるシチュエーションだけど実際に誰も見たことないあれだよ。
彼女と海辺で追いかけっこするやつ。』
『でも俺には縁のない話だよなぁ。
だってさ・・・』
「家から出ることすら、こんなにも辛い思いをしなきゃいけないんだからな。」
・・・そう呟きながら、見ず知らずの町のコンビニの前に突っ立っている男。
名は「九条 海」25歳、無職童貞引きこもり。
新卒で大手ゼネコンに入社したものの、想像を絶するどブラックっぷりに1年ちょっとで過労死寸前まで追い込まれ、文字通り「逃げ帰った」実家で時代遅れのオンラインゲームに没頭する日々を何年も過ごしていた。
【アナザーワールド】
今でこそ過疎の極みだが、始めたころはそこそこの人気があったMMORPGで、異世界と現実がリンクしてしまった日本が舞台となっている。
プレイヤーは世界がつながってしまった謎を解き明かし、陰謀や戦争に巻きこまれながら二つの世界を切り離す為に、日本に侵入する魔物を退けたり国家間の衝突を防ぐ英雄となる物語だ。
海はこのゲームに社畜時代の財産を全てつぎ込み、過疎の原因ともなった課金要素による無課金ユーザーと廃課金ユーザーの格差をものともせず、トップランカーにまで躍り出ていた。
次の仕事を探しもせず、齧れる親のすねなど彼にはなかったようで、この炎天下の真夏日に突如家からたたき出された海は途方に暮れていたのであった。
「・・・畜生、これ死ぬんじゃないか?」
実際、海は熱波にじわじわと体力を削られ続け、喉の渇きが限界に達していた。
「なんか入るの怖いな。引きこもってるとコンビニすら魔王城に見えるのか。」
しかし背に腹は代えられず、おずおずとコンビニの自動ドアをくぐる。
店内の冷たい空気が体を包むと、おのずと緊張も解れるものだ。
海はさっそく商品棚から水を取ろうと手を伸ばす。
しかしその横に置かれたビールについつい目を奪われてしまった。
「・・・だめだ。何考えてるんだ俺は!!どう考えても水だろここは!」
「たえろ俺!考えろ!今こんなもん飲んだら脱水で・・・そもそも高い!!増税のせいか!?ビールってこんな高かったか?社畜時代は働き詰めで買う暇すらなかったし、そのあともゲームばっかりで酒を飲もうだなんて考えてなかったからわからん!」
海は母親が持たせた財布を開く。
「これ買ったら残金は・・・1000円!?あの親殺しにかかってやがる!」
「我慢だ!我慢しろ俺えええええぇ」
「ぇえええええああああああうみゃいいいい~ビールうまいいいいぃぃいいぃ~~~」
海は欲に忠実な男だった。
「やっちゃった・・・どうしよう・・・まあ水は公園とかで飲めば良いか。」
少し寂しくなった財布の中には訳700円が慎ましやかに仕舞われている。
よりにもよってちょっと高めのビールを選ぶ辺りに彼の計画性の無さと自暴自棄っぷりが表れていた。
「・・・そっか。普通に詰んでんだな俺。」
ビールをグイッと煽り、空を見つめる。
「・・・最後に海が見たいな。」
「へ、ヘイタクシぃ~・・・」
海は完全に自暴自棄となり、雄大な海を見てからその一生を終えることを考えていた。コミュニケーションのブランクのせいでヘロヘロの声でタクシーを止めると、車の扉が開きのそのそと乗り込む。
「どちらまで?」
「ここ、こ、ここから一番近い海ってどこですか?」
「ああ、それならすぐそこじゃないですかね。」
「い、いくらぐらいですか・・・?」
「んー、800円ぐらいかな?1000円は超えないと思うよ。」
「あ、じゃあ海の近くまで行けるまでおねがいします。」
車内に静寂が訪れ、ただ道路を走る音だけが運転手と海の耳に伝わる。
「うおっ!?」
静寂はフロントガラスに何かが衝突した事で破られた。
それは血のような赤色で、運転手は何か良からぬものを轢いてしまったのではないかと不安に駆られる。
「なんですかね?ちょっとごめんね。」
路肩にタクシーを止める。そこはもう海から100メートル付近の場所だった。
海は一旦外に出て、運転手と共に衝突した物体を眺める。
「なんだこれ。ゼリーみたいな・・・」
突如それが運転手の顔に飛びついてきた。
「ぶゎっ!????ごがっっ!!ぐ、ぐぎゃ」
「ちょ、う、運転手さん!?」
運転手の体がみるみる消化されていく。
海はその様を見ていることしかできずに硬直する。
目の前の惨状に混乱しながらも、海は運転手を侵しきらんとする物体に見覚えがあった。
「こ、これは・・・スライム?」
「コア・・見たことあるぞこのデザイン!バイオレッドウーズだ!間違いない、死ぬほど狩ってきた・・・アナザーワールドの雑魚じゃないか!!」
「うわっこっちくんな!!」
運転手を消化しきったスライムは、じりじりと海に這い寄る。
九条は全速力で海の方向に走り出す。
きゃーーー!!!!
たすけ・・・うわあああああ!!!!
いだい・・・いだ・・・
「くそ、なんなんだよ!いったいどうなって・・・」
「・・・うわあああああ!!!!」
道中にあふれる既視感のある魔物が人を見境なく襲い、町は地獄の様相を呈していた。
九条はそれを走り抜け
「・・・海に着いちゃった。」
目的地に到着する。
すると後ろから空を裂かんとするほどの咆哮が轟く。
「ぶごおおおおお!!!!」
「レッドオーガ・・・ボスクラスじゃん。」
「あれで死ぬのは・・・いやだなあ」
レッドオーガは巨大な鉈を振りながら九条に迫る。
「にげなきゃ・・・にげ・・・うおおおお!!!」
九条と化け物の追いかけっこが始まった。
「ゴギャアァアッ!!」
「くそ・・・まさか、まさか・・・なんで追いかけっこの相手がオーガなんだよ!!!」
こんな形で夢を壊されるとは、九条も思わなかった。
「ああ、どうせ殺されるなら・・・可愛い娘に殺されたかった・・・たとえば・・アナザーワールドの裏ボスの・・・」
「グオオオオオオおオオ!!!!!」
アナザーワールドには「悪魔」という種族がいる。
それは作中でも中立の立場で、プレイヤーの敵にも味方にもなる最強種族の一角。
プレイヤーが信用に値するかを確かめるために戦うことになる悪魔女帝は男性プレイヤー人気第一位だ。
・・・もうこのゲームをやっているプレイヤーなんて数えるほどしかいないし、皆忘れてしまったかもしれない。
その女帝の名は
「アドラメレク・・・」
「今わしの名を呼んだかぁぁぁぁ!!!!」
「グぎゃああああああ!!!」
「!?」
「おうおうお主!今我の名を呼んだか!?やぁーっと我
の存在を知る者に会えたわ!!」
「なんで!?なん、え?なんで?え?なんで?何??」
「おうこの男状況対応能力が息をしてないようじゃな!」
「…俺、こんなに酒弱かったんだな」
「幻覚では無いぞ!ほれ、しゃきっとせい!」
「は、はは…
「さて、お主の名はなんじゃ?」
「お、俺は九条海です。」
「そちらの名ではない!アカウント名じゃ!」
「アカウント名?なんですそれ」
「かー!お主わしの名を知っとるんじゃからアナザーワールドの事はしっとろうに。そっちの名じゃよ。」
「あ、「卍天元無双卍」です・・・」
「!!そのくそダサい名・・・我は・・・好きじゃよ」
「く、くそださ・・・」
「いやまて、お主あの卍小僧か!」
「え?知ってるんですか!?」
「知ってるも何もわしアナザーワールドの世界からやってきたんじゃから覚えとるよ。
ってことはあのトップランカーの卍小僧かお主!やっと見つけたわ!」
「あの・・・この状況、いったいなんなんですか?何でアナザーワールドのモンスターがここに?」
「うむ。お主、家のパソコンつけっぱなしじゃろ。」
「ずっとアナザーワールドにログインしっぱなしにしてました。」
「そのせいであちらの世界とこちらの世界が繋がってもうたんじゃよ。」
「え、俺のパソコンのせい?」
「そうじゃ。繋がってしまった世界を元に戻すにはお主のパソコンの電源をオフにするしかないのじゃ。さあ、家に戻るのじゃ!」
「家どこかわかんないです」
「は?」
「さっき追い出されて、目隠しされた状態でここに連れてこられました。ケータイもありません。」
「水曜日のダウ〇タ〇ンのドッキリ企画か?」
「と、とにかく家に戻るのじゃ!!
こうして九条の家に戻る大冒険が幕を開けた。
配信の尺長くなりそうだったので文章半分ぐらい削りました。